1984/12/7 熊谷 極悪vsクラッシュ ベビーの母は堂々観戦、ヒールの母は隠れる

1984/12/7 熊谷市民体育館 ダンプ松本、クレーン・ユウvsクラッシュギャルズ

Evito-X-PuroさんのYoutubeより

25:00くらいから~

 

(↓AIでフルハイビジョンに変換した動画です。試合のみ抜粋)

[AI FHD 60fps] AJW 1984 12 7 熊谷体育館 クラッシュvs極悪リンクyoutu.be
 
熊谷といえばダンプの地元です。地元ではダンプのお母さんが観戦に来ていたということが、自著に書かれています。その部分を当時の自著から引用してみます。
 
「おかあちゃん」より-------------------------------------------
悪役になり、突然人気が出た。
"人気が出た!"と言っても悪役は悪役だった。
ただ、人気が出ると、お客さんの数はうなぎ登りに増えた。
「熊谷市民のみなさま、地元出身の女子プロレスラー、あの極悪同盟のリーダー、ダンプ松本が一年ぶりに帰って参りました・・」
宣伝カーのアナウンス一発で、会場の熊谷市民体育館は蜂の巣をつついたような人だかりだった。
思えば、デビューの頃、やはり地元での「新人王決定戦」は寂しいものだった。その時は家族や親戚で、2,3百枚もの入場券をノルマとして課せられた。
「地元でやるから見に来てね!」
その時、初めて家族の前で私は試合をやった。十分ほどで私は相手を打ちのめして勝った。母は一番後ろで立って見ていた。
「もう帰んなね」
私は追い返すように母に言った。先輩の目が厳しく、母とろくに言葉をかわすこともできなかったのだ。あれから、私は極悪同盟の花形レスラーとして鳴らすまでになった。知名度も抜群! しかし、いくら人気が出たとはいえ、悪役が正義の味方になれるわけでもない。悪役は悪役。所詮、私は私のプロレスをやるしかなかった。そして、人々が大勢、会場に集まれば集まるほど、その数に比例して憎まれ役に非難が集中するという図式に変わりはなかった。
その日、熊谷市民体育館は満杯の盛況! つまり、熊谷市民体育館、その満杯の人々の憎まれ役を、私一人が背負い込んでいたのだ。
闘えば闘うほど、一生懸命闘えば闘うほど、みんなの嫌われ者になっていく・・そんなわが子の姿を、母はあの日と同じ、会場の一番後ろの方でみていた。
「バカヤロー!」
「死ね!」
自分の娘が、そんな罵声を無数に浴びせられて喜ぶ親はいないだろう。ましてや、同じレスラーなのに、悪役の親と、ベビーフェイスの親とはファンの扱いからして全然違う。天と地ほどの差がある。ベビーフェイスのクラッシュギャルズの母親は、ファンからの色紙を両手にあふれるほど抱えている。その上、ファンの女の子たちと「ピース!」をしながら、同じ写真に楽しそうにおさまっているのだ。
「わたしが千種(長与千種)の母親よ!」
「わたしが飛鳥(ライオネス飛鳥)の母親よ!」
そういう顔を満面に浮かべて・・・。それにひきかえ、わたしの母はどうだ。ちっちゃく、ちっちゃくなって、「ごめんね、ごめんね」ってみんなにペコペコ頭を下げながら、会場から帰っていった。
そんな母の姿、今でもかわいそうでかわいそうで仕方がない。
「ダンプの母親がいたぞ!」
そんな時、母の姿が誰かの目にとまったら、なんて考えると今でも怖くなる。もしかして興奮したファンに母がつかみかかられ、殴られていたかもしれない。それだけ命がけの試合を、私はリングの上ではやっていた・・。
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さて、試合のほうをみていきます。
 
志生野アナ「今年はクラッシュギャルズが本当に大変な人気になったわけですが」
志生野アナ「もうひとつ、極悪同盟の存在というのも、忘れるわけにはいかないですね」
宮本「そうですね、デビル軍団を解散に追い込んで、独立してクラッシュの本当の対抗馬として、ある意味で頑張ってくれましたよね」
志生野アナ「そうですね。今日はそのクラッシュギャルズ、極悪同盟の対決がございます」
 

 

 
志生野アナ「クラッシュギャルズの入場であります」
志生野アナ「最近は選手も殺気立った感じで入ってきますね」
志生野アナ「この人はファンに対しても戦闘的なポーズを取りますよね
志生野アナ「気の強さでは定評のありますクラッシュギャルズ、長与千種選手であります」
 
長与はコーナーポストに向かって、お客様を挑発するような戦闘スタイルでの入場です。
長与の行動は1984年中盤から、どんどんと大胆になり、芸能的な才能を開花させていきます。
今回も飛鳥よりも随分と目立った行動です。
 

 


志生野アナ「花束を贈呈というところなんですけど、生きた心地がしないんじゃないでしょうか」
志生野アナ「恐る恐るですね」
志生野アナ「もう少しファンの人たちから花束を受け取る時は、有難い気持ちを込めて受け取ってもらいたいですね」
志生野アナ「特に極悪同盟の受け取り方はファンにとって失礼かもしれません」
志生野アナ「しかしこうしてリングの上に上がってきたときから、極悪同盟ってのは完全に戦う姿勢、戦う気持ちに成りきっているんですね」
 
地元の熊谷ということもあり、ダンプにもチビッ子が花束を渡しています。それを全く喜びもせず、投げ捨てていくダンプ。この時期はチビッ子だろうが、容赦ありません。プロに徹しています。
 

 

 

 

(ダンプの地元、熊谷でもクラッシュは大人気です)
 
 
1本目
 

 

 
ダンプがゴング前に、いきなりチェーンを取り出して飛鳥を攻撃。ヒールといえば先制攻撃!!
ようやく阿部四郎がゴングを要請して試合開始です。
 

 

(トンパチ娘はチェーンを奪って逆に凶器攻撃を始めます、さすがは長与)
 

 

 
クラッシュギャルズは日ごろの凶器攻撃に相当にムカついていたのか、ダンプとクレーンの首絞めにかかります。
凶器の使い方を知らないベビーフェイス側がやりたい放題。これは危険と察した阿部四郎が、反則のゴングを要請。
 
阿部四郎の瞬間的な判断が的確!! さすがです!!(笑)
 
志生野アナ「極悪同盟に対しては反則を取ることはありませんが、クラッシュの反則攻撃に対してはどうか!?」
志生野アナ「いまゴングがなっております。宮本さん、これは(反則を)取られたんじゃないですか?」
宮本「阿部レフェリーのジェスチャーをみてますとね」
志生野アナ「クラッシュギャルズ、反則を取られました
 

 

凶器を持っちゃいけない人が使っちゃいましたからね、反則はしょうがないです。ハイ。
 
お客様「カーエーレ!! カーエーレ!! カーエーレ!! カーエーレ!! カーエーレ!! 」
 
カーエーレー!!っていっても、反則したのはトンパチ娘だしなぁ・・・。
 

 

 
長与千種「阿部四郎降りろ、コノヤロー!!」
長与千種「こんなの反則じゃねーぞ!」
長与千種「極悪がやっても反則じゃねーじゃねーか!」
長与千種「どっからどこまでが反則なんだよ、帰れ!!」
 
あまりに長与の滑舌が悪いので、なんて言っているのかよく分かりませんが、たぶんこんなことを言ってます(笑) 
 
 
2本目
 

 

(開始からクラッシュが調子に乗りますが、すぐにダンプが鉄棒攻撃を開始)
 

 

 
飛鳥のお母さんが観戦に来られているようです。
一方、ダンプのお母さんは一番後ろで見ているんでしょう。ベビーフェイスの母親はテレビに映りますが、ヒールのお母さんは絶対にテレビには映せないですね。こういうところがヒールの悲しい嵯峨ですね・・。
 

 

 
飛鳥が捕まっていますが、このときに長与は「わたしがやられ役になって目立ちたい!」と絶対に思っているでしょう。
 

 

 

 

 
それが証拠に長与が阿部四郎にちょっかいを出しまくり、「わたしが飛鳥よりも目立つ!!」と頑張っています。
しかし、長与に服を破られた阿部四郎は、突然全部脱ぎ捨てて裸になります。
これは前代未聞の事態です(笑) 長与にとっては逆効果(笑) 
阿部四郎のほうが目立ってます。
この人、一体、どこまで千両役者なんだ!?  
(誰も阿部四郎の裸を見たいとは思っていないと思うけど・・・・)
長与もビックリですね・・。
 

 

(クレーンがピンチになると、ダンプがバケツ攻撃を敢行!)
 

 

 
デビルと飛鳥が、ダンプを場外のコーナーに鎖で首締めにしている間に、クレーンをフォールしてクラッシュが2本目を取りました。
ベビーフェイスのほうも、凶悪な感じがします・・(^^;
 
 
3本目
 

 

(クレーンとダンプが、次にどのような凶器攻撃をするか相談しているように見えます)
 

 

 
阿部四郎はクラッシュのフォールは、常に高速カウントを取るわけではありません。
試合の流れを見ています。長与がフォールされたとき、「ここはまだ試合として終わらせられない」という場面では、非常にゆっくりとカウントを取っています。リトルハートはなんでもかんでも、高速カウントを取っていましたが、阿部四郎は試合を考えてメリハリをつけています。しかもそれがあまり気にならない程度にやれるから凄いです。
 

 

 
疲労が見え隠れするクレーンに対し、飛鳥がパイルドライバーを仕掛けます。クラッシュは飛鳥の強さが目立ちます。
一方の極悪は、クレーンが受け身役、ダンプが攻撃・反則役という役回りです。
 

 

 
クラッシュは阿部四郎に怒りの矛先を向けて、場外で痛めつけます。その間に長与がダンプを攻めますが、レフリー不在で誰もカウントを取る人がいません。
一方のダンプは、冷静に周りを見て状況を把握しているように見えます。
 

 

 
阿部四郎が戻れそうなタイミングを見計らって、得意のダンプラリアートで長与を沈めます。
これまた、どうみても荒れそうな3カウントが入りました(^^;
 

 

 
クラッシュとデビルの怒りの矛先は、当然阿部四郎へ。阿部四郎を徹底的に攻撃し、ロープに振ります。
 

 

 
ロープに振ると、下手ながらきちんと戻ってくる阿部四郎!!(笑)
 
もうさ、1984年のMVPはクラッシュ・ギャルズじゃなくて、阿部四郎でいいと思うよ(笑)
 
阿部四郎の活躍がなかったら、絶対にこんなに盛り上がってないから。1984年のMVPは阿部四郎、1985年はダンプ松本でいいですね。
 
熊谷では得意のフォーク攻撃でクラッシュの額を割らず、血まみれになりませんでした。これはダンプがお母さんのことを思って、多少遠慮したんでしょうかね。
 
 

今日の凶器 チェーン、鉄パイプ、バケツ