1982/3月 恐怖のモンスターリッパー 大森、飛鳥「私、タッチしたくない」

ジャパン女子プロレスさんのYoutubeより

1982年3月 デビル雅美&モンスターリッパー&松本香vsミミ萩原&大森ゆかり&ライオネス飛鳥

一関市体育文化会館

 

47:00くらいから

 

(↓AIでフルハイビジョンに変換した動画です。試合のみ)

[AI FHD 60fps] AJW 1982 03 デビル・モンスター・松本vsミミ・飛鳥・大森  一関市体育文化会館リンクyoutu.be

 

 

松本の新人時代のエピソードを、当時の本から一つ引用してみようかと思います。

 

おかあちゃんより----------------------------------

女子プロレスに入って、五年間はまったく鳴かず飛ばずだった。それはプロテストに合格しても変わらなかった。同期の仲間たちは次々とスターになっていった。その中でも私が一番出世が遅れていた。そのくせ、体重だけは増え続けて、いつしか百キロの大台を超えた。「ゾウアザラシ」とか「カバ」とか呼ばれて、仲間たちにはからかわれていた。

 

私たちは年間二百本から三百本の地方巡業に出た。旅から旅へ、試合から試合へ、来る日も来る日も旅暮らしだった。時々自分がどこにいるのかすら分からなくなった。わかるのは北海道と沖縄だけだった。それ以外は、今どこにいるのかも全然分からない。今日が何日で、何曜日かさえも。体育館から体育館へ。その体育館からホテルへ、そしてまた体育館へと。

 

毎日がそれの繰り返しだった。そして、何人もの新人たちが耐えきれずに、"脱走"していった。

リングの上で体をいためる。体にアザや傷ができる。最初のうちは、それが"ああ、いやだな"と思った。だが、私たちのアザや傷ができるたびにお客は歓声をあげる。それが私たちの商売なのだ。そう気づいたとき、アザも傷も快感に変わる。腹が据わる。第一、プロレスラーが自分の体のアザや傷を気にかけてどうなるというのだろう。気にするのだったら、それこそやめたらいいのだ。

 

夜、体が痛い。しかし痛いからといって眠れないなんてことはない。寝床に入ればすぐに寝ちゃう。丸太をゴロリと転がすみたいに。体の傷が痛いなんて世界じゃない。痛かろうが何だろうが、寝ないことには体がもたないのだから。疲れ切っているから、寝る時だけが唯一の自分の時間だ。先輩にイジメられて、"ちきしょう!"という思いも、布団に入るや、ガァーッ。いとおしむように眠る。"眠った"と思ったらもう朝になってる。"どうしてこんなに夜が短いのだろう" 一瞬、"また朝か、嫌だな"と思う。だが、そう思うのもつかの間、早く着替えして先輩のところへ行かなくちゃならない。"遅いぞ、寝坊したんだろう"と文句を言われる。そんなことでイジメられるのはかなわないからね。

 

新人時代、がまんして私は耐えていた。上の先輩連中がいる以上、どんなにがんばっても下は無理だ。よし、長期戦にもちこんでやろう。上がやめるのを待とう。

そしてどうんなつらいことがあっても最後までやめないようにしよう。最後まで残っていれば、いつか必ずチャンスが回ってくる・・・。

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さて、試合を見ていきたいと思います。

松本がデビューしてから約1年半後、試合に出られるか出れらないかの時期が続きます。

いつも前座から、稀にメインに入るチャンスが回ってくるようです。

このメインでお客様を湧かせれば、その後もメインに入れるようなシステムなんだと思います。

つまらない試合をしてしまうと、前座に逆戻り・・・実力主義なので仕方ないです。

 

すでに同期のライオネス飛鳥、大森ゆかりはメインの常連になっています。今回の試合も相手にも、エリートの飛鳥と大森がいます。

 

松本としてはのし上がる絶好のチャンスです!!

 

さて、ヒール側はデビル雅美般若様と、強力外人のモンスター・リッパーがいます。松本は体重90kgをウリにしていますが、モンスターリッパーは120kgを超える怪物でした。松本が小兵に見えてしまいますね。

松本はこの2人よりも目立つか、それなりの活躍をしなくてはなりません。デビルとモンスター、あまり個性が強すぎて、

 

松本が目立つにはあまりに難易度が高すぎなのでは!?(^^;

 

と思ってしまうのですが、とはいえ、仕方ありません。せっかくのチャンスです。

 

おそらく、松本が「外人と戦いたくない」と話していたのは、このモンスター・リッパーのことなんじゃないかと思います。ジュディ・マーチンさんもなかなか怖かったですが、明らかにモンスター・リッパーのほうが怖いです。

 

 

さて、試合を見ていこうかと思います。

 

 

ベビーフェイス側は、ミミ萩原を中心に、大森ゆかり、ライオネス飛鳥と55年組エリートが2人も入っています。絢爛豪華な組み合わせです。

 

 

 

 

ブラックのほうは、デビルとモンスター、そして中央に松本がいます。今回は黒一色で全員統一したのでしょうか、ドクロマークの入ったブラックのガウンです。

 

 

松岡「今日は団さんとも話していたんですが、デビルがパーマをかけましたでしょ? カーリーヘアにして」

志生野アナ「あれあれ本当だ」

松岡「一層不気味さというか、凄さを増したなぁっという」

 


デビルはこの試合からカーリーへアになったんですね。やはり池下ユミからの伝統の悪のカーリーヘアにしてみたかったんでしょうかね。確かに凄味が増しています。その後、松本もカーリーヘアにしていた時期があったので(似合わないけど)、ブラック軍団のシンボル的なヘアスタイルだったんでしょう。

 

 

試合開始と同時にベビーフェイスがブラック軍団3人をコーナーに縦に並ばせて、そこに特攻攻撃。いやいや、これって普通はヒール側がやりそうなんですが、相手にモンスターがいるので先制したかったんでしょうか。

 

 

ミミの蹴りが入った後、大森が特攻しますが、ここでデビルが脱出。それと一緒に松本も脱出です。ここで松本が壁役になっても良さそうですが、痛いのが嫌だったのか、モンスター1人を残して退散しています(^^;

ところがモンスターは、あの大森がぶつかってきても、それを跳ね返して圧倒します。

 

 

志生野アナ「大森ゆかり、本来は分厚い体をして大きいんですけれども」

志生野アナ「モンスターリッパーと比べると、大人と子供であります」

 

あの大森が軽々と投げられています。ここまでパワー差があると、どうしようもできない感じです。

そのあとにタッチしたデビル雅美も「ヒャーー」と奇声をあげながら大森にジャンピングニーパッド。相手を圧倒。物凄い迫力のブラック軍団です。

そしていよいよ松本にタッチ。松本も「コォンノヤロゥ~」と叫びながら気合のエルボーを飛鳥にかまします。

 

 

 

デビル(松本、お前はもうちょっと戦ってこい!)

 

志生野アナ「まず貫禄を示しておいて、それから一番若い松本香選手であります」

志生野アナ「2人の先輩の力を借りて、松本香選手、見せ場を作ることができるかどうかであります」

解説「やはりこの中では松本が一番力劣ちはします」

志生野アナ「しかし女金時という異名を取っておりますが、カワイらしいですよね、顔だけみてますと」

解説「あんまりカワイらしくはないですけどね」←ォィ

志生野アナ「いやいや、そんなこと言わないでくださいよ」

松岡「松本選手が小さく見えますよ、あのモンスターでね」

 

モンスターリッパーとデビルの攻撃が苛烈なため、松本としてはかなりやりにくいところですが、ここは頑張ってアピールしたいところ。

志生野アナからはまたまた女・金太郎と言われてしまいますが、「カワイイ」とフォローしているのがさすがですね。そのあとで解説者が「カワイくない」と失礼なことを言ってるのを、「そんなこと言わないでくださいよ」と否定しているので、志生野さんは松本が入門から苦労しているのを、ずっと見てきているんだと思います。

 

 

試合はモンスターリッパーの独り舞台の様相を呈してきます。このリフティングだけでも規格外なのが分かります。

ミミは50kgくらいですから、全く歯が立ちません。大森も飛鳥も同様にモンスターのパワーに押されっぱなしです。

 

 

 

松岡「大丈夫ですか? ライオネス、大丈夫? 」

 

飛鳥は軽々と放送席に投げ飛ばされています。その後追い打ちをかけられて、ヘトヘトになって戻ってきます。

 

 

大森もモンスターのギロチンドロップで、まさかの危ない状態に・・。デビルと松本がいなくても、モンスター1人で3人に勝てそうな感じの強さです。ジャッキー時代からモンスター・リッパーのパワーは驚異的でしたが、改めて見ると、もうめちゃくちゃです。

 

 

 

松本もストンピングで気合を入れた攻撃をしますが、比較対象がモンスターリッパーなので、どうしても迫力に欠けてしまいます。このメンバーでアピールするのは、難易度が高い感じがしてきました。(^^;

 

解説「リングの板が良く壊れるんですよね、モンスターが来てから」

解説「だから今日、みんな新しい板に変えたんですよ」

志生野アナ「はぁ・・全日本女子プロレスの被害ですねぇ」

解説「全部割れちゃうんです」

志生野アナ「そのくらい桁外れの選手ですよね。考えられません」

解説「普通、割れないんですけどね。10cmくらいの幅がありますからね」

 

これ、本当なんですかね。板が割れるって、どんな規格外なんでしょうか。

 

 

このあともベビーフェイスがやられる、やられる。モンスター1人に、ミミも大森も飛鳥も、何もできずです。飛鳥はヘアホイップで数メートル吹っ飛ばされるわ、ミミは蹴りも跳ね返されるわ、ベビーフェイスは大変です。松本が「外人レスラーがおっかない」と話していたのはまんざらでも無さそうです。

 

大森&飛鳥 (やだ~、タッチしたくない・・)

 

 

松岡「お客様もあっけに取られて、シーンとしてみてますよね」

志生野アナ「そりゃシーンとしますよね」

志生野アナ「なにか勝負にならないですね、モンスターリッパーが出てくると」

 

モンスター・リッパーも凄いですが、それにハッスルしたのかデビル御大も絶好調。モンスターリッパー同様にリフティングからミミを叩き落として、ブラックが圧倒的に優勢です。

 

 

志生野アナ「なにか大森と松本は体型が似てまして、どっちがどっちだか分かりません」

 

髪形も体型も似てますね。

たまにタッチで出てくる松本ですが、かなり頑張っているのですが、デビルとモンスターがあまりに過激なので、どうしても見劣りします。

そんなこんなしているうちに、モンスターが飛鳥をバックブリーカーで一気に3カウントを取りました。

 

 

ベビーフェイスは何もできず。松本も何もできず・・って感じですね・・。

 

2本目

 

相変わらずモンスター・リッパーの破壊度が増していきます。飛鳥は顔面蒼白。

一本目はモンスターに美味しいところを取られてしまったので、今度はデビルが大ハッスルして大森を攻め立てます。

 

(どさくさに紛れて、大森に乗っかってアピールする松本。しかしデビルの視線が怖い)

 

 

場外乱闘となって、またもやデビルが大ハッスル。ここでミミは指をケガしてしまったようですが、デビルは悪役としてはピカ一というか、この頃は格好いいですよね。

 

さらにデビルは松本のお膳立てもしてあげます。松本が攻撃中になにやら耳打ちした後、松本に2段ローブからのヒップドロップを指示したようですね。

 

 

松本に見せ場を作ってあげるデビル。


この頃のデビル御大は松本にやさしいではないか(^^;

 

今度はベビーフェイスが松本を集中攻撃し始めます。

この試合、ベビーフェイスとしては、一番格下の松本を攻めるしか勝つ道はありません。

ここから壮絶な松本への集中攻撃始まります。

 

ミミがヘアホイップ*2 のあと、大森がショルダースルー2発をかまします。

 

志生野アナ「ミミ萩原も松本相手ですと何とかいつも真価を発揮するんですけど」

志生野アナ「他の選手が出てくるとどうしようもありません」

志生野アナ「さぁ大森ゆかり選手がでてきました」

志生野アナ「松本をなんとか標的に絞っていきたいところであります」

 

 

志生野アナ「ライオネス飛鳥、トップロープに上がっている」

 

飛鳥がトップロープからボディプレス。

志生野アナ「どうか、上からいった。次々に行く、ミミが行きました」

 

さらにミミがトップロープからボディプレス。

志生野アナ「三段攻撃!!」

 

トドメに大森がトップロープから大きな体でボディプレス。大森は体重があるのにトップロープから平気で落ちてきますからね。ここが同じような体型でも大森の凄いところ。

松本にとってはたまりません。

 

ベビーフェイスからの集中攻撃により、松本が一本を取られてしまいました。

というか、ベビーフェイスはこれしか、一本の取りようがないので仕方なしです。

 

 

マスクド・ユウと小松原(かな?)に腰と背中をさすってもらっています。

 

志生野アナ「なんとなく溜飲が下がりましたですね」

解説「デビルが怒ってますけどもね」

志生野アナ「これは不穏な雰囲気になってまいりました」

松岡「マスクド・ユウは木刀をもっていますね」

 

一体デビルは誰に対して怒りの沸点が爆発したのかよくわかりませんが、ベビーフェイスに散々文句をつけたあげくに、ゴングを待たずに3本目を始めてしまいます。

 

3本目

 

 

デビルが大森を圧倒し、モンスター・リッパーは一人でミミと飛鳥を喉締めで押さえつけます。

デビル→大森 モンスター→ミミと飛鳥 松本→相手がいない・・。

 

あれ、なんか松本が要らなくね?(^^;

 

心配していた事態が本当になってしまいました。

 

 

場外にエスケープしたベビーフェイスに対し、ブラッグ軍団はリング上から仁王立ち。なかなか上がってこないベビーフェイスに対してイラついたのか、デビルは木刀を持ち出して、狂乱ファイトが開始されます。

 

 

荒れ狂うモンスター・リッパーとデビル雅美。

 

 

松本はどこに行ったのか~と思いきや、いつの間にかミミと放送席でやり合っていました(笑)

 

 

試合はいつの間にかデビルが大森を体固めでフォール。

 

志生野アナ「なにかゴングが鳴りましたが、どうしたんですかね」

志生野アナ「デビル雅美が勝ったんですか?」

 

 

志生野アナ「なんという試合だったんですかねぇ・・」

解説「どういう結果になっているのか全然わかませんけど」

志生野アナ「場内は騒然、総立ちであります」

 

 

この試合、モンスター・リッパーのド迫力の前に、デビル自身も存在が薄くなる危機を感じたかもしれません。だから最後のデビルの狂乱ファイトに繋がったのかなぁ・・という感じがします。

モンスター・リッパーは日本人とは全く違う、肉食白人遺伝子のカタマリという感じで、日本人には真似が出来ない体格とパワーです。この中で松本に何かアピールしろ、というほうがムリ!!という感じがします。むしろ、この組み合わせはベビーフェイス側に、松本で一本取ってください、と言わんばかりの松永国松(?)マッチメイク側の意図を感じます。

このモンスター・リッパー、外人枠なので松本(ダンプ)にとっては味方になるのですが、3年後の再来日の時にタッグリーグで勝負することになります。

 

 

●モンスター・リッパー

 

 

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モンスター・リッパー
巨象モンスターがこの三月、1年2か月ぶりに日本にやってくる。目標はもちろんジャガー横田のもつWWWAのタイトル。 「ジャガー? リミ・ヨコタ? 彼女がタイトル・ホルダーだって? 歴史と伝統を誇るWWWAのタイトルは強い者が持つべきだ。あのタイトルに一番ふさわしいのは私よ。日本に行ったら必ず奪い返すからとリミにいっておいてよ」 十二月の国際電話でモンスターはわめきたてた。 

ミルドレッド・バークの秘蔵子として1978年に17歳でデビュー、同年秋新設のノース・アメリカン選手権を獲得。日本ではWWWAの王座をめぐって引退したジャッキー佐藤と死闘を展開、とくに同七月田園コロシアムでの血戦は、いまも語り草になっている。ジャッキー佐藤との対戦も通算4勝2敗1分とただ一人勝ち越している。
110を誇る重量と怪力。体重のわりにはビンショウな動きを使ってのパワー殺法は定評がある。 80年五月からメキシコに遠征、UWA系を主戦場に大暴れ、エル・トレオの定期戦に常時出場していた売れっ子。今回で七度目の来日だが「いま私に勝てる選手など日本に一人もいない」と豪語している。 本名 ロンダ・シング 1961年カナダ・アル バータ州カルガリー出身。170センチ、110キロ。 得意技 ダイビング・ヒップドロップ、アルゼンチンバックブリーカー、ブレーン・バスター、ハイアングル・ボディリフトバスター。
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