1984/3/17 桐生市民体育館 メガトンコンビに、覆面マネージャーのザ・ベートーベンが初登場

AJWW 1984/3/17 桐生市民体育館 覆面マネージャーのザ・ベートーベンが登場

Evito-X-PuroさんのYoutubeから

 

35:00過ぎあたりから

 

(↓AIでフルハイビジョンに変換した動画です。試合だけを切り抜いたものです)

[AI FHD 60fps] AJW 1984 3 17 桐生市体育館 ダンプ・ユウvsデビル・山崎リンクyoutu.be

 

 

 

 

1984/3/17は「女子プロレス40年史」によると、「極悪同盟」が結成された日らしいです。

ただ、そう記載されているだけで、この日の試合に「極悪同盟」という言葉は一切出てきません。「メガトンコンビ」という説明もありますが、これも正式名ではないようです。6月に発刊されたリングスターには「ザ・ジョーズ」と記載されていて、「極悪」の文字は一切なし。

ダンプは「極悪同盟」という名前を当初から決めていたが、それが広報に伝わっていなかっただけなのか。それとも3/17時点ではまだ決定していなかったのか、わかりません。

(色々と見ていくと、おそらく決まっていなかったと思われます)

 

なお、この試合には多少ストーリーがあります。

下記の2/28のデビル軍団解散で、デビル雅美から離脱したダンプ松本とマスクド・ユウ。彼女らは2人で凶器攻撃を多用した無法なレスリングを開始します。そして今回の対戦は、元ボスであったデビル雅美との因縁の試合。ダンプとユウの怒りが爆発する・・という具合です。

↓その試合はこちら。

『1984/2/28 デビル軍団の解散、ダンプにチャンスが巡ってくる。金髪のヒールNo.1へ発進』(2022/10/15 フルハイビジョン動画追加)(2023/2/16) 本文、画像修正 AJWW 1984/2/28 相模原市総合体育館 デビル軍団の解散の…リンクameblo.jp

 

さて入場です。

 

 

 

マスクド・ユウのテーマ曲(元はマミ熊野のテーマ曲)に乗って、松本・ユウのペアの入場です。

このころはまだ極悪の代名詞ともいえる「ブラックデビルのテーマ」は使われていません。使われているのは、おそらくマスクド・ユウの入場曲だと思います。

(ちなみに入場曲は男子プロレスよりも、女子プロレスのほうが導入が早かったらしく、元を辿ればビューティペアのときからだそうです)

会社側の序列としては松本の次にユウのはずですが、この序列すら、まだ決まっていなかった可能性もあります。特にどちらがNo.1かというのも志生野アナの口から出てきません。

→と思ったら、ぶるちゃんねるのクレーンさんの動画で、最初からダンプ、ユウの順番だったと話していました。

 

今回は和風だったガウンを変更し、いよいよ革ジャン、金髪、メイクの三種の神器が使われます。「ザ・ヒール」によると、「ダンプ松本に改名してから、髪を金髪に染めた」と書いてありますが、すぐに染めたわけではなく、2月のデビル軍団の解散前の試合から染めたようです。

KISSというロックバンドをモチーフにしたペイントはまだ派手ではありません。

 

 

 

この時期から、ダンプとユウの入場時には、リングサイドを一周し、会場中にガンを飛ばしながら、放送席を襲撃してマイクをぶっ壊す。机を投げ飛ばす、というパフォーマンスを始めます。おそらくデビル軍団のときは入場時の放送席襲撃はしていなかったはずです。

世界でも例があるのか、私はそれほど詳しくないのでYoutubeで調べました。

 

1983年頃のアメリカWWEの試合をYoutubeで色々と見てみたのですが、入場時にリングサイドを一周して放送席を襲う、またはホールの観客に因縁をつけるというのは見当たりません。(どこかにあるかもしれませんが・・)

WWEでは、試合前に別室でのインタビューで「今日はお前をぶっ殺してやる」みたいなパフォーマンスをして、そのままリングまであがります。女子プロレスもメインではありません。WWEの試合をみると分かるのですが、観客も中高校生のようなミーハーファンではなく、プロレスラー並みにガタイのいい男性が多く、観客席にはかなり頑丈な柵があります。アメリカは銃社会でもあるため、レスラーと観客の間に警察官または警備員が多数おり、暴動にならないようにしている感じもあります。また、常にテロップで「このようなマネはしないでください」と注意書きがされています。

アメリカの地方興行では別のパフォーマンスもあるのかもしれませんが、テレビ放送されるような試合では、少なくとも、ダンプ松本が始めたような、入場時の襲撃パフォーマンスは見つかりませんでした。

 

日本の全日本プロレス、新日本プロレスでは、入場時からエキサイトして観客にパフォーマンスを始める、または相手と場外でいきなり乱闘というのはありますが、放送席を毎回襲撃したり、稲川淳二のようなお笑いゲストを叩いたりというのはないと思います。男性がこれをやると、完全な弱い者イジメに見えるし、格が落ちるからでしょうか。これは女性であるダンプ松本がやるからこそ面白い、女子プロレスの特権的なパフォーマンスだったのかもしれません。

(タイガージェットシンが熱狂してリングに上がった観客を殴ったという有名な試合があるそうですが、会社のスタッフが変装して殴られたと高橋本に書かれていました)

 

 

(放送席を襲撃するザ・ベートーベン、ダンプ松本)

 

ここから志生野アナの名解説をお聞きください。

志生野アナ「ゲストの鈴木ヒロミツさんの顔面が紅潮しております」

志生野アナ「いま登場は、ダンプ松本、マスクドユウであります」

志生野アナ「悪の限りを尽くしております。極道に徹しております」

志生野アナ「今ゆっくりと場内を睨むようにして、リングサイドを回っております」

志生野アナ「異様な雰囲気だ、異様な雰囲気だ!!」

放送席をめちゃくちゃにするダンプ。

志生野アナ「なんということをするのか(怒)」

志生野アナ「ちょっと宮本さん、けしからんですね」

志生野アナ「これじゃ、お客様に対しても」

志生野アナ「これ、もう鎖でやるんで、気を付けてくださいよ」

志生野アナ「大変なご挨拶でありました」

志生野アナ「ダンプ松本とマスクドユウはいまは本当に過激にエスカレートしております」

鈴木ヒロミツ「僕は松本はもっと愛嬌があると思っていたんですけどね」

志生野アナ「いやぁ、愛嬌がありませんですねぇ」

 

志生野アナの名解説、今再び聞きたいです。

そしてようやく志生野アナからも「愛嬌がない」と言われるようになりました。ダンプにとっては嬉しい一歩前進です。

 

 

 

志生野アナ「ちょっと待ってくださいよ」

志生野アナ「リングにマスクをかぶったの、誰ですか?」

宮本「マネージャみたいですね」

志生野アナ「ダンプ松本、マスクドユウ、そしてもう一人覆面レスラーがあがっております」

志生野アナ「いやもう桐生市民体育館、お客様はビックリした表情で見つめております」

 

 

 

テレビ初登場なのかは分かりませんが、志生野アナの発言からすると、どうやらこの桐生市体育館の試合が、ザ・ベートーベンの初登場という感じに見えます。

 

正体はロッシー小川らしいですが、今回はザ・ベートーベンは何者なのか、当時の資料から見ていこうと思います。下記のリンクに記載しました。

 

『1985/4月 ザ・ベートーベンのインタビュー(好きだぜコノヤローッ!!より)』1985/4/15発刊の「女子プロレス スペシャル 好きだぜコノヤローッ!!」にザ・ベートーベンのインタビューがありますので、記載しておきます。こちらの記事、…リンクameblo.jp

 

 

女子プロレス まいったかコノヤローより 1985年8月

小川『最近、リングに登場しないのは何か理由があるんですか?』

ベートーベン『それはダンプが一人前になってきたからだ。私は長い間プロレスに接しているが、これほどの短期間で急成長を遂げたレスラーははまずいないだろう。もはやミーハーのアイドルでしかないクラッシュの仕事がめっきり減ったというじゃないか。まぁ、メッキは剥がるものだ。私はアベのようにいつまでもダンプにしがみついているのとは違う』

小川『これ以上、あなたが出てくることは無意味です。リングはレスラーが命をかけている神聖な場所なんですよ。そこにあなたや阿部四郎が出てくることは女子プロレスの将来のためにならない』

ベートーベン『女子プロレスのためにならないのはお前らのことだ。ちょっと人気があがってきたものだから、浮かれすぎているんじゃないか。それは極悪同盟以外の選手全員にいえることだ。クラッシュにしてもジャガー、デビルにしても、レスラーではなくコメディアンのようなものだ。あいつらの試合内容を見てみろ。全然向上心がないじゃないか。クラッシュは芸能の仕事をすぐにやめされるべきだ。あいつらプロレスに覇気がない。「女子プロレスの流れを変える」と公言しているが、それなら歌など唄ってチャラチャラするな。真のレスラーなら、プロレスで勝負するべきだ』

小川『でもダンプだってCMやドラマに出ているじゃないですか』

ベートーベン『それは金のためだ。ダンプは好かれようとしてやっているんじゃない。すべて金のためだ』

 

さて、話を試合に戻します(相変わらず前置きが長くてすみません)

 

選手紹介から始まります。まずデビル雅美に異様な紙テープが舞います。

 

 

 

志生野アナ「デビル雅美にこれほど紙テープが飛ぶんですよ。ねぇ、変わりましたでしょ、雰囲気が」

 

少し前にはデビルに紙テープはあまりなかったと思いますが、ミーハーファンが増えたことにより、ダンプ・クレーン組の相手となる選手には常に紙テープが舞う状態となります。

別にミーハーファンが悪いとは思いません。この当時の人気を支えていたのは、中高生のファンですから、彼女らが紙テープを投げて盛り上げて、日本でブームになっていったのです。ですから、ミーハーファンは当時の女子プロレスのマジョリティであり、いつの時代も社会で認められるにはとても重要な存在なのです。(むしろ、いまのプロレスには自称プロレス通しかいなくて、若いミーハーファンがいないのが気になります)


さて、ゴングが鳴る前に、ダンプとユウのデビルに対する怒りが爆発します。

なにしろ、2月に勝手にデビル軍団を解散し、自分はベビーフェイスに転向した裏切り者です。ダンプはともかく、ユウは特にやる気満々です。

 

 

 

 

 

ダンプ、クレーンともにかなりヒールっぷりが板についてきました。やはりヒールは先制攻撃が非常に重要です。常にヒールが試合を作るのが常道ですから、ダンプ、ユウのコンビの暴れっぷりはかなり良い感じになっています。

山崎は場外に放り投げられて、ザ・ベートーベンに捕まります。

 

 

 

なんだかんだでロッシー小川は男性なので、やはり力がありますね・・。

デビルはガウンを脱ぐ前に、ストンピングの嵐です。さらに2人にロープに振られて、その後鎖攻撃。山崎が助けに戻りますが、すぐに場外にはじき出されて、またザ・ベートーベンに捕まります。もはや山崎は空気です。

 

 

 

志生野アナ「マスクドユウとダンプ松本に一人、覆面がついていますでしょ、あれは誰だか分かりますか?」

リポーター「いえいえ、本部席を通りましたが、分からないんですよね。今調べてみます」

リポーター「志生野さん、白いブレザーの正体ですがね」

志生野アナ「はいはい」

別のアナ「メキシコからやってきて、最初はダンプとユウのマネージャ志願をしてらしいんですね。それでつい最近採用されたと・・・」

 

メキシコからの刺客!!!  これは当時はインパクトがありましたね。

そもそも「メキシコってどこよ?」って感じの時代ですから、正体不明のマネージャの出生地としては良い設定です。

しかしリポーターは、誰にこの情報を聴いたのでしょうか。極悪のダンプもユウも試合をしているので、誰も知らないと思いますが。(笑)

 

 

(意外と細かいキック技が冴える)

 

 

(とにかく、凶器、凶器、凶器の嵐)

 

志生野アナ「今日はちょっと試合になりません」

志生野アナ「覆面のセコンドが入ってますからね。果たして許させていいんでしょうか」

志生野アナ「山崎五紀ではちょっと相手になりません」

 

1本目はスパナ、チェーン、空き缶、栓抜きなどを使って、徹底的にデビル攻撃しますが、バケツを松本に誤爆してしまい、そのあとは山崎のミサイルキックが決まってユウがフォールされます。

 

2本目。

今度はダンプが手にチェーンを巻いて、デビルと山崎を攻撃。

 

 

 

志生野アナ「ダンプがなにか手に巻いている!!」

志生野アナ「なんですか、あれは」

志生野アナ「完全に凶器であります」

 

 

(ついにベートーベンまで乱入)

 

お客様からは「なんとかしろ!!」とヤジの嵐。これだけ観客を本気にさせる、ダンプとユウの凶器攻撃が凄いです。ヒールが板についてきた証拠です。モノやトイレットペーパーが飛び交います。物凄い盛り上がりです。いまだとリング内にモノが投げ込まれるなんて、ありませんからね。昭和のこの時期って本当に面白かったと思います。凶器攻撃が出るとエキサイト度が違います。

 

 

 

念のためこの時期は凶器攻撃をしても、いちおう阿部四郎もカウントを、たまにですが取りますので、カウント5できちんとやめています。とはいっても、ベートーベンの巧みな誘導によって、凶器攻撃はやり続けます。

極悪の特徴としては、集団戦法によって凶器攻撃をし続ける、というものがありますが、最初は松本、ユウ、ベートーべンの3人でやっていましたね。

 

志生野アナ「どうしようないですね。カウント5でいちおう手は離しているんですけどね」

志生野アナ「とにかく凶器が何種類あるかわかりません」

志生野アナ「大変なマネージャーです。死の商人という感じですね」

志生野アナ「しかしデビルがこんな風にやられるなんて考えられないですね」

 

鎖のラリアットで2本目をとりました。

凶器で一本を取るのはどうか、と放送席は話していますが、これだけエキサイトさせているんだから、ヒールに一本取らせないと盛り上がりませんしね(^^;

 

 

(山崎は鎖付きのラリアートの前にグロッキー状態)

 

 

 

お客様「レフリー変えろ!! レフリー変えろ!! レフリー変えろ!! レフリー変えろ!! 」

 

トップロープのてっぺんに腰を掛けて、中野恵子と話すダンプ。

極悪にスカウトしようかな~とこの時から考えていたのかも。

ようやくヒールとしての貫禄が出てきました。

面白いのは常にお客さんからモノが飛んできていて、それをいちいち除けて睨み返すダンプですね。この結成時点で、極悪同盟はかなり嫌われていて、ダンプとしてはいいスタートを切っているのではないでしょうか。

 

 

 

先ほどの鎖攻撃で、山崎は負傷のため戦えず、控室へ。完全に空気です。

デビル一人で戦うということになります。

 

 

なぜかクラッシュ・ギャルズが乱入して、ダンプとユウをサソリ固めに。

この試合は元デビル軍団の抗争なんだから、入ってこなくていいです。(^^;

トンパチ娘は目立とうとばかりしていて、困ります。

 

 

 

デビルは禁断の木刀を持ち出します。

そして覆面マネージャをリング内にひきずりだしてし、木刀攻撃。

このときのベートーベンの両手をあげるバンザイポーズも、なかなか板についていて笑えます。

デヒルは全員を木刀でぶん殴ります。

 

志生野アナ「ついにデビル雅美、禁断の木刀を持ち出しました」

志生野アナ「あ~、マネージャをリング内に入れた! 」

志生野アナ「ついに木刀をだしました。このところ木刀は出しませんでした」

志生野アナ「デビル、完全に怒りました」

志生野アナ「そしてクラッシュギャルズも入りました。鉄拳制裁であります。木刀制裁」

志生野アナ「ダンプ松本、鉄の箱を持ち出しました」

 

 

 

この試合、デビルが木刀を持ち出しましたが、ベビーフェイスに転身したならば、木刀は出さなくても良かったもかしれません。まぁ、会場は盛り上がりましたけどね。

やっぱりデビルにはヒールと木刀が似合っています。それを証明しちゃう感じになりますし。

 

次々に木刀で打ちのめすデビルに対し、その上を行くのがダンプ。この木刀を予測して、鉄のジェラルミンケースで木刀攻撃をすべて防ぎきってしまいます。

 

このジェラルミンケース、一体なんなのでしょう? 木刀で叩くと物凄いホコリが出ているんですが・・(笑) どこかの倉庫にあったホコリを被った機材を急いで調達したんですかね?

木刀をこんな形で防ぐとは、どこまで頭の切れるダンプさんです。

ヒールとしての頭の使い方が出来ていています。

 

 

 

ダンプもついてにデビルに対して思いっきり鎖攻撃をかまします。デビルに対して吹っ切れた攻撃を始めたダンプ。いい感じです。

 

 

ベートーベンは木刀を奪って逃走。

そのまま鎖をリングポストにぐるぐる巻きにして、動けないようにして場外カウントアウトで極悪同盟の勝ち。

 

 


前回の試合ではデビルに多少ビビリ感があったダンプですが、今回は汚名返上と言わんばかりに、デビルに臆することなく容赦ない攻撃を繰り出しました。木刀を防いだのが笑えます。

結局、無効試合と認定されましたが、ダンプとユウの徹底的な反則攻撃に場内はヒートアップ。

 

 

 

デビルは最後まで完全にキレましたね。

試合が終わっても裁定が納得できなかったらしく、ついにパイプ椅子を手に取って、ザ・ベートーベンと阿部四郎を滅多打ち。これって、本当にベビーフェイスなんでしょうか・・。

 

志生野アナ「このマネージャーがね、今日の元凶なんですよ」

志生野アナ「この人がでてきたので、試合が面白くなくなりました」

 

志生野さん、何を言っているんですか。ベートーベンが出てきたから、こんなに試合が盛り上がっているんじゃないですか。本日の主役はダンプとユウ、そしてベートーベンですよ。

桐生市民体育館のお客さんのヒートアップ度が物凄いですもんね。

 

しかし、これだけ会場をエキサイティングにできるダンプ松本とマスクドユウ、そしてベートーベン。極悪同盟(メガトンコンビ)としての船出としては最高の戦いだったのではないでしょうか。

 

 

今日の凶器 チェーン、バケツ、栓抜き、空き缶、ジェラルミンケース