1984/9月 雑誌「写真時代Jr.」 200キロコンビを断乎支持する!!

1984年9月の「写真時代Jr.」に女子プロレスが特集されました。

 

 

女子プロは燃えているぜえ!!

 

 

 

 

 

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梅雨空の6月28日、川崎市体育館は熱狂的なお客さんで超満員だった。家庭内暴力をするような親不孝者はすぐに女子プロを見に行きなさい。本当だぜ。

 

女子プロの歴史的考察と未来への展望
今年の4月バカにミミ萩原が引退しました。 かつてアイドル歌手として芸能界に籍をおいたことのあるミミの顔と名前は全国区だったし、柳腰にチャンピオンベルトを巻いた水着姿、そして蝶の舞いを想わせる華麗なファイトは世の男性を魅了せずにはおきませんでした。 そんなミミに去られた女子プロレスの人気が鎮静するどころかブームの頂点を目指して一気に赤丸急上昇しています。


160センチ60キロという小柄な身体をカヴァして余りある超スピード空中プロレスを信条とするジャガー横田。般若の面のような不気味な薄笑いを浮かべながらサディスティックなラフファイトを展開するデビル雅美。 まさに今、実力、人気ともに伯仲し競い合っているこの両者が女子プロレスの2大エースです。 この女王争いに加えてタッグ戦争も勃発しています。タッグ王者はジャンボ堀、大森ゆかりのダイナマイトギャルズ。 そしてそのベルトを執拗に狙っているのがやがてブームの先頭を全力疾走してゆくであろう人気沸騰 クラッシュギャルズのライオネス飛鳥と長与千種です。先輩格でしかも体格差のある王者コンビに華奢な身体の2人が得意とする空手殺法でひたむきにアタックしてゆく姿に感動し共感を覚える女子中・高校生の少女ファンが加速度を増しながら増え続けています。 7 月9日からはフジテレビでそれまでの月2回不定期放映に加えて毎週月曜夜7時から30分間のレギュラー番組が決定し、さらに8月21日にはクラッシュギャルズのレコードが発売!! となれば思い出されるのがあの日本武道館を2度も超満員にしてしまったビューティペア・ブーム。 もちろん飛鳥も長与もビューティペアに熱狂し憧れて女子プロレスの門を叩いている。 なのに2人の口からは意外にもビューティペア批判が飛び出してきました。

 

 「プロレスより歌が中心でミーハーファンに支えられていたビューティペアと私達を一緒にしないで下さい」


2人が入門した時にはすでにビューティペアは解散していました。 ブームの去った冷たい時期に修業を積んだ2人だからこそ格闘技精神に目覚めブームを永遠のものにしたいと心から願っているのです。


クラッシュギャルズが格闘技精神に目覚めたのと同じように悪役もまた悪に目覚めてしまいましたダンプ松本とクレーン・ユウの200キロ肉弾重戦車コンビは髪を栗色に染め化粧もエスカレート、黒の皮ジャンをはおって世の中がまるでおもしろくないかのようにフテくされて入場しながら試合ではチェーン、 栓抜き、バケツなどのあらゆる凶器を用いてまるでリンチまがいのプロレスを公然とやってのけるのです。 悪役の快感に酔いしれるダンプとクレーンは客をも汗まみれにせずにはおかないのです。


従来のセオリー通りに展開してゆく女子プロレスの殻を各々の個性の追求によって見事ブチ破ることに成功した少女たち。 日本武道館のリングでメインを努めるのは誰?
「私たちがプロレスの流れを変えてみせます!!」・・・クラッシュギャルズ。

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200キロコンビを断乎支持する!!

200キロコンビはワルモンである。どれくらいワルモンかというと、リングに出てきた瞬間からワルモンなので、どういう暗い事情が あってこの人達はワルモンになってしまったのか考える暇がないほど、やみくもなワルモノなのであった。
 

これは、非常にいいことだと思う。 最近、男のプロレスでは、「拝啓」とかいうものがのさばっていて、何でもかんでも裏目読みを しなければ通のプロレスファンではない、みたいなフンイキを作り出しているようだが、 これはいくない。裏目読みは、人間の性格を曲る。 くらーい性格になってしまう。 まあ、 少しぐらい頭の訓練になるかもしれないが、ノーベル賞はとれないと思う。
その点、
女子プロレスは、いきなりワルモノである。「拝啓」なんてものはいらない。 ラクである。 そういうわけで僕は断乎、200キロコンビを支持するものである。
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このダンプ、ユウの極悪コンビを断乎支持するという文章は非常に良いですね。

男子プロレスは裏目読み、さらに活字プロレスと、プロレスの試合自体を楽しむより、どう解釈するかという楽しみへと発展していくわけですが、この時期の女子プロレスは純粋に試合に没頭出来たという点で、少々複雑化した男子プロレスよりも、馬場時代の昔ながらのプロレスをしていたと思います。

 

何よりそれに貢献したのは、「クラッシュミーハーファン」だと思います。

この頃の中・高校女子高生のファンが、「裏を読む」とか「斜に構える」とか、そんなことを考える暇を与えないほど熱狂を見せます。ただただ、「千種が好き!!」、「ダンプを殺せ!!」という勧善懲悪なストーリーで、純粋にプロレスの楽しめたと思います。

 

平成~令和は「安心して見られるプロレス」ってのが主流みたいですね。行けば「料金分は安心して楽しめる」、予定調和。払ったお金の分、きちんと楽しませる。期待を裏切らない楽しさ。

悲しいかな、昭和のプロレスが好きな人はそれが不満です。「楽しめなかった」「裏切られた」でも、昭和のプロレスファンはそれでいいのです。クラッシュ時代も、極悪同盟が理不尽に勝利するなんて、しょっちゅうでした。それでもクラッシュファンは泣きながら、極悪を憎んで、いつかは長与千種とライオネス飛鳥が、ダンプをやっつけてくれると、精一杯応援したのでしょう。