1984年のワールド・タッグリーグ戦 雑誌「週刊プロレス」で振り返る

1984年のタッグリーグ戦を簡単に振り返ってみます。

ダンプ&ユウの極悪同盟は勝ち点4で、上位4チームに入り、最終日の決勝トーナメントまで進んでいます。準決勝で残念ながらクラッシュギャルズに敗れてしまいました。

 

星取表は以下のようになります。

 

 

 

極悪コンビは、立野・山崎組に引き分けしたのが痛く、もしその試合を勝っていれば単独首位でした。とはいえ、同点首位ですから、一年前の松本とユウのコンビを考えると、1984年は大躍進した年だと思います。

 

横浜 決勝戦 クラッシュキャルズvs デビル雅美・ジャガー横田

極悪の準決勝の試合はいまのところ見つかりません。

 

 

以下、週刊プロレス1984年9月~10月号より引用します。

(一部雑誌「炎のコノヤロー」にも横浜の試合が掲載されていたので追加します)

 

 

 

まずは参加チームの総評が書かれています。


 

 

 

-----------------------------------

TVのゴールデン・タイムでのレギュラー化も年内いっばいまで決定。活気づく全日本女子プロレスは、秋の祭典として「84フジテレビ杯争奪タッグ・リーグ戦」を8月25日、後楽園大会からスタートさせることを発表した。
クラツシュ・ギャルズ、堀&大森、極悪同盟とエスカレートするタッグ抗争…今回のタッグ・リーグ戦は、いわば過熱するタッグウォーの集大成として、大きな区切りとなるに違いない。
そして今大会、最大の関心事であり、超目玉となるのが、ジャガー横田とデビル雅美の"最強合体"しての正式参加に尽きるだろう。
ジャガー&デビルは、女子プロ界を二分する、ふたりの女王だ。これまでのライパル関係を、一時清算?して、優勝という大名目で結ばれるのだから、順当にいけば"本命説"は揺るがない。
だが、タッグは個々の力関係よりも、チームプレーとしての、お互いの役割に掟がある。6 ・28川崎大会を覚えているだろうか。初タッグを組んだジャガ
ーとデビルは、タツグ戦というよりも、シングルマッチの延長線上。つまり、プライド対プライドの、ぶつかり合いであったのだ。
「本音をいえば、五紀と組みたかった」デビルの思いは、タッグチームとしての密度からいけば、確かに山崎とのペアは透逸している。これまで、アクの強さでタッグは不向きとされたジャガー。デビルがいかに、歩調を合わせるかが問題。その足並みは興味津々だ。

さて、もう一つの焦点といえばクラッシュ・ギヤルズの優勝=タッグ完全制覇の可能性であろう。上昇ムード、勢いに乗るクラッシュだが、最初の試合以外での超過密スケジュールは、いささかハンデには違いない。
結成一周年を迎え"原点に戻る"と宣言しているクラッシュだけに燃えたぎることが、その証明。結論の出る時である。
ビツグマツチになると、底知れぬパワーを爆発させる、ジャンボ堀&大森ゆかり。体力、コンビネーションでは群を抜いているだけに、ジャガー&デビルとてスキは見せられない。安定感のあるペアだけに、 一直線に決勝進出――なんてことも、あって不思議はないし、当然かも。
台風の日、ポイント・ゲッターにふさわしいのが、ダンプ松本とクレーン・ユウの通称「極悪同盟」だ。このチーム、はっきり言えば優勝を狙える器ではない。しかし覆面マネジャー、阿部レフェリーと揃った"暴力集団"は、各チームとも要注意である。勝つことよりも、相手を傷つけることが「極悪同盟」の手口だ。開幕戦の対ジャガー、デビル戦は注目の初対決。「極悪同盟」がアッサリ負けるか、魔の手で生きのびるかが、見どころだ。
公式リーグ戦は、上記4チームによる、つばぜり合いが必至である。おそらく大混戦が予想され、すんなりと決勝進出チームは決まらないだろう。

オッと忘れてならないのが、成長株・山崎五紀と立野記代の"同期生"コンビである。かつて、ジャガーが若手時代、タッグ・リーグ戦で踊り出たように"大物喰い"の、 一発勝負に賭けてもらいたいところだ。これまた、対ジャガー、デビルとの″師弟対決″が楽しみだ。
新人から抜テキされたのが、小倉由美&中野恵子のコンビだ。若さだけが武器なのだから、がむしゃらに―回でも多く、攻めることしかない。勝敗は論外だ。外人サイドはただ1組、UWA代表としてラ・ギャラクティカ、ローラ・ゴンザレスが出場する。女子版ルチヤ・リブレを見たいものだが、大型化している日本選手を相手に、どこまで真価が発揮できるか、何ともいえない。
とにかく、来日してみなくてはわからず、未知数の魅力としか答えようがない。
ズバリ! ジャガー&デビルの"女帝コンビ"が優勝に最も近い。
9月26日、横浜決勝は、どのチームで争われるのだろうか…サバイバル・ゲームの結末やいかに!?

-----------------------------------

 

プロ野球のペナント優勝予想のような記事ですね。(^^;

 

確かに昨年までの松本・ユウのペアでは実力的には厳しいと見るのが妥当ですが、1984年に入ってから実力は急上昇し、さらにマネージャやレフェリーを引き込むといった試合巧者にもなっています。特に、松本香→ダンプ松本に変わって半年後(9か月後くらい?)は、別人と言ってもいいくらいの成長があります。

 

 

 

-------------------------------

前半は"5強混戦"連日、星のつぶし合い…8月25日、後楽園大会から開幕した'84フジテレビ杯争奪タッグ・リーグ戦は、本命なきサバイバル決戦という色合いが更に濃くなってきた。というのも、自他共に"史上最強"を認めるジャガー横田とデビル雅美の女帝コンビが、ジャガーの右肩脱臼により予想の不振。不本意な闘いを余儀なくされているからなのだ。
ジャガーの右肩脱臼は、オープニングの対極悪同盟戦で突然起きたアクシデントだった。
ミサイル・キックの着地失敗という、思わぬ落とし穴。カラー詳報の通り、対クラッシュ・ギャルズ戦ではレフェリーストップで完敗し、ジャガーは悔し涙を流したのだ。
今大会、無冠で臨んだジャンボ堀&大森ゆかりは、UWAコンビの変則ファイトに苦しみ緒戦に敗れケチをつけたが、クラッシュとの公式戦では見事に雪辱。大森が長与を初公開の、強引な変型ジャーマンでフォールし、女の意地をみせつけた。
快調に飛ばすUWAコンビも、極悪同盟との異色対決で、ダンプのラリアートにローラがダウン。そのストッパー役、極悪同盟も山崎・立野に苦戦、場外引き分けと番狂わせが続出した。
独走するチームのない波乱含みのリーグ戦。だからこそ今、女子プロレスが面白い!

-------------------------------

 

 

初戦の極悪コンビvsジャガー・デビルは、大方の予想ではジャガー組の圧勝と思われましたが、途中でジャガーが脱臼をして、引き分けに持ち込みました。このジャガーの脱臼は、極悪コンビが相手を混乱に陥れた部分が大きいため、ジャガーが自爆というわけでもないと思います。極悪コンビは外人組も下して勢いに乗りますが、立野・山崎組に引き分け。これが痛かったでしょう。

 

↓こちらが開幕の極悪コンビvsジャガー・デビル

『1984/8/25 タッグトーナメント開始。チェーンを当てたら相手の骨が見えたことがあるぜ!』AJWW 1984/8/25 後楽園ホール フジテレビ杯 タッグトーナメント戦開始。優勝賞金500万はいただくぜ!!Evito-X-PuroさんのYoutub…リンクameblo.jp
 

 

 

 

 

こちらに途中経過があります。

極悪コンビが負けを喫したのは、苦手とするジャンボ堀・大森ゆかりのダイナマイトギャルズでした。このペアは重量級で、コーナーから雪崩式の技を多用するので、極悪チームは一番相性が悪いと思います。

 

 

 

9/17の大田区体育館では、クラッシュギャルズに反則勝ち。これで優勝戦線に踏みとどまります。

 

 

 

 

 

9/26の横浜で準決勝と決勝戦が行われたようです。

準決勝は本トーナメントで勝利しているクラッシュギャルズでしたが、クレーンが長与にジャーマンスープレックスを決められてしまい、敗退しました。しかしよく長与は100kgをジャーマンしましたね。

 

-----------------------------------

「一時は2点とかね(笑)。 もう決勝進出も無理かな、と焦っちゃって。全勝じゃなかったから、かえって素直に喜べますね」
ジャガーが喜色満面、口火を切った。ジャガーとデビルは6、7年のキャリアを有し、いまや女子プロレスの"顔"だ。顔といえば2人は似ており、よく他人に間違われる。一緒に泣き笑い、時には兄弟のような仲をみせた。
ところが昨年9月7日、2人はWWWA世界王座をめぐって運命の激突。強引な押さえ込みでジャガーが女王決戦を制し、敗れたデビルは突如、涙の引退宣言。女子プロ・ファンにショックを与えた。奇しくも、所は同じ、横浜文化体育館だった。
それから―年後、2人は無敵の最強ペアを結成し、タッグ・リーグ戦に臨んだ。その前の6月28日川崎で女帝コンビはクラッシュ・ギャルズを圧倒しての30分フルタイム戦をやってのけ試運転・・・。「あのときの方が、こっちに余裕がありましたね。今回は2人ともケガに悩まされ、シリーズ中もタイトル戦があったりして、精神的な負担が大きかったぶん、きつかったですね」
そう振り返るデビルの横で「最初の試合で(痛めている)肩をやっちゃって」と珍しく弱音を吐くジャガー…このコンビこそ、女子プロ版"馬場・猪木"ともいう
べき魅力にあふれている。
―年前の"事件"がまるで悪夢であるかのように、今、記者の目の前に座る2人は会心のスマイルを浮かべている。「それがスポーツマンというものではないですか!」
ジャガーが代表して答える。やっとデビルに笑顔が戻った・・といったら、おおげさだろうか。そんな印象が記者の脳裏をよぎった。
一方のクラッシュは力を出し尽くしての悔いなき敗戦だ。インターバル抜きの2試合連続にもかかわらず、よくぞ完全燃焼した。女子プロ大賞に大きく前進!
----------------------------------

 

 

 

 

極悪同盟を下したクラッシュギャルズは、リング上でそのまま女帝ペアを待ち、決勝戦に入ります。ここで1本目を取った時が上記の写真となります。

 

 

(「炎のコノヤロー」より。決勝戦の模様が書かれています)

 

横浜の試合や、大田区体育館の試合が、Youtubeにそのうちだれかアップしてくれたら、またレビューしてみたいと思っています。

 

極悪コンビとしては、昨年の実績を考えると、手ごたえ十分だったでしょう。むしろ全チームをかく乱して、ダークホースだったと言えます。このタッグリーグ戦が終わるころには、極悪コンビは反則攻撃のエスカレートと、阿部四郎を抱き込んで、どんどん負けないチームになっていきます。そしてWWWAタッグチャンピオンベルトに挑戦することになります。

 

 

(追記 2022/11/2)

 

9/13の横浜大会

「炎のコノヤロー」より

 

 

 

 

 

こちらにも横浜大会の模様を詳しく記載しています。

『1984/9月 フジテレビ杯争奪タッグリーグ戦 準決勝~決勝を振り返る』1984/8/25~1984/9/26に行われたフジテレビ杯争奪タッグリーグ戦の準決勝~決勝にかけて、エキサイティングプロレス11月号に総括されていたので、引…リンクameblo.jp