1984年の6月号のビッグコミックに、大森ゆかり、小倉由美、中野恵子という珍しい組み合わせのインタビューがありましたので抜粋してみます。
ほそかわ先生は「ほ」と略します。
ほ「よく食べるでしょ。一日どれくらい食べる?」
大森「よく聞かれるんだけど、そんなに食べないですよ。週刊誌なんかで、かつ丼5杯なんて出ているけど、あれはオーバーに書いてあるだけ。2杯でもキツイですね。中野だったら知らないけど・・」
中野「エッ、そんな~」
ほ「いままでで一番食べた記憶はどれくらい?」
中野「そうね、丼に4杯ぐらいかしら。やだなぁ~」
大森「新人の頃って一番よく食べるわね」
小倉「やはり大森さんもそうでした?」
大森「だって年齢的にも体力がついてくる時期だし。それになんたって給料が少ないし。だから食べられる時には無理してでも食べちゃう」
ほ「なるほど。欠食児童みたいなものだ。で、いまはどうなの?」
大森「最近ですけど、1時間以内におにぎりを何個食べられるか挑戦したけど、10個でギブアップ。だって、ノリが喉につまって入らなくなっちゃうんです」
小倉「私も超大盛ラーメン挑戦したけど時間がたつにつれてメンが伸びて、ますます大盛になっちゃうんだもの」
ほ「いずれにしても伸び盛りだから、すべて筋肉になるんだそれとも脂肪かな」
大森「(女の子らしく)実はやせたいんですけどね」
ほ「給料は何に使うの?」
中野「ほとんど食費かな。あとは水着かしら」
大森「これがバカにならないのよね。いつも同じ水着ばかりじゃおかしいし。もう大変」
ほ「タッグチャンピオンの大森さんならかなりのファイトマネーになるんじゃない」
大森「そうでもないですよ。普通のOLよりもちょっといいくらいかな」
ほ「ところで新人のころはどんな練習をするの?」
小倉「まずプロテストに合格するまでは技は教えてらえないんです。だからランニングしたり、腹筋をやったり、バーベルをあげたり、基礎体力をつれる練習ですね」
ほ「一日どれくらいやるの?」
中野「8時間くらいかな。早朝6時に20キロのロードワークから始まり、2時間ぐらい休んで基礎練習が始まる」
ほ「じゃ、食欲がよくなぁ~」
中野「全く朝食は食べないですよ。だって、ハードな練習だから、食事なんかするとすぐにもどしちゃいますよ」
ほ「へぇー、一番キツい練習は?」
小倉「うさぎ跳びと腕立て伏せ。これを20~30回続けるともうクタクタ」
ほ「でも、そんなキツイ思いするのに、どうして女子プロに入ったの?」
中野「親が好きで勝手にオーディションに申し込んじゃったの。それもわたしが中学一年生の時にですよ」
ほ「よく食べるから口減らしのつもりだったのかな。いやそれは冗談だけど、合格したの?オーデションには?」
中野「学校があったから、一応補欠に入ったけど。だから学校が休みの時なんかは、よくセコンドにつかせてもらっていました」
小倉「わたしはテレビを見ていたから、憧れて入ったの。親は今でも反対してるけど」
大森「わたしは父親がお相撲さんになたかったけど、なりなくって、その代わりにわたしをプロレスラーにするんだって。そんな理屈、ないですよね~」
ほ「ちなみに現在何キロあるのかな?」
大森「エッ、そんなことまでいうの。ウー、80キロくらい」
ほ「ケンカなんか強かったでしょう?」
小倉「とんでもない。おどおどしてました」
中野「いくら大きくっても、男の子には勝てっこないですよ」
ほ「いまイジメっ子に会うと、向こうのほうが逃げたりして」
中野「それはないけど、でも一歩下がってみられているかも」
ほ「ところで女子プロ選手の日常というと、"禁酒 禁煙 禁男"なんて言われているけど、どうなの?」
大森「禁酒、禁煙は年齢的にも当たってます」
ほ「じゃ禁男のほうは、まんざらでもない?」
大森「どうかしら。でも一年のうち半分以上は巡業だから、BFをつくる暇もないですよ」
ほ「だからその代わりらみんな犬を飼っているんだ。じゃストレスの解消はどうしてるの」
大森「たまにディスコに行くこともあるけど」
ほ「試合の話を聞く前に知っておきたいんだけど、技はどうやって覚えるの?」
小倉「新人のときはコーチから教えてもらう。リングに上がれるようになると、先輩からですね」
大森「試してみたい技はあるけど・・。でも男子プロレスと女子プロレスでは技をかける向きが逆なんです。例えばコブラツイストを男子プロは左からかけるけど、女子プロは右からかける」
ほ「どうして? テレビを見て覚えるからかな(笑)」
大森「なぜでしょうね。着物の右前、左前と同じだったりして(笑)」
ほ「それにしても年間280試合やるわけでしょ、力を抜く試合なんてないのかな?」
大森「(ちょっとムッとして) それはないです」
ほ「僕が見た限りなんだけど、テレビが放送されるときと、そうでないときのファイトが違うようだけど」
大森「その意味では、観客がたくさんいて盛り上がるのと、シーンとしているのでは全然違いますね。それにテレビが入るとライトで熱いんですよね。だから早くバテちゃうから、みんな初めっから飛ばす見たい」
ほ「でも新人の試合を見ているとやはり、どこかぎこちないところがあるね」
中野「すみません」
小倉「技も少ないし、スピードが違いますね」
ほ「女子プロレスの関係者から聞いたんだけど、ホールドされたときにレフェリーが"ワン"を数えたと同時にはねかえす用意をしないともうダメだといっていた」
大森「そうですね。ジャガーさんが強いのも、スピードと技の両方兼ね備えているからですね」
小倉「ただぶつかり合っているだけだったりして」
ほ「それじゃ、相撲のぶつかり稽古じゃない」
中野「だからよくケガをするのかな」
大森「ケガはいつまでたってもつきものね。デビルさんなんか骨が折れているのに、知らないで試合をやっていたものね。また脱臼グセがついて、しまいには自分で入れてる人もいた。私はケガしないほうたけど、でもガタがきているかもしれない」
ほ「スゴいんだねぇ。体はってるって感じ。女は本気になると怖いからなぁ(笑)。ところで外人選手なんか強そうな人いないようだけど、実際どうなの?」
大森「中には凄い人もいるけど、全般的に年よりが多いみたい」
ほ「オバサンじゃしようがないね。それはそうと単純に体の大きい人って強いんじゃない?」
大森「それは言えますね特に担ぎ技をやることが多いから・・・」
ほ「ところで、所持するタイトルは?」
大森「WWWA世界タッグチャンピオン」
小倉「全日本ジュニアチャンピオン」
中野「'83年の新人王」
ほ「では最後にみんなの目標を聞いておこうか」
大森「やはりジャガー横田さんのWWWA世界チャンピオンですね(小倉、中野もうなづく)」
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このインタビューの中で、WWWA世界チャンピオンをとったのは大森と中野。
後々考えるとビッグなインタビューの人選でした。
ちなみに中野はダンプよりも早く雑誌対談に登場しているんですね・・。
ダンプやユウは、単独インタビューはおろか、このような対談でさえ、呼ばれていないと思います。