
(2022/10/15 フルハイビジョン動画追加)
(2023/2/16) 本文、画像修正
AJWW 1984/2/28 相模原市総合体育館 デビル軍団の解散の試合
Evito-X-PuroさんのYoutubeから
(再度書き直し)
32:00~ 試合の様子があります。
(↓フルハイビジョンに変換した動画です)
[AI FHD 60fps] AJW 1984 02 28デビル軍団解散 1920x1080
この試合の背景。
植田コミッショナーから「凶器禁止」令が言い渡された。これに伴い、デビル軍団のドン、デビル雅美は「凶器を使う時代は終わった」ということで、デビル軍団では凶器は使わずとも十分という雰囲気を醸し出していた。ところが、ダンプ松本、マスクド・ユウの2人だけは、デビル雅美に抵抗し、凶器を引き続き使うことで、反発していた。
こういうストーリーで見て見ください(^^; この試合だけ妙にストーリー感があります。
1984/2/28 相模原市総合体育館 デビル軍団の解散の試合を見ていこうかと思います。
この日はドン、デビル雅美とダンプの組み合わせ。
ついに金髪になりました!!! ワルそうです!!
金髪については当時のエピソードがあります。
「おかあちゃん」より----------------------------
松本香から"ダンプ松本"へただ変わるだけでは意味がない。
「青コーナー、ダンプ松本!」
そう呼ばれるだけだもんな。そんなの名前なんてお客はすぐ忘れちゃう。当時、女子プロレスではパーマはかけても金髪は一人もいなかった。これはきっとウケル。よし名前が変わったんだ。もっと目立ってやろう! 金髪になってやろう。日本人が金髪になる。社長に相談に行ったら、
「デブでも目立つのに金髪なんかにしたら、街歩くのにもっとみっともねえだろう」と言われた。
だけど、それでひるむわたしではない。「これだ!」と思ったら、人に何言われようとやっちゃう精神の私は、その日のうちに勝手に金髪に染めてしまった。そして社長のところへ行って私は言った。
「社長、これ(金髪)とダンプ松本でいきます!」
それが当たった。一夜明けたら、わたしはスターになっていた。
もしあの時、社長が「ダメだ」と言ったからって、「はい、わかりました」でやらなかったら、今の私はない。「クラッシュギャルズ」のように作られたスターは大勢いる。しかし、わたしはそうではない。「ダンプ松本」という名前を自分で生み出し、そして当時誰も考えもしなかった金髪という新しいプロレスラー像を生み出した。反対されようが何されようが、ここと決めたら絶対に引かなかった。
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この金髪、最初にお客様の前に出る時は、絶対に勇気がいりましたよね!
だって、これでお客様に笑われたら、もう終わりです。最後のカケの金髪のダンプです。
山田邦子と片岡鶴太郎もビックリ。
志生野アナ 「また今日は素晴らしいというか、迫力のあるメーキャップで登場」
志生野アナ 「山田邦子さんも思わず見惚れていますね」
鶴太郎 「すごいねぇ・・」
デビルの般若もこれで見納めでしょうか。
志生野アナ 「般若の面に紫のガウンが美しいデビル雅美」
志生野アナ 「その後ろにはダンプ松本。日々凶悪さを増しております。今日は素晴らしいというか、迫力のあるメーキャップで登場しています」
凶器はやめたといいつつ、まだ木刀は持っているデビル!
でございます。
お互いそっぽを向いて明らかに仲が悪いですw
デビルは般若で日本風、松本は革ジャンに金髪と外国風。これだけ統一感のないヒールチームもめずらしいです。
ちなみに、志生野アナの発言からするに、この日が金髪と皮ジャンのスタイルのTVでのお披露目だったのではないでしょうか。
ロックバンドKISSを参考にした顔へのペインティングは派手ではないものの、インパクトがあります。金髪に童顔。ただし髪の毛に顔が負けている感じもします。
ダンプ松本として、金髪でのヒールNo.1へと発進するこの日の対戦相手が、クラッシュギャルズです。何かが変わる日というのは、すべてが揃うものなんですね。
この頃は、関東圏ではすでに長与も飛鳥も大人気です。
ダンプのコール。本人はかなり気合が入っています。
志生野アナ「これだけクラッシュギャルズに声援が飛びますと、」
志生野アナ「デビル、松本としては面白くありません」
志生野アナ「いまクラッシュギャルズが大変な人気でして」
志生野アナ「若い少年少女のファンがついているんですよね」
志生野アナ「空手技を得意としているんですよ」
1本目
いきなりクラッシュたちをゴングと同時にストンピング攻撃。
重量攻撃にはさすがにクラッシュも厳しいか。
レフェリーは極悪の阿部四郎。このときは、松本の味方ではなく、デビル(ブラックデビル軍)の味方、という感じでしょうか。まだダンプにはついていないと思います。
志生野アナ「レフェリーは阿部四郎であります」
志生野アナ「静岡で一方的に(デビル)につきまして、徹底的に依怙贔屓をするというレフェリーで」
志生野アナ「これはフジテレビにも大変なお叱りの電話をいただきました」
志生野アナ「コミッショナーから相当長い間出場停止といいますか」
志生野アナ「しばらく試合を遠ざかっておりました阿部四郎レフェリーが」
志生野アナ「心を入れ替えて今日はリングに登場しております」
ウエダ「1/18の試合は公正を欠いたレフェリーだったので、一か月の出場停止処分にしました」
ウエダ「今日やっと解けまして、今日もレフェリーが悪かったら」
ウエダ「そのまま追放ということもありますし、長期の出場処分もあると思います」
プロレスの空気を読まないウエダ!!!(笑)
とはいえ裏を返すと、視聴者に正しいことをしているフリをしているという意味では、空気は読んでいるのかもしれませんが(笑)
(強烈なダンプのラリアート)
(雄たけびダンプ)
途中でライオネス飛鳥に対する松本のラリアット、そしてラリアットと見せかけての下腹部へのキックが決まります。
この2択はけっこういやらしいですね。
志生野アナ「いまは腕のほうを警戒してましたからね」
志生野アナ「ダンプ松本、なかなか味なことをしますね」
松本も技術向上が見られます。ラリアットかキックかの2択になるので、どちらをガードするのか相手は難しいはずです。これはダンプが全女を引退するまで、非常に効果的な技だったと思います。
三宅アナ「ファンクラブのほうも増えました」
三宅アナ「トモとゆかりの飛翔はみなさんご存知でしょうが」
三宅アナ「クラッシュギャルズ、その名前を取りましたファンクラブ」
三宅アナ「東京の方でもファンクラブが出来ています」
この頃にはクラッシュもどんどん人気が出ている頃です。松本も負けてはいられません。
技で見せつけるデビル雅美。
デビルのロメロスペシャルで飛鳥がギブアップ。1本目はデビルです。
このころはメイクの原料に問題があったのか、汗をかくと松本のメイクが落ちることが多く、素の「憎めない」頃の松本香の顔が出ることもしばしばでした。
(汗をフキフキするダンプ。コーナーにいるときは油断した顔をまだしています)
途中の場外戦でクラッシュギャルズに「頑張れ」という片岡鶴太郎に文句をいうデビルが面白いですね。
鶴太郎「それにしてもダンプが憎々しいですねぇ」
この一年後、鶴太郎はダンプとテレビでやり合うことなります。
2本目
いよいよダンプの凶器攻撃が始まります。
(マスクド・ユウから凶器を手渡ししてもらうダンプ)
志生野アナ「ここでダンプ松本にタッチいたしました」
鶴太郎「ダンプッ!!」
志生野アナ「ああーーっと、凶器攻撃だ!!」
鶴太郎「栓抜き、栓抜き!!!」
志生野アナ「ちょっと落としてしまいました。胸元から出しました」
お馴染みの栓抜き攻撃です。胸ポケットにしまうことができる便利アイテムです。
ここで凶器を落としていますが、これはワザと目立つように落としたのかは、本当に落としたのかは分かりません。
他にもチェーン、空き缶。最後にスパナ。スパナはけっこう危険な感じです。
デビルはもう凶器の時代は終わったといっていますので、凶器を使った松本を諫めにでてはきます。
志生野アナ「デビル雅美が怒っていますよ。デビル雅美が凶器を使うなということで」
志生野アナ「さかんに怒っています」
志生野アナ「このあたりは仲間割れしていますね」
志生野アナ「デビルとしては凶器を使う時代は自分としては終わったと」
志生野アナ「ところがダンプ松本、マスクドユウはいよいよ凶器攻撃がエスカレートしております」
ダンプの栓抜き攻撃に、デビルが凶器を使うなと怒るのですが、展開的にはなにか唐突です。木刀を持って登場しているのに、突然使うな、と言われてもねぇ・・。
志生野アナ「デビルとしては凶器を使う時代は自分としては終わったと、誇りがあるんでしょう」
そして場外戦となるが・・。
場外でさらに凶器を使うダンプに対して、今度は味方のデビルが取り上げにかかります。
志生野アナ「今度はダンプとデビルがやりあっております」
志生野アナ「とうとう仲間割れになった。一体どうなっているのか」
志生野アナ「完全に仲間割れ!!」
志生野アナ「デビル雅美とダンプ松本の溝は思ったよりも深いみたいですね」
ここで完全にに仲間割れ。
「凶器攻撃はするな」と突然言い始めたデビルに対し、ダンプとユウが反抗。
クラッシュのサソリ固めに対しても、マスクド・ユウが乱入して、チェーン攻撃。ユウもいい暴れっぷりです。
ここでクラッシュがダンプに畳みかけます。
トップロープからのラリアートと、2人がかりでのバックフリップで3カウントが入りました。デビルの救援はありません。見捨てたのか、デビル!!
ダンプに駆け寄るのは、マスクドユウと中野恵子のみ。このとき、まだ中野はダンプ、ユウに入門しているのではなく、ヒール側(デビル軍団)のはずなので、後輩として思わず助けに出てしまった感じでしょうか。
デビル(駄目だこいつ…早く何とかしないと)
3本目
もはやデビルと松本は仲間割れでコンビとして機能していません。ダンプがクラッシュに攻撃を受けているのに、デビルは助けません。ついにマスクド・ユウが乱入。
ユウの凶器攻撃は、なかなか迫力があります。思いっきり度では、このときはダンプよりも上だったかもしれません。 セコンドのユウvsデビルのほうがヒートアップしています。
志生野アナ「ああ~っとバケツ攻撃だ、バケツがでた~!!」
志生野アナ「これを止めるのがデビル雅美」
そして飛鳥が突然のマイクパフォーマンス。
飛鳥「なんでセコンドが手伝ってんだ」
飛鳥「マスクド・ユウ、ちゃん■ばせ◇はていにす★◇◆□」
何を言ってるのか分かりません。
志生野アナ「最近は凄いですね、チェーンを使い、スパナを使い」
志生野アナ「そして栓抜きを使い、バケツを使い」
志生野アナ「ありとあらゆる凶器を使います」
志生野アナ「デビル雅美はクラッシュギャルズよりも、ダンプ松本と・・」
志生野アナ「マスクド・ユウがキックだ。どうしたんでしょう」
志生野アナ「デビル軍団は完全に乱れきっております」
志生野アナ「デビル雅美の権威失墜!!」
このときの思いっきり度では、このときのダンプは若干デビルに遠慮しがちな感じに見えます。やはりデビルは怖かったのか。
思いっきりバケツで叩いたりするのはユウのほう。ダンプは最後で軽くチェーンでデビルの首絞めに行ってますが、そのあとは阿部四郎を相手にしており、デビルに激しい攻撃はしていません。
まだデビルに対して、このときは遠慮があったように見えますね(^^;
志生野アナ「ああーっと、デビルがやられる!!」
志生野アナ「積もり積もっていた軍団内部の不信が」
志生野アナ「いまやリング上で爆発しようとしています」
志生野アナ「思っていた以上に溝が深かったようです」
それにしてもやるときはやるって意味では、この時点ではマスクドユウのほうが光っていたと思います。その後、極悪同盟結成後、ダンプとユウの立場が逆転していくのが見ものです。
試合後にデビルがマイクを取ります。
デビル「今日の試合では凶器は使いたくなかったのですが」
デビル「デビル軍団のドンとして、松本とマスクド・ユウは」
デビル「私のこれからの意向に反しますので」
デビル「これでデビル軍団は解散したいと思います」
デビル「これからはデビル一人でやりります」
この試合だけ、男子プロレスみたいな抗争劇!! しかも唐突!!(笑)
「デビル軍団のドンとして松本とユウは私のこれからの意向とは反しますので、デビル軍団は解散します」といって、デビルはベビーフェィスに転向。
この一年後には、軍団No.4の出来損ないと思っていたダンプが、巨大台風として日本中を蹂躙し、悪の権化としてマスコミに引っ張りだこになるわけですから、人生何がどうなるのか分かりません。
今日の凶器 チェーン、空き缶、スパナ、パイプ椅子
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この試合でデビル雅美がベビーフェイスに転身しますが、その理由は正確にはわからないものの、当時の雑誌から引用しておきます。
『ダンプ松本のマジだぜ』より
「1984年になってデビル軍団の結束にヒビが入り始めた。デビルはそれまで散々トレードマークにしていた竹刀を振り回していたのに、レコードを出したとたんにいい子になってしまった。植田コミッショナーが『木刀など、凶器は一切使わせない』と宣言したら、素直に『はい』となった。そしてタッグを組むたびに、「反則をするな」「凶器は使うな」だの、ダンプ様やユウに言ってくるようになった。デビル軍団の首領が、ベビーフェイスなんかに色気を見せやがって。デビルとダンプ様の内部対立は続き、ついに1984年2月、事もあろうにデビルはダンプ様とユウを木刀で殴りつけてきやがった。これはデビル軍団の空中分解だった。そしてデビル軍団分裂のあとは、山崎五紀をつれて、ベビーフェイスに転向してしまった。当時「200キロコンビ」と呼ばれていたダンプ様とマスクを脱いで改名したクレーン・ユウは、意を決して髪を金髪に染めて『極悪同盟』を結成した。」
『思いっきり女子プロレス』の極悪インタビューより
クレーン・ユウ「デビル雅美選手と一緒に組んでいたが、デビルは私たちを裏切って一人で"いい子ちゃん"になりやがった。私たちにとって、デビルの「正統派転向宣言」ほど自分たちのプライドを傷つけられたものはなかった。私たちはデビルに教わったスタイルで試合をし、デビルを立てて試合をしてきた。それなのになんで急に自分だけ「凶器は使わない」なんて言い出せるんだ。第一、木刀を最初に使いだしたのだってデビルじゃないか。」
『女子プロレス物語①』より
デビルの胸中はどうだったのか。
「空手殺法で革命を叫ぶクラッシュギュルズに、この試合では意地でも技と力で勝負したかったです」 デビルは先輩の意地をかけていた。だから試合前から、松本には"凶器攻撃禁止"を警告していたのだ。だが松本は・・・。リングサイドに造反の盟友、クレーン・ユウをセコンドとして待機させ、ユウとの共闘でデビルのクリーンファイト指令を完全に無視した。そこには「悪名」を売る野心がありありだった。チェーンを片手にやり放題。ついにデビルは木刀を持ち出し、松本に応戦という仲間割れとなり、デビル軍団はここに解体した。「松本のユウが私のと言うことを聞かなくなった。もう軍団の維持はできません。今日限りで解散します」。汗をしたたらせながら、氏家リングアナのマイクを奪って宣言したデビルの顔からは血の気が引き、顔が引きつっていたのが、今でも強い印象となって脳裏から離れない」
(1983年頃のデビル軍団 松本もユウも、ヒール面はデビルに育てられた)
この一連の話を聞くと、デビル雅美が1984年にベビーフェイスに転向したのは、「燃え尽きるまで」、「デビル・命の限り」などのレコード発売の後、販売元のトリオレコードからのデビルに対する要望を会社が受けての行動だったという可能性があります。
また、本人もベビーフェイスへの転向を希望した可能性も高いです。なにしろ当時はヒールはベルトが取れないし、ベストマッチにも選ばれません。デビルは比較的華がある選手で、テレビにも出演していた人気選手ですが、やはりヒールはヒールです。ヒールの限界を感じていた可能性があります。
デビルはベビーもヒールも器用にこなす、レスラーとして完成された技術も持っていました。いつかはマジソン・スクウェア・ガーデン(アメリカ)の舞台に立ちたい。その目的のためにも、ベビーフェイスに転向し、レスラーとしての完成を目指していたのかもしれません。
さらにクラッシュギュルズの台頭。クラッシュギュルズは、それまでジャガー横田やデビル雅美が守ってきた伝統の"プロレス"のルールを壊し、本気で急所に蹴りを入れるというシュートスタイルを売りにしてきました。その新勢力に対抗すべく、クラッシュギュルズに対抗した"伝統あるプロレス"を守り、自分の存在感を維持していたい、自分の延命策を計っていた可能性もあります。
さらにもうひとつベビー転身に思い当たる節があります。それはパートナーのタランチェラのケガによる引退です。
神聖クラッシュギャルズより
デビル雅美 「タランチェラは結果的にはケガでやめていったけど、あの子のチャンスを自分のいいように使って、あの子の実力を出してあげられなかった。タランチェラは私のためにケガをしてレスラーをやめなくちゃいけなくなった。だから山崎五紀はやりたいプロレスを一人前にしてそれを前に出してあげたい」
つまり、自分の影に隠れて引退を余儀なくされたタランチェラに心が痛み、ヒールとしてではなく、山崎を育てるためにベビーに一緒に転身した、という可能性もあります。
なんてったって女子プロレスより
「悪役に徹していてもデビルにはデビルなりの悪の哲学があった。竹刀で相手を打ち据えても、それは無差別攻撃ではなく、人間の持っている悪の本能をマットの上で表現する手段のひとつだというのである。リングであくまで相手を痛めつけるダンプやクレーンとは、考え方のうえで大きな差があった。デビルが木刀を捨てるといったとき、顔色を変えて反対したのはダンプとクレーンだった。59年2月、デビル軍団は解散する。デビルは無差別凶器攻撃を主張するダンプとクレーンを切り、いままでの悪役では表現できなかった、新しいタイプのレスラーとして生まれ変わった。『悪役は悪役である。喜怒哀楽を素直に表現することは許されない。いつも少しずつの不安と疑問を重ねてきた。私の一番側に居たデビル軍団の選手達もそれを感じ取っていたと思う。そんな私に付いてこれなくなったダンプとクレーン。いまは善も悪もない。個性の時代である。これから私は自分の思うがまま、自分の信ずる道を進みたい』」
上記の文章から察するに、デビル雅美は「デビル軍団」を率いることに疲れたとも思えます。
ここで重要なのは、デビルのパートナーだったタランチェラの離脱です。
No.2のタランチェラは、レスリングが上手い大人のヒールレスラーでした。そのあとにNo.3のユウ、No.4の松本、No.5の山崎五紀と続いていました。このとき意外とデビル軍団は人材不足でした。
No.2のタランチェラが離脱すると、デビルのパートナは自動的に、凶器攻撃がメインのマスクド・ユウか松本になります。しかしデビルが今後目指すプロレスは、ヒールでもテクニックを使うレスリングが出来て、いざここ一番で"凶器"を使うというものでした。ユウと松本ではそのテクニックがいまひとつない。重量攻撃、パワー攻撃だけ。そう考えたとき、もうデビルには「デビル軍団解散」しか選択肢はなかったように思えます。
とはいえ、マウクド・ユウは受け身も上手いので、なんとかパートナーに耐えられるかもしれなかったです。しかし一番気に食わなかったのは松本香だったのかもしれません。ただ太っているだけで技がない。美しくもない。デビル曰く「松本、お前は痛くても『痛い』っていいながらエクボが出来て笑ってる。何笑ってるんだよ、小人プロレスみたいだな、お前は女小人だ」
デビルが特に面倒を見たくなかったのはおそらく松本なのではないかと思います。太っているから練習させてもすぐに根を上げる根性なし。体重が重いくて技がない。自爆技すらできない怖がり。ヒールとしてタランチェラがいなくなった今、山崎五紀は引き取り、そのまま松本とユウは勝手にヒールでやれ、という風に投げ出した、と考えるのが一番しっくりきます。
当時のデビル雅美のインタビューが一つだけ見つかったので記載しておきます。
週刊サンケイ(85.5.3より)-------------------------------
デビル「ダンプとは前にデビル軍団を組んでいた時、一緒にやっていましたが、そのころはまだ悪役になり切れないというか、凄味がなかったですね。童顔なんで、反則をしても、お客さんが笑っちゃったりするんです。だからメークに気を付けて、もっとどぎつく見えるようにしたほうがいいと言ったら、最初は嫌がっていたけど、だんだんどぎつくする様になっていったんです。
技や反則の覚えは、ハッキリいって悪かったですね。そのころのデビル軍団にはタランチェラとか、特に覚えが早いのが一緒にいたから、余計にそう思えたのかもしけないけど、ダンプとユウは器用じゃなかったですね。でも、ダンプも長年やってきて、最近やっと自信を持ち始めたみたいですね。試合経験とか、自信を持つきっかけは色々あったんでしょぅが、ここにきて、やっと自信を持つようなんったという感じです。
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上記の文書を読むと、それほどデビルは松本を嫌っていたわけでもなさそうですが・・(^^;
正直嫌いだったのかは分かりませんが、85年のインタビューの頃はまだ悪役として人気が出始めた頃なので、ヒガミもあまりなかったのかもしれません。
ちなみに、デビル雅美のインタビューの中でのベビーフェイス転向についてのインタビュー記事はいまのところみつからないので、見つかり次第追記しようと思います。(ぶるちゃんねるで是非ブル様にデビルに聞いてほしい)
なお、本試合を雑誌「エキサイティングプロレス」1984年4月号が取り上げていますので、下記のブログに記載しました。