雑誌「アサヒグラフ」の女子プロレス特集です。
1983年のこの記事で「期待される第四世代の7人」とありますが、それは、ジャンボ堀、大森ゆかり、長与千種、ライオネス飛鳥、立野記代、山崎五紀、小松原浩美のようです。
山崎と小松原のヒールが入っているのに、
同じデビル軍団の松本とユウは無視か~い!!(^^;
松本とユウって本当に記者の目に止まらなかったんですね・・。
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「この野郎~~~」
「なんだよ〜〜っ、てめぇ、ぶっ殺さねてぇのかぁ」
「バツキャロー、なめんじゃねぇや」
いやはや凄いののしりあいだ。まるで縄を裂<ようなひきつった声が飛び交い、肉弾相撃つ鈍い音。敷き板の上にゴム板をのせ、シートをかぶせただけのリングと、白い女の肉体とが思い切リハデに衝突する音ガすさまじい。投げ飛ばされ、締めあげられてもだえる選手の荒い息遣いがリングサイドに伝わって<る。
女の戦いといったって、特別なルールなんかない。バストヘの攻撃だって、髪の毛の引っばり合いだって遠慮などあらばこそ。身につけているのは、ただの水着にレスリングシューズ。さすがにビキニとまではいかないが、このところ布の面積はせま<なる一方で、胸も背中もがら空きだ。試合中、肩のストラップやヒップのあたりのずれを気にするしぐさは、やっぱりオンナのもの。それがいいのデス。
なんともかたいガードなんです
選手はみなプロレスラーのごついイメージにはほど遠い。それどころか、なかなかの美人ぞろいだ。だからドタンバタンが激しければ激しいほど、えもい色気がただよってくる。体をかわされて、バストをしたたかリングに打ちつけたり、大股を聞いて暴れまくり、フォールを逃れたり。もしかすると プロレスの魅力のひとつは、人間の心の奥にひそむサディズムをくすぐることにあるのかも。
薄い水着がビリッときたら... でも、そんなハプニングはきわめてまれ。破れそうなところはちゃんと補強してあるし、 水着の下はガードルでがっちり守っているそうな。
女子プロレスは、いまが第三黄金時代なのだそうだ。といってピンとこない人も、マッハ文朱の名くらいはおぼえているだろう。歌にリングに大活躍して去った女丈夫である。それが 四十九年ころで、第一の黄金時代。
第二は五十三年ころで、ジャキー佐藤とマキ上田の「ビューティ・ペア」の時代だ。なにしろ当時、プロレスラー志望のハイティーンの女の子が年間数千人にのぼったというから、熱気がしのばれる。
そしていま、第三の黄金時代がやってきている。タイトルホルダーのミミ萩原を筆頭に、これも世界タイトルをもつジャガー横田、デビル雅美ら。
しかし、そのミミもすでに二十六歳。 ファイトぶりにもようやくかげりが見えてきている。 二十六歳という年齢は、二十歳前後というのが常識の女子プロレス界では高齢の部類に入る。フランス系スイス人の父の血を引き、芸能界からのレスラー転向という異色ぶりを売りまくっていた黄金時代、ジャンボ堀や大森ゆかりらの若い力にとって代わられ、新しい幕が開かれるどうか。それが現在の女子プロレス界の焦点である。
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プロレスを10倍楽しくみる知識は?
ところで、クソまじめな目にはプロレスなんてどこまでがホントなのかと映ってしまう。
あのお大げさなアクション。 逃げれば逃げられるのに、わざと相手の技を食って身をよじらせる苦悩のポーズ お決まりのリングサイドでの乱闘だってアトラクションのひとつじゃぁないのか。つまり、あれはどこまでもショーなのさ、というわけだ。
しかし、プロレスラーのチャームポイントは、ただ強いだけでなく、相手にやりたい放題やらせておいて、それに耐え抜いた末に勝ってみせるところにあるのだそうだ。
選手たちにきくと、最後のの勝負という一点では、いつだって 絶対譲れない、必死なんだと口をそろえる。ただ、勝つにしても負けるにしても試合の中に、ひとヤマもふたヤマも見せ場をつくってお客にアピールしなければ、早い話がゼニのとれる選手にはなれないんだという。
お客の目も肥えてきた。かつ 男子プロレスの力道山のように伝家の宝刀の空手チョップを見せれば、それでやんやの喝采というわけにはいかない。ぜひともウルトラCの技を出さなければ満足してはもらえない。ヤマをつくるためには相手との協力だって必要になってくる。
スペインの牛を思い出してみたらいい。 闘牛士がいきなり牛を刺し殺してしまったのでは客足は遠のいてしまうだろう。牛を怒らせるだけ怒らせておき、さんざん危ない橋を渡ってから仕とめるところがセールスポイントなのだ。プロレスにもこれと同じことがいえる。
それでも「なーんだつまらない」と思うか思わぬかは、あなた次第。もし、そんなかけひきに共感をおぼえるようになったら、プロレスが十倍楽しくなることうけあいだ。
普通の女の子の狭き門デス
いま女子プロレスラーの正選手は十三人。 彼女らが所属するのは、女子プロの興行主として全国でただ一社の全日本女子プロレス興行。東京・目黒に事務所をおき、社員十五人のミニ会社ながら年間三百日におよぶ全国巡業でざっと十億円の収入をあげる。
かんじんの選手集めは、テレビの女子プロレス中継のとき流すテロップに頼っている。条件は中卒以上で身長160センチ以上、それと両親の承諾が必要。ひところほどではないにしても、いまでも年一回のオーディション には千人近くの「普通の女の子」が応募してくる。
ほとんどは書類選考で落とし、 テストに残すのはせいぜい二十~三十人だが、最後まで残るのはそのうち十人くらい。全日本女子プロレスの松永健司専務は、「第一に足のバネなど、プロレスラーとしての適性。それに一発なぐられたら一発なぐり返す根性と見せ場をつくれるショーマンシップが必要」という。
かわいらしさやセックス・アピールはこのまったく関係ないということらしいが、そういうのもこっそり入っているんじゃないのデスカ。
こうして残った女の子も 実際にトレーニングが始まると、苦しさに耐えかねて一人去り、二人去りで、最終的には二人も残ればよいほうとか。
昨年五月にデビューしたばかりの小松原浩美もそうして残ったひとり。中学・高校を通じてあらゆるスポーツに手を染め、スキーと水泳ではインストラクターり資格をとるといったスポーツ・ウーマンぶりで、「ゴルフでもプロになれた」ほどの腕の持ち主だったが、結局「なにをやっても物足りなくて」横浜市鶴見での魚の販売業を営む両親の大反対を押し切り、この道に飛び込んでしまった。
「同世代の女の子が楽し気に遊んでいるのを見て、痛くて苦しいこんな仕事やめたくなったことが何百回あるか知れない。でも大きな技が決まって、お客さんが大喜びしてくれたときには、そんなこと忘れてしまう」
と目を輝かせる。二十五歳くらいで引退したあとは、調理師の免許をとって小料理屋を開くのが夢だそうだ。
意外や意外 ナントナントなのデス
選手達の収入は小松原のように前座をつとめる最初の一年間は月給制だが、その後は一試合いくらのファイトマネー方式だ。強くても人気のない選手は低くなるし、逆に弱くてもお客を集められれば高い額が保証される。マッハ文朱やビューティ・ペアの場合、年間二千万のファイトマネーが約束されていたというが、現在はミミやジャガー横田の女王クラスで一千万円をやや上回る程度という。ついでに明かすと、まだファイトマネーのもらえない小松原の場合、月給はやっと10万円ほどである。
人気商売の選手たちのこと、リング外の生活もさぞかし・・・と勘ぐったとしても無理はないが、これが意外。酒、タバコはもんろん、男性との接触はおろか、交際すら許されていないというストイックな生活ぶりなのである。
酒とタバコの禁止はわかるにしても、若い彼女たちが男友達のひとりくらいほしくいはずはないが、「男ができると集中心が薄れ、リングでのケガにつながる。プロレスは恋のかたわらにやれるほど甘くない」というのがマネージャの説明だ。
恋人どころではない。カゼを引いたって、ねんざしたってリングを休むわけにはいかない。少々の骨折くらいなら、サポーターをきつく巻いてリングに押し出されてしまう。
やっぱり「普通の女の子」には縁遠い世界らしい。
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