1984/6/12 沖縄県奥武山体育館 止まらない毒々しさ。極悪タッグの完成に向けて拍車がかかる

(2023/2/25 説明文追加、画像を綺麗なものに修正)

 

AJWW 1984/6/12 沖縄県奥武山体育館 ダンプとクレーン 止まらない毒々しさ。極悪完成に向けて拍車がかかる

VHS Pro-Wrestling さんのYouTubeから

 

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(↓AI変換したフルハイビジョン動画です)

[AI FHD 60fps] AJW 1984 06 12 沖縄奥武山体育館 ダンプ・クレーンvsジャガー・飛鳥リンクyoutu.be

 

1984/3/17の桐生市体育館で、ザ・ベートーベンを加えた極悪トリオ結成(メガトンコンビ)。1984/4/4の綾瀬体育館の試合で、阿部四郎がメガトンコンビに加担し、徐々に「極悪同盟」としての形が作られていきます。

ちなみにマスクド・ユウは、1984/4/1の後楽園ホールの試合でクラッシュ・ギャルズから覆面を剥ぎ取られて、「クレーン・ユウ」として再出発。髪をダンプと同じく金色に染めて、合わせて体重200kgの金髪メガトンコンビとなりました。

 

本ブログの一番下に関連ブログを掲載しておきます。

 

 

 

この日は、沖縄県奥武山体育館での試合です。ちなみに1984/4/4の綾瀬体育館のTV中継からほぼ2カ月ほどTV中継での映像がないため、この期間、ダンプとユウがどのような試合をしていたのか不明です。今後情報があれば追加していきますが、この時期の2か月間の空白に何があったのか分からラないのは少々残念です。

 

 

 

さて話を沖縄の奥武山体育館に戻しますと、全女がこの年に沖縄に来たのは3年ぶりらしいです。沖縄の方々まして、当時は女子プロレスの情報はほとんどありません。よほどのマニアでなければ、松本香がダンプに変身していることなど、知らないはずです。

昨年まで松本香やマスクド・ユウは、「デビル軍団」の中でせいぜい髪の毛をメッシュに染めている程度の前座で愛嬌のある選手でした。しかし、このような変貌を遂げていると、誰が想像したことでしょう。

 

異端だ。明らかに異端。会場中の誰もが息を飲んだことでしょう。物凄いインパクトです。

 

今まで見たことがない女性像だったのでは・・。

 

体重100kgの大女が2人、金髪に染めて革ジャンにパンクファッション。鎖をじゃらじゃらと音をさせて近づいてきます。こんな人間は見たことがない。不良でグレたとか、そんなレベルではありません。

異端を通り越して、怖い。近くにきたら絶対に逃げる。毒々しい。不気味すぎる~!! 

 

 

 

志生野アナ「そして音楽が変わります」

志生野アナ「これからが大変であります」

志生野アナ「ダンプ松本、クレーン・ユウ」

志生野アナ「最悪コンビ、凶悪コンビの登場であります」

志生野アナ「沖縄のお客様はあまりよくダンプ松本、クレーンユウについて知りませんからね」

志生野アナ「会場はびっくりしてますよ」

志生野アナ「例によって謎のマネージャが旗を振りながら、ゆっくりと花道を通って登場であります」

志生野アナ「どうですか、松岡(きっこ)さん」

松岡「凄いですね・・」

志生野アナ「この態度といいますか、服装!!」

松岡「デビルから離れたとたんにやりたいことやってますね。大丈夫でしょうか?」

志生野アナ「完全にもうイカれてますでしょ?

松岡「パンクファッションそのものですね」

志生野アナ「あんまり大きな声でいえないんですけど」

志生野アナ「ちょうどいま放送席のところにやってまいりました」

 

 

 

(このあと、放送席は当然めちゃくちゃにされます)

 

松岡「おやめなさい!!」

志生野アナ「もう」

松岡「おやめなさい!!」

志生野アナ「失礼な」

志生野アナ「このマネージャが旗を持ちまして、リングサイドを一周しまして」

志生野アナ「放送席の机を蹴り倒して」

志生野アナ「なんということでしょうか」

志生野アナ「『極悪』とう旗印」

宮本「『極悪』にどくろのね」

志生野アナ「どくろ印、極悪ですか」


まるでPTA代表のような松岡さんが「おやめなさい!!」と叱りますが、そんなもの無力です(笑)

 

この日、入場曲はまだマスクド・ユウのテーマ曲(元はマミ熊野のテーマ曲)ですが、サングラスと入場曲と、「極悪同盟」という名称を除けば、ほぼ完成形に近づきつつあるように思います。

私から見ると、極悪同盟のファッションはアートだと思います。平塚雅人著の「ザ・ヒール」にこんな一文があります。

「童顔の素顔には限界がある。会社に無断で金髪に染めて会場に入った。怒られるかと思ったが、松永会長は『やっちまったか』と絶句したものの、『でも嫌われるぞ』というだけだった。」

「舞台用の特殊メイクをして、皮ジャンとチェーンをまとった。強烈な毒々しさだった。先輩たちは当然嫌な顔をした」

 

会長や先輩たちが見て嫌な顔をするのも当然でしょう。女子プロレスにこんな毒々しいファッションは前例がないのだから。ミミ萩原のようにベビーフェイスが派手に目立つことはあったが、ヒールでこんな目立ち方があったのか、もはやベビーも喰ってしまう目立ち方である(デビルが般若で目立ってはいたが)。いままでの秩序をぶち破っている。だから嫌な顔もされる。しかしだからこそ、アートなのです。いままで誰も思いつかなかったことを平気でやる。前例がないアバンギャルドな行動、自己表現こそ、アートの源だ。この後もダンプは新しいスタイルを次々に試行していくのだが、すべてがアートだと思います。ダンプはビジュアル面においては先進的なプロレスラーだったと思うのですが、この点はあまり評価されていないのが残念なので、本ブログではどんどんアートに関しては書いていこうと思います。

 

また、本試合でも、「極悪同盟」という名称は、まだ登場していません。「極悪」という旗をザ・ベートーベンが掲げているが、名称としては正式ではないと思われます。1984/8月には「極悪同盟」と呼ばれているので、1984年7月~8月にかけて、正式に決定されたと思われます。

ちなみに、公式パンフレットのリングスターVol.21(1984年6月29日発刊)にはチーム名「ザ・ジョーズ」と書いていれています。

 

 

 

「ザ・ジョーズ」って何? w

非常に全女っぽいというか、いい加減というか、ロッシーが考えたのでしょうか。

「噛みつき」ばかりするので、JAWSという語源みたいです。この名前のまま結成されなくてよかったと思います。(^^;

リングスターというパンフレットは、そもそもロッシー小川が作っていたものなのでしょうか。当時の全女のスタッフで松永兄弟以外でこのような広報をしていて、写真も撮影しているとすると、ロッシー以外には分からないのですがね。フジテレビ側が製作していたという話もありますが、1984年は他雑誌の情報もなくて、謎な部分が多すぎます。

 

さて、試合に戻ります。(相変わらず余談が多くてスミマセン)

 

 


松岡「あれ(覆面マネージャ)は誰だか分からないんですか?」

志生野アナ「男性ですから。男に間違いないんですけどね。このマネージャが出現してからですね、ダンプもクレーンも自信をもってというか、やりたい放題なんですね。この2人にマネージャがついてからロクなことがないんですね」

 

ザ・ベートーベンの役割としては、2つほど理由が思いつきます。

一つは極悪の後ろ盾ですね。ザ・ベートーベンの中身はロッシー小川ですが、元は松永会長が「クラッシュを売り出したいから覆面を被って極悪のマネージャとなって敵役を盛り上げたらどうだ?」ということで、会社代表としてのヒールのバックアップです。「ザ・ヒール」によると、会長から会場のモノは好き放題に壊して良いというお墨付きをもらったと書かれています。とはいえ、いきなりテレビ局の放送機材をぶっ壊すのは勇気がいります。だから広報のロッシーか率先して、最初にあちこちの機材をぶち壊していたのかもしれまません。

 

 

 

もうひとつは、ダンプとクレーン以外に、凶器を渡す役がいなかったため、ブル中野加入までは、ベートーベンが凶器の管理や受け渡し役をしていたと思われます。

どっちかというと、凶器の受け渡し役が誰もいないので、ダンプがそういう役周りに一人欲しいと会長と相談して、ロッシーがバイトでやったのかもしれません。

ついでにロッシーも興行としては面白いから、放送席を襲撃したり、悪いことをやって煽ったご自身の本に書かれています。

 

志生野アナ「この2人にマネージャがついてからロクなことがないんですね」

志生野アナ「いまも可愛いお嬢さんが花束を渡したんですが」

志生野アナ「本当に放送席を蹴った以上に失礼ですよ」

志生野アナ「お客様の中に花束を軽く投げました」

 

続いて選手コール。

 

 

 

まずはクレーン。着々とワルになっております。

志生野アナ「右手に鎖を持っている、これがクレーン・ユウ!!」

 

 

 

志生野アナ「髪を染めてこれまた右手に鎖のダンプ松本」

志生野アナ「今日は阿部四郎レフェリーに、植田コミッショナーから厳重注意が与えられております」

志生野アナ「今日、久米島のような、あるいは他の会場ではダンプ松本サイドに立っている阿部四郎なんですけど」

志生野アナ「こういったレフェリングをした場合は、全日本女子プロレスのリングから」

志生野アナ「永久に姿を消してもらうという、そのくらい強い注意が与えられているようですよ」

宮本「レフェリングは公正な立場で裁いてもらわないと試合になりませんから」

 

 

 

志生野アナ「ご覧ください、いつもとちょっと違います」

志生野アナ「謎のマネージャがびっとりしたという感じで」

志生野アナ「カウントを取られたということはありませんでした」

志生野アナ「さすがにコミッショナー通達が効いているようであります」

 

どうやら前回の久米島の試合、もしくは直近の試合で阿部四郎がダンプチームに加担しずきたのか、ウエダより注意が与えられているようです。

真面目に永久追放を考えていたとしたら、それはそれでどうなのよ?という感じですが、ウエダのことなので、やりかねません。

 

1本目

 

さて今回の相手はジャガー横田とライオネス飛鳥です。

 

ダンプがラリアートで2人に突然襲い掛かった後、今回はクレーンがやらかしてしまいます。

 

 

(ジャガーのロープに気づかずにそのまま落ちるクレーン)

 

ダンプもたまにやらかしますが、クレーンもやらかしています。メガトンコンビは所々で笑えるところがあります)

 

 

 

その後飛鳥のジャイアントスイングがあり、一気呵成に攻めてきますが、ユウとダンプは体格にモノを言わせたボティアタックや踏みつけ等で攻めます。

志生野アナ「凶器攻撃が始まっています」

志生野アナ「やりたい放題のダンプ松本、クレーン・ユウ凶悪コンビ」

志生野アナ「これだけやれたら何にも心配事はないでしょう」

志生野アナ「しかしジャガー横田に言わせますと、」

志生野アナ「2人があれだけやりたいことをやるのは」

志生野アナ「レスリングのテクニックがないからだというんですよね」

志生野アナ「テクニックを持ってないからあれしかないんだとね」

宮本「そういうことも一面ではいえるでしょうが」

 

途中解説で「ジャガーは『2人があれだけやりたいことをやるのは、レスリングのテクニックがないからだ』」と話しています。ジャガーに比べたらもちろんテクニックはありません。自明です。しかしダンプたちは「技は使わなくても良い」と会社から言われているので、歯がゆいところでしょう。この時はたいした技を出しませんが、後年のダンプはガンガンと技を出してくるようになります。それに反則にもテクニックが必要ですからね。その辺りも差し引きが必要です。あとは私からみると、ライオネス飛鳥だって、ジャイアントスイングの印象しかありません。(^^;

 

 

 

今回は阿部四郎がウエダから厳重注意をされているので、見えないところで細かい凶器を使っていきます。別に大げさに凶器をみせなくても、細かい凶器は何年もヒールをやっているので、叩き込まれています。

そして体の大きさ、重量、圧迫で、ジャガー横田、ライオネス飛鳥を圧倒していきます。

 

 

 

志生野アナ「今日の阿部四郎レフェリーはちゃんとやっているようですね」

宮本「まぁ表面上はねぇ・・」

宮本「マネージャに懐柔されたり色々ありますが」

志生野アナ「マネージャに凶器を返してはいけないのではないですが」

三宅「コミッショナーのこれまでの見た印象ですが」

三宅「厳重な注意を良く守っていると」

三宅「試合前はもし変なジャッジを下すことがあれば」

三宅「すぐに出場停止と」

志生野アナ「どうもこのところは阿部四郎レフェリーの動作がやけに目についておりました」

志生野アナ「今日はなかなか公正なレフェリングのようであります」

 

ウエダはどこを見ているのかよく分かりませんが、凶器をマネージャに返しても、とりあえずはリング上なあからさま行為がなければOKのようです。


 

 

ジュースの空き缶(中身入りかも)で飛鳥を殴るユウ。思いっきりの良さがクレーン・ユウの特徴です。

 

宮本「松本とユウもですね、無差別な反則攻撃はやりますけどね」

宮本「レスリング自体やらせてもですね、あの巨体を生かした」

志生野アナ「ええ」

宮本「非常にパワーのある攻撃をやりますからね」

志生野アナ「決してジャガーが言うようにテクニックがないというわけでもなさそうですね」

宮本「テクニックの面では、そりゃ横田がNo.1でしょうけど」

宮本「あのパワーはやはりあの、ちょっと侮れないですよね」

志生野アナ「格闘技では大きな武器であります」

宮本「反則だけでは勝てませんからね」

たまには真っ当なこともいうではないか、宮本さん。

 

 

 

その後、ダンプのショートレンジのラリアットトが決まり、飛鳥からあっさりとフォールをとります。ダンプのラリアットは凶器以上な凶器になりつつあります。

 

2本目

初っ端にダンプの両腕のラリアットがあります。

 

 

(ジャガーも吹っ飛ぶ、強烈なショートレンジからのラリアート)

 

 

 

直後にユウがコーナーからのヒップドロッブに失敗して、そのあと怒涛のような連携攻撃を畳み込まれます。それにてユウが体固めで3カウントを取られます。

 

 

3本目

 

 

 

序盤からジャガーが猛攻。ダンプに得意のヒップアタックを決めていきます。

 

 

 

ジャガーとライオネス飛鳥は体幹が強いので、100kgの巨体でもタイミングよくブレーンバスターなどの大技を決められるのが強いですね。タイミングの取り方も天性のものがあるようです。

 

 

 

ジャガーが綺麗な卍固めを決めるが・・。

 

 

 

ダンプのバケツ攻撃が出ました。一進一退の攻防が続きます。

 

 

 

そのあとに飛鳥の延髄切りから、サソリ固め。

助けに入ったダンプも、ジャガーにコブラツイストを決められてしまいます。

ジャガーのコブラツイストの入りなんて、お手本のように綺麗です。

 

 

 

ジャガーは反射神経やタイミングがピカイチですね。動きが一人だけ違う感じがします。

その後、場外戦へ。

 

 

 

場外では、ライオネス飛鳥が、クレーンをパイプ椅子で殴るわ、ジャガーがチェーンでダンプの首を絞めるわで、ベビーフェイスがやりたい放題です。うっぷん晴らしとなっています。

 

 

 

志生野アナ「マネージャが出ました!!」

志生野アナ「ああーっとゴングの要請がありました」

志生野アナ「いまのは両者リングアウトですか?」

宮本「ライオネス飛鳥選手がリングに生還したかったんですが」

宮本「マネージャがぴったり体を抑えて上がらせなかったんですね」

志生野アナ「両者場外カウントアウトになりました」

宮本「本来ならばマスクド・コンビの反則になるんですが」

志生野アナ「おかしいなー」

飛鳥「はいっていたよなー!!」

ウエダ「ただ今の試合、WWWAルールによりますと・・にリング内におりますと、これはドローとなります」

 

ウエダが何と言っているのか聞き取れませんが、とにかくドローでした。

最後は飛鳥がリングに上がりかけましたが、ザ・ベートーベンが阻止します。というか、この試合ってベートーベンがいたんですね。全然出てこなかったので、存在感がありませんでした。もうちょっと活躍したほうが、会場が盛り上がったんじゃないかと思います。

 

この試合、ダンプとユウのあまりに毒々しいファッションと凶器攻撃に、お客様はエキサイトするというよりは、驚きの連続という感じで、桐生市民体育館までの会場のブーイングはありませんでした。沖縄のお客様たちは、初見ではダンプのセンスはあまりに異端すぎて、付いていけていない感じもします。

しかし確実にヒールとしての覚醒が、ダンプ松本の中で徐々に始まっています。ワルとしての試合の組み立ても、かなり出来上がっています。

 

ダンプとクレーンは両者とも金髪に染めて、体格もほぼ同じなのでまるで姉妹のように見えます。後にユウは脱落してしまいますが、ダンプ・ユウの極悪コンビは一番見た目が極悪らしいペアだと思います。似たような2人だからこそ、ダンプはもっと個性を出すようになったのかもしれませんが。

 

ダンプはマイクパフォーマンスやリング上での表現に天性のものがあり、体型もいかにも丸っこくてイジりやすいコミカルな陽キャラです。クレーンは、ダンプよりも目立たないのですが一斗缶攻撃や鎖の思いっきり度はダンプよりも陰惨ですし、本物のワル・不良って感じが出ている陰キャラです。このあと数か月で後輩のブル中野が入ってきますので、この3人で最後まで出来ていればそれぞれに個性があって面白かったんじゃないかと思います。

 

今日の凶器: 栓抜き、鎖、ジュースの缶、バケツ

 

 

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1984/4/4のTV放送された前回の試合

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