
デビル夫人 女子プロレスさんのYoutubeより
AJWW 1983/12/9 千葉公園体育館 松本香vsマスクド・ユウ 全日本選手権挑戦者決定トーナメント
(予備用 上記と同じ動画です)
今回は、1983年12月行われた全日本選手権挑戦者決定トーナメントから、松本香vsマスクド・ユウの試合を見ていこうかと思います。
以前に松本が第四代全日本王座に就いたあと、1983年6月にライオネス飛鳥にタイトルを奪われる試合を書きました。このトーナメントは、その全日本王座のチャンピオンであるライオネス飛鳥に挑戦者を決定するトーナメントです。
このトーナメントですが、まずパッと見て思うが、
ヒールだらけの大会!!(笑)
立野が唯一のベビーフェイスです。デビル軍団勢ぞろいという感じで、タランチェラ、マスクドユウ、松本香、山崎五紀と、No.2~No.5までが全員揃っています。長与は同じクラッシュ・ギャルズなので挑戦なし、大森はWWWAタッグチャンピオンなので挑戦なしということでしょうか。下の世代である小倉、中野、永堀あたりも入ってきても良いと思うんですが。
この試合は松本とユウ、2人の55年組みの同期ヒール対決です。2人ともプロテスト不合格で何度も挫折し、雑草組としてがんばってきた仲間です。しかしながら同期には負けたくない、これが心情でしょう。4年間のヒール修行(?)で、どちらがレスラーとして成長したのかを見るうえでも格好の試合となります。
この試合の翌月には、松本は"ダンプ松本"に改名し、その後ユウも"クレーン・ユウ"として、極悪同盟を立ち上げてメジャーになっていきます。それを踏まえると、貴重な対戦カードです。
ちなみに次に松本とユウが対戦するときは、有名な「お前とはお別れだ!!」(田原俊彦風)の試合となります。
志生野アナ「マスクドユウ、松本香は同陣営ですが」
志生野アナ「これからは自己主張の年と言われております」
志生野アナ「陣営を超えて、マスクドユウ、松本香の対戦をご覧ください」
志生野さん、自己主張はいいのですが、やりすぎた結果、半年後にこんなことになっちゃいますが・・。
(半年後に自己主張しすぎた図)
ゴングが鳴ると同時にいきなり場外乱闘です。ヒール同士ですから、当然荒れ模様をお客様も期待しているはずです。場外乱闘、凶器の多用が予想されます。
まずは松本が先制攻撃。ユウを机に叩きつけ、コーナーポストへと見せかけて放送席まで掴んで投げ飛ばします。ついでに机も破壊です。
志生野アナ「いきなり早くも場外戦であります」
志生野アナ「松本香選手、今度は鉄柱攻撃に行くか」
その後、放送席に乱入。
志生野アナ「ああーっと、これこれ」
志生野アナ「もうー、あー、痛い痛い、もういきなり来ましたですね」
いきなりの放送席での場外乱闘に会場大盛り上がり。
松本は拳を上げてお客様にアピールすると、千葉公園体育館の場内もヒートアップです!
松本は親しみやすいヒール(?)というキャラなので、同じヒールでも、マスクドユウ相手だと、ベビーフェイス寄りな人気になるのでしょうか。
その後、両者の得意技のボディアタック合戦。これもヒートアップ。
2人の十八番、巨体を活かしたボディアタックです。この頃は松本とユウの代名詞になっていたかもしれません。
解説「あの、ボディアタックではね、松本のほうが強いらしいですね」
志生野アナ「あー、そうですか」
解説「身長が低いから」
志生野アナ「重心が低くってね、あー、なるほど」
そのあとは一息入れてのグラウンドの展開へ。
お互いの噛みつき攻撃のあと、松本のラリアートをよけてユウが巴投げから反撃開始・・と思いきや、松本のドロップキックで再び攻勢へ。ここはマスクドユウに攻撃の主導権を渡したほうが良い感じがしますが、松本はとにかく攻めっぱなしですw
解説「疲れるんですよ、2人でやると。重いからお互いに」
志生野アナ「ええ」
解説「だからスタミナが強いほうが勝ちでしょうね」
志生野アナ「スタミナ的にどうなんですかね?」
解説「いい勝負じゃないですか」
その後も松本はドロップキック、クロスチョップ、フロントフリップ、ショートレンジラリアート、ここでフォールにいきます。
この試合、解説者も話していますが、松本が攻め続けて疲れが見え、技も出尽くし感があります。一方、ユウのほうは受け身がうまいため、それほどダメージもなく、重い松本を担いでいませんので、体力が残っている感じがします。
「試合時間、15分経過~、15分経過~」
このアナウンスはまさかのピストルの合図でしょうか。
ここから突然ユウが息を吹き返し、松本が苦手とする顔面攻撃、「目つぶし」を敢行!! いつもリングサイドで松本のサポートをしているから、松本の弱点はすべてお見通しというわけです。
そのまま場外へ引きずり出して、観客席へ。そしてパイプ椅子を脳天に叩きつけます。
(椅子に座るような形になってしまったため、モロに攻撃を受けてしまいます)
(脳天直撃)
(うずくまる松本。相当に当たり所が悪かったらしい)
椅子攻撃2発で、松本が頭を抱えてもだえ苦しんでしまいます。ちょうどパイプの硬い部分が後頭部に当たってしまいました。
志生野アナ「椅子攻撃にいくマスクドユウであります」
志生野アナ「いやぁ、松本香、思ってもみなかったんでしょうか、まともに喰らってしまいました」
志生野アナ「ちょうどね、あの椅子攻撃をしてくださいって感じに、あの椅子に腰をかけてましたでしょう?」
解説「投げ込まれましたからね。受け身を取るつもりでサッと座っちゃったんでしょうね」
志生野アナ「座っちゃってねぇ。なにかちょっとこう、のんびりしている所もありますんですねぇ」
カンカーン!! (ゴングの音)
志生野アナ「上がってくることができませんでしたね」
ありゃりゃ!? というくらいあっけなく終わってしまいました。
志生野アナ「カウントアウトを取られました」
志生野アナ「しかし今の椅子攻撃はまったく効きましたですね」
志生野アナ「頭に2発、椅子攻撃。さすがの松本香選手もたまらず」
志生野アナ「結局、リング内に登場することができませんでした」
(松本 「頭から出血してそう・・」)
(マスクド・ユウ「当たり所が悪かったかなぁ・・・」)
松本「クソ、もう一回やってみろ」←と言っている風に聞こえる
この試合は、ひたすら攻め続けた松本のスタミナが切れたところに、ユウが15分経過の合図と同時に冷静に反撃をして、そこから1分で松本を仕留めます。椅子の当たり所が悪かったため、場外で松本がノビてしまい、中途半端な試合になってしまいました。前半はめちゃくちゃ盛り上がっていたんですが。
この試合は終わり方があっけないですね。試合内容を考えると、松本は何が何でもリングインしなくちゃいけないところを、志生野アナ曰く「のんびりしているところがありますから」でカウントアウト。マスクド・ユウも、レフェリーにカウントを遅らせるようにすればよかったのに・・と思うんですが、あっさりとした試合になってしまいました。
まだこの頃は、松本は試合に対して「なにがなんでも」という気持ちがありません。まだ自分をどういう風にアピールしたらよいのか、道を迷い続ける松本香の気持ちが、そのまま試合にも出ている感じがします。
この試合を見た感想としては、マスクド・ユウに関しては、受け身がうまい点が目につきます。それにプロレスに関しても一枚上手です。松本の攻撃に対して、効果的に受け身で目立つようにしていますが、おそらく本人はあまりダメージはありません。さらにユウは巨体を生かして、二段目からのロープやトップロープからの雪崩式の攻撃ができるところが松本と違います。やる時はヤル!! というのがユウの良いところです。
おそらく、この時点でのプロレスの技や展開の広げ方は、マスクド・ユウのほうが、一枚上手だったと思います。
邪推すると、この試合でユウが完全フォール勝ちしてしまうと、松本のデビル軍団内の立場がないというか、この直後のデビル軍団解散後のメガトンコンビで、実力的にユウがNo.1で引っ張っていく形になってしまいます。それを避けて、椅子攻撃でのリングアウトにしたことで、松本のヒール格が損なわれなったという点では、良かったかもしれません。
だから、翌年のメガトンコンビになったときも、リーダーがNo.4の松本でも違和感がなかったのかなという感じもします。
まぁ、全女のことですから、そこまで考えていないガチ勝負だった可能性も高いですが。実際は分かりません。(^^;
とにかくこの時点においては、会社でも選手間や記者たちの間でも、デビル雅美のあとは、マスクド・ユウの時代になるのでは? という見方が強かったと思います。