1983/11月号の「主婦と生活」に女子プロレスが特集されましたので、引用してみます。
前半を要約すると前半は1983年代の女子プロレスの光景。
ダンプが「燃えなかった」という主婦や家族が観客の頃のプロレス時代の話が語られています。
後半はジャガー、デビル、ミミがそれぞれどのように女子プロレスを感じているかが書かれています。
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WWWA世界タイトルマッチ観戦記
いま、もっとも強い女二人のピストルマッチ
「フッ飛バセー」
「もっと、ヤレー」
「そこだッ。ヤッチマエー」
九月七日。横浜文化体育館で、女子プロ レスの最高位、WWWA世界チャンピオンを賭けた試合が行われた。六千数百人が入 れる会場はほぼ満パイで、ファン層は五、 六年前、女子中高生でいっぱいだった時代 と違って幅が広い。中年男性や学生、それに男女にかかわりなく中高生やチビっ子たち の姿も多い。そんなファンの声援が大きなうねりのように、試合中、会場を飛び交う。 意外だったのは、主婦のファンが数多く見られたこと。夫婦連れで来て、「キャーッ、そこよう。フォールしてー」 と、黄色い声をハリ上げている主婦がい た。小五と小二の二人の女の子を連れた主婦 もいて、
「上の子は、ジャガー横田、下の子はデビ ル雅美のファンなんですよ。お父チャンは 見向きもしないけど、わたしは子供につら れて、すっかりファンになってしまいまし た」
と試合を横目で見ながら話してくれる。さらにー。
「わたしはスナックをやってるんだけど、 亭主がからっきしだらしないんで、一人でがんばってるのよ。だからっていうか、女が体を張って戦ってるのを見ると、スカー ッとするわね」
という水商売との兼業主婦もいる。 女子プロレスのどこが同性の女たちをとうまで熱狂させるのか? 横浜文化体育館 での試合を振り返ってみよう。
まず、チャンピオンのジャガー横田 が赤いバンドのついた粋なシルクハットを かぶって現れた。コスチュームも赤と黒の ツートンカラーだ。ファンの拍手と声援に こたえて、コスチュームをサッと脱ぎ捨て る。頭は極端なショートカット。というのも その後、取り戻したが、五月のチャンピオン戦で覆面外人レスラーに敗れ、ザンギリ頭にされてしまったから。勝てば相手の覆面をはぐ約束だった。そして、コスチュームの下から、身長一六〇センチ、体重五六キロの引き締まった体が現れた。体の サイズは並みの女性とそう違わないが、腕や太ももの筋肉のつき方がまるで違う。 挑戦者のデビル雅美は、一週間ほど前、 本誌記者に、「この試合に勝ってチャンピオンになり、 満足したら、あと一年でレスラーをやめるかもしれません・・・・」と、語ったものだが、夜叉面をつけ、白無垢の打ち掛けをまとっている。若手レス ラーの肩車にのってのサッソウたる登場 だ。女子プロ一の怪力の持ち主で、身長一六八センチ、体重七八キロ。チャンピオンより一回りも二回りも大きい感じがする。 ゴングが鳴った。"華やかジャガー 団"のトップレスラーで、「最強の闘争者」と呼ばれるチャンピオンと、"鉄の団結デビル軍団のドン"、そして、「燃える悪の女王」の異名をとる挑戦者は、闘志に燃えてにらみ合う。その後、あらゆるテクニックを駆使した激しい戦 いがつづいた。ドロッ ブキックジャンプ、逆エビ固め、逆さつり天井。さらに、ジャガー横田が得意とする体を回転させながら尻をぶち当てるローリングボディブレスがつづき、デビル雅美 は相手を頭上にかかえ上げ て投げつける、ハイアング ル・ボディリフトバスターで対抗する。
両者ともに、ギブアッブ、そしてフォール直前と いうシーンが何度も繰り返される。そのたびに、数千の観衆の声援と 怒号がウオーッと館内に響く。勝負は、一 転三転。ゴングが鳴り、三十八分二十六秒で、チャンピオン、ジャガー横田のフォール勝ちで終わった。
ニコリともせず、両手を高々と上げて、 六メートル四方のリングの上をはね、ファンにこたえるチャンピオン。そして、判定に不服なのか、主催側につっかかり、 「引退してやる!」と絶叫する挑戦者のデビル雅美。 「この試合は正真正銘のピストルマッチですよ。というのは、演技やショー的要素の まったくない試合ですね」(スポーツ紙女 子ブロ担当記者)
ってことだから、デビル雅美のくやしさ もわかろうというものだ。
さらに、プロレスマニアの本誌カメラマンも、「ウーン、見ごたえのある試合でしたね。どっちが勝ってもおかしくなかったもの。 女子プロレス史上に残るベストバウトじゃ ないかな」
と、賛辞を惜しまなかった(!?)ほどの 名勝負であり、激しい肉弾戦だった。
男子プロレスより 華麗でスピーディ
かなり本気なのが魅力 ストレス解消にも
「女子プロレスは、男のやるのよりも、ズ ッと華麗でスピーディですね。それに、試 合展開の意外性もありますからね。アントニオ猪木なんか、いくら過激なプロレスと はいっても、チャンとショーになるよう、 頭で計算してやってますよ。女子の場合は、生理からくるのかどうかわかりませんが、 途中までレールが敷いてあるなと思っているとたんに、本気でやり合いますからね」
日本で女子プロレスが始まって、来年で三十年目を迎えるが、これはもう十数年も 女子プロを見てきた五十がらみのファンの見方である。ちなみに、この中小企業経営 者のファンは、いまやいつも二階の一般席から楽しむそうだ。というのも、そのほう が試合をトータルに見られるし、リングサイドからのサインで選手が動いている様子もわかる(この点については確証はないそうだ)とつけ加える。
本誌記者とカメラマンも、こういう女子プロレスの魅力を見、ファンの声を聞くた めに、横浜会場での試合の一週間ほど前、 京都、大阪での巡業ツアーに同行させても らった。
どちらの試合も、ショッピングデパートの駐車場で夕方六時半から開かれた。「小学生のころからのファンよ。ジャッキ 一佐藤やマキ上田が活躍してたころからのね」というビューティーペア全盛時代の名残ともいっていい宝塚的ファンの女子高生の連れも少なくない。が、いまや、こういうファンは少数派で、むしろ目立つのは、主 婦が多いってこと。しかも、皆さん堂々と 見てるし、特別リングサイドに陣どってる 人もいる。ちなみに、この席は後楽園ホールでの試合の場合、五千円(一般席は二千円)で、財布にひびかないのか、人ごとながら心配になったりする。
試合が始まる。水着を着た女子プロレス ラーたちの戦いは、過激を売り物にする男子プロレス以上に過激だった。
「テメェー、コノヤロー」
「コラ起キロップッ殺スゾー」
などという言葉がリング上を飛び交う。 二人の外人レスラーがアメリカから参加しているが、痛めつけられると、
「イタイタッ助ケティー」 と叫ぶ。
さらに、体重八八キロの松本香や、覆 面悪役レスラーで、体重八五キロのマスク・ユウが相手にもろにぶつかると、
「バシッ」
という音が聞こえ、相手はフッ飛んでしまう。
WWWAタッグ・チャンピオンのジャンボ堀と大森ゆかりはパワーを、ライオネス飛鳥と長与千種は若さに満ちたスピーディ な動きを見せてくれる。あべ静江と同期で芸能界に入り、その後プロレス入りしてい まやオール・パシフィックチャンピオンのミミ萩原は、白い水着で華麗に舞う。
試合の合間に、デビル雅美とミミ萩原の 歌も織り込まれるが、ビューティーペアの 時代と違って、これはまったくの付属物。 ファンは、プロレスそのものの魅力に酔い しれる。
女子プロレスにつきものの(!?) お色気 については、
「芸能人にありがちなチャラチャラしたの と違って、なんていうか、キリッと引き締 まった女性らしさが魅力ですね。健全なお 色気を持った同士がバシバシッとリング上でぶつかるのは、たまんないですよ。エ ツ、SM? まっ、髪を引っぱったり、ヒップをぶつけたりと女性特有の荒わざはありますけどね。そこまではねェ」
とは、ある中年のサラリーマン氏。これが旦那族の一般的見方だろう。精悍な表情をくずさないジャガー横田、きゃしゃで女ら しいミミ萩原、ボーイッシュなライオネス飛鳥、空手二段とはいえ、まだどこかに少女らしさを残してい る長与千種 記者の目から見 ても、どこか甘ったるい芸能界 の女の子たちと違った、健康な エロチシズムが感じられたもの だった。
では、幼児を迷子にして熱狂する人もいるほどの同性の主婦 はどう見ているか? 「やっぱり、スカッとするのよ ね。ホレッ、夫婦ゲンカをして、茶わんを投げたいときがあ るでしょう。そのかわりになる」
という三十八才の主婦もいれ ば、
「主人も子供もそろって、みな女子プロのファンなんです。わたしはデビ ル雅美、主人は長与千種、子供たちはミミ萩原と、それぞれ好みが違うんです。でも、ワイワイガヤガヤ、どの選手がいいかなど話し合ってるんです。親子の交流にな ってると思いますよ。ええ、親子間の断絶なんてありませんね」
と中二と小五の二人の男の子の母親でも ある主婦は、女子プロに感謝の様子。
かなりの本音部分で、肉体をぶつけ合う 女子プロレスラーたちの試合は、「これはダメ。あれもダメッ」と規則ずくめの世の 中で家族を見守っている主婦たちにとっ て、大いにストレス解消になっているって ことか。
さらに、女子プロレスにかぎらず、親子ので話せる話題が一つでもあれば、家族の 危機を救う手だてになる、ともいえようか。
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"禁酒、禁煙、禁男" の厳しいおきて
一日六時間の 猛練習、外出禁止 の寮生活
いま、女子プロレスラーは、今年三月に オーディションに受かった六人のタマゴた ちも入れて、全部で十八人。平均年齢は、 十八、九才という若さだ。
こういうレスラーたちが、どのように育ち、そして、どんな生活をしているか、見てみよう。
まず、毎年、二~三月にあるオーディシ ヨンに受からなくてはならない。資格は、 身長一六〇センチ以上、年齢は十五才から 十八才まで(したがって、ほとんどの選手は中学卒か高校中退ってことになる)、 親の承諾書があることなどだ。
「オーディションでは面接、基礎体力テスト、水着審査をやるんです。今年は九十人ほど受けました」(全日本プロレス興業広 報・小川宏氏)
ということだから、競争率十数倍のかなり狭い門だ。ちなみに、プロレス通によると、あくまでもショーだから、かわいらしさも加味されるという。
その後、一日六時間の練習をこなさなく てはならない寮生活が待っている。約五万円の月給が支払われるが、ブリッジ、受け 身、縄とび、ロードトレーニングと、ハー ドなスケジュールだ。そして、三か月後の プロテストを通ると、一人前のレスラーに なる。なんか安直に育っていく感じがしな いでもないが、その後の自己管理がシッカ りしていないとダメになってしまうから、 逆にコワいともいえる。
まず、"禁酒、禁煙、禁男"のおきてが ある。さらに、今年になってケガ人が出たことから、花火も禁止された。
「そのうえ、外出禁止ですからね。遊んだ経験のある子は、三か月も耐えられません よ。巡業先で、宿泊先からの夜逃げなん て、よくありますね。相手は年端もいかないっていうか、年ごろの子たちでしょう。 必死になって、捜すんですが、十日後に親元にいたりしましてね」
と、全日本女子プロレスの松永健司専務取締役は、リング上の華麗さの裏に隠されたエピソードを話す。
そして、男。これに違反すると、即座に 追放処分になるという厳しさだ。つい最近も、そのためにクビになったエース級の選手がいるという。ある選手が語っている。 「男ができると弱くなるのね。というのも、 わたしたち、旅が多いでしょう。で、会えないもんだから、相手の男が浮気してるん じゃないかって気がかりで、巡業先から電話をかけたりして落ち着かないの。仲間だから隠してあげるけど、やっぱり負けはこむし、バレるしで、ダメになりますね」
男の世界、主にボクシングなどでは、 勝負の前のセックスは是か非かが論争の的になっている。女子プロの場合、この選手のいうとおりだと、セックスそのものうんぬ んよりも、相手の男に会える機会が少ない ので、浮気しているかどうか不安になってしまう心理的負担が大きいということなの だろう。
こういうタブーの中で、旅から旅へ、 年間三百二試合(昨年度実績。今年は二百八 十~九十試合の予定)をこなさなくてはな らない。男のプロレスでも、二百試合ある かどうかだから、そのハードさがわかろう。
というもの。そのため、生理日も関係なく 戦わなくてはならない。
「やらなきゃ食べていけませんからね。やはり生理だとだるかったりするんですが、 やってるうちに燃えてきますから・・・・」 と、マスクド・ユウは話してくれた。 前出の女子プロレス担当記者が、さらに つけ加えて話す。
「年間三百試合ってことは、ケガをしても 治す期間がないってことですよ。だから、 選手生命が短い。六年前のビューティーベ アの時代の十人の選手はいま一人も活躍してないし、チャンピオンのジャガー横田にしろ、チャンピオンになって、まだ二年半 ですからね。五年後の現役として残る歩どまり率は、十人に一人ってとこでしょう。 ダメだとスパッと切られるし、うまくても 人気が衰えたら、ギャラは下がるし、非情な世界ですよ」
ミミ萩原など、レコードの印税収入があ るので、年収一千万円を超えるというが、 他の選手のギャラは、ジャガー、デビルの クラスで一試合三、四万円。中堅クラスで一、二万円といったところ。ハードなわり には経済的にそう恵まれた仕事といえな い。その分、よっぽど戦うことが好きでな いとつとまらないワケだ。
宿舍訪問インタビュー
人気者レスラー たちの生活と 人生設計
巡業先では、夜の九時どろ、試合が終わ る。そして、宿泊先に戻るころには、もうすでに十一時になっている。大阪での試合 のあと、富田林にある選手たちが泊まって いる旅館を訪ねてみた。
若手たちが、お茶をついだり、ご飯を盛 ったり、かいがいしく立ちまわっているな かで、彼女たちは食事をしている。外人レスラーも上手にハシを使っていた。という ことは、和食だったが、料理はずいぶん残 っていた。それほど大食漢ぞろいというワ ケではないらしい。
そして、意外なことに、善玉のジャガー 軍団と悪役のデビル軍団が仲よく話し合っ ている。まあ、最近は悪役になりたがる選 手が多いとかで、軍団の対立は、あくまで もリング上のことと見たほうがよさそう。 では、一人一人の女子レスラーは、何を考え、どう戦っているのか? その"素顔"ってとこだが、六人の選手たちにイン タビューしてみた。その中からいま人気の三選手に登場いただこう。
「プロレスやめたら・・・、二十五になって もいいから結婚ですね」(ジャガー横田)
プロレス入りして、七年目を迎える。 「最初のうちは、落ちこぼれ」(女子ブロ レス担当記者)だったが、持ち前のガッツ と根性で五十六年二月、ジャッキー佐藤からWWWA世界チャンピオンのタイトルを奪った。
--プロレスの世界に入ったきっかけは なんですか?
「とくにあこがれとか、そういうのはなか ったんです。中三のころ、テレビで見たと き、バッと『人とは違って変わったことをやってるな。わたしに向いてるんじゃない か』と思って、オーディションを受けまし た。姉さんは結婚が早くて、子供もいて、 平凡な生き方をしていた。大変だなとはわかるけど、自分に向いていないし、自由が ないでしょう。そんなことも、きっかけになってると思いますね。いま、自分に向いてる世界に入って、サイコーによかっ た、と思っています。大変だが、やりがい があるんです。これが一番で、サイコーの 試合ってのがないし、いつまでも登りつづ けていけますからね」
--でも、いろんなタブーっていうか、おきてがあって窮屈でしょう?
「禁止してないと、ズルズルになってしまうので、あってもいいんじゃないですか。 イヤになったらやめたらいいんだし、ふつうと違うことをやってるので、いろんな禁止がないのはぜいたくじゃないですか。男 にしろ、『会いたい、会いたい』と思いつづけてるような人がいたら、そのレスラー は負けで、やっていく価値がない。女だか ら燃えれば、どっちをとるかってことにな るでしょうけどね。男の人を好きになって、 やめていった人は、たくさんいますよ」
--いまというか、まだ二十二才ですね。 プロレスをやめてからの人生は、どう描い てますか?
「こんなふつうでないことをやっていて、 他のことに通用するとは思ってませんから ね。事業やるんだったら別だけど、むずか しいでしょう。理想としては、年齢的に二十五になってもいいから、結婚ですね。奥 さんのやるようなことは、いまはなんにも できませんが、心構えさえシッカリしてれ ば、食事の味つけにしろ、できるようにな ると思ってますね」
--好きなタイプの男性像は?
「清潔感のある人ですね。というのも、わ たしって、ハンパじゃなく、ヘンなところで妙に神経質ですから・・・・。目に見えるところはきれいでないとダメっていうか、机が曲がってたり、ゴミがあったりすると、 チャンとしますしね。それに、縁起をかつぐためもあって、スラックスやシューズは 必ず右からはくんですよ」
これは、女子プロレスラー全体にいえる ことだが、同じ年代のOLや女子学生に比 べて、シッカリしているという印象を受け る。限られている狭い世界とはいえ、必死 に生き抜いているからだろうか。そういう 印象を彼女にぶつけると、
「十五才で社会に出て、いまキャリア的に いちばん上ですからね。引っぱっていかな くちゃいけない部分がありますからね。で も、内面はまだまだ子供の部分があるんで すよ」
という言葉がハネ返ってきた。
彼女たちのプロレス入りしたきっかけや 生き方、考え方はさまざま。さらに、イン タビューをつづけた。
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「同世代の女の子? もっと自分自身の考 えを持ってほしいですね」(デビル雅美)
「見てくれだけでいうと、郷ひろみタイプ が好き」という二十一才の悪役レスラー。 とはいえ、日常の生活は、ジューズ入れなどの小物とかガウンを作ったりするのが趣味 という物静かな女性である。北九州市の女子高(商業科)にいたことがあり、珠算の 腕前は一級。
--悪役だといろいろ大変でしょう?
「昔と時代が違いますからね。ファンにイヤガられたり嫌われたりするワケじゃない んです。そんな区別はないし、役割ってい うか、ルールはルールとして割り切ってい ます」
―長与千種選手と同居してますね。口さがない男たちは、"レズラー"とかいっ て、レズ集団じゃないかと見てる面もある?
「彼女のことは、親から預かったカタチで すし、もうすぐ出ていきますよ。まわりに女しかいないから、親しく話していたりす るだけで、そう見られるんでしょう。SKDにしても、そうだけど、そんなふうに見 られるのは、不思議だし、心外なんです」
--同年配の若い子を見て、どう思いま すか?
「同じヘアスタイルで同じような生活をしてるような気がするんですね。しかも、親からおカネもらってぜいたくして・・・。どんな親も楽しておカネを稼いでるワケじゃ ないでしょう。もっと自分独自の考えを持 つというか、自立してほしいですね」
―プロレス入りのきっかけとか、今後 のことは?
「なりたくて、なったんじゃなかったんです。でも、高校時代、友人、こづかい、先生、家族のことと何一つ不満のない生活に 満足していて、ここから抜け出して変わっ たことをやってみたいってことはありまし たね。やりだしたら負けず嫌いで、やりつづけないとイヤな性格でしょう。いつの間 にか六年たってしまいました。結婚は絶対 したいけど、あせってする必要もない。ジ ックリといい人をさがしますよ。それに、 母と小料理などの小さな店を持とうという 話がありますけどね」
年収は約五百万円。しかし、「ガウンとか 水着は自前で、貯金はありませんよ。OL のほうが、いいんじゃないですか」という。
「デビューは負けつづけ、見返してやるん だという意地でやってきた」(ミミ萩原)
芸能界からプロレスの世界に入って六年 半ほどになる。オール・パシフィックチャンピオンで、女子プロでは最年長の二十七 才。しかし、「これからの十年間も、体にムチ打ってでもつづけたい。どうしても頂点につくまではやめられません。結婚には、 十代のころ、あこがれてましたが、いまは、 四十、五十才になってもいい人がいた ら、という心境ですね」と、五八キロ の体に闘志をたぎらせている。
--最初の一年間、負けつづけだっ たとか?
「そうなんです。三勝九十七敗という不名誉な記録を残してるんです。前座試合に出ると、ファンは、『負けてもいいぞッ』っ て拍手をしてくれる。それはいいんだけ ど、『芸能人上がりで、そのうちにいずれ 歌でも出すんだろう』といわれましたね。 チャンピオンベルトをとるまではやめな い、見返してやるんだという意地でやって きたようなものです」
--そういうやっかみっていうか、ジェ ラシーは相当あるんですか?
「大奥か女子プロレスかっていわれるくら いですからね。足の引っぱり合いは相当な ものですよ。ベルトをとったあと、歌をつくって出したら、『なんで、ミミさんばか り、そうなるんだ』というんですね。リン グ上では、ケガをしないように腕の折り方に限度があるんですが、事故に見せかけ て、その限度以上にワザとやる。よってたかってフクロダタキにあい、十数回、救急車で運ばれました。芸能界では下手でもカネがあれば、登っていける。しかし、この 世界ばかりはそうもいきませんしね。生き 残って勝つには、実力をつけて、ゆるぎな いものをつかんでいくしかないんです」 彼女は十二才のときから三年間、スイス のカトリック系モンセジュール校に留学し た。全寮制だった。「日本に帰ってこれな くて、自殺したいと思いましたね、何度 いまになったらいい経験になってます けどね。もし、子供ができたら、そういう 経験させてみたい、と思ってるんです」と いう。死ぬほどのつらい思いが、いまの彼 女を支えているといえよう。
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女子プロレスラーといえば、なんとなく いかめしいが、彼女たちは特殊な職業に就いているとはいえ、ふつうの女性らしさも あわせ持っている結婚前の女性である。ち ょっと古めかしいいい方でいうと、「妙齢の女性」の集団だ。そして、"第二の人生" という未来が待っている。あまりいい例で はないが、かつてのスター、ジャッキー佐藤は、挫折を味わっている。
「二年半前に、ジャガー横田に敗れて引退 しましてね。まだまだ充分に実力はあった んですが、それまで王座を守ったプライド というか、女の意地から、ギャラが下がる のがガマンできずやめていきました。その 後、五反田でジャズダンス教室を始めまし たけどね。取り巻き連中に、貯金をむしり とられて失敗しましたね。五、六千万円の 貯金があったんじゃないですか」(前出・ 松永健司氏)
いま、六本木にあるゲイレズバーで働い ているという。ともあれ、女子プロレスラ ーたちは負けず嫌いだ。
「自分は強いものが正義と思ってるんで す。ちっちゃいころ、しょっちゅう、『女 の子のくせに・・・』といわれつづけた。だ からこそ、強くなりたいんです。女の子が できることって限られてますからね」とい う長与選手の言葉に代弁されるだろう。
こういう負けず嫌いから、彼女たちは、 平和すぎて平凡な日常から飛び立って戦 う。彼女たちは、ハングリー精神からカネ を求めて戦っているというよりも、ほんと うに戦うことが好きなのである。
最近、増えている主婦層のファンも日常 のつまらなさもあって、ストレス解消のた め、リング上の"戦う女戦士"に熱中する。 試合場は、選手とファンのレベルは違うに しろ、そういう日常から離れた、まさに筋 書きのない劇的なドラマの場所である。
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色々と知りたいところがあります。「男関係でクビになったエース級の選手」というのは誰なのか。ミミをぶっ壊してくる先輩レスラーって、やっぱりあの辺の選手?? ってのいうも気になるし、デビルがこの当時で年収がたった500万程度ってのも本当なのか気になります。
ダンプの場合、最高で年収6000万とぶるちゃんねるではなしていたので、額が全然ちがいます。クラッシュブームの凄さ故でしょうが、これだと同じヒールだったデビルが嫉妬するのも無理もないかなと。(^^;
またデビルと長与って同居していたんですね。だから凄い仲が良かったのか、というのも納得しました。