
ジャパン女子プロレスさんのYoutubeより
AJW 1984/9/1 後楽園ホール オールパシフィック選手権 ダンプ松本vsデビル雅美
(↓AIでフルハイビジョンに変換した動画です)
今回はダンプの衣装や凶器について雑誌や本からいくつかピックアップしてみます。
なんたって女子プロレスより-----------------------------------
リングの登場するダンプ松本は、ナチスばりの黒の制帽、黒皮のベストに黒の手袋、黒のブーツと、悪そのものを象徴する黒ずくめの服装に、対戦相手を容赦なく打ちのめす竹刀やチェーン、皮ムチを持っている。
面白いのはダンプが初めてチェーンとムチを買った時のことだ。悪役として凄味をきかすために、色々とアイデアをこらしたが、困ったのは反則の武器に使うチェーンとムチ。竹刀のほうは剣道具店でもデパートのスポーツ売場でも手に入るが、チェーンとムチはどこで売っているのか見当もつかない。それでも知恵をつける人がいて、SM愛好者が集まるサドマゾ用品の店、つまりSMショップに行けば手に入ると分かった。
そこでダンプは都内某所にあるSMショップに出かけたが、さすがのダンプも店内に一歩入ったとたんに調子が狂ってしまった。どうやらそこは、SMといっても男が女をいたぶったり、女が男をハイヒールで踏んづけたりするテの店ではなく、サドの男とマゾの男が愛し合うためのホモ・ショップだった。
店内にはいかがわしいハダカの男の写真が飾ってあったり、男性用のハデな猥褻っぽい下着が並んでいたりする。店にいるのはすべてソノ気のある男性ばかり、とにかく異様な雰囲気なのだ。
ダンプは素顔はいかにも人の良さそうな女の子だ。SMショップに例のペインティングメイクをして行ったわけではないから、得意の「テメェ、ブッ殺すぞ」と怒鳴る訳にもいかない。
「このオンナ、何に使うんだろう?」というヘンな男たちの好奇心あふれる視線にいくぶんモジモジしながら、とにかくチェーンとムチを買ってきたのである。チェーンもムチも消耗品だから、補充しなければならない。今度はブル中野やコンドル斎藤あたりが、いやいや使いに行かされているのだろうか。
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私じゃダメかいより--------------------------------------------
女子プロの試合でアルミ缶になんかの凶器を使うのは、一種のショーアップのためなんだ。自分は悪のイメージづくりの小道具として、色んな凶器を使った。ムチ、チェーン、ハサミ、イス・・。ムチは皮のムチ。これがなかなか売っていない。
あれこれ探し回って、SMショップで手に入れた。店に入るのは恥ずかしかったけどさ。
「皮のムチください」
店の主人がニヤッとした。
「試合に使うんです。これ」
ドキドキしちゃった・・。
でも皮の鞭手にして、リングに立つと気分はすっかりサド。暴れまくっちゃったぜ。
凶器を使える選手って、ちゃんと決まってたんだよ。会社のほうで、それを決めてたの。
どうしてかっていうと、凶器を持つと、とたんに人間性が変わっちゃう人がいるから。
試合慣れしていない子とか、性格が悪い子には、凶器は許さない。自分がやられると、マジになって向かってくるタイプ。これは怖い。試合がショーだってこと、頭に血が上ると忘れてしまうんだ。
女にはそういうタイプが案外多い。自分は凶器を持ってもマジには使わなかった。
あくまでも演技として使っていただけ。だからどんなことをやっても、相手に大けがさせたことはなかったぜ。そういうのをプロっていうのさ。
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凶器を使うのもプロの仕事。松本香時代にブラック軍団に参加。しばらくすると、会社から「お前ならば凶器を使っても良い」と認められたのだと思います。ぶるちゃんねるでも話が出ているが、「基本、ヒールは気弱な性格の人が多い」と言われています。つまり、臆病な性格だからこそ、相手に本当のケガをさせないようにいつも冷静な人間だけが、許可をされていたということです。
血については、新日本プロレスではレフリーのミスター高橋が、カミソリで額を切っていたらしいけど、全女は選手自身がアルミ缶のカドでちょっとこすったり、フォークをよく尖らせて、サーッと切ったりして血を出させていたそうです。ダンプ松本はサッと額を切って、跡がほとんど残らないようにしていましたから、流血の魔術師だったと言えます。
デビル雅美はカッとなりそうな性格にいっけん見えますが、実は冷静な性格です。木刀は肝心なところでしか出さないし、相手に致命傷を与えることもありませんから、ヒールとして向いていたのだと思います。(デビルはヒールでこそ輝くモノがあった)
ダンプにヒールとしての基礎を教えたのもデビルでしょう。だからデビルはダンプにとっては、ヒールとしては師匠ということになります。
さて、試合のほうをみていきます。
ザ・ベートーベンが復活。ようやく肩の脱臼が治ったのでしょうか?(^^;
いつもの通り、サングラスに警察帽、皮ジャンで入場です。サングラスと化粧は、何かの本で書かれていましたが、童顔を隠すためみたいですね。警察帽はなにをヒントにしたのか良く分からないのですが、先に書いたSMショップに行ったときに、SM嬢のポリス帽があったからなんじゃないかと想像しています。
続いてチャンピオンのデビルの登場です。横でカードしているのは中野恵子(ブル中野)です。このときはデビル軍団の一員ですから、まだ付き人でやっていたんですね。
両者、レングの内と外で睨み合います。ダンプにとっては、デビルは自分を追放した張本人です。デビルにとっては、松本はデビル軍団を解散に追い込んだ張本人でもあり、お互いに因縁がぶつかり合います。ジャガー横田戦のときは、少々萎縮していたように見えたダンプですが、この試合ではサングラスをしたまま、じっと睨んでいます。
志生野アナ「この2人はどう闘いますか、因縁試合です」
志生野アナ「そもそもデビルがデビル軍団を解散したのは、このダンプ松本、クレーン・ユウがあまりにも目に余る乱暴狼藉があったからですよね」
志生野アナ「3回目のタイトル防衛のデビル雅美、今日は正装ですよ」
志生野アナ「また一つ問題が起こりそうですね」
志生野アナ「あの阿部四郎レフリーがリング上に登場しております」
志生野アナ「お、今日は阿部四郎レフリーはちゃんとやらないと、確か後楽園ホールで出場停止を喰ってるんじゃないですか?」
宮本「そうですね、謹慎一か月延長ってことになったんですけど」
宮本「公正なレフリングを致しますという誓約書を兼ねた謝罪文を入れまして、コミッショナーもその意を汲んで、情状酌量の余地を認めたといいますか、今日のレフリングを認めたようです」
志生野アナ「しかし阿部四郎も現金な人ですね。今度はなにか急に極悪同盟側に対して厳しくなってますね」
志生野アナ「コロコロ変わる所が返って怖いんですよね」
なんと、阿部四郎が今日は極悪に反旗を翻したということです。さすがは千両役者ですね。
植田コミッショナーから阿部四郎の処遇について、マイクで説明がされましたが、何を言っているのかさっぱり聞き取れません。もっとはっきり喋れよ(笑)
(江戸時代の不良vs昭和の不良)
氏家リングアナ「赤コーナー、デビィルゥ~、マサァ~ミィ~!!」
コールが終わるや否や、ダンプが奇襲攻撃。まだ般若のガウンを取っていない状態で、一気に栓抜きを使った凶器攻撃に入ります。強い相手にはまず先制カウンターが重要です!!
志生野アナ「おおーっと、早くもダンプ松本、襲い掛かっておりますが、まだ選手紹介の途中であります」
志生野アナ「相当興奮してますねぇ・・ダンプ松本は」
志生野アナ「試合どころか選手紹介が始まったとたんに、ダンプ松本、出てまいりました」
志生野アナ「こういった難しいところをどう裁くか、阿部四郎レフリー」
ここでゴングがなって勝負開始です。
ダンプとデビルが攻防を始めますが、ダンプの凶器を執拗にチェックする阿部四郎。
おそらく、阿部四郎としても、興行が分かっていない植田コミッショナーに出場停止にされてしまうと、今後の極悪びいきに影響がでますし、罰金まで取られそうなので、今回は真面目にやっているようです。しかも今回は白いベルトがかかっているので、ベルトがかかった試合で反則でチャンピオンになることは当時は避けていたと思います。
とはいえ、ダンプはお構いなしにバケツ攻撃を敢行。さらにチェーンをデビルの首に巻き付けて、相棒のクレーンに引っ張らせます。
今回は阿部四郎の監視が厳しくて、それほどの反則攻撃は出していません。しかし、どこかでデビルが右足を負傷したようです。
そこで植田コミッショナーの席に向かい、紫の木刀を握ろうとします。
なぜ、デビルの木刀だけがコミッショナー預りになっているのか謎ですが、そういう設定のようです。
突然、デビルvs熱血ウエダの木刀取り合い合戦となり、なんだかよく分かりません。
その合間にダンプはパイプ椅子でデビルに優しくヒット(笑) クレーンと違って、ダンプはパイプ椅子を使う時は優しく叩いてあげています。昔にマスクド・ユウにパイプ椅子で殴られて半失神されられたので、相手に思いっきり叩きつけにくいのかも・・。
志生野アナ「木刀をどうしても取りたいデビル雅美」
志生野アナ「ちょっと木刀にこだわりすぎている感じしますがどうでしょうか」
なぜか木刀だけは絶対に渡さないという熱血植田。異常な腕力で木刀を手元に戻します。
志生野アナ「植田信治コミッショナーとしては何とかデビル雅美にちゃんと戦ってもらいたい」
志生野アナ「もうあまり木刀を使ってもらいたくないとい親心がいま込められている感じがいたします」
え、そうなんですか? どうしたいんでしょうか。デビルに木刀を渡さなければダンプの無法攻撃が続きますし、ベルトを賭けた試合だけは凶器試合にしたくないということでしょうか。
私としては、ここはデビルに木刀を渡して試合を盛り上げて良い場面じゃないかと思うのですが・・。ダンプもそれを予想して、リング上でパイプ椅子でガードできるように待ち構えています。ダンプはもうこのときは試合の次の展開は読めていて、嗅覚はバツグンにいいです。
木刀を持ってリングに戻らなかったデビルに対し、仕方なく持っているパイプ椅子で攻撃するダンプ。しかし、ガツンとした金属の鈍い音がするわけでもなく、優しく叩いています(とはいっても、相当痛いと思いますが)。
志生野アナ「相変わらずの椅子攻撃であります」
志生野アナ「阿部四郎レフリーが今日は珍しく、この反則攻撃にカウントを取っております」
志生野アナ「デビルがやられて・・・あーーーっと!!」
ここで突然の終了のゴング!!
志生野アナ「いまゴングがなりました」
志生野アナ「いまのゴングはなんですか?」
宮本「おそらく反則じゃないですかね? 」←そりゃ見ればわかるだろ
志生野アナ「反則ですかね」
デビル雅美「これじゃ、話になんねーだろ!!」←と言っているように聞こえる
志生野アナ「ダンプ松本が反則攻撃を取られまして、いまデビルの手を上げようとしております」
志生野アナ「デビルの手が上がったが、デビルがこれを受け付けません!!」
志生野アナ「あんなもので勝ったってしょうがない、そういうことなんですか?」
宮本「デビルにとってはやられるだけやられましてね、反則のゴングが鳴りまして、やはり屈辱ですよね」
志生野アナ「今度は松本が怒るし・・」
志生野アナ「今日はなにか阿部四郎レフリーにとりましては、ちょっと辛いですね。両選手から抗議を受けております」
志生野アナ「だいたいダンプ松本が登場しますと、いつもこういう試合になります」
志生野アナ「極悪同盟、どうしようもありません」
なんとも煮え切らない結果の末、デビルがベルトを死守したという試合になりました。
なんという、つまらないオールパシフィック選手権試合!!(^^;
この試合は、色々な見方ができそうです。
まず、私が見たところでは阿部四郎の植田コミッショナーへの報復試合に見えます。
1984年の序盤で、プロレスが興行であることを理解していないウエダが、阿部四郎に出場停止やら罰金やらを求めていました。そもそもこの時点で阿部四郎としては、面白くない展開なわけです。極悪に加担してこそ、会場がヒートアップするというのに。
そこで阿部四郎はこの試合に関しては、赤いベルトということもあるかもれしませんが、真面目に反則に対してカウントを取りました。
さらに植田は空気を読まずにデビルに木刀を渡しませんでした。これでは肝心なデビルの木刀vsダンプの凶器というハイスパット(盛り上がり)が出来なくなってしまいます。こんなことでお客様が盛り上がるわけがありません。ダンプは流れを読んで、パイプ椅子まで用意していたというのに。
そこで、呆れた阿部四郎はルールだからということで、ゴングを鳴らしたのかなーという予想です。この試合が非常につまらない試合になることが分かっていて、わざとゴングを鳴らしたんじゃないかと思います。
試合はダンプ松本の反則のせい、ということで志生野さんがうまく解説でまとめています。さすがは志生野さんです。この状況でお客様に納得がいくようにするには、ダンプの反則が悪いということにするしかなかったと思います。気の毒なのは、ダンプ松本とデビル雅美だと思います。
(良い試合が出来なかったことで、ダンプを睨むデビル。でも悪いのはダンプではありません)
志生野アナ「宮本さん、やはりこういった選手権試合には、試合らしい選手の動きといいますかね、なにかあっていいような気がしますけどね」
宮本「そうですね。このまま収まりそうにないですからね。スッキリと決着をつけてほしいです」
志生野アナ「今日は勝ったデビル雅美にいたしましても、もちろん負けたダンプ松本にいたしましても、何かいまひとつという感じが残るんじゃないでしょうか」
宮本「ええ、割り切りない物が残っていると思います」
この志生野さんと宮本の解説がすべてを物語っているのではないでしょうか。
もうひとつ考えられるのは、WWWAのチャンピオンベルト、赤いベルトを賭けた試合のため、ヒールのダンプは最初から勝つことはなかった、ということです。
これはぶるちゃんねるでも、ダンプが話していますが、ヒールはチャンピオンベルトを巻けない、ベストバウトも取れないというのを話していました。
つまり、勝者はデビルというのは決まっているが、どのような試合になるかは本人たちにある程度任せていて、凶器同士の試合になりそうなったために、急遽阿部四郎がゴングを鳴らして、赤いベルトの試合の価値を守った、とも考えられます。
しかしプロレスはお客様を盛り上げてナンボです。ルールだから、凶器だから、そんなことを言っていては、お客様の感情を動かすことはできません。凶器が出ても良いのです。凶器攻撃をされたら、それに見合った展開をするのがプロレスです。お客様が熱狂することを選手はすればよいんですね。
今日の凶器 栓抜き、チェーン、バケツ
この試合の記事がエキサイティングプロレスにありました。