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きら星のごとき女子プロ界への入門案内
全日本女子プロレスでは、男子のように体が大きいとか力が強いといった理由で選手をスカウトすることはない。 素質があっても好きでなければとても 務まらない世界なのだ。だから入って来るのは、三度のメシよりプロレスが好きという女のコ。毎年2~3月にオ ーディションを行い、体力、ルックスなどを審査して選抜する。資格は身長 160cmを超え中卒以上18歳まで。つまりごく普通のコでも努力次第で選手にな れる。ちなみに今年は90名の応募で合格者は7名。
バスに揺られて全国行脚。疲れるのよネ~。
女子プロレスラーという仕事は想像以上にハードだ。一人年間300試合、そ れも日本全国を旅しながらこなさなければならない。移動はすべてバス。 地方転戦は長い時で2か月にも及ぶから彼女たちはバスに家財道具一式を積み込み、この中で暮らす。夜遅く試合を 終えて、そのまま夜行で次の会場に向かうこともざら。いくら冷暖房完備で乗り心地抜群の大型バスでも、かなりシンドイのである。そんな女たちの泣き笑い旅を紹介しよう。
リングサイドは、お触りバーではござらぬヨ。
「ファンの大多数が純粋にプロレスを見に来てると思いたいけど、中には私たちの体を触るために来るいやらしいお客もいるのよ」と憤慨するのは長与千種さん。 選手入場の時、励ます振りして胸をペタペタ。場外乱闘の時、逃げる真似してオシリナデナデ。 こんなヤカラがどの会場にも4~5人はいるそうだ。 「ひどいのになると水着の中 にまで手を入れてくる人がいるの。大抵は無視してるけど、あんまり悪質だと得意の空手攻撃でのしちゃう」(長与さん)。いくらエキサイトしたからって 勘違いもはなはだしい客もいるものだ。ファンといえばプレゼントがつきも のだが、選手はぬいぐるみのような物はあまり喜ばない。かえってタオルの ような実用品がありがたいとか水着を贈ってもいい。気に入ればリングで着ますとのこと。
●緊張感漂う移動バス 安らぎの場所であるはずのバスでも若手は気を抜けない。座席は年功序列。若くなるにしたがって後ろへ行く。つまり若手は乗り降りの際、大先輩の脇を通ることになる。こんな時、先輩の機嫌が悪いとちょっとしたことでも注意されるから、常に緊張しなけれはせならないのだ。
●新人の就寝時間は深夜3時 試合を終え合宿所に戻ると大抵12時近く、選手たちはこのあと食事と入浴をして寝るだけだからいいが、新人は先輩たちのコスチュームなどを洗濯しなければならない。洗いが終わるのは深夜の3時。起床が7時だから眠くて大変。
●出身地の近くで試合があるとウキウキ 先輩も気を使って自由時間をくれる。昔の友達に会えるのが嬉しいのだ。
女子プロ選手の日常は"禁酒、禁煙、禁男"なのであります。
恐ろしき掟ではある。 酒やタバ コをやるとスタミナ不足につながるか ら、これは理解できるが、加えて禁男とは徹底しておる。まァ、くんずほぐれつ の激しい試合だから、"恋などしていたら羞恥心でかける技にも迫力がなくなる”というコーチ陣の親心なのだろう。 さらに素肌を人前にさらさねば、できぬ仕事。かりに前夜のキスマークなんが消滅しなかったらリングにも上がれぬ。もっとも、毎日のように試合がある彼女たち、彼氏を見つける暇などない。たまの休みもたまった洗濯物を洗うとか、試合でほころびた水着を繕うなど色気とは一切無縁の生活なのだ。 外出したときもディスコなどには行かず、目指すは食べもの屋。色気よりも食い気が常に先行する。 女子プローの大食漢といわれる大森ゆかり選手などは夏バテで食欲がないといいながら、 カツドンを5杯も平らげたそうな。
意外に少ない年収。トップクラスでも800万円
選手の収入は1試合いくらで計算さ れる。別に“観客の入り”とは関係なく、 実績や人気、試合内容などを考慮に入 れて査定された額が支払われる。ミミ、 ジャガークラスで一試合3~4万円。 中堅クラスで1~2万円といったとこ ろ。これほどハードな仕事でこの収入、 若干安い気もするが、選手たちは「好きなことやってるんだから」とあまり不満はなさそう。ついでだが今年入った新人(合宿中)は月給制で、約5万円。
君たちはそれで我慢できるか! 汗と涙とアザだらけの日々
格闘技を本格的にやったこともない 普通の女のコが、プロレスの荒技をこ なすようになるのだから、その練習は相当に苛酷だ。 一番大変なのは新人。朝6時に起床すると、まず20kmのロー ドワーク。 朝食の後、午前10時から2 時間、腹筋、腕立て伏せ、バーベルなどでのウエイトトレーニング。午後は2 時から7時まで受け身、ブリッジなど レスリングの基礎をたたき込まれる。 1日8時間、練習また練習の日々だ。 そして筋のいい者なら3か月程で勝敗に関係ないエキジビションマッチに出場。 実戦経験を積みながらデビューを待つ。試合に出られるようになれば、 後は本人の頑張り次第。 女のコなら恋に落ちたい年頃なのに、ひたすら訓練に励むのは、やっぱり輝かしいスターへの道が開かれているからなのだ。
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ミミ萩原とデビル雅美は歌でも東西両横綱
女子プロレスの更なる楽しみは、き らびやかな衣装で行われる歌謡ショー。 根っからのプロレスファンの間では邪 道との声もあるが、華やかさが売り物 女子プロ。いいではありませぬか。 前半戦と後半戦の休憩時間を利用した ショーで歌っているのは、現在、ミミ萩 原とデビル雅美。片やポップス調の「セ クシー・IN・TH E・NIGHT」。片や演歌調の「燃えつきるまで」と歌でも対照的なお二人だ。なお、女子プロ歌手第一号はマッハ文朱。50年に発売した「花を 「咲かそう」が最初のシングル盤。この曲のヒット以来、7年間に選手たちの 出したレコードはなんと2枚。中でも ビューティペアの人気は異常で、3年 足らずの間にシングル6枚、LP6枚 を出し合計20万枚を売った。プロの歌手顔負けの数字だ。しかし、歌の練習 本業のプロレス優先のため、レコー ディングの前に少しやる程度。歌手だ ったミミはともかく、デビルもなかなかやるもんです。
リング上と私生活は別。ミミとデビルは実は大の仲良しというお話
プロレスに欠かせないのがクリーンファイトを身上とする正統派レスラーと悪役の対決。悪役はいかにも憎々し げに振舞い反則を連発。怒った正統派は反撃に転じて最後には勝利を得る、というのが一般的なパターンだ。 これ女子プロレスも同様で、正統派の「花やかジャガー軍団」(ジャガー横田、ミミ 萩原、ジャンボ堀、大森ゆかり、ラ イオネス飛鳥、長与千種、立野記代) と悪役の「鉄の団結デビル軍団」(デビル雅美、タランチェラ、マスクド・ユ ウ、松本香、山崎五紀)に分かれている。 悪役は別に性格が悪くて悪役をやっている訳ではなく、 容貌がたまたま悪役向きであったが故の悲劇 (!)なのだ。 デ ビルなどはふだんは編み物に興じるという家庭的な女性。マット上と私生活は必ずしも一致しない。さらにややこしいのは、 マット上では正統派同士か悪役同士で団結するのに私的な部分では仲が悪い 場合が多いこと。かえって仇敵同士の 方が親交が深い。その証拠にデビルと長与千種は二人仲良くアパートに同居。
コスチュームは全部自前。楽じゃないのだ。
選手が試合をする時に着るコスチュ ームは、別に特別な試合着という訳ではなく、ごく普通の水着。デパートなどで買ってきて各自が股や背中の部分 を補強して着用する。この水着が一着 1万~2万円。入場時に着るラメや刺しゅうが入ったギンギラのガウンが5万~10万円。リングシューズが2万~3万円。しめて15万円也。
やっぱし、ありまする女子プロファンクラブ
ビューティペアの引退以来、女子プ 口の人気も低迷気味。 でも、相変わらず熱狂的なファンはいる。 ファンクラ ブを作り会報を発行、ごひいきの選手がタイトル戦を行うといえば日本全国どこへでも馳せ参じる。このようなファンはスター選手よりも若手に多いの が特徴だ。筆頭はライオネス飛鳥、大森ゆかり、長与千種といったところ。 以下はFCの連絡先。
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今号には珍しく、松本とユウも写真で紹介されています。
3サイズ→103,88,110 試合用のコスチューム数は10と書いてあります。
ちなみに、コスチューム数は、長与が10、飛鳥が20、ユウが13、デビルが20、大森が15、ジャガーが30、ミミに至っては60です。