
Evito-X-PuroさんのYoutubeより
AJW 1984 07 26 鎌ヶ谷市民体育館 ライオネス飛鳥・長与千種・小倉由美 vs ダンプ松本・クレーンユウ・レイラニカイ
38:00くらいから
(↓AIでフルハイビジョンに変換した動画です。試合のみ切り抜きしています)
ダンプのプロレスラーとしての行きぬき方を当時の本から抜粋してみます。
「私じゃダメかい?」より---------------------------
どんな職業もそうだと思うけど、その道で一流って言われる人は、駆け引き上手。それが運を呼び寄せる・・。女子プロゴルファーの岡本綾子さんなんか、その典型って感じがする。
一流プロの世界って、実力的にはそう大差ないはず。どこで差がついちゃうかっていうと、相手にプレッシャーをかけて、自分を有利な立場にもってく駆け引きが、ポイントなのさ。
そういう駆け引きをやっているうちに、運がまわってくる。そのときに一気に勝負に出ちゃう。
トランプのババ抜きってあるじゃん?
あれやると、ババを引きやすいタイプの子って、いるんだぜ。ようするに、駆け引きに弱い体質なのさ。「ババはこっちだぜ」なんてマジに教えてやっても、「ウッソー」って言って、結局、ババ引いちゃってる。それと同じように、職場の中でも、いつもババを引いちゃうの。
仕事は一生懸命やるんだけどさ。それがそういうふうには評価されない。それどこか、何かあると、悪いことってそんなその子に集中しちゃう。
ドジ、バカ、ヌマケ・・なんてレッテルたくさん貼られながら、耐えているワケ。そういうの見てると、かわいそうの度が過ぎちゃって、何にも言えないって感じになってたね。
そういう子がプロの世界に入ってきたのが、間違いだったのかもしないけど。いちおう、厳しい試験をパスしたわけだから、入るまでは運が良かったと思うな。
そのあとがいけなった。せっかくの運を、ひきつけておくことができなかったのさ。そんな子って駆け引きってこと、ほとんど考えてなかったみたいな気がする。
人がいいっていうか、すぐに他人のいいなりになっちゃうんだ。自分ってのものを、主張しない。居直らない。
だから、いつも損な役回りをさせられちゃってた。気が付いてみたら、身体中に、たっくさんのレッテル貼られて・・・。
やっぱりいいお仕事するには、駆け引きってことを考えなくっちゃ。自分がババを引きそうになったら知らんぷりして、誰かに回しちゃうとかさ。
それくらいの気分でいたほうがいい、と思うよ。
自分だって、新人時代は職場ではいろんなレッテル貼られたことあるけど、「いまにみてろ!」って気持ちで、居直っちゃってたもの。
それに、駆け引きってことも得意だったしさ。
悪役を志願したのだって、選手として生き延びるための駆け引きだったのさ。
プロとしてのポーズだったの。そうでなければ、自分はとっくの昔につぶれてた、と思うもんね。もし、松本香でやってたら・・・。
どんなに悪いこと言われたって、それはあくまでも"悪役ダンプ"に対して言われてることだって、割り切ってた。
ババは全部悪役ダンプに引かせていたのさ。
「死ね!」なんて、しょっちゅうだった。お客は結構マジでいってるわけだから、心にグサッとくる。けど、それでいちいち傷ついてちゃ、たまんない。だから自分はそういったお客のほうをわざと向いてやって、バカにしたポーズをとったものさ。リングの上でだって、完全に居直っちゃってた。そういうリングの上での駆け引きに自信があったから、選手としての運にも恵まれたって気がする。
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さて、試合を見ていきたいと思います。
この試合の背景ですが、「極悪チームにあの男が返ってきた。メキシコ界からやってきたといわれる覆面マネージャのザ・ベートーベンである。彼は6月のWWWA世界タッグ選手権の後、行方をくらましていたが、外国人レスラー獲得のために奔放していたとも言われる。そんな彼が送り込んだのは、実力者レイ・ラニ・カイ。さらに阿部四郎も極悪チームと合体し、ますますリングを無法地帯と化すのであった」という感じです。
今回はダンプ、クレーンの他に、外国人のレイ・ラニ・カイが入っています。レイ・ラニ・カイはなかなかの実力者です。そして極悪レフェリーの阿部四郎、セコンドにザ・ベートーベンと、極悪チーム総出となっています。クラッシュ相手のときは、総出でやっつけるのがいつものやり口です。
ザ・ベートーベンは6/28のWWWA世界タッグのときに松永審判部長に肩を外されましたが、この試合から復帰しました。
リング上を一周して、会場の雰囲気を一変させる極悪同盟。
志生野アナ「ダンプ、クレーンとコンビを組みますのが、レイラニ・カイであります」
志生野アナ「今日はマネージャも姿を現わしております。」
志生野アナ「そしてなんと阿部四郎レフリー、早くもリング上に登場であります」
志生野アナ「謎のマネージャ、一時、どこに一旦だろうと思ったんですけど、今日は姿を現しております」
志生野アナ「お客様もよく知ってましてレフェリー交代という声も飛んでますね」
宮本「一時消息を絶っていた覆面のマネージャがまた出てきましたね」
志生野アナ「これが出てくると本当に心配です」
志生野アナ「今花束を贈ったお嬢さんたちが真っ青です」
志生野アナ「異様な雰囲気、リング上」
試合開始までに、「レフェリーの阿部四郎を交代させろ」、「謎の覆面マネージャを下ろせ」とクラッシュ側から抗議が入り、なかなか試合が始まりません。
1本目
今回の極悪のターゲットは一番弱い後輩の小倉です。ダンプはもちろん千種を狙っていますが、勝利するには小倉が一番フォールを取りやすいということで、まずセオリー通り、小倉を集中的に攻めます。
志生野アナ「当然小倉由美が今日の標的になる!!」
志生野アナ「体がもう半分であります。クラッシュギャルズ、どうこの小倉由美をカバーいたしますか、このあたりが今日の見どころの一つであります」
志生野アナ「今日は小倉由美が本当に可哀そうな生け贄といった感じです」
志生野アナ「カワイイ生け贄、小倉由美」
志生野アナ「徹底的にやられるでしょう」
志生野アナ「十分に覚悟しておりますが、まともにこのままリングを降りられるかという感じであります」
志生野さんの「かわいい生け贄」という言い方がなんとも面白いです。
志生野アナ「これが女性ですよ、怖いでしょ」
志生野アナ「ライオネス飛鳥、そして長与千種は人気最高」
志生野アナ「一方、ダンプ松本、クレーン・ユウは人気最低でありましてね」
志生野アナ「いよいよ闘志を燃やしてきていましてね」
人気最低と言われてしまいました(^^;
ザ・ベートーベンも加わり、場外でクラッシュと小倉を叩きのめします。やはりマネージャが入ると、場外戦が一気に極悪寄りになるため、壮絶な試合になります。凶器の加担もハンパないです。
ベートーベン(ロッシー)がクラッシュを血で染めたいときに、ハサミを渡したり、指示しているんでしょうかね。
ダンプとユウをコントロールするマネージャとはよく言ったものです。
(ダンプ・ラリアート×2発)
クレーンのボディアタックで小倉があっさりとフォール。1本目は簡単に極悪が取りました。
2本目
小倉から長与にタッチした途端に、ダンプはチェーン攻撃。クレーンも飛鳥にチェーンでロープ際に追い詰めます。
志生野アナ「クラッシュギャルズに対して鎖攻撃であります」
志生野アナ「徹底的な鎖攻撃、反則攻撃、凶器攻撃、小倉由美は出ていっちゃいけない!」
志生野アナ「そして、いままた凶器を(ベートーベンが)渡しましたよ」
宮本「ハサミのようなものを持ち出しましたね」
志生野アナ「アアーッと、脳天に一発!! ライオネス飛鳥がやられた! そして長与千種、小倉由美がやられました!!」
志生野アナ「ハサミをだしました! 今度は胸元!!」
ここから極悪チームはコントロール不能となり、凶器のオンパレードとなります。
(長与の頭にハサミを突き刺すダンプ)
(場外ではザ・ベートーベンが飛鳥を抑えつけて大活躍)
(ダンプは千種を徹底的にハサミ攻撃)
志生野アナ「アアーッと、長与千種、完全に額を割っております」
ついに長与から出血。
志生野アナ「これ以上、凶器を持たせてはいけません!!」
志生野アナ「長与千種、完全に額を割った!」
志生野アナ「さぁ、どうか、ギブアップしたら大変だぁ~」
志生野アナ「あーっと、長与千種、ギブアップを取られました」
志生野アナ「ストレート、ストレート」
志生野アナ「どうですか、これは?」
アナ「志生野さん、コミッショナーから一言あるようですね」
志生野アナ「いまのはちょっと許されませんね」
志生野アナ「怒った場内のお客様、リングめがけて色んなものが投げ込まれてます」
(ダンプ・ユウ「バンザーイ!!」)
長与は額というよりは、頭から血が出ているようですね。画面からは血が確認できないような?
熱血植田「ただいまの試合、阿部四郎レフェリーは青コーナーの勝ちを宣言しましたが、認めません」
熱血植田「認めない、レフェリーを交代させます!!」
熱血植田「レフェリーは一か月出場停止!!」
志生野アナ「ああーっと、阿部四郎レフリーがコミッショナーに手をだしました!!」
志生野アナ「これは大変なことになりました」
熱血植田「レフェリーはジミー加山に変えます」
ウエダが相変わらず、プロレスのことが分からずに、阿部四郎に真面目に裁定を下しています。この裁定により阿部四郎は一か月の出場停止と罰金を取られたと述懐しています。こんなに試合を盛り上げた功労者から罰金まで取るとは(^^; もしくはウエダも分かっていてやっている可能性もありますが、どうなんでしょうねぇ・・。
このあとダンプが怒って、記者席の机を投げ飛ばしています。どうせならコミッショナー席の机を投げ飛ばして欲しかったです。(念のため、植田は全女の資金繰りをして助けた功労者ですが、この際、スカッとするなら投げても良かったと思います(^^;;)
場外では全女真っ二つになって、物凄いキャットファイトが展開されます。いや~、全女は女vs女、特に極悪vsクラッシュは嫉妬やら、感情のぶつかり合いがそのまま出るので、見ていて本当に面白いです。
ここでようやく2本目が取り消しとなり、試合が再開されます。
なにがどうなったのかさっぱり分からないので、志生野さんが整理しています。
志生野アナ「ちょっと整理してみましょうか」
志生野アナ「2本目が認められなかったということですか」
宮本「2本目は松本が長与をカナディアンバックブリーカーでギブアップということで、阿部レフェリーはストレート勝ちを制したわけです。それに対してコミッショナーは、あの試合は凶器を持ち出した松本が反則であると、コミッショナー強権発動ということで反則という、裁定を覆したわけです。それで1対1のタイと。それで改めて3本目、決勝ラウンドになるわけです」
3本目
レフェリーがジミー加山に代わり、ようやく反則なしの試合になったのかと思いきや、
ダンプには全然関係ありませんでした。飛鳥、小倉、千種と次々とバケツ攻撃。
(ジミー加山はダンプを反則負けにはせず、ただ止めにかかるだけです。さすが松永兄弟は公平なジャッジをするフリをして、面白くするためなら何でもアリです)
(バケツではなく、ザ・ベートーベンのほうを止めるジミー加山)
アナ「本部席ですが、この試合ですが2本目は無効ということで、これが2本目ということですね」
志生野アナ「じゃ、反則をとったわけではないんですね」
宮本が得意気に語っていたのはすべてウソでした。
ということで2本目(再度)
ここからクラッシュの逆襲が始まります。ダンプに対して怒りの集中攻撃が始まります。
(飛鳥のトップロープからのフライングラリアート、これがけっこう効いています)
(クラッシュのツームストンのパイトルドライバーで一気にトドメを刺しにかかる)
これで3カウント!!
この頃はまだパイルドライバーに弱かったダンプが、久しぶりにゾウアザラシ状態になってしまいました。でも、ダンプは横を見たりする余裕があったので、このラウンドはお客様の溜飲を下げるために喰らったような気がしなくもないです。
志生野アナ「ダンプ松本、完全にのびました」
これは2本目なので、完全に取られたというよりも、一本取られてもいいという感じだったかもしれません。
3本目
いきなりクラッシュが攻勢。飛鳥がダンプをジャイアントスイングで回します。
(小倉にタッチしたとたんに、今度は極悪側が一気に攻め立てます)
(レイラニ・カイもかなりの実力者です。飛鳥のパイルドライバーに耐えて、その後も長与とのぶつかり合いを制しています)
(まだ今日は出していなかった鉄棒攻撃。その後さらに空き缶攻撃)
(最後は鉄棒、空き缶、チェーンと凶器で総攻撃)
(ザ・ベートーベンが調子に乗って、千種をボディスラム)
カンカンカンカンカン!!!
いきなりゴングの音。
志生野アナ「ゴングが乱打されました。いまのはなんですか?」
宮本「このままだと無効試合ではないですか」
志生野アナ「赤コーナーの反則勝ちですね。反則をジミー加山が取ったわけですね」
志生野アナ「いやいやいや、赤コーナーが勝ったんでしょうけど、このあとが怖くなりますね」
志生野アナ「果たして黙ってこのまま下がるか」
これだけの長時間の反則・凶器の使用を許していたジミー加山も、なんだかよく分かりません。
これだったら阿部四郎だけ出場停止っておかしいだろ(笑)
(仇敵のデビルに因縁をつけるユウ)
(植田に向かって「どこがだ!!」と叫ぶダンプ)
飛鳥「なんで試合なんだよ、これが!」
長与「なんでこんなのが試合なんだよ 正々堂々と試合しろよ」
長与「〇×■☆●◇〇×■☆●◇!! 」←何言ってるのかわからない
長与「反則負けで勝って全然うれしくねぇよ!!」
突然長与がパイプ椅子を持ち出してリングに登場、ダンプもチェーンで応酬。
あれ、長与ってたった今「正々堂々と勝負しろ」といったのに、凶器攻撃。言っていることが支離滅裂(笑)
この釈然としない、後味の悪さこそ、極悪の真骨頂です。極悪はクラッシュとお客様をムカつかせられれば、成功なわけですからね。長与がなぜか泣いて抗議しています。最後までパフォーマンスを欠かさないところが、さすが長与千種でした。
今日の凶器 バケツ、ハサミ、チェーン、鉄棒、空き缶
ザ・ベートーベンが肩を外されたWWWA世界タッグ選手権試合