この時期には珍しく、全日本女子プロレス全員の集合写真を掲載しています。
間違ているかもしけないけど、左上からジャンボ、大森、横田、長与、飛鳥、立野か?、クレーン、ダンプが映っています。下段は中野、小倉などの58年組、あとデビル、永友ですかね。
みんな仲がいいように「見えます」(^^;
ダンプもユウもノーメイクで大丈夫だったんかーい(^^;
しかもベビーフェイスと仲良く一緒・・。
全体写真を見て思ったんだけど、デビル軍団が実質ベビーフェイスとすると、この時期のベビーとヒールの比率、ちょっとヒールが少ないですよね。13:2ですもんね。(新人はまだ完全に決まってないけど)
本文の一部抜粋
--------------------------------------------------
東京の少女たちの間で、女子プロレス人気が高いという。試合を見に行くと、会場は彼女たちの興奮の渦だ。休憩時間には選手が歌をうたう。専門誌が出版され、テレビ中継され、熱狂の渦は全国に広がろうとしている。なにが少女たちを魅了しているのか。東北の巡業に同行した。
町はずれの体育館に野良仕事を終えた人達が集まってくる。女子プロレスの開演は六時半からである。人口8千の町から集まってきた約800ンの住民は、水着姿でリングにあがった女子選手を目の当たりにして期待と当惑に固唾をのみ、笑顔はいささかこわばっている。そういう私自身、女子プロレス見物は初めてである。前座は田村久美子(15)と小松美加(17)。まだあどけない少女が相手を投げ飛ばし、キックしロープにぶつかって跳ね返ってきたのに体当たりしていくのをみるのは、どこか痛々しい。
女子プロレスを追って秋田まできたのは、夕方七時台のゴールデンタイムにテレビに登場している選手たちの肉声をきくためである。視聴率は、11~12%。7年前のビューティペア時代の熱気がいままた戻ってきた。人気タレントは、クラッシュギャルズ。女子プロレスは想像していたようにはグロテスクなものではなく、華麗なショーともいえる。熱演する姿が胸をうつ。いわば職業的な真摯さがある種の感動を与える。男以上に肉体の限界に挑戦しているのだった。
前座が終わると、クラッシュギャルズがリングに上がって歌う。紙テープがロープ越しに飛び交う。テープを投げているのは、全日本女子プロレス興業株式会社の松永健司専務(49)である。彼は試合が始まる前まで、入り口の横の売店に立って選手の似顔絵の入ったTシャツ、カレンダー、下敷き、色紙、レコードなどの売り子をつとめ、ついさっきまでは場内を回って2個100円の紙テープを売って歩いていたのだった。試合が再開されると、松永一家の次男でもある健司専務は、今度はレフェリーとなってリングに上がった。芸名はミスター郭。そういわれてみると、どこか中国人の風貌が漂っている。
--------------------------------------------------
--------------------------------------------------
チーフレフェリーのジミー加山は本名は松永国松。松永家の四男。常務である。審判部長は五男の松永俊国(40)取締役。三男の高司(48)がこの会社の社長である。つまり、日本唯一の女子プロレス企業は同族会社にして家内企業。選手達は社員で、試合の合間に売店でプロレス関連商品を売り、試合が済むとリングを解体し、マットの下敷きの板や椅子を運んでトレーラーに収納する。
巡業にきた15人の選手と2人外人選手、小人レスラーたちは大型バスに乗り込む。呉越同舟である。東京には病気などで欠場した3人の選手が残っている。選手は練習生をふくめて18人。社員は総勢45人。この家族的企業が女子プロレスの全世界である。すべてをバス一台、トラック2台に詰め込んで、全国を巡業する。
たとえば10月の第一週のスケジュールは、次のとおりである。
1日 青森県三戸町立体育館
2日 同三沢市総合体育館
3日 秋田県琴丘町広域体育館
4日 山形県新庄市体育館
それぞれ夜六時半開演。それまでに大型バスで辿り着く。秋田県五城目町の旅館を出発したのは午前十時半。バスは全長十二メートル、六十人乗りを三十五人乗りに改造した。バスの中では選手達が飼っている三匹の子犬が唸ったり、キャンキャン悲鳴をあげたりしていたが、やがて静かになった。飼い主たちはシートを低く倒して眠りをむさぼっている。窓枠には洋服が吊るされ、洗濯リングにはまだ濡れているTシャツが。バスが揺れると、なかに隠した下着の色がみえたりする。
「2階建てのバスを買いたいんだけど、八千万するんでね」 選手達からマネージャと呼ばれている国松常務は思案顔である。いまのバスは二千万円。四倍のものを考えるようなったところに最近のブームが反映している。彼はまだ累積赤字が一億円以上ある、というのだが。
バスは日本列島を四時間ほど南下して山形県新庄市の体育館に到着した。社員が総出で床にビニールシートを敷き、リングを仮設し、千個以上の椅子を並べる。瞬く間に会場が設営される。廊下のソファでクラッシュギャルズの話を聞いた。
「東京に帰りたい」
開口一番、ふたりの人気者から出た声である。まだ六日目じゃないですか、と驚くと、もう何年も旅回りなので六日間でも帰りたくなる、という。ふたりとも足と腰を痛めているので、東京で治したいのだそうである。それにテレビでの放送がない東北は、関東のようなファンの熱狂がない。中高年が多く、どこかうら悲しい雰囲気が滲んでいる。
長与のファンレターの80%は女の子から。夢を与えてください、というものが多い。秋田県五城目町の女子生徒からの手紙からはこう書かれている。
「私はとってもプロレスが好きです。いや、愛しているといったほうがよいかもれしません。そしていつかはリングの上で浪漫を求め、自分をアピールしたいと思うのです。長与さんがリングの上で闘っていることは生でみたことはありませんが、強くなろうとしているのが分かります。私も強くなりたい。プロレスという格闘技を人生の中に含めて私は生きたい。格闘家として体がボロボロになるまで闘いつづける。最後には自分の命を捨ててしまう厳しい道のりだ」
ライオネス飛鳥はこの数か月、一日たりとも休んだ記憶はない。試合も多くなったが、芸能の仕事が増えた。朝九時から午後四時まで、芸能の仕事。四時すぎからプロレス。半分以上は芸能関係である。それでも、ヌードになったりポルノ映画に出たりして、女子プロレスや会社の名前を傷つけたくない。トルコ嬢になった先輩がいることを意識した発言である
長与千種は月収で三十万程度。彼女は右膝、飛鳥は右膝の半月板がメチャクチャ。痛くて曲がらない。話が終わって立ち上がったとき飛鳥は「あいたた」と腰をさすった。骨折、バケツで殴られての出血、太ももを九針も縫ったケガもある。
--------------------------------------------------
--------------------------------------------------
悪役のダンプ松本は23歳。風呂上りの素顔はあどけなかった。悪役は会社の方針。体重は九十五キロだが、減量するな、も会社の方針。クレーン・ユウ(21)との二百キロコンビが売り物だからである。それでも彼女は悪役が好きだ。仕事だと割り切っている。
「ファンレター」にカミソリが入ってたりする。死ネッ、という意味である。本来なら、ベテランと新人なら一分で勝負がつく。それでも後輩をもりたて、スターに育てなければならない。それがプロレスを愛する愛社精神である。
リングサイドの女子中高生にきくと、男のプロレスは汚く、動きが鈍い、という。女子のプロレスラーはかわゆくて、カッコ良くて、つい。それはフィクションではない。肉体の飛翔はリアリズムである。閉塞された学校体制。いま、敢然と突進する姿を目撃できるならば、もはやとりすましたアイドルタレントは空虚である。女子プロレスは矛盾にたちむかう抵抗の志の、果たせない夢なのであろうか。
--------------------------------------------------