1985/1/31 ムック「クラッシュギャルズほほ笑みスリーカウント」 その①

クラッシュギャルズ人気絶頂のときに発売されたムックです。

新人時代の頃のダンプの話も少し登場しているので、その部分だけ掲載します。

 

まずは長与千種編です。

 

 

 

 

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デビュー時代

昭和55年4月10日 念願の女子プロレス入門

●夢をあきらめなかった千種は、ついに入門にこぎつけた。夢を一緒になって支えてくれた友だちたちに見送られて大村を発ち、東京・目黒区の女子プロレスの事務所を両親とともに訪れる。昭和55
年4月10日。
同じ日、大森ゆかりもとびこみで事務所に来て、入門を許れている。その日いきなり、事務所にある練習用リングに上げられて、腹筋、腕立て、ブリッジ、ナワ跳び、柔軟体操なんかをやらされたんです。

 

●紹介やとびこみでやってくる子たちの中には、これだけであきらめる子もいる。
とにかく入れることになりました。将来に、何もこわいことはなかった。夢がかなって、希望にもえていましたね。
すぐに合宿生活。事務所の上にある合宿所は、台所にカウンター、お風呂があって、部屋が3つ。部屋には2段ベッドがひとつか2つ。合宿に入ってたのは、クレーン・ユウ、ダンプ松本、もうやめちゃったけど、あと2人と私。

食事はね、みんなでお金だしあって、市場で材料を買い込んできて、分担して作ってた。野菜いため、カレー、サラダとか。そう大したものは作れませんでしたけど。
 

合宿でたのしかったことっていぇば、化粧道具を買ってきて、顔にメイクしてキャッキャいって遊んでたこと。化粧なんてしたことないから、みようみまねで、もうメチャメチャでした。
 

●しかし、デビュー前の新人たちは、トレーニングにあけくれる毎日で、息ぬきのヒマもなかった。
最初は受け身の練習ばっかり。前受け身、うしろ受け身、側方が1セットになってて、そのほか、ブリッジ、打ち込み、スパーリング、柔道のおさえこみ、アマレスのフォール、腕立て、腹筋、ナワ跳
び、ランニング。これを10時から2時までやって、昼休みとって、また4時から7時まで。それに、自主的に朝練もやるから、1日中トレーニングばっかり。
もう、体じゅう痛くてね。痛さで恥ずかしさもなくて、大森ゆかりさんと上をパッと脱いで、コーチのミスター郭さんにマッサ―ジしてもらいました。

 

●「寝る前によく、がんばってるよって手紙を書いてました」という千種だけど、同時に、″アレッ?″とも思い始めていた。
みんな私より体が大きいから、この大きい人を倒すには、空手を使って、足の関節ねらおうとか、目を突こうとか考えてました。ところが受け身ばっかりでょ。受け身をとってるなんて思ってなかったから、私がプロンスにもってたイメージとギャップがありましたね。

ギャツプはしだいに大きくなる。
 

プロテスト合格。B班。ほろ苦いデビュー戦


●やがて、練習生からレスラーになれるかどうかのプロテストの日がやってくる。入門からちょうど―か月後の5月10日。場所は、埼玉県の大宮スケートセンター。
 

リング上で自己紹介して、1分間受け身。そのあと、腹筋、腕立て、胸に入をのせてブリッジ。それからスパーリング。大森さんとやって、1対1でした。だめかなあと思ってたけど、その日に受けた
私、大森さん、ダンプ、新倉純子、坂本和恵の5人は、全員合格しました。

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1980/5/10に、長与とダンプはプロテスト合格とありますね。長与の発言が正しければ・・の話ですが(^^; ダンプはプロテストに4回目で合格したと、「ザ・ヒール」に書かれています。1回目は1979年、2回目は1980年3月だと思います。そうすると3回目の1980年5月10日で合格になのかなと思うのですが、実はこの日は落ちて、その後に「20kgのダンベルをもちあげる」という強引な4回目の補足テストでの合格って意味でしょうかね。

 

 

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●リングでたたかう、という夢にまた一歩近づいた千種が「今でも忘れない」という出来事がここで起こる。
 

プロテストに合格すると、すぐに旅につれていかれたんです。そのころ巡業はA班、B班に分かれて
て、A班はジャッキー佐藤さん、ミミ萩原さん、ジャガー横田さん、池下ユミさん、大森さん、それに北村智子もAでした。
B班はっていうと、ナンシー久美さん、ルーシー加山さん、トミー青山さん、デビル雅美さんたち。この下に、ユーや松本や私たち。
メンバーみて、なんとなくわかる?
B班って、いくとこいくとこ、いなかなんですよ。どこかの島にいってて、台風がきて出られなくなってしまったこともありました。A班のほうは、都会まわりが中心で、テレビ撮りも、AはあってもBはないってこともありました。

専用バスも私たちにはなくて、レンタカーのマイクロバスで巡業に出かけてたんですね。
私たちには何の期待もされてないんだなって思いましたね。こんな私たちでも、地方にいったら、試合をやるんですよ。まだデビュー戦前で、やっと受け身がとれるようになったかどうかって段階なんですよ。即席で技を教えてもらってね。でも、教えてもらっても何もできないから、先輩たちもそのうちサジを投げちゃってね。デビルさんくらいでした。最後までガマンしてくれたのは。
「オマエらは私たちがこんなに真剣なのに、なんでわかんないんだ」って、なぐられながら練習したこともありました。

「立て」っていわれて立ったら、張り手。私たち、泣きながらやってましたよ。
それでもデビルさんも3年めで、いくら一生懸命教えてくれても、強い人のそろってたA班で練習してた人たちとの差は、どんどん開いてました。
 

●やがて8月8日、田園コロシアムで、夢にみた、そして、ほろ苦いデビュー戦をむかえた。
 

デビルさんが水着買ってくれたんです。しかも、すぐに着れるように、試合用にちゃんと直しといてくれてました。そして、「がんばるんだよ」って励ましてくれたけど、あんまり実感わいてこなかった。
終わってからですね、あんな大きいとこでやって、こわかったって思ったのは。
結果はね、さんざんでした。
A班の選手とB班の選手が対抗で対戦するって形だったんだけど、ユーとダンプ以外みんな負けちやって。私も、大森さんとやって、ただガムシャラにやって、かんたん
に負けちやった。試合をみてたデビルさん、パッといなくなっちやってね。
私、せっかく教えてもらつたのに負けちゃったって泣いてたんです。そしたらトミーさんに「泣いてどうなるの。泣いたら、天神(デビル)、おこるばかりだよ。悔しいと思ったら見返してやんな」っていわれました。それからです、こいつらには絶対に負けないって思い始めたのは。
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新人時代

精神的に弱かった千種 内臓疾患の追討ちが・・

●悔し涙でデビューした千種は、このあとも、さらに悔しさを味わっていく。
どのくらいたつてからかな、いろんな都合で、A班、B班っていう区別がなくなって、全体がひとつになりました。

これでもイヤな思いしなくてすむって、ダンプたちと喜んだんですけど、それもつかの間でした。今度は、人数が多くなったせいで、試合をする組としない組とに、だんだんわかれちゃったんです。
私は、しない組。私だけじゃなくてB班にいた子たちの試合は、あんまり組んでもらえないんですね。試合のない時は、セコンドにつきます。試合をする同期の子たちのガウンを持ってかなきゃならない。悔しかったよ。

 

地方での興行にも、つれてつてもらったことなかった。旅にいく選手の発表がある時でも、もうあきらめてました。いつも一緒に居残りになってたのがダンプでした。ダンプは免許を持ってたから、 レンタカーを借りて、夜、ウサばらしに湘南の海まででかけて、絶対に見返してやろうねっていってたことありました。
 

今になって考えてみると、そのころバカにされた連中ほど、強くなってきたみたいです。
でもそれは結果であって、当時の私はまだ精神的にも強くなかったから、もう何回もやめたい、やめたいって思っていました。
私は、差別されるのがいちばんイヤなんですよ。前に書いたけど、「女のくせに」っていう男女の差別とか、プロレスに入ってからのこんな人間関係とかが。
両親にも手紙や電話で私の気持ちは伝えました。オヤジが絶対に許してくれなかったから、ホントにかろうじてプロレスに残ったようなものです。
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●誰も、意図的に千種の人生をもてあそぼうとしているわけではない。
でも、さらに追討ちをかけるように、不運が訪れる。
デビューして1年になるころ、内臓疾患で、体じゅうにしっしんができてしまったんです。ごはん食べられなくなって、70キロぁった体重も60キロに減ってました。中学の時、必死になって太ったのにね。
その間の2か月くらいは、試合にもでられませんでした。もちろん空手の型だけみせたりとか。ぼつぼつ試合にでられるようになってからも、体をみせないように、空手着を着たまま、試合してましたよ。
いきづまってて、くさってて、クラッシュを組む年まで、しょっちゆう、やめたいって思ってました。

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