1985/2/25 大田区体育館 クラッシュ・ギャルズvs極悪同盟 WWWA世界タッグ選手権の前に、山崎五紀vsブル中野の全日本王座の試合が行われました。
この試合、極悪メンバー&外人レスラー乱入によって、山崎が怒りでベルト返上という事件に発展します。
この様子を詳しく記事から見ていきます。
女子プロレス 好きだぜコノヤローッ!!より
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御意見無用の大荒れ選手権試合
その試合はゴング前から異様な緊迫感に包まれていた。山崎五紀の持つ全日本選手権のベルトに挑戦するブル中野が、自らの持つジュニアチャンピオンのベルトを返上。頭の左半分を剃りあげて、"御意見無用"とイレズミした、あのパンクヘッドを興奮で赤く染めてぃる。リングサイドにはダンプとクレーンの極悪コンビに、外人組のモノレとギャラクティカまで登場し、しかもレフエリーは阿部四郎!
帰れコールの嵐の中、阿部四郎が片手をあげた。30分一本勝負のゴングが鳴った。
とにかくいきなり場外乱闘だ。ブルが五紀を中継機器席にたたきつける。さらに鉄柱攻撃。怒った五紀はリングに戻るや卍固めに4の字固め。ところがすぐさまダンプが飛び込んで反則キックだ。それならこっちもと、セコンド役の立野が場外に落ちたブル中野をはがいじめにしてハリツケにする。そこへ五紀の得意技、トップロープかプランチャ・スイシーダ。これが文字通り自殺行為で、ブルにかわされ、五紀はモロに床に激突、左ヒザを強打した。
以降はブルの徹底した左ヒザいじめがつづく。痛めた五紀の足を、かむ・踏む・蹴る・ねじる。五紀は絶叫して必死にロープヘのがれようとする。ほとんど立てない。そこヘダンプが鉄パイプ攻撃。怒りの五紀は最後の力をふりしぼり、救助にとびこんだ立野とダブルネックブリーカーにダブルブレーンバスターの連続技でブルを沈めるが、またもやダンプ、クレーン、それに外人組までリングにあがって、手負いの五紀をメッタ蹴り。これにはさすがの阿部四郎も反則宣言をせざるをえなかった。
こんな試合ならベルトなんていらない!
結果はブル中野の反則負け。でも五紀は納得がいかない。会場のファンだって同じだ。植田コミッショナーがベルトを渡そうとしても、「いやだ!いらない!」と五紀は泣き叫ぶ、それでも五紀のチャンピオン防衛の事実は変わらない。認定証が読み上げられ、五紀はやむなくベルトを受け取った。しかしたまりかねた五紀がマイクを取って訴える。
「こんな試合内容でベルトもらっても仕方ないから・・」
ざわついていた会場がシンと静まり返る。
「全日本チャンピオンのベルトは返上させていただきます」
さらに驚くべき宣言がつづいた。
「今後は立野と組み、クラッシュギヤルズのタッグが持つベルトを取るよう、がんばります」
立野が、ベルトを返上してカラになった五紀の手を高々とあげた。フレッシュコンビ、山崎五紀&立野記代の誕生だ。
そしてこの宣言は″ポスト・クラッシュ″をになう、次の世代のスター誕生の一瞬でもあるのだ。
五紀を育てたデビルの功績を忘れるな
これは単なるベルト返上事件ではない。クラッシュに標的を絞ったニューパワーが挑戦状を叩きつけた″事件″なのだ。
もちろん五紀がこれだけの決断をし、立野の同意を得られたのも、ここ半年の間にメキメキ実力を上げた裏づけがあつてこそ。その影の功労者は、愛弟子山崎五紀を鍛えぬいたデビル雅美、その人に他ならない。
3・16の沼津市民体育館で行なわれた、デビル雅美対山崎五紀の師弟戦は、TV中継のないのが惜しいほど力の入った試合だった。両者死力を尽した後、デビルが五紀に健闘をたたえた握手をもとめた。そして勝者も敗者もさわやかな笑顔で、ファンにむかって両手をあげた。本当に美しい場面だった。
デビル・スピリツトは形を変えて、デビル本人から山崎五紀へと確実に引き継がれた。クラッシュにとっても大恩人の先輩デビルが、後輩たちの大きな躍進を願って火をつけたライバル戦争のはじまりなのだ!
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さて少し拡大してみましょう。
(山崎の卍固め)
(トップロープからのプランチャ失敗で山崎がヒザを痛め、そこをラ・ギャラクティカとロッシー・モレノが乱入して集中攻撃したようです。この2人の外国人組は極悪サイドでよく働いていきましたね。特にラ・ギャラクティカは、赤いベルトを巻いたこともあるトップ選手なのに、意外とプライドが高くないというか、こういう役回りでも平気でこなすのが凄いです)
(立野が山崎をかばっているところへ、極悪軍団の総攻撃のようです。ダンプ、ユウ、ブル、外人組ですね。これはたまらないでしょう)
(泣きくずれて抗議する山崎)
これだけ邪魔が入ると、若い山崎としても、泣きたくなるのは分かります。でも、山崎はなるべく極悪同盟を避けていた感じがします。
しかし、クラッシュ・ギャルズや大森は、抗議だとか卑怯だとかはいいますが、試合したくないとか、卑怯なことをされたら、ベルト返上はしていなかったと思います。むしろ、受けて立つ!! やり返す!! というか。彼女らは正義は正義なりにきちんと矜持をもっていたのは立派なのかと思います。
山崎は後にダンプに「髪切りマッチをしたい」と言われても「絶対にイヤ!」と言って断ったりしていましたので、その辺りがもうひとつ弾けなかった理由かもしれません。クラッシュ・ギャルズの後釜に一番近い存在だったのに。素直な感情を表すのも山崎の個性ですが、勿体ない感じがします。
個人的な意見ですが、私の好きなとあるアニメのセリフで「"抗議"とか"卑怯"とか言ってないで、素直に認めろよ。"負けるのが怖いから逃げます"って。正々堂々というなら、戦って見せろよ。"正々堂々と戦って負けて見せろよ!"」というセリフがあるのですが、このときデビルあたりが山崎にベビーとして生きる矜持を教えたら、もっと人気のある選手になっていたかもしれませんね。