
uehara mitsuさんのYoutubeより
1983/11/28 大田区体育館 新人王決定戦 小倉由美vs中野恵子
2:30:00くらい~より
(↓AIでフルハイビジョンに変換した動画です。試合のみ抜粋)
中野恵子(ブル中野)の新人王決定戦の動画を見つけたのでレビューします。
この頃の様子を、ブル中野著の「金網の青春」から引用します。
「ファンと授賞式」-----------------------
同期が全員試合に出られるようになり、テレビにも小倉・永友達 がひんぱんに出るようになった。私はデビュー戦のほんの数秒映っただけだったが、先輩のガード(入場の時など、お客さんから守る) などでちょくちょくテレビに映ったりした。テレビに映ればスター みたいなもので、同期の子達にはファンレターが来るようになっ た。みんなは「私、ファン・レターもらっちゃった」など喜んで返事を書いたりしていた。しかし私には一通もファンレターはこなかった。みんながうらやましかったが、こればっかりは見る人がいいと思えばいいし、悪いと思えば悪いのだし、仕方がない。
一年目の中くらいに、私にも、ファン・レターが初めて来た。男の子からだった。
「ボクは太った女の人が好きだ。だからダンプやクレーンが好きだ。中野さんのことも、応援します」という内容だった。結局私が太っているから好きだ、ということだったが、うれしかった。
そのうちファンの女の子もつくようになって、私も握手してください、サインしてくださいなどと言われるようになった。しかし決まりではないけれど、一年目のうちは見習いと同じなので、握手もサインもしてはいけないし、写真やプレゼントをもらうこともいけないという伝統が全日本女子プロレスにはある。だからファンとはしゃべるこ とも出来なかった。
それでも、ファンの子は四人ほどいた。
二年目になって、少しだけしゃべってあげられるようになって、 けっこうプレゼントをもらえるようになった。パンダちゃんと呼ばれていたので、ニックネームのとおり、パンダのぬいぐるみをくれ る人が多かった。こんな私でも応援してくれる人がいる、そう思うと頑張らなくちゃ、と思う。 ファンの子がある日「恵子ちゃんのファン・クラブを作りたいんだけど」と言ってきてくれた。自分のファン・クラブが出来る。 すごくうれしかった。人数はその時三十人くらいもいた。
応援してくれる人がいるということは本当に心のささえになる。 ありがたい、と心から思った。そして、初めてついたファンで、ファン・クラブの会長をしてくれていた子が、私の影響かプロレスラーとして私と同じリングに立っている。しかもライバルとして。本当に先のことなんて分からないものだ。
私の初めてのファンの子、それが、今の北斗晶なのだ。
全日本女子プロレスでは、毎年、年の終りの十二月に授賞式があ る。その年一年間で活躍した選手が各部門で選ばれて表彰される。 入って一年目の新人には、その中で一番活躍した子がもらえる新人賞という賞がある。この日、先輩達もスタッフの人もみんなきれいに着かざって来るが、新人の私達はきれいな服なんて買うお金なんてない。ブラウスとグレーのズボンで会場に行くと、今の会長に「そんなチンドン屋みたいな恰好をして・・・。服を揃えて買ってやれば良かったなー」と言われた。それくらいひどい格好だった。会場は目黒ホテルだった。ホテルでいえばあの当時で下の中に
入るくらいの狭いホテル。今でこそ東京の高輪プリンスホテルなどの高級ホテ ルで授賞式が行なわれるが私の一年目の時はそこだった。でも、私達はステーキが出たのでそれだけで高級に思えた。
授賞式が始まると、一番初めに発表されるのが新人賞。私も、私の同期も顔がこわばってくる。 ジャーンと大きな音がなって、「五十八年度、新人賞は・・・・・・」その声がするとしんと静まり返る。当時の リング・アナウンサーの氏家さんが口を開いた。
「該当者なしです」
結局、私もふくめて同期はだれも賞はもらえなかった。しかし、 表彰されて泣いている先輩、喜んでいる先輩を見て、私もいつかあ の台の上に上がってみせる、そう思った。
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では試合をみていきましょう。
まずは新人王決定戦前に、小倉と中野のインタビューがあります。
アナ「中野選手、小倉選手に今の心境を聞いてみましょう」
アナ「まず体の大きいほうで。中野選手から行きましょうか」
アナ「体のコンディションはどうですか?」
中野「大丈夫です」
アナ「ちょっと鼻の下あたりに汗をかいてますね」
中野「笑」(鼻下を拭く)
アナ「トレーニングのほうは十分?」
中野「はい(笑)」
アナ「相手はですね、プロテストに受かったのがほんのちょっと先輩の小倉選手、どうですか?」
中野「胸を借りるつもりで頑張りたいと思います」
アナ「その小倉選手です。体の大きい中野選手ですね、相手は」
小倉「はい、まともにぶつかっていっても、ダメだと思うんで、気力と自分の力を十二分に発揮して頑張りたいと思います」
アナ「その言葉通りに2人には熱戦を期待します。その前に2人で握手してもらいましょうか」
小倉「はい」
この頃は中野も小倉もドロドロしていなくて、純粋な感じです。
志生野アナ「中野そして小倉、両選手の対戦となったわけでありますけど、宮本さん、今年はたくさんの新人が入門してまいりまして、この新人王も活気に満ちたものになったわけですけど、この優勝決定戦、どういう風にご覧になりますか?」
宮本「そうですね、デビューしたのは小倉選手のほうが早かったんですけど、中野選手は途中プロテスト一度落っこちまして、でも決勝の舞台に出てきたので、中野選手の体の大きさ、パワーで押しまくりタイプですし」
宮本「小倉の方はテクニックといっても、まだそれほどじゃないですけど、スピードでどこまで交わすか、そう言った試合になるんじゃないでしょうか」
志生野アナ「体重でいうと20kg近い差がありますね」
(小倉、タイミングよく思い切った持ちボディスラム)
(サーフボードストレッチで序盤は小倉のペース)
志生野アナ「松岡さん、どうですか? この2人の新人」
松岡「かわいいですね。中野選手っていうんですか」
志生野アナ「中野選手が大きいほうなんです、小さい方が小倉選手」
松岡「すごくかわいい顔をして」
志生野アナ「そうでしょ?」
松岡さんには中野も小倉も「かわいい」と言われていますね。松岡さんは何でも良い方向に解釈する傾向はありますが・・(^^;
(攻守が切り替わり、小倉の右膝を攻める中野)
志生野アナ「中野恵子選手は最初デビューしたころは足を痛めておりまして、非常に苦しかったんですけれども、最近はそちらのほうがだいぶ良くなったようであります」
志生野アナ「一方小倉由美選手は、この新人王決定戦の直前まで、体調は万全だったそうですが」
志生野アナ「このところ腰を痛めておりまして、体調からいいますと逆転して、小倉由美選手のほうがちょっと悪いみたいですね」
宮本「以前の対戦でも肩を脱臼したり、いいコンディションではないですね」
志生野アナ「いまのような攻めは腰を痛めている小倉選手にはキツイでしょうね」
志生野アナ「もう痛くて泣いてますよね」
(情け容赦ない中野の強烈な弓矢固めに、小倉が悲鳴をあげる)
志生野アナ「今日は根性の対決といいますか」
志生野アナ「意地でもギブアップできません」
この日の小倉は腰の調子が悪いのか動きがいまひとつです。ブレーンバスターは抱えることが出来ませんし、ドロップキックも綺麗に入らずに中途半端。ボディスラムも体重差でこれまた中途半端です。
小倉は1983年の冬は、前座でかなり松本と対戦して毎回負けているので、ムリをして肩や腰を痛めてしまったのかもしれませんね(^^;
ブル中野の顔が本当に若いです!! 初々しい!!
ボディアタックがさく裂!! 勝手に先輩の技を使って怒られたという、いわくつきの技です(笑)
そのままガチの抑え込みでスリーカウントが入りました!!
小倉由美をボディアタックしたときに鼻血を出したため、血がついてますね。
志生野アナ「鼻血で出てしまいました、出血しております」
志生野アナ「流血の新人王!!!」
偶然とはいえ、この頃から「流血」と言われてしまいました。未来を暗示するかのようです(^^;
優勝賞金は20万円です!! もう紅ショウガからは脱出していたとは思いますが、なにかを購入したんですかね。それとも貯金か・・?
そして、優勝インタビューまであります。
アナ「見事83年の新人王に輝きました中野恵子選手です、おめでとうございました」
アナ「勝てるという自信はありましたか?」
中野「なかったです、やるだけやる・・はぁはぁ」
アナ「そして残念ながら負けました小倉選手のほうは悔し涙を流していました」
アナ「小倉選手の今日の戦い方はどうでしたか?」
中野「とても突っ込んできてくれて、良かったと思います」
アナ「今後もいいライハルになりそうですね」
中野「はい」
アナ「どうも、おめでとうございました」
小倉の哀愁漂う控室への足取りが印象的です。