
1984/2/4 都城体育館 ダンプ松本&マスクド・ユウvsクラッシュ・ギャルズ
Evito-X-PuroさんのYoutubeより
1:16:00~あたりから
(↓AI フルハイビジョン変換した動画です↓)
1/4のお正月に「ダンプ松本」に改名し、「今年は悪の限りを尽くす」と決めた松本。
1/4の後楽園ホールでは慣れない感じでチェーンをぐるぐると回し、まだ若干浮いていました。しかし、ジャガー横田を相手にも怯まずにチェーンで首締めをしたりと、イメージチェンジしようという覚悟も見られました。
何よりもヒールとして、一切笑顔がなくなったというのが大きいんじゃないでしょうか。
もっとも「笑わない」のはヒールとして基本中の基本らしいのですが・・松本の場合、エクボが出来て笑っているように見えてしまうのも問題でした。松本香時代とは全く雰囲気が変わりました。
それから一か月後の試合です。
今回はファイナルでの登場だと思われます。"松本香"時代では考えられない大抜擢です。1984年に入り、ヒールとして松本とユウに会社が期待していたことがわかります。
いまだデビル軍団は健在ですが、もう内部的には来月に解散ということが決まっていたのでしょうから、会社としても、ダンプ&ユウのヒールコンビを、クラッシュ・ギャルズの対抗馬として売りに出そうとしていたのではないでしょうか。
そして松本も「クラッシュギャルズ」に目を付けます。1983年後半から徐々にビューティ・ペアのように、中高生の若い女の子から人気を集めつつありました。彼女らのライバルチームになれば、自分たちも一緒に上にあがれるのではないか、と考えていたのではないでしょうか。
マスクド・ユウのテーマ曲(元はマミ熊野のテーマ曲)に乗って、2人が登場です。
お正月にも着用していた、和風のお揃いのガウンが渋いです。
今回は放送席への襲撃があります。この試合くらいから放送席への襲撃をゲストによってはやっていたようです。ザ・ベートベンと阿部四郎が仲間になったあとは、しつこく放送席を襲撃していきますが、今回は手始めにお笑い系のゲストだからやってみたんじゃないでしょうか。
いきなり放送席の機材を、チェーンでバンバンとぶっ壊していきます。本当にワルになってきました。どちらかというと、ユウのほうが積極的かな?
ゲストの夏木さん、ダンさん、デイリーの宮本さんが揃って机を乗り越えて逃げ出すリアクションが面白すぎます。というか、デイリーの宮本は解説者なんだから、もっとしっかりしろよ(笑)
今回の相手はクラッシュ・ギャルズです。ライオネス飛鳥のテーマに乗って登場です。
1984年の2月だと、地方ではまだそこまでの人気ではなかったと思います。
ただ、関東圏中心にすでに人気が出てきています。
クラッシュ・ギャルズが全国的な大ブームになるのは、1984年7月以降、フジテレビのゴールデン枠で放送が開始されるくらいからだと思います。
この頃は"地方は"まだ静かです。
クラッシュの入場を阻んで、コーナーポストでよじ登っているダンプ。3段目のロープしか上っていませんが、チェーンをぐるぐると回しながら、クラッシュを威嚇します。
志生野アナ「ダンプ松本、マスクドユウ、なんともね。無礼な放送席への2人攻撃でした」
ゲスト「冗談じゃない。なんなんですか始まる前から」
ゲスト「あれは誰なんですか、あの太った人は!?」
志生野アナ「マスクドユウ」
ゲスト「あれが。なんていう体してるんですか、冗談じゃない」
志生野アナ「そしてダンプ松本」
ゲスト「よくありませんね、この2人は」
志生野アナ「性格はちょっとよくないですね。しかもクラッシュ・ギャルズがあがれません」
ゲスト「そうだよ、あんにゃろう、ダメだろ、あんなことしちゃ」
ゲスト「私だって解説で、机の上に逃げたのは初めてですよ」
放送席からはかなり不評のダンプ、ユウ組です。大成功ですね。
志生野アナ「なんとなく花束を贈るお嬢さん方も怖そうなんですよね・・」
ユウが花束をポイッと捨てる。
ゲスト「あ」
志生野アナ「いちおう受け取ったんですけど、もう少しファンの方から花束を受け取るくらいはね」
ゲスト「2人とも悪いな」
志生野アナ「ちゃんとありがたく頂戴したらいかがでしょうか」
見ていて思ったのですが、このような大きな会場で、観客から「コイツ、ムカつくな」と心から思わせるって意外と難しいですね。
いくら100kgコンビといって、遠くからみるとそんなにわかりませんし、ただ、鎖をぐるぐる回してもチャラく見えてしまいます。
しかも、この頃はまだメイクもしていないから、どうしてもまだ突き抜けないというか、不良高校生の延長くらいに見えてしまいます。
もちろんワルの心意気は完ぺきにできているのですが、それをどう見せるかってのは本当に難しいです。
大きな会場で、どうやったら罵声を浴びるのか試行錯誤の繰り返しをしていたと思われます。
リングアナ「同じく180パウンドゥ、ダンプゥ~、マツ~モトォ~」
名前もずっしりと腹にくるようになりました。
志生野アナ「この2人の体重が合わせますと200kg」
宮本「メガトンコンビですね」
志生野アナ「ええ、凄いですよね。メガトンコンビ、200kg」
ゲスト「松本さんはずいぶん怒っているような」
志生野アナ「急に"さん"付けになりましたけど、"ダンプ松本"とひとつ呼んでください」
ゲスト「お体も随分綺麗な・・なんか怖くなっちゃったですね・・」
(ちょっと笑っています)
志生野アナ「今日は本当に荒れそうですよ。というのもクラッシュ・ギャルズがいまもう大変な人気なんですよ。この人気コンビを相手に、どちらかというあまり人気のないダンプ松本、マスクドユウということですからね」
ゲスト「人気ないんですか? この2人は?」
志生野アナ「どちらかというとそんなこともありますんで、今日はちょっと嫌な感じです。とにかく場内がシーンと静まり返っておりますので、放送席の声がそのまま選手に聞こえるような気がしてしょうがないんですけどもね(笑)」
ゲスト「じゃ、この2人を応援しますからね。頑張りましょうね・・」
今回はダンプとユウの水着はお揃いです。この水着は今後もちょこちょこ登場します。黒を基調にして幾何学的な綺麗な色が入っているお洒落な水着です。
(ちなみにこの水着、大森ゆかりも着ていたような気がするのですが・・LLサイズは着回ししていたんでしょうか)
1本目
さて、ゴングが鳴って試合が開始と同時にクラッシュ・ギャルズが奇襲。いや、ここは逆だろ(笑)
相変わらず、トンパチ娘はベビーフェイスなのに奇襲攻撃を仕掛けますね・・。
飛鳥の攻撃から長与にタッチ、長与はまだ線が細いですが、半年前の松本戦と比較すると、気合も随分と違っていて好調です。正拳突き、ケリも数段格好良くなっていると思います。ファンもたくさん増えたからでしょう、全然違う雰囲気に変わってきました。
一方のダンプは体当たり、ロープを利用しての吹っ飛ばし、ヘッドバッドなどで攻め立てます。
志生野アナ「松本、愛嬌のある顔なんですけどねぇ」
ゲスト「いや、愛嬌なんてありませんよ」
志生野アナ「あ、そうですか」
ゲスト「どこに愛嬌があるんですか」
志生野アナ「なーるほど」
ついに昨年までの松本特有の「愛嬌がある」というのをゲストが否定しました。昨年までを知っている志生野さんは、「松本=愛嬌がある」という感じなんですが、すでに初見の人には「憎ったらしい」という感情を抱かせていることが分かります。メイクをしていないので顔にエクボもあるし、よく見れば愛嬌があるのですが、笑顔をなくしてひたすら悪に徹底していますので、やはり見ている人には違う印象になるものなんですね。何事も心持ち一つで変わるということでしょうか。
宮本「この両チーム、WWWAタッグを目指しているんですけど」
宮本「クラッシュギャルズは堀・大森組に敗れまして」
宮本「広島では松本・ユウ組も挑戦しましたけど」
宮本「すごい反則攻撃で敗れはしましたけど」
宮本「今日は挑戦決定戦みたいなものですからね」
長与をローブ際に追い込んで凶器攻撃開始です。この凶器はなんでしょうか。鉄の光る部分が見えますが、栓抜きではなさそうです。クシか、短いヤスリでしょうか。
(胸から出し入れ自由な凶器の図)
この頃は「デビル軍団」、いやもっと前の池下ユミ直伝の凶器隠しテクニックを使いながら、きちんと凶器をお客にアピールしつつ、レフリーには隠すというジワジワ戦法で攻めています。レフリーにも「私は凶器を持っていません」アピールをします。伝統的な隠し技なわけです。
やっていることは、ビューティペア時代のブラックペアと変わりありません。ただ体型は全然違いますが。
1984年の後半から「わざわざ隠す」反則技の伝統をぶち破っていて、堂々と凶器を使う路線に切り替えていくところがダンプの新しさになるわけですが。
さてこのあとサソリ固めから場外へ。
ベビーフェイスは場内では凶器が使えませんから、場外に出るとイキイキと反則をし始めますね。
お前らは本当にベビーフェィスなのか!?
長与から放送席に連れ込んでダンプを叩きつけます。
しかしダンプもムカついたのか、机を持ち出して反撃!!
志生野アナ「放送席にやってきました。お返しだ、お返し!!」
志生野アナ「あ~あっと、ダメダメ。あーとっとっと、向こうもやられてます」
志生野アナ「これじゃ、ちょっとね。メチャクチャです」
志生野アナ「マイクがあるのに、もう!!」
ゲスト「なんなんすか、これ」
志生野アナは放送機材の心配をしているようです。ゲストの慌てぶりが笑えます。
このあとダンプのラリアートから、コーナーからのユウのつま先のギロチンで一本先取します。
すごい迫力です。
2本目
序盤からユウが捕まって攻められますが、ダンプの空き缶攻撃で流れを変えに行きます。
ちなみに凶器を渡しているのは、デビル軍団に入りたての新人の中野恵子(ブル中野)です。
(「凶器を使ってるぜぇ~」とアピールするダンプ。そうです。ただ凶器を使えばいいってもんじゃありません。お客様が「凶器を使っている」と分からないと意味がないですね)
コーナーからの飛鳥へのヒップドロップ。
ゲスト「攻めが冷静ですね」
この頃になると試合の流れはもう体に染みついているでしょうから、次に何をするのかは、松本も飛鳥も分かっていてやっている、やられているんでしょう。
そして試合は、ヒールのダンプとユウが全体をコントロールしています。ヒールは常に冷静に事を進めていきます。改名してからは、全体的に反則に振り切って変わりましたが。
長与がユウに回し蹴り→延髄切り→飛鳥がジャイアントスイング→コーナーからのミサイルキックで、ユウをノックアウト。
ここでお客様も拍手喝采で、凶悪ファイトに対する溜飲をさげることができました。
3本目
ユウのダメージが抜けきれないのか、若干鈍い出足に試合が膠着状態に入ります。
ここですかさず、試合をさらに盛り上げるために、ダンプはもう一段ヤバイ凶器を持ち出します。
放送機材を入れるジェラルミンケースでしょうか。
これは確か以前に池下ユミが使用していた凶器だったと思いますが、当たり所が悪いと死にそうに気がします・・。
志生野アナ「ああーっと、危ない!!」
志生野アナ「これはテレビ放送用の機材ですね」
志生野アナ「スパナを持ち出しました。ありとあらゆる凶器を使って」
志生野アナ「チェーンを出し、スパナをだし、ボックスを出しました」
志生野アナ「しっかりとチェーンが首に巻き付けられております」
志生野アナ「最大限にルールを利用しようというのがダンプ松本、マスクド・ユウの作戦であります」
ゲスト「ダンプもマスクド・ユウもちゃんと戦えば五分にやれるんだから、やればいいんだ」
いや、ヒールなのでそういう問題ではありません(^^;
凶器をお客様に見せなければ意味がない!! と言わんばかりに凶器アピール。5カウント以内に手放せばルール違反ではありません。ルールの網目をかいくぐっていきます。
志生野アナ「こんなことばっかりやっていたらどうしようもありません。試合になりません」
ゲスト「もう好きなようにやってますね・・」
志生野アナ「これだけ好きなようにやれたら面白いでしょう」
ゲスト「いや、面白くありませんよ」
いや、面白いですよ。何を言っているんですか、このゲストは。
そして終盤、愛嬌のある松本が戻ってきます(笑) マスクドユウがロープに飛鳥を振ったところに、よそ見をしていたダンプに当たってしまい、そのまま転落。またまたヤラかしています。
志生野アナ「アアーッと、これはうっかりしておりました!!」
志生野アナ「ダンプ松本、うっかり!!」
こういうところが、ダンプの憎めないところ。
この機会を見逃さず、飛鳥はトペから一気にダンプを場外乱闘でイスの中へ。
長与はコーナーからプランチャー。
ついでに飛鳥はマスクドユウも放送席に叩きつけて、さらに場外での危険なボティスラム。
さらに飛鳥は凶器を奪ったことをアピールし、ユウを鉄棒でぶん殴り始めます。
あなたたちは本当にベビーフェイスですか?(笑)
ベビーフェイスのほうが狂暴というか、普段は凶器でヤラレている側なので、いざ凶器を使わせると怖い怖い。
ということで試合が破たんしてしまったところで、松永レフェリーがうまくゴング。
両者反則となり、ドローとなりました。
両チームとも反則負けに納得がいけない飛鳥でしたが、そりゃ、あんただって、鉄棒でぶん殴っていたしゃないですかww
ダンプは最後の仕上げとばかりに、放送席に陣取って、机を鉄パイプでガシガシと叩きまくります。さすがにこれにはゲストも縮み上がって、駆け足で退散してしまいました。今見ると、ゲストの行動はほとんどコントですが、こういう地味な極悪行為の積み重ねが、後にダンプが日本で一番嫌われる女性になっていくんですかね。
本試合では、クラッシュミーハーファンが少ないためか、あまり凶器攻撃で盛り上がっているようには見えません。大人や男性ファンから見ると、凶器攻撃も予定調和っぽくみえてしまうためでしょぅか。やはり地方よりも、首都圏の中高女子がいるところで、「キャー!!」と言わせないと凶器も銛化上がりが半減してしまう感じがしました。
しかしながら、試合だけみると、ダンプとユウの凶器攻撃がかなりエスカレートしていることが分かります。一か月で怪物に変身を遂げつつあるダンプ。まだまだ試行段階だと思いますが、昨年までの松本香からは完全なイメチェンを果たしました。
今日の凶器 チェーン、クシ、スパナ、空き缶、放送機材用ジェラルミンケース、鉄棒