
(2022/10/13 動画をAI高画質化、文章を修正)
AJW 1984/01/04 後楽園ホール ダンフ松本、ペギーリー、スーザンスターvs立野記代、中野恵子、ジャガー横田
Evito-X-PuroさんのYoutubeより
17:00~あたりから
(↓AI でフルハイビジョン化した動画です)
[AI FHD 60fps] AJW 1984 01 04 ダンプ・ペギー・スーザンvsジャガー・立野・中野
「おかあちゃん」より---------------------------
悪魔の化粧、チェーンを振り回しながら、わたしはさっそうとリングにかけあがった。
当然、お客は熱狂した。
これまでにないタイプのプロレスラー、華麗なる悪役・ダンプ松本の誕生だった。
人気がでると、それまでわたしに対する会社の態度がガラッとかわった。
「おめえなんかいつだってやめたっていいんだぞ。荷物持って帰るか。熊谷に帰るか」
「帰りません」
「なんだ帰んねえのかよ。帰ればいいのに」
しかし人気が出てからは、すべて私の天下だった。
リングにあがる。相手が死なない程度にわたしは手加減する。それ以外は、絶対に手加減をしなかった。
私が怖ければリングから逃げればいい。プロレスをやめればいいのだ。ただそれだけのことだった。それがこの世界の暗黙のルールだった。ケガをしないでやめた人間なんか一人もいない。
私がやられるとお客は喜んでいる。悪役だから。わたしはそれを当たり前だと思っている。プロなのだから。
これはわたしの仕事なんだ。
さんざんイジメられてきた先輩たちへの逆襲・・・。下積み時代の無念さ。長く報われない日々への想い。それらが一気にリングの上で爆発した。
-------------------------------------------------
顔つきが違います。
ニコリともしていません。並々ならぬ決意が感じられます。
志生野アナ「いま、松本香。今日からダンプ松本と改名しました」
志生野アナ「そのダンプを先頭に、3人の選手が登場であります」
志生野アナ「いやぁ、鎖をぐるぐる回しております」
志生野アナ「今年から豹変して、悪に徹すると言っております」
芸者さん刺繍の入ったガウンを着ての入場です。このガウンですが、マスクド・ユウと、タランチェラの三人が浅草で購入して揃えたと話を聞いたのですが、タランチェラがこれを着ることはなかったようです。3月以降は皮ジャンに変化していくので、和風ガウンはどこに行ってしまったのでしょうか。
髪の毛はまだ金髪ではなく、以前からのメッシュを入れている程度。ノーメイクです。いままでのヒールの上をいく、最高のヒールを目指すことを決心したダンプですが、まだまだ試行段階のようです。
それまでニコニコとして花道を歩いていた"松本香"時代と比べて、すでにチェーンを手にもってすでにぐるぐると回しています。
完全にワルになり切ろう、という決意の現れです。
笑顔はもうありません。以前ならば会場のお客様へ手をあげて愛嬌を振りまいていましたが、そういった行動は一切なくなりました。
昨年までの可愛かった"松本香"は死んでしまいました。
ここにいるのは違うレスラー"ダンプ松本"です。
ただ、まだ本人も慣れていないし、視聴する側も見慣れていないので、当時は少し浮いて見えたかもしれません。行動不審者のように見えてしまいます。
そうこうしているうちに選手紹介です。
リングアナ「赤コーナー、180パウンドォ~、中野~、ケイッコォ~」
お客さん「ケイコちゃ~ん!!」
きちんと四方八方にお辞儀をして行儀のよい中野恵子です。
お正月のマラソン大会で、すでにデビル軍団の紺のジャージを着ていた中野ですが、ベビーフェイス側での登場。この頃はまだギリギリ、ベビーでやれる環境だったんですね。
来月にはデビル軍団の解散も決まっていたのでしょうから、中野もデビル雅美とともに、ベビーフェイスかヒールか、宙ぶらりんな位置にあったのかもしれません。
そして「ケイコちゃ~ん」というミーハーファンからの黄色い声援も飛んでいます。1年後には、この黄色い声援が罵声に変わってしまうのは、周知のとおりです(^^;
そして、いよいよこの時が来ました。初のコールです。
リングアナ「青コーナー、180パウンドォ~、ダンプゥ~、マツゥモトォ~」
ぐるぐると鎖を回してコールに見向きもしません。素晴らしい変わりようです。
そして「マツモトォ~、カオォ~ルゥ~」のときとは、コールのインパクトが全然違います。
「ダンプ」という名前がこれほど似合っていた人も、おそらく日本中探しても、彼女しかいなかったでしょう。全員をひき殺す重戦車、名前が先か、体型が先か、分かりませんが、とにかく彼女にはピッタリの素晴らしい名前です。
また、「ダンプ」ってのはとても呼びやすい名前だったと思います。「クレーン」「ブル」もハマッていたとは思いますが、重機の元祖「ダンプ」のほうが圧倒的に親しみやすい、一度聞いたら忘れられないインパクトです。
埼玉の深谷の試合で、リングサイドでワンカップを飲んで上機嫌だったオッサン!! あなたの一言が、松本香をスターにしていきます。どこのどなたなんでしょうか・・。
ダンプにも紙テープが飛んでいるのに驚きです。テープを投げているはの男性なのでしょぅか。それとも"松本香"のときの女性のミーハーファン(っていたのかな?)なのでしょうか・・?
志生野アナ「特にですね、あのダンプ松本選手、名前を変えまして」
志生野アナ「今日は果たしてどういう試合をするでしょうか」
志生野アナ「ゲストさん、見てどうですかね? このダンプ松本」
ゲスト「いっちゃ悪いですけど、ピッタリですけれども」
ゲスト「でも非常に入り方が、形から入っているでしょ。鎖を持ったりして」
志生野アナ「やはりそう言った気持ちを作ることが大事なんでしょうね」
ゲスト「やはり芝居なんかでも同じですね」
志生野アナ「なるほどねぇ」
果たしてダンプ松本に改名してから、どのようなファイトスタイルになるのか誰にも分かりませんから、放送席でも興味津々の様子です。
ということで試合開始です。
開始と同時にダンプはラリアートで立野、ジャガーを吹っ飛ばします。その後中野を2人で攻めていきますが、ジャガーのコーナーからのミサイルキックが横入りして、いきなり場外戦へ。
ジャガーは場外でペギー・リーを椅子に放り込みます。そして、立野を手助けしようとして放送席にきたところで、ダンプに捕まります。
志生野アナ「放送席の前、ダンプが怒っている! ダンプが怒っている!」
志生野アナ「あーっとジャガー、気を付け・・」
志生野アナ「もういい加減にしなさ・・!!」
場外乱闘、特に放送席での乱闘になったときの志生野アナの実況は、本当に凄いし、面白い!
その後、リングに戻って、ダンプが中野にラリアートを入れますが、このときの「ビジッ」という首にめりこむ様な生々しい音が入ります。これは収音が良かったんだと思いますが、凄い音です。
中野は息が出来ずにたまらずジャガーにタッチ。
ジャガーに交代してから、突然青コーナーに戻ってしまうダンプ。後ろをチラチラとみています。ペギー・リーがタッチしようかと要請しますが、それをなぜか無視。やはりジャガーが相手となると少々怖気づいたのかと思いきや・・・。
ジャガーをチェーンで攻撃してきました!!
後ろをチラチラと見ていたのは、相棒のマスクド・ユウから鎖を受け取るサインだったんですね。
まさかのジャガー横田への鎖攻撃!!
昨年までの松本香時代ならば、これはあり得ないでしょう。
全女を引っ張る最強のジャガーへ怯むこともなく、鎖を出すあたり、意識が変わりました。
明らかに"松本香"時代とは違います。「ジャガーとしても思ってみないような攻撃でした」と言っている通り、ダンプに改名してから、"ゆるキャラ"だった松本がここまでやってくるかと、ジャガーも少々ビックリしたのではないでしょうか。
このあと、ほぼ空気だったペギー・リーとスーザン・スターの連携が見られますが、すぐにダンプにタッチ。2人の外人は居てもいなくても、この試合は変わらない感じがします・・w
ダンプがジャガーをボディスラムの後にフォールしますが、ジャガーお得意のスルッとエビぞりでフォールを抜けて、100kgの松本をエアプレーンです。「こういうところが愛嬌があります」と相変わらず言われてしまうのが、まだ初々しいダンプです。
このあと、少々空気気味の立野にタッチ、スーザンスターとやり合い、そのあとに中野にスイッチ。ここで中野はダンプの得意技のボディアタックを敢行。
先ほどダンプにやられたラリアートの憂さを晴らすかのような、同じ技を本人の目の前でやります。こういうところが中野の図太いところ。
確か新人戦でボディアタックをやって、先輩たちに散々怒られたと思うのですが、そんなことは全くお構いなしです。おそらくこの辺りからダンプは、中野の図太さやヒール向けの体型(何しろ自分と同じ技をやるのだから)を見て、極悪への勧誘を考えてたんじゃないかと思います。小松美加(ニンニン)も候補だったと思いますが、体型的にはどうみても中野です。
何気にダンプも、ボディアタックを使われたことがムカついたのか、ドサクサに紛れて、コーナーで中野に蹴りを入れて落としていますw
そのあとはジャガーに対して、ダンプが重量をかけたバックフリップ、肩に乗せてからの叩きつけ(変わった技)、そしてペギー・リーとスーザン・スターによる、カナディアン・バックブリーカーとジャンピングエルボーの連携がでます。その後はペギー・リーをジャガーが回転エビ固めでフォールです。
ちなみに解説ではペギー・リーがリーダーと言っていました。ダンプがリーダーなのかと思っていました。外人と立野があまりに空気すぎました。というか、ジャガー一人だけ、技の連携やスピードが異次元です。
さて、ダンプ松本に改名してからの初戦ですが、感想としてはかなりヒールの意識が昨年までと全然違います。
昨年までの"松本香"でしたら、あちこちから嘲笑が起きていたでしょうが、今回は全くありませんでした。
要因としては、"ダンプ松本"という名前に改名してこともありますが、笑顔を完全に消したこともあると思います。いままでの試合ではお客様に多少の愛嬌を振りまいていましたが、この試合から、もう笑顔を出すことはなくなりました。
お客様を罵るための高笑いは、このあとも続けますが、引退試合が終わるそのときまで、本当の笑顔はリングの上では無かったと思います。
今日の凶器 チェーン
(2023/2/8 追記)
1984/2月号の別冊エキサイティングプロレスに本試合の写真が一枚ありましたので追加しておきます。
(84年に向けて雄ジャガー横田も絶好調発進!!)
特にダンプの改名のことなどは触れられていません。この時は全く注目されていないレスラーですから、仕方ありませんね。