
(2022/10/15 FullHDの動画追加)
AJWW 1983/9/23 戸田市スポーツセンター タッグトーナメント 松本 姉御肌の片鱗
TimTamchannelさんのYoutubeより
↓AIでフルハイビジョンに変換した動画です。
今回は、1983年のフジテレビ杯争奪 タッグリーグザベストの1回戦を見てみます。
このタッグリーグトーナメントは、1978年のビューティピア人気のときに一度開催されていますが、なぜかその後開催されず、5年ぶりの開催となりました。ある程度実力のある選手が揃ったと踏んだのでしょうか。
このタッグリーグのペアを見てみます。
・ジャガー横田&永友香奈子
・ライオネス飛鳥&長与千種(クラッシュギャルズ) 人気急上昇中
・ミミ萩原&立野記代
・タランチェラ&マスクドユウ
・デビル雅美&山崎五紀
・レイラニカイ&テリーシェーン
・ジャンボ堀&大森ゆかり(ダイナマイドギャルズ) WWWAタッグ王者で優勝候補
・松本香&小倉由美
タッグとしては微妙な組み合わせです。まともなペアといえば、ダイナマイトギャルズとクラッシュギャルズくらいで、残りはベテランと新人の組み合わせ・・というわけでもありません。ジャガーはハンデとしてデビュー仕立ての新人の永友とコンビを組まされています。後のJBエンジェルズとなる立野と山崎も、それぞれミミとデビルと組んでいます。さらにタランチェラとマスクドユウというヒール覆面コンビ、これはおもしろそうです。
そして最も謎なのが、松本香と小倉由美の新人(ベビー側)&ヒールコンビです。
さて、ここで私の邪推ですww
松永兄弟 「なんかさー。デビル軍団は5人いるんだけど、デビルは松本とは組みたくなさそうだから、山崎と組み合わせたほうがいいね。マスクコンビも組ませちゃおう。そうすると松本が余っちゃうんだけど、ベビーフェイスで組めそうなヤツがいるかな? そうだ新人の小倉とでも組ませて、1回戦はチャンピオンのジャンボ・大森組の打て馬にして、チャンピオンは2回戦に進んでもらおう」
いい加減で有名な全女のことです。事務所でこんな会話がされていたとしか思えません。
ロッシーが組めばもうちょっとまともなペアになりそうだったのですが、実はロッシーがクラッシュ推しで組んだかもしれませんし、分かりません。(^^;
もしかすると、この試合で小倉をヘビーにするかヒールにするか見定めようとしていたのかもしれません。(どうみてもベビーなんですが)
解説のデイリースポーツ新聞社の宮本さんもひどい無視っぷりです。
志生野アナ「今回の組み合わせ、どのようなご覧になりますか」
宮本「やはりWWWAタッグチャンピオンの大森・堀組が優勝候補の筆頭ということになります」
志生野アナ「はいはい」
宮本「それに対して今のクラッシュギャルズですね。タッグチームとしては一番乗っている、人気急上昇中で、このチームが2番手という感じです」
志生野アナ「はいはい」
宮本「そして横田、デビル、ミミ、この3強、このチームはハンデを設けられたと思うんですね」
志生野アナ「あー、そうですか」
宮本「一番面白いのはタランチェラとマスクドユウの覆面コンビですね。これが非常に未知の力を秘めていますね」
志生野アナ「そうですね。えーということで」
お前ら、松本と小倉組は無視かーい!!!
40年前の宮本さん、この1年ちょい後には松本は、日本中に知れ渡る極悪女王になっているのですよ。あなたはデイリースポーツ社のプロレス担当として何を見ていたのですか。本当に先見の明がありません。
ちなみに先に結果を言ってしまうと、優勝候補のダイナマイドギャルズは、2回戦でデビル組に敗退、優勝したのは新進気鋭のクラッシュギャルズでした。やはり勢いがあります。
(このタッグトーナメントのミソは、デビル組にダイナマイトギャルズが2回戦で負けているところです)
ちなみにクラッシュギャルズがWWWAタッグ王者になるのは、1年くらい先の「1984/8/25」です。
さて、試合のほうを楽しくみていきます。
まずは、松本香のテーマ曲(なのかな?)の乗って、松本と小倉が入場してきます。
2か月ほど前の全日本王座のときは、髪の毛の左前だけを金色にメッシュを入れていましたが、今回は赤で染めています。半グレ、ヒールっぽい感じの演出ですが、まだワンポイントなオシャレ感覚が抜けていないです。また、黒にV字の黄色のラインが入った水着は、綺麗です。松本は他にもワニの模様が入った水着だったり、けっこう大胆な水着が多い印象です。
一方の小倉は緊張の面持ちで、松本のあとを不安気な顔でついてきています。
ちなみに志生野さんの解説によると、小倉はデビューして間もない新人である。セミファイナルで試合をする経験もほとなどない。こうなると、ますますこのペアは一体どうなってしまうのか不安しかありません。小倉に頼れない松本が、WWWAタッグチャンピオン相手に、一人でどこまで小倉の穴を埋められるのか・・なんかもうこれ、会社の嫌がらせか、小倉を売り出すための当て馬というか、一種の肩たたきに思えてきました。
ここで小倉由美(ゴンゴン)について軽く触れておきます。
ちなみに、ぶるちゃんねるの、ブル様とゴンゴンの対談を見たほうが早いですww
神聖・クラッシュギャルズより
「小倉由美、通称「ゴンゴン」。『ゴツイから"ゴンゴン"なんだって』同期のブル中野が付けたあだ名だった。小さい頃はママゴト遊びすらしていない男勝りな子だった。ある日友人に誘われてプロレスに出会う。一目見て、あ、あたしがやっているって思った。あそこ、リングの上にいるのがあたしだって。ウジウジしている自分を脱ぎ捨てられる。」
その後なんでも優等生的にこなす小倉は、中野と違って一度目でプロテストに合格。スター街道まっしぐら。テレビドラマ「輝きたいの」('84.5)に出演。この番組は、後にクラッシュギャルズや極悪が登場する「毎度おさわがせします」より前のドラマである。
「最初にドラマの話があったときはお断りしたんです。周りに練習でも置いて行かれるのではないかと心配だった。しかしそれはチャンスでもあった。おかげでファンは増えたし、人気はでたのは確かなんだけど・・。いつかだったか、パンダちゃん(中野)が髪を切るとか切らないとかって話したことがあったんです。そのときダンプさんが同期に一人ずつ聞いて、『もしあんたたちだったら髪を切るか?』って。パンダちゃんは切りますって。そして永友もニンニンも切りますっていったとき・・ダンプさんは『でもゴンゴンはベビーフェイスだから切れないよね』って言われたんです。どうして私には切れないの!? 小倉はとてもショックを受けたという。中野が『ゴンゴンはかわいいから』というように、見ている限りは小倉はヒールになりようがない。可愛ければかわいいで、妬まれたり、自由が利かなくなるのもこの世界の悲しい宿命なのだ。髪を切ったブル中野はメインイベンターとなった。同期でメインイベントに出られるかの差は大きい。小倉がリング片付けをやらされているのに、中野はすべて免除になっている。いつかパンダちゃんより上に行くんだ・・と誓った」
当ブログの「中野恵子デビュー戦」のところで書いたのだが、この日、つまり「1983/9/23 戸田スポーツセンター」での試合は、実は「中野恵子のデビュー戦」が最初に行われている。中野は陰湿なイジメにあい、毎日紅ショウガを食べて、ようやくデビュー戦にたどり着いたこの日、小倉はセミファイナルで松本とタッグを組んでいる。すでに明暗が分かれているのだ。将来を期待され、セミでWWWAタッグチャンピオンと戦える小倉は、会社のブッシュもあり、スター街道への一歩を歩き出したと取れる。ただし、後年では上記のようにダンプから少々嫌味を言われてショックを受けているあたり、伸び悩んでいたのだろう。それでも実は1986年中盤くらいになると、大森ゆかりを極悪入りさせられなかったダンプは、「次に極悪に入れてもいいのは小倉」と話しているから面白い(宇野の事故の件で小倉が挫折?(時期的に違うか) したのか、はぐれ者にはめっぽう優しいダンプさんです。もしくは、この試合での小倉のガッツを見込んでいたのかも)。
一方、このタッグを組まされた松本の気持ちも察したい。どう考えても松本にとっては貧乏くじだ。ヒールとして頑張りたいのに、ベビーフェイスっぽい新人の小倉をパートナーにされて中途半端である。しかも一回戦でチャンピオンチームに当てられる。会社から全く期待されていないのが明白。よく学校で「友達とペアになってください」と言われて、一人だけペアが決まられない子供がいる。デビル軍団5人で、松本がまさにその状態の感じがします。
松本から見れば、小倉はテストをすべて一発合格しているエリートである。「これからは小倉を売っていく」という会社の意思表示と取れる。会社としては松本に対して奮起させようというのもあったかもしれないし、逆にプレッシャーをかけたとも取れる。(ただし、全女は何も考えていない可能性が高いですw)
(また、永友のほうがジャガーと組まされているので、会社としては、ボーイッシュの永友、可愛さの小倉の順番でのプッシュだったのかもしれませんね)
そんなこんなで水面下では複雑な思いを抱いていたであろう松本と小倉の試合が始まります。対戦相手は同期の中ではライオネス飛鳥とともに、スター街道まっしぐらの"大森ゆかり"です。
試合序盤から小倉の体の小ささが目立ちます。周りは松本、大森、ジャンボですからね。当時の全女の中でもトップクラスに体の大きい3人の中に入ると、本当に痩せっぽっちに見えます(それでも60kgはあるので小さくはないはず)。案の定、大森と堀のパワーの前になすすべがありませんが、なんか踏みとどまります。
松本はジャンボを場外に引きずり出して、得意の場外戦へ。ここで松本は堀をイスへと叩きつけますが、小倉と大森のマッチアップでは、大森が場外でも小倉を一蹴しています。
この試合、リングサイドには小倉の味方をするデビルとマスクドユウがいます。松本がいるために、松本・小倉チームは「ヒール」ということになっているようです。小倉はまだ新人でベビーかヒールか決まっていない状態ですかね。
中盤で松本と大森ゆかりの「力比べ」対決があります。
大森は入門当時からの力自慢で、小さい頃から男の子に混じって相撲大会に出場、中学時代は家族(父+母+兄?)の合計250kgを背負ったり、現役相撲取りを2人担いで驚かれたという逸話があります。それくらいのパワーの持ち主です。ちなみにオーディションも推薦で合格、プロテストも一発合格です。
一方の松本は体重は90kgはあるが、ジャッキー佐藤のファンクラブとアーチェリーをやっていたくらいしか目立ったところはありません。オーディションは不合格、プロテストは3回不合格。しかし全女入門から数年間、リング組み立て・解体という過酷な現場で培われた肉体のぶつかり合いです。
エリートのパワーか、雑草のパワーか、これはどちらが勝つのか、興味深いです。
志生野アナ「いま松本香、大森ゆかり選手をリング内に誘い出そうとしております」
志生野アナ「お、なにか相撲の態勢になりましたですね」
志生野アナ「ここはガッチリと力比べを披露してもらいたいもんであります!!」
志生野アナ「大森か、または松本か!!」
志生野アナ「渾身の力を込めている、どうか!? 大森も懸命に堪えた」
志生野アナ「これは気合が入って、見ごたえがあります力比べ!!」
志生野アナ「松本、素晴らしいですねぇ!!」
なんとジャッキー佐藤ファンクラブの勝利です。
ダンプは松永会長から「お前は練習よりも体重を増やせ」という命令を受けていたそうです。元々体重が増やせ遺伝的素質があったので90kgまで太りました。さらに毎日の試合、辛いリング設置、後片付け、先輩の荷物持ち・・・雑用の中で数年間鍛えられ続けた松本は、いつの間にか全身筋肉の巨漢に成長していました。そのような雑草パワーがエリートのパワーを上回りました。
確か松本は入門時には腕立て伏せがロクにできなかったという記事を見たことがあります。この試合のときはどうだったのかは分かりませんが、力比べとなると腕の力だけではなく、足腰を含めた体幹の強さになりますから、1983年の時点で大森を制していることは素晴らしいと思います。
松本のくすぶり続けた1980年から1983年というのは、本人がインタビューで「遠回りをしてしまった」と発言していますが、実はゆっくりと、しかし着実に、大木に相応しい太い根っこを生やしていた時期だったのではないでしょうか。それは筋力だけではなく、徐々に悪役にふさわしい体重を増やし、技を少しずつ身に着け、先輩からのイジメによるメンタルの強化もして、ケガをしない体づくり(太り方)もそうです。だから、いまから振り返ると、実は遠回りしていなくて、クラッシュ旋風に向けた最短ルートを通っていた可能性もあります。
それは、エリートコースまっしぐらだった大森が、クラッシュ&極悪旋風になると、ケガとともに空気のような存在になることが証明しています。1986年にWWWAのチャンピオンになるまで、大森は物凄い遠回りをすることになるわけです。結局、どこで壁にぶつかるか、どこでチャンスが訪れるのか、そのタイミングとチャンスをモノにする感覚とセンス、そして運・・・。すべてが必要なわけです。
1984年から1987年の女子プロレス史上空前の黄金期、その4年間を常に引っ張り続けたのは、長与千種とダンプ松本です。(ライオネス飛鳥は途中でノイローゼリタイアなので)。しかも松本の場合は、長与と違って大きなケガでの手術もありませんから、本当にこの4年間をフルに活躍したのは、ダンプ松本一人です。松本香は遠回りをしているようで、実は落ちこぼれからの最短ルートというか、最も効率的なルートを通ったのではないかという、逆説的な仮説を立てておきます。
さて、試合に戻ります。
松本が小倉にタッチ。しかし、すかさず大森がパワーで小倉をねじ伏せます。
この時点での小倉と大森の実力差が激しすぎますね・・。ほとんど試合になっていません。
その後も小倉は痛々しく赤コーナー付近で痛め続けられます。小倉は必死の形相ですが、なにか空回りしている感じがします。見るに見かねた松本が、大森に向かってラリアートをさく裂させます。
志生野アナ「体は大きいんですけども、松本選手はラリアートが得意なんですよ」
志生野アナ「いまのなかなか豪快でしたでしょ?」
ここでラリアートが空振り。
志生野アナ「もう一回・・・ああ、時々こういう空振りがあるんですよ」
志生野アナ「愛嬌のある選手であります、松本」
ヒールなのに相変わらず「愛嬌がある」と言われてしまいます。志生野さん、少しは松本の心境も察しましょう。
その後大森を羽交い絞めにした小倉。松本は「コッノヤロウ~」と叫びながら、大森にラリアートを喰らわせようとしますが、間一髪除けられて、小倉に誤爆。これはもうお約束のパターンですw
志生野アナ「あ~とダメダメ、これはダメ。小倉にやっちゃった」
志生野アナ「もう小倉はダメのようであります」
志生野アナ「これは2人まとめてフォールです」
またやっちまった~という松本の表情がいいですよね。松本は感情がコロコロ変わって、顔に出るので、見ていて楽しいです。ジャンボ・大森が一気を攻勢をかけて、松本と小倉を同時にフォール。
いかにも当時の松本らしいレスリングです。肝心なところでヤラかして、ドタバタしている間にフォールされてしまう。志生野さんが「憎めなくて可愛らしい」と言っているのが理解できます。(その後、よちよち歩きでコーナーに戻る松本が面白いです)
さて2本目。
ここでも相変わらず小倉がやられっぱなしです。せっかく松本が有利な状況を作っても、小倉にタッチしたとたんに、大森に反撃されて赤コーナーへズルズルと持っていかれます。しかし小倉もだんだん状況に慣れてきたのか、先輩に相手にして気持ちの面では負けないファイトを見せるようになります。
そして、なんとか松本にタッチ。
志生野アナ「しかし松本はこうしてみますと、小倉と組んでみますと、さすがに力をつけてますね」
宮本「そうですねぇ。うまくリードしてますしね」
志生野アナ「たいしたもんですね」
2本目になって、だんだんと松本と小倉の息が合ってきて、動きも良くなります。
そして小倉は吹っ切れてきました。なんとなく遠慮していた1本目に比べて、先輩に大声を出して立ち向かっていきます。もうエリートもヘッタクレもありません。
なぜ、小倉がそうなったのかというと、大きな理由の一つは、後ろには松本がいたからだと思います。自分がやられてもやられても、そのあと松本の巨体が、ダイナマイトギャルズのパワーに対する盾となり、有利な状態で自分にタッチしてくれるのです。
松本がジャンボを痛めつけた後、いい場面で小倉にタッチしてあげています。
急造の凸凹コンビですが、松本のパワーは、ジャンボ堀にも、大森ゆかりにも上回っています。なにしろ体当たりでは負けませんし、力負けもしないので、小倉にとっては想像以上に頼れる存在に見えたでしょう。ショートレンジからのラリアートも見事です。
そのあと小倉にふたたびタッチ。このときの会話がいいですね。
松本「行ってこい!! オラッ!!」
小倉「はい!!」
観客から笑い声が起きます。でも、分かりますよ、これ。
最初は美形のダイナマイトギャルズのほうを応援していたお客さんが、悲鳴をあげてやられっぱなしの新人の小倉と、それでも見せ場を作ろうとする孤軍奮闘する松本に気持ちが傾いていくのです。
しかし、その直後、小倉が堀をロープに振ろうとして、それを掘が逆利用したところに、ちょうどロープに立っていた松本にぶつかってしまいます。
志生野アナ「ああ~っと!! 何をしているか松本!」
せっかく褒められたのに、直後にやらかしてしますw これも松本の愛嬌のあるところなんですが。これって、単にユウと話していてヤラかしたのか、小倉が飛んできたところを受け止めようとしたのか、どちらなんですかね・・(^^;
そして小倉がジャンボスープレックスを顔面に叩きこまれて、赤コーナーで大森に担ぎ上げられます。二段ロープからの雪崩式バックフリップを決められます。
ゲストの女性「小倉がんばれ!!」
ゲストの女性「お姉さん(松本のこと)、そろそろ出てこなくちゃ!」
志生野アナ「お姉さん(松本のこと)はねぇ、コーナーでポーッと見つめているだけ」
そして2本連続フォール負けです。
志生野アナ「やはり小倉由美、松本香、一回戦で当たった相手が悪かったですねぇ」
ゲストの女性「小倉さん、ノビてる。大丈夫かなぁ・・でもエライ☆」
志生野アナ「あそこまでしなくったって、フォールは取れそうですけどね・・」
ゲストの女性「起き上がったら(小倉に)拍手しようと思います」
最終的にはゲストの女性も、やられっぱなしでもガッツを見せた小倉に拍手。そして「お姉さん」とその場でニックネームをつけられていますが、姉御肌を見せた松本の方に感情が傾いているのが分かります。その場でニックネームをつけられる・・たしか「ダンプ」という名前も、観客がつけたと言われています。
プロレスは勝った負けたはありますが、見ている者の感情を動かすことが何よりも大事です。この試合、松本と小倉に期待するものは最初はゼロだったのではないでしょうか。
しかし、試合が進むにつれ、松本はやられっぱなしの小倉をフォローしつつ、パワーではジャンボ、大森を圧倒して、ある程度形勢が逆転したら、きちんとまた小倉に見せ場を作ってあげるのです。そんな後輩想いの松本を、1983年の試合で見ることが出ます。松本に応えて、小倉もやられても意地のファイトを見せつけました。
この試合はストレート負けしましたが、松本を再評価するに値する試合です。後輩と組ませると姉御親分となって、いい動きをする松本に、志生野アナも宮本さんも驚いていました。
松本にこんな才能があったのかと、周囲は驚いたのではないでしょうか。
後に極悪同盟のドンとなり、ブル中野、コンドル斎藤などを引っ張っていく、圧倒的なカリスマになるダンプ。この試合にその片鱗を垣間見ることができました。
そして小倉のファイトも素晴らしいです。可愛い系だから極悪には入れなかった小倉ですが、この試合を見た後では、意外と松本・小倉は良い師弟になれた可能性もあります。極悪に入ったほうが実力を発揮できたかもしれませんね。