
Evito-X-PuroさんのYoutubeより
AJW 1984 12 05 境町体育館 ジャガー横田vsクレーン・ユウ
27:00くらい~より
(↓AIでフルハイビジョンに変換した動画です。試合部分のみ切り取り)
今回もクレーンの全女時代の話を「吉田豪の"最狂"全女伝説インタビュー集」から一部引用します。
クレーンと吉田豪との対談--------------------------
仕事じゃないと凶器なんか使えない
―当時、仲良かったのは?
ユウ 同期は仲良かったですね。私と大森(ゆかり)とダンプと千種と。みんな1回オーディションに落ちたりして、月謝を払う練習生として週3日、目黒まで通ってたりしたんで。だけど寮を出て行ってから、(ライオネス) 飛鳥は最初から目をかけられてたから。私とアウ (ダンプ)は下の下剋上コースみたいな感じで。
―そしてヒールになるわけですか。
ユウ バブル前のどん底のときに会社をふたつに分けたんですよ。A 班は北、B班は南みたいな感じで試合をやるようになって。A班はエ リートで、B班は雑草って感じで。その頃、「おまえ、今日から悪役な」とか言われたわけじゃなくて、なんとなく悪役の池下(ユミ)さんと組んだり、マミさんと組んだり、外人と組んだりが多くって、「私、悪役?」みたいな。そのうち、「おまえは人の良さが試 合に出てるから、恥ずかしいって思うからダメなんだ。だから覆面を被れ」って言われてマスクド・ユウになったけど、顔が出てるから恥ずかしいんじゃなくて、もともとの性格だからダメなんでしょうね、 入り込みきれないところがあったんだと思います。
―長与さんとか本気で入り込みますよね。
ユウ うん。だからたぶん、千種とかはそういう精神状態に持ってい くことが上手なんでしょうね。私はなんとなく、相手に「痛てっ!」 て言われると「あ、ごめん!」って。
―ダハハハハ! いい人すぎますよ! ちょっとやり過ぎちゃったかな?とか、変なとこ打っちゃったかな?とか気になっちゃう。
ユウ うん。それが同期だったら「ごめんね」だけで済む部分もあるんだけど、先輩だったら「すみませんでしたすみませんでした!」 ってなっちゃう。で、「すみませんじゃねえよ、もっとやれよ!」 「なに怯んじゃってんの? そんなんじゃダメじゃん!」みたいな。そうい うことを言われてから、もっとやらなきゃいけないんだって植え付けられてきて。だからダンプが一番偉かったね。私とダンプはホントにダメなヤツだったけど、いつの日からか入り込めるようになって。
―ダンプさんの初期の映像とか観ると全然入り込めてないんですよ ヒールキャラをやりながら、つい照れ笑いしちゃう感じで。
ユウ でしょ? だから「おまえらふたりはホントにダメだ」ってずっと言われてて。地方に行ったりすると、東北をバカにするわじゃないんだけど、東北ってすごい寂しいところってイメージが私の なかにあって。青森とか行くと津軽弁のおばあちゃんとかが、おにぎり持って観に来てるんですよ。たぶん息子とかに車で送ってきてもらって。で、ウチらがリング片付けしてると「頑張ったね、気をつけて帰ってね」って声かけてくれて、片付けに小一時間かかるんですけ ど、まだ迎えが来ないんですよ。「おばあちゃん大丈夫?」「うん、もう出てると思うんだけど」みたいな。そういうのを私とダンプでしゃべってて、「あのおばあちゃん帰れなかったらどうする?」「迎えに来るよね?」「きっと来るよね?」ってふたりで泣いて(笑)。
――ダハハハハ! ある意味、姥捨て山みたいなイメージがあったん ですかね(笑)。
ユウ そう! で、それをまた先輩に「おまえら何泣いてんの? バカじゃないの?」って怒られて。そんなことはしょっちゅうで。
―ダンプさんも基本、善人ですからね。
ユウ そうなんですよ・・・。でも、基本的にヒールのほうが人がいいような気がする。
―よく言われますよね。ヒールを引き受ける時点でいい人なんじゃ ないかっていう。
ユウ そっかそっか!
―素朴な疑問なんですけど、そういう善人がヒールとしてやり切れるものなんですか?
ユウ ほかの人はどうかわからないけど、私は仕事だと割り切ってる ので。仕事って思わないと、それこそ凶器も使えないし・・・。
――これは相手のためにもなることだ、と。
ユウ そうそう、持ちつ持たれつじゃないですか。ベビーフェイスが いるから悪役がいる、悪役がいるからベビーフェイスがいる。
―お互い光らせるためにやってるわけで。
ユウ そうそう。だから、そこでどれだけ相手のいいところを出してあげられるか。より自分が残酷に見えるか、お客さんからざまあみろ と思われるような投げられ方、受け方ができるか。逆に相手をどれだけかわいそうにイジメるか。100人会場にいたら97人はクラッ シュ・ギャルズを応援してるけど、でも3人は私たちのファンもいて応援してくれてるわけ。じゃあ、その子たちのためにもいい仕事しなきゃ、みたいな。私は途中からそういうふうに切り替えて。だからプライベートではふつうに大森と遊びに行ってたし、毎日大森を迎えに行っ て、大森と一緒に車に乗って事務所に行ってたし、帰りも私の車で大森の家まで送って行ったりしてたし。そこは仕事って割り切ってるから、いまでも連絡も取るし、ダンプが「出るから来て」って言えば行くし。
―当時のプロレスはファンがいまほど成熟してなくて、ヒールが本気で憎まれてた時代じゃないですか。石を投げられて当然で。
ユウ そう、玉子とかよくぶつけられて。臭いんですよ、生玉子。 だったら石を投げてくれよと思って。 しかも、試合に出るときに投げ られるから。終わって帰るときならまだシャワー浴びればいいやと思 うけど、出るときだから。玉子はすっごい臭くて嫌だった。
―臭くなければいいんですか(笑)。
ユウ それぐらいかな? カミソリ入りの手紙が送られてきたり、ウチのおばあちゃんが「あなたのお孫さんは、なんでそんなことばっかりしてるの!」って近所の人から言われたっていうのはあったみたい ですけど。
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クレーンのインタビューを読むと、性格がサッパリしていて、良い意味で、物事をあまり深く考えすぎない方って感じがします。レフェリー転向の件でも、ダンプとはケンカ別れしてもおかしくなかったのに、ダンプのことがムカついたようなことは話していないですよね。
たぶん、クレーンってすごい、いい人なんだと思います。(よく全女にあった、ネチネチしたり、ヒガんだり、しつこかったり、そういうのが無い人なんだと思う) 人が良すぎるから、ダンプやブルの2番手で甘んじてしまった面もあるかもしれませんね。
さて、試合をみていきます。
本日の相手は最強のジャガー横田ということで、セコンドには阿部四郎、中野恵子と続いています。さらに前の試合が終わったダンプもすぐに合流してきます。極悪同盟総動員です。
レフェリーはちゃっかりと阿部四郎です。この頃は極悪の試合は、全部極悪レフェリー(阿部四郎かリトルハート)がやっています。
志生野アナ「レフェリーが阿部四郎であります」
志生野アナ「またも、お客様から不審の声!!」
志生野アナ「これはとりあえずは仕方ないということですか」
お客様「カーエーレー!! カーエーレー!! カーエーレー!! 」
植田「私は今日試合前に、もし今日変な試合をするようだったらライセンスを取り消すといってありますから」
志生野アナ「ひとつ、阿部四郎レフリーには、毎度期待は裏切られていますが、公正なレフェリングをお願いしたいと思います」
志生野アナ「クレーン・ユウもちゃんと戦えば、十分にジャガー横田と戦える力をもっていますが」
志生野アナ「控室で本当にいい試合をしてほしいと、私から注文をつけておきました」
この頃になると熱血植田も従順になってきて、もう極悪の試合に阿部四郎が出ることに反対していませんし、「すぐにライセンスを取り消す」という申し合わせたような答えをしていますね。
また、志生野さんは控室で毎回ではないにしろ、放送前には選手と話はしているんですね。
志生野さんの願い虚しく、開始早々すぐにダンプがリング上に上がって2人攻撃!!
志生野アナ「しかしダメだ・・やはりダメだ・・」
志生野アナ「ダンプ松本、入って参りました」
志生野アナ「極悪同盟、ダンプ松本が登場してまいりました」
志生野アナ「もうファンもシラケ切った感じであります!!」
7月のジャンボ堀vsクレーン・ユウでは、ダンプはリング内に入ってきませんし、あまりサポートしていませんでした。しかしジャガー横田戦になると、ガンガン入ってきます。
いままで一度も勝てたことが無いジャガーですから、クレーンがどんな手を使っても一度は勝ちたい!!と気合をいれていたのでしょう。(^^;
どんなにダンプが邪魔をしても、すぐにジャガーは体勢を入れ替えて、主導権を握ります。さすがはストロングスタイルの女王です。
(ジャガーは体重が軽いので、リフティングもしやすく、そこからの連携技もつなぎやすいですね。ジャガーは受け身も超一流ですし)
体格差をいかして、徐々にクレーンのペースに持っていきます。
そういえば、クレーンの還暦祭でジャガーとクレーンが戦いましたが、この当時とは体型が製版で、還暦ジャガーのほうがクレーンよりもデカくなっていました(^^;
まだ極悪見習い中の中野恵子もリング内に参戦。しかしまだ凶器を持たせてもらえずに素手で殴ります(^^;
志生野アナ「極悪同盟のメーキャップというのは、独特でしょ?」
志生野アナ「盛んに黒いのを使っちゃってね」
ゲスト「口紅とかも」
志生野アナ「どうですかね、似合ってますかね、あれで」
ゲスト「うーん、憎たらしいですね!!」
放送席でも十分に不評を買っているようです。
(ダンプは鉄パイプで参戦!)
(さらにダンプと中野で攻撃。この時期の中野はなんでアフロみたいな髪形にしたんでしょうね・・無理やりの極悪入りに、やけっぱちの髪形にみえます・・)
志生野アナ「しかし極悪同盟というのは、かつてのデビル軍団、」
志生野アナ「あるいはブラック・ペア、それを上回りますね、やることが」
解説「反則をなんとも思っていないですからね」
志生野アナ「完全に開き直っているというか」
志生野アナ「堂々とコミッショナーの前にやって参りました」
植田「あっちいけ!!」
(コミッショナーもお構いなしにジャガーを投げつける)
植田「やめろ!!」
植田「やめろ!!」
ダンプはかなりギリギリのところを攻めていますね。コミッショナーにはさすがに机は投げつけませんでしたが、いっそのこと投げても面白かったかもしれません(^^; デビルは以前に植田を攻撃してましたからね。
(度重なる場外乱闘でジャガーがムカついたのか、クレーンをお客様の中に投げ飛ばします。そのときにお客様から酷い言葉を言われたのか、クレーンが珍しくお客様に物凄いガンを飛ばしています)
執拗にコミッショナーにケンカを売るダンプ。
ここでお客様から
「カーエーレー!! カーエーレー!! カーエーレー!! 」
コールが起こりました。極悪としては大成功です。
(ジャガーが得意中の得意とする、フライングボディアタック。相手に当たった後で滑るように半回転するのが素晴らしいです。ジャガー以外にやっている人いましたっけ?)
クレーンの得意技、ダンプの駅弁抱っこからの、トップロープからのギロチンです。
後年のブルのローリングギロチンには及びませんが、この当時にすでにギロチンを必殺技にしていたクレーンのセンスはなかなか良いですね。
終盤ではジャガーのエビ固めがバンバン決まりますが、なんとか耐えるクレーン。
トドメとばかりにジャガーはトップロープからの空中技に行きますが、珍しくロープに足を掛け損なって失敗しています。
クレーンをダンプと衝突させた後、トップロープからのミサイルキックです。
これで3カウント。ストロングスタイルのお手本のような、見事な勝ち方です。
やはりジャガー横田の壁は高かった・・。
今回は植田コミッショナーが目を光らせていたので、公正(?)なレフェリングをした阿部四郎は、コミッショナーと握手。やはりこの人は最後の最後で美味しいところを持っていきます。
裏切り行為をした阿部四郎を、全速力で追いかけるクレーンが笑えます。
ダンプは試合後も、画面下でカメラマンに逆襲してますね。この場面はちゃんとカメラを切り替えてほしいですw
阿部四郎、クレーン、ダンプ。試合を盛り上げた3人の演出は満点でしょう。
今日の凶器 チェーン、鉄パイプ