1983/4月 極悪同盟結成前の vsクラッシュの前哨戦 松本の奇襲攻撃の原型

AJWW 1983/4月 大阪府立体育会館 極悪vsクラッシュの前哨戦 松本の策略

ジャパン女子プロレスさんのYoutubeより

画像綺麗バージョン

(試合のみ切り抜いたものです。予備用です)

AJW 1983 04 大阪府立体育館 クラッシュvs松本・ユウリンクwww.youtube.com

 

 

今回は、ライオネス飛鳥と長与千種、そして松本香とマスクド・ユウがそれぞれ、クラッシュギャルズと極悪同盟を結成する前の試合、いわば1983年のプレ・クラッシュvs極悪の試合です。

1983年の時点では、ほぼ注目されないカードだったのでしょうが、歴史を振り返ってみれば、非常にプレミア感のあるカードです。

今回はその試合を楽しんで見ていこうかと思います。

 

(クラッシュの結成が1983/8/27と書いてあるので、時期的には松本が髪形やレスリングスタイルなどから、全日本王座を奪われた後なんじゃないかと推測しましたが、動画は4月と書かれていたので、1983/4月とします。間違ていたらスミマセン。)

 

この頃のデビル軍団は、首領デビル雅美の下にNo.2のタランチェラ、そしてNo.3のマスクド・ユウ、No.4の松本香という序列だと思うのだが、将来はマスクド・ユウのほうが期待されていたという話が、デラックス・プロレス85.7号に記事が書かれている。理由はマスクド・ユウがタランチェラよりも体重が重く、年が若かったから、という理由らしい。「デビル雅美がいつか引退したあとは、悪役のトップはマスクド・ユウになる」 これが当時の業界の見方だったらしい。

結局はトップヒールを目指すという欲が乏しかったYesマン的なユウは、松本についていけなくなり、脱落してしまうのだが、この時は誰もそんなことを考えていなかっただろう。(いや、ただ一人、松本だけは、その可能性を考えていたかもしれません)

 

さて、選手の入場です。

先に言ってしまうと、この試合はめちゃくちゃ面白いです。

何が面白いのかというと、後の極悪テイストが初っ端から爆発しています。

後に極悪女王となる、ダンプ松本のアイデアマンとしての稀有な才能が垣間見れる試合だからです。(他にも1983年には、このような試合があるのかもしれないが、同じような面白い試合は今のところ見つけられません)

 

さて、まずは長与千種とライオネス飛鳥の入場です。

 

志生野アナ「いま長与千種・ライオネス飛鳥が花道を通って入場であります」

志生野アナ「今日はマスクドユウ・松本香といった相手にどういったタッグ戦をするのか大いに楽しみです」

 

↓長与も飛鳥も試合に集中して何も考えていませんww ピョンピョン跳ね回ってますw

 

さて、ここで音楽が変わり、マスクドユウ・松本香の入場となります。

 

志生野アナ「さて、マスクドユウ、松本香の入場でありま・・おおっと!!!」

いきなり長与がズッコケて、画面の外に消えます!!

そして飛鳥もズッコケて、画面から消えますw

一体何が起こったのか、会場誰もわかりません。

志生野アナ「これはどうしたのか!? 」

 

 

 

志生野アナ「いきなり、あっ、これはこれは、あれあれあれ!?」

志生野アナ「いやぁ~~、どうしたんでしょうか!!」

志生野アナ「試合が始まっていないうちに、なにか松本の奇襲攻撃であります!!」

志生野アナ「いやぁ~~考えられません」

 

 

 

一息ついて

志生野アナ「客席の中に、松本選手がいたんですね」

宮本「いたんですねぇ」

志生野アナ「実はね、先ほどねぇ、松本香選手が客席の中にいまして

志生野アナ「おかしいなぁと思ったんですけど

志生野アナ「いきなりですね、花道を通って入場すると思ったんですけど」

志生野アナ「ハプニングであります。これは驚きました」

志生野アナ「奇襲攻撃を仕掛けました」

志生野アナ「お客様呆然としております」

 

 

この時点で長与も飛鳥も何がどうなっているのか分からず、取り乱しまくっています。

 

・・・客席の中にいたって、どういうこと!?

90kg近い松本とユウが客席にいたの!? さすがにみんな気が付くだろ!!と思うのですが、2人とも紺の上下のジャージをきてリングサイドのお姉さんみたいな恰好をしていたから、分からなかったみたいです。
 

ちなみに、私的には志生野アナのコメントセンスが素晴らしいです。

特にこの部分

志生野アナ「実はね、先ほどねぇ、松本香選手が客席の中にいまして

志生野アナ「おかしいなぁと思ったんですけど

 

いやいや、志生野さん、事前に知っていたでしょう!! だって、これから対戦する選手が、客席にいたのが分かっていたら、入場のしようがありませんからねw

 

ちなみにこの時点から1分ほど前の入場シーンに戻りますと、

 

 

左側の隅っこの赤枠のところに、ユウと松本が潜んでいるように見えます。(タランチェラかも?)

そして長与と飛鳥をイスに吹っ飛ばした後、画面右からジャージを脱ぎながらバタバタと走ってくる松本と、画面左で素早くジャージを脱ぐユウの姿が見られます。

 

正直、この時点ではドタバタコントみたいなのですが、このテレビ映えする面白い演出は後々、松本が極悪同盟を結成してから、亜種のようなパターンがたくさん出てきます。

 

 

私が思うに、この時点で松本とユウの勝利でしょう。

 

ここで間違えてほしくないのは、「勝利」というのは試合の勝敗自体ではなく、松本はこの試合会場で長与・飛鳥の人気コンビを上回るヒールでのインパクトを与えた、という意味で勝利なのである。

ヒールとしてはまだまだ(それほど観客からブーイングは起きていない)ですが、場外乱闘で放送席に長与を放り込んだり、かなり気合が入ったヒールぶりでした。

 

この桶狭間の戦いのような奇襲のアイデアは絶対に松本だと思います。間違っていたらすみませんが、ユウにはこんなことを考えないはずです。

このアイデア、何が素晴らしいかというと、この時期、まだ松本とマスクド・ユウがあまり有名でないという点を利用しているところです。なぜなら、極悪時代だったら客席にダンプ松本がいたら、さすがにみんなに気が付かれるでしょう。

 

それに池下、マミ熊野時代には、このような試合はなかったと思いますし、デビル御大に至っては、客席に潜むという、ある意味姑息なマネはプライドが許すはずがありません。

 

そうなのです。ダンプ松本はプライドを平気で捨てられる、これが強いのです。お高くとまったレスリングではなく、勝つためなら手段を選ばず、それだけの根性を持ち合わせています。家に石を投げられようが、ヒールとしての執念があるのです。だから試合にプライドしか掛けられない、そんな甘ったれがダンプ松本に敵うはずがないのです。(実際にダンプの竹刀攻撃がエスカレートする1985年以降はそうなっていき、長与千種以外はダンプとはあまり試合はやりたくない・・という感じになってきます。もちろん、レスリングのアイデンティティの違いもあるでしょうが・・)

 

後に覆面軍団5名をリングにあがらせたり、髪切りマッチのときにザ・ベートーベンに化けて覆面を脱いで奇襲したりしていましたが、その原点がこの試合にある、とも取れます。

いや、そんなに大げさなことではないかもしれませんが・・(^^; 私にはそう感じました。

 

ちなみに今回、松本とユウはお揃いの水着です。極悪時代は黒ベースの水着が多いですから、カラフル系のお揃いはこの水着だけなんじゃないでしょうか。

 

さて、この後なにがなんだか分からないうちに試合が始まり、長与と飛鳥のコンビは全くペースを掴めません。松本、ユウのコンビは長与を徹底的に攻撃し、場外でも暴れまくり、凶器を使うまでもありませんでした。

 

 

最後はユウがバックブリーカーで長与をあっという間にギブアップ。完勝です。

それにしても、試合後も収まりがつかない長与と飛鳥はミスター郭に向かって猛抗議します。

ギャーギャー喚く長与は、こういう場面でもやっぱり長与です。ある意味しょっぱいです。

このときの長与千種はまだ体が出来ていなくて、耐えられないのが残念です。あと1年ほど経過すると、このような状況でもなんとか耐えて、やられながらも飛鳥にタッチし、最後に逆転ということができるようになります。それが長与千種のレスリングになっていくのですが・・。

 

 

飛鳥「あんなの反則だ、反則!!」

飛鳥「ギブアップなんかしてねーだろ」

長与「してねーよ」

ミスター郭「お前が弱いから負けたんだろ」←爆笑

 

ミスター郭(松永健司)も言いたいこと言いますよねw

ブチギレの長与は、ミスター郭にソバットを喰らわしてウサを晴らしておりました。

こういう負けた後の長与の悔しがり方が、やはり長与の天性の素質です。

負けても、目立ってしまう長与。このときはそれほどでもありませんが、クラッシュ結成以後の1984年になるともう長与千種の負けっぷりは伝説と化します。

 

長与、飛鳥側も大エキサイトしたこの試合、本当に面白いですね。4人とも若くてパワーに満ち溢れています。


 

後にライオネス飛鳥と長与千種は、シュートスタイルで女子プロレスを破壊する「クラッシュギャルズ」という名前で呼ばれるようになりますが、この試合をみると、どちらがプロレスをクラッシュしているのか、松本のほうがある意味クラッシュさせているような気がしてなりません。

もちろん、クラッシュは「プロレス技ではなく、ケンカ殺法、シュートスタイルで相手を倒す」という点での革新性はありました。ただ、今見ると普通にプロレスをしているように見えて、そこまで革新的だったのかな、という感じはします。たぶん、当時流行った佐山や前田のシュートを真似たんだ思いますが、極悪同盟の反則技のほうがその上を行く革新性だった感じがします。それはまた別の機会に書こうと思います。なにしろクラッシュと極悪は表裏一体ですからね。