
(2023/7/22 Youtube試合映像があると教えていただきました。試合内容と画像を追記)
kadaveriさんのYoutubeより
1984/4/1 WWWA世界タッグチャンピオンへの挑戦権をかけてのタイトルマッチ
クラッシュギュルズvsダンプ松本・マスクド・ユウ
(↓試合映像 ソースが綺麗ではないのであまり綺麗にならないです。)
↓綺麗な映像です。ただし途中まで。
(「翔べ!! クラッシュギャルズ」というビデオに1本目と2本目の途中までが収録されていました。肝心な部分がないのですが・・)
この試合は、ダンプ松本改名後、おそらくクラッシュが初めて血まみれになった試合だと思います。
簡単にこの試合を要約すると、「ダンプ組はザ・ベートーベンを帯同させて登場。2本目に場外で千種がダンプに髪の毛をハサミで切られ、額も割られて出血。3本目に飛鳥がユウの覆面をはがすと、ダンプが激怒し、大暴れ。飛鳥は頸椎損傷、千種は右ヒザ負傷でレフリーストップ負け」
という感じです。
この試合でマスクド・ユウはマスクを剥ぎ取られて、クレーン・ユウに改名して素顔になりります。
ライオネス飛鳥に至っては、かなりこの試合がショックだったようで、後々までけっこう引きずった試合になったようです。
ダンプとユウは、ザ・ベートーベンに帯同されての入場。
志生野アナ「ライオネス飛鳥、長与千種がいま入場してまいりました」
志生野アナ「大歓声であります。今日のスタイルは変わってますね」
宮本「パンタロンを履いていまして、リングシューズがありません」
宮本「サンボの靴というか」
志生野アナ「宮本さんの解説の最中だったんですが、なんという乱暴狼藉でしょうか」
志生野アナ「放送席の机はめちゃくちゃ」
志生野アナ「いまゆっくりと入場してまいりましたのは、ダンプ松本、マスクド・ユウであります」
志生野アナ「クラッシュの圧倒的な人気に、内心は穏やかではありません」
志生野アナ「騒然としております、後楽園ホール」
志生野アナ「この前の試合からついているマネージャは何者ですか?」
宮本「全く正体不明でして、何を聞きに行っても一切ノーコメントですから」
宮本「松本、マスクドユウを、どういう状態で自分の配下に収めたのか分からないですけど」
宮本「彼女たちをコントロールして何か作戦を練っているようですけどね」
(クラッシュはパンタロンスタイルでの登場です)
ダンプとユウにも、ほんの少しですが紙テープが投げられています。これは本当のファンなのか、クラッシュのファンが嫌がらせで投げているのか!?
1本目
いきなりの場外乱闘。
ザ・ベートーベンの場外の無差別攻撃、ダンプとユウの無法ぶりといい、かなりこの試合のヒールチームはかなり気合が入っています。
そして序盤から鉄パイプを使った凶器攻撃。
志生野アナ「早くも凶器攻撃、鉄棒ですね」
宮本「レフェリーはもうちょっと強行に注意しないとダメですね」
志生野アナ「このレフェリーは何か動きが鈍いんですよね」
志生野アナ「やることが一方的」
志生野アナ「いまも目には見えないんですが、何か凶器を持っているんですよ」
志生野アナ「ですからダンプ松本、マスクドユウの場合は常に凶器攻撃ですね」
志生野アナ「それ以外はありません」
志生野アナ「しかしデビル軍団を離れて一匹狼というか、そういった感じになっていたんですけど」
志生野アナ「いまや2人の団結はすごいですね」
宮本「あとマネージャですね。3人が合体したのはいままでとは違いますね」
この頃のダンプは、まだおかっぱの金髪です。
1本目、ダンプのラリアートが飛鳥に入って、3カウントで先取します。
志生野アナ「今度は完全にカウントが入りました」
志生野アナ「おかしい、あっという間にカウントスリーであります」
ものすごい数のゴミがリング内に投げ込まれています。
みんなダンプとユウ、マネージャ、阿部四郎にムカついている証拠です。
ここまでお客様に憎まれるダンプチームは、いまのところ100点でしょう。
2本目
志生野アナ「松永審判部長が出てまいりました」
松永審判部長「これは正当じゃない!!」
松永審判部長「俺がやる!!」
志生野アナ「1本目はどうなっていますか?」
志生野アナ「収拾がつきません」
志生野アナ「やっと阿部レフェリーが控室に押し戻されるように帰りました」
ウエダ「いまの一本目の判定はしょうがないですけど、判定がおかしいとのことで変えました」
志生野アナ「一本はダンプ松本、マスクド・ユウが取ったということで、これから2本目です」
松永審判部長がしゃしゃり出てきました(笑) 予定通りか?
「一本目の判定はおかしいが、取ってしまったのでダンプチームが先取」というウエダも、よくよく考えると支離滅裂な発言をしています。
2本目、レフリーが松永審判部長に交代するが、相変わらずのチェーン攻撃。
凶器攻撃を失った極悪チームは一時的にダンプが捕まりますが、場外へエスケープ。
お客様「カーエレ!!(マネージャ) カーエレ!!(マネージャ) カーエレ!!(マネージャ) 」
お客様「カーエレ!!(マネージャ) カーエレ!!(マネージャ) カーエレ!!(マネージャ) 」
ロッシーもマネージャとして大活躍の一戦ですね。ここまで活躍した試合は他にはないかも?
ダンプのハサミ攻撃が長与にさく裂。長与はここで出血。
ハサミを使ったのはこの試合が初めてかもしれません。
それだけダンプの意気込みを感じます。
志生野アナ「ダンプ松本、凶器を持って登場だ。ああーっとなんだろうか」
宮本「ハサミですね」
志生野アナ「しかも先を使いましたね」
志生野アナ「ダンプ松本のハサミ攻撃が飛んだ」
志生野アナ「これはよくありませんね」
志生野アナ「ああーっと、髪を切る! 髪を切る!!」
志生野アナ「ダンプ松本がなんと長与千種の髪を切りました」
志生野アナ「これは許されることではありません」
志生野アナ「ハサミで顔面を切り、頭を切り、最後は髪を切るという暴挙!!」
さらに髪切り。こうなるとクラッシュファンもヒートアップ。もう「ダンプ=悪」という印象しかなくなってきます。
ザ・ベートーベンの駅弁抱っこから、ダンプとユウがヒップドロップ。
なかなか珍しい場面です。というか、マネージャ乱入を許している時点で、もうリング内はめちゃくちゃです。審判部長はなにをやっているのか?
ロッシーもクラッシュ売り出しのために、イジメまくっています。
ダンプがトップロープからボディアタックを決めています。激レアなシーンです。
トップロープに昇ること自体がほとんどありませんからね。
それだけ、この試合は極悪売り出しの命運がかかった、大一番だったと思われます。
ここで長与にスリーカウントが入ったかに見えましたが、ダンプチームの反則負け。1本目を取っているので仕方ないです。
志生野アナ「ついにゴングがなりました」
志生野アナ「お客様が黙っておりません。反則を取りました」
志生野アナ「ついに審判部長、松永俊国が反則をとりました」
松永「マネージャに退場を命じます!!!」
志生野アナ「当たり前ですねぇ」
志生野アナ「このマネージャが退場しない限り、正常な試合はできません」
3本目
さて勝負の3本目です。
突然飛鳥がマスクド・ユウのマスクを、ハサミで切り始めます。
一体何事?? というくらい唐突に始まりましたね。
志生野アナ「ああー、マスクに手をかけました」
志生野アナ「マスクを切りました。これは普通はやってはいけないこと」
志生野アナ「とうとうマスクドユウのマスクにハサミが入りました」
志生野アナ「ライオネス飛鳥、怒った」
志生野アナ「マスクドユウとしては、試合に負けるよりも辛いことでしょうね」
宮本「しかし飛鳥が反則になりますよ」
ところがマスクが頑丈なためか、なかなかマスクを脱がすことができません。
おそらくマスク外しは決定事項だったと思うので、予定ではスパッと脱がす予定だったと思われます(笑)
あまり時間がかかると、ダンプがなぜ阻止しないのかというヤラセ感が出てしまうので、急ぎたいところです。
志生野アナ「ああーっと、マスクドユウ、とうとうマスクを脱ぎ捨てました」
志生野さんが、ユウの素顔についてもっとツッコミをしても面白かったように思いますが、あまり触れられていませんね。「これは、あの本庄ユカリ選手です!!」なんて言えばどうだったんでしょう。もっともミーハーファンは「本庄ユカリ」と名前を言っても誰だか分からないと思いますが。(^^;
そして飛鳥がユウをジャイアントスイング。
ここでアクシデントが発生。
ジャイアントスイングで飛鳥のヒザが抜けました。技をかけたほうがダメージを喰らってしまいます。
スローでよく見ると分かります。最後の一回転のときに足を痛めています。
ここで飛鳥が脱臼して完全に使えなくなってしまいます。
さらにダンプが追い打ちをかけて額を割りに行きます。
志生野アナ「試合はどうなったか」
志生野アナ「向こう側ではライオネス飛鳥がロープに(足を)結わえられていますよ」
志生野アナ「逆さづりにされました」
志生野アナ「しかもライオネス飛鳥の顔面からは血が流れております」
志生野アナ「本当にどうしようもない無法攻撃であります」
志生野アナ「ほとんど失神状態の長与千種、またもロープに宙づり」
志生野アナ「ライオネス飛鳥の足は脱臼しております」
志生野アナ「審判部長の松永俊国が入りましたが、どうしようもありません」
ここでなぜか入ってくるデビル。
デビルはヒールでもベビーでもない第三の路線を歩むのではなかったのか!?
志生野アナ「とうとうデビル雅美も入って参りました」
志生野アナ「ジャガー横田も入って参りました」
志生野アナ「全日本女子プロレスは完全にダンプ松本、マスクドユウに対して」
志生野アナ「全員が総攻撃を仕掛けております」
ここでゴング。
ここまで荒れた試合もなかなか無いでしょうね。
飛鳥は脱臼で戦闘不能、長与はいつの間にか謎の失神、マスクド・ユウのマスクがはぎ取られる。無傷なのはダンプだけです。
志生野アナ「さぁ、松永審判部長」
松永審判部長「試合続行不可能となりました」
松永審判部長「左足が完全に脱臼していますので」
松永審判部長「これ以上はレスリング生命にかかわります」
松永審判部長「もう二度とリングにあがれなくなりますので」
松永審判部長「残念なことに今日の試合は負けとなります」
志生野アナ「そうしますと、試合続行不可能ということで」
志生野アナ「勝ったのはダンプ松本、マスクド・ユウということですか」
志生野アナ「いま改めて審判部長がダンプ松本、マスクド・ユウの手をあげましたが」
宮本「途中棄権ということでしょうね」
志生野アナ「その前に同じレフェリーストップとしても、反則ということもありますしね」
志生野アナ「これは取られておりません」
志生野アナ「お客様が納得がいきません」
あれだけ「俺がやる!! 正当じゃない!!」と言っていた松永審判部長の手のひら返し!!
そりゃお客様は納得しないでしょうね・・これww
とてもインパクトのある試合です!!
クラッシュファンが増加、「極悪は殺せ!」は、この試合から始まったと言って良いでしょう。
今見ても非常にスリリングな死闘で、凄惨さもあります。極悪チームとしては完成度の高い試合の一つだったんじゃないでしょうか。
今日の凶器 鉄パイプ、チェーン、ハサミ、栓抜き
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全体は「女子プロレス物語」から見てみます。は山崎照朝さんの著書ですが、かなり脚色してあるので、参考程度にした方が良いと思います。
(女子プロレス物語より)
女子プロレスストーリーより----------------------------
金と名誉、これは勝者だけに与えられる"戦利品"だ。
リングの戦士でいるとき、この二つは誰もが欲しい。ことにクラッシュとダンプ組は善玉と悪玉という求める道の違いがある。この両軍が目の前の最高の宝物、WWWA世界タッグへの挑戦権をかけるとなれば、戦いは激しくなって当然だ。まさに、復活した黄金時代の歴史の1ページを飾るに十分な衝撃マッチとなった。
舌戦が大一番をさらに過熱された。「勝つためならば手段を選ばん」とダンプ組は公然と言い放った。一方のクラッシュは「あんなのがプロレスと思われたんじゃ心外だ」とやり返した。
クラッシュは200キロ狂暴ファイトに対抗するため、ストロングスタイルで売り出し中の男子プロレス・UWF道場へ出向いてコーチを仰いだ。リングコスチュームをマーシャルアーツのパンタロンに替え、足元から膝にかけて防具をつけた特殊改良シューズを履いた。これはケリに思い切りの良さをつけさせ、破壊力アップを狙ったものだった。
だが、クラッシュの、このダンプ組との初対決は、予想を上回る極悪コンビのパワー凶器攻撃に、血だるまとなり、無残な敗退を喫するのである。
その試合、鉄パイプ、ハサミ、ロープ、バケツがふんだんに使われ、阿部レフェリーまでが極悪にコントロールされるという大きなハンディを背負ったものだった。一本目、飛鳥がダンプのラリアートでマットに沈むとクラッシュは「これじゃ試合にならない」とマイクを通して絶叫した。
ファンは猛然と怒った。このファンの反応に植田コミッショナーはレフェリー交代の強権を発動。急遽、松永俊国審判部長に代わって続行となった。
だが、クラッシュが怒れば怒るほど、200キロペアの暴走は火に油を注いだ。巨体に金髪を振り乱しダンプは千種の髪をバッサリ。さらにハサミで額をメッタ突きし、反則負けのコールをされた。
頭を抱えコーナーにへたり込むクラッシュを横目に、薄笑いを浮かべてリングをのし歩くダンプ。ファンは悲鳴と号泣だ。ダレもが、そのダンプのしぐさを「ざまあみろ。ダンプ様の時代よ」と見たに違いない。
「チクショウ、こうなったら、目には目をだ!」怒り狂った飛鳥は決勝の三本目、ゴングが鳴るとダンプに突進。ハサミを取り上げるとユウをつかまえ、覆面レスラーの"命"の覆面を切り取って正体を暴いた。
57年1月4日から覆面をかぶり続けたユウは、ここ二年四か月ぶりに本庄ゆかりの素顔を見せたのである。
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女子プロレスストーリーより----------------------------
マスクレスラーは顔を見せれることを恥じる。ユウは顔を手で覆い隠し、マットにうずくまる。飛鳥ははいだ覆面を頭上高く掲げて報復の勝どきだ。だが、その一瞬の気のゆるみを突いて、ダンプの逆襲が背後を襲った。
「このやろう!」
ダンプの怒りの叫びがとどろく。飛鳥のハサミを強奪すると、額に狂気の乱打だ。アッという間に飛鳥の額から鮮血が。そしてロープに逆さづりにされた。助けに入った千種もろともユウと二人でやりたい放題の集中攻撃。ついに千種もロープに首づりしてリングを占拠してしまったのだ。
これに義憤を感じたのがデビルだった。かつての部下、ダンプとユウに三行半をたたきつけられ、山崎とのコンビで悪の座をかけた対決でも、非道のやり口で一蹴されたデビルは、クラッシュ救援に出たのだ。そのデビルを追うように、横田や山崎が二人をロープから外し救出した。
しかし、クラッシュはもう戦えなかった。無法ファイトに飛鳥は右ひざを脱臼、千種も首を痛めて試合続行が不可能になっていた。レフェリーストップの判定負け。世界タッグの挑戦権はダンプの地に染まった手に握られたのである。
セコンド陣に両肩を抱えられて控室に帰ったクラッシュは、顔面蒼白。冷たいコンクリート床に横たわって、しばし疲れをいやした後、おもむろに起き上がって力のない声で吐き捨てた。
「あんなの試合じゃない。ウチらは負けた、と思っていない」と。
何度、この後楽園ホールのコンクリート床で寝そべり、悔し涙を流したことだろう。初めて二人でペアを結成して、堀・大森の王者組に対して二度。そして今度は挑戦権をかけたみじめな敗北。この控室へ戻るたびに二人は世界のベルトが遠く、そして重く感じられた。
だが、松永国松常務は試合後、こう評した。
「レスリングになったら、確かにクラッシュは実力を発揮し、面白い試合になったでしょう。でも、レスリングをさせないで自分たちのペースでやり切ったダンプ組に、ベルトを狙ったプロの意地があった」と。
あまりに狂暴な、そしてあまりに非道な極悪ヒールの台頭となった59年4月1日の後楽園大会。クラッシュはこの敗北を機にラフ殺法に対抗するため、強力技の特訓により力を注いでいく。
極悪コンビによって、血を呼んだリング。それはショッキングな日であった。その女子プロレス史上たぐいまれな鮮血のリングで、一時代を築いた華戦士が10カウント・ゴングに送られて去った。低迷期の女子プロをセクシーパンサーの名で支えたミミ萩原と、デビル軍団全盛期のデビルのパートナー"毒グモ"ことタランチェラである。
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なお、この試合で勝利したダンプ&ユウは、6/28にダイナマイトギャルズとのWWWAタッグ王座に挑戦します。その試合は以下に記載しています。
また以下のブログに雑誌記事を掲載しておきました。