1985/3 雑誌「宣伝会議」クラッシュギャルズ特集

1985年の雑誌「宣伝会議」でクラッシュの記事がありましたので取り上げておきます。

 

 

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クラッシュ・ギャルズ、アイドル界へ空手殺法で殴り込み!!
 

かつて、ジャッキー佐藤、マキ上田の2人で結成されたビューティー ペアという女子プロレス界のアイド ルがいた。
その人気は、それまでの女子プロ レスラーとは比較にならないくらい の異常人気ともいえるもので、プロレス自体の活躍だけではなく、歌の方でもかなりのヒットを記録した。 彼女たちの出現により、女子プロレスは男が見るものだといった傾向を根底から変えてしまった。女のコのファンが圧倒的な勢いで増え続けたのである。
この時点で、女子プロレスと宝塚の類似性が顕著になってきたようだ。
つまり、"自分は男になれないが、 かわりに男を演じてくれる人たちに感じるあこがれが、両方に共通している"という、いわゆる変身願望の表れである。
リング上にいる彼女たちへ自己投入することで、自分も一緒になって対戦相手と闘っているような気分になるわけだ。

だが、それだけ思い入れてもらえる存在になるには、強いスター性、アイドル性、ヒーロー&ヒロイン性が必要。

現在、女子プロレス界で最高の人気を持つクラッシュギャルズがここまでくるのも、そう簡単な道ではなかった。
 

ライオネル飛鳥と長与千種は、共に'80年、全日本女子プロレスへ入門している。
最初は、飛鳥が飛び出した。当時全盛だったビューティーペアのジャッキー佐藤に全体の雰囲気が似ていたために、ジャッキー2世と呼ばれ、 その年の新人王を決めるトーナメントの決勝で同期の大森ゆかりを破り、 新人王を獲得。翌年の1月には全日本ジュニア選手権も手に入れた。

 

彼女に遅れること3ヶ月でスター トを切った長与千種は、期待の新人として騒がれる飛鳥との差を縮めようと焦っていた。その焦りが過労を 生み、80年夏、倒れることになる。 連日の負け続けの闘いが長与の精神と肉体を痛めつけたのである。飛鳥との差は増々広がる一方で、本人も含めて誰もが差が縮まるとは思っていなかった。
 

ところが、予想もしない回復力で 長与は'82年7月、全日本ジュニア選手権を獲得。
その後、2人はしばらく低迷を続 ける。一度獲得したタイトルもとられ、危機感を持っていた。
このままじゃいけないと、2人は タッグを組むことに決めた。空手殺 法を武器に、チャンピオンになろうというプランだ。そのために、極真空手の山崎照朝に特訓を受けた。

 

そして'83年8月、WWWA世界タ ッグチャンピオンであるジャンボ堀、 大森ゆかり組に挑戦。試合は負けたものの、いつもに比べて段違いの声援がクラッシュギャルズに浴びせられた。彼女たちの人気が決定的なも のとなったのである。
'84年8月には、「炎の聖書」でレコードデビュー。ミュージックリサ ーチ誌の10月度新人賞を授賞。10月にはアルバム「スクエア・ジャングル」をリリース。雑誌やテレビ、ラジオにもどんどん露出していった。 「やっぱり目標はビューティーペア ですね。あと、女シブがき隊みたいな存在だと思ってるんですよ。とにかくすごい人気でね、この前もあるラジオ局で仕事があったんですけど、外に30~40人の女のコがいるんです よ。始め、マッチかなんかのファンだと思ってたんですけど、クラッシ ユギャルズのファンだったんでビッ クリしてね」(ビクター宣伝部・栃内 克彦氏)

 

今年の1月21日には、第2弾シングル「嵐の伝説」が発売された。 これはTBS系ドラマ "毎度おさわがせします"の挿入歌で、彼女たちも 女子プロレスラーの役で出演してい る。歌だけでなく、演技の方も物おじしない堂々としたものだ。この曲でアイドルとしてもジャンプアップ することだろう。単独でコンサート をやる予定もあるそうだ。名実共に ビューティーベアを超えるのは確実である。

 

★ライオネル飛鳥。本名、北村智子。1963年7月28日、埼玉県蓮田市に生まれる。身長170cm、 体重68kg、B88 W72 H93。 埼玉県立蓮田高校卒。元・女子野球ニューヤンキースの練習生。
得意技、ジャイアント・スウィング、ブレーン・バスター、ロ ーリング・ソバット、雪崩式バックドロップ。'80年に全日本女 子プロレス入門。同年の新人王となる。'81年1月、「全日本ジ ユニア・チャンピオン」獲得。'82年7月、「全日本チャンピオ ン」獲得。

★長与千種。本名、同じ。 1964年12月8日、長崎県 大村市に生まれる。身長165cm、体重63kg、B88 W67、H90 大村市立玖島中学校卒。沖縄・小林流空手道二段。 得意技、ロ ーリングソバット、フロント・ネック・チャンスリー、サソ り固め、ジャーマンスープレックス・ホールド。'80年に全日本女子プロレス入門。'82年5月、「全日本ジュニア・チャンピ オン」獲得。
'83年8月、「クラッシュギャルズ」を結成。 '83年度の"全日本女子プロレス大賞"と"ベストバウト賞"(飛鳥)、"アイドル賞"(長与)を受賞。ボーイッシュでダイナミックなファイタ ーである飛鳥と、型破りな試合ぶりで女子プロレスの長州力といわれる長与のコンビは、女子プロレス界の人気No.1を誇る。

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クラッシュが"毎度おさわがせします"に出演し、絶好調を迎える頃、敵役のダンプも巨大台風となって日本を席巻していきます。

善玉と悪玉の両方がスターになったというのが、ビューティペア時代との大きな違いですね。

オスカルとアンドレの世界観だったビューティペア。クラッシュはそういう感じはしないですね。もっともクラッシュミーハーファンには百合的に見えていたのかもしれませんが、クラッシュが2人で力を合わせて、巨悪・極悪同盟と対決するような構図のほうが、私はすっきりします。

ウルトラマンvs怪獣軍団って感じでもなく、格闘女子高生vs極道一家みたいな感じ? うまい表現がみつかりませんが・・(^^;

 

女子プロレスのペアについて長与の本から引用してみます。

 

「ここまで喋っていいかしら」より------

ペアを組む理由とは たつの個性が火花を散らすとき
ビューティ・ペアが始まりだと思うけど、その後、ペアを組むのが習慣というか、恒例にな りましたよね。
もともと、ペアというのは、男子プロレスにもありますし、プロレスのひとつの伝統的な型 だと思います。ただ、女子プロレスの場合は、そのペアの条件とか性質が、特殊なものになっ てくるんです。

ファンの多くが少女でしょう。彼女たちの追い求めているものというのは、やはり少女雑誌 であり、少女漫画なんです。 そして、少女漫画のなかの、ひとつのかたちとして、宝塚的な発 想があるわけですね。
少年のような感じ、男っぽくてカッコよくて強いコ。 そして、女っぽくて理知的でやさしいコ。このどちらか一方ではついてこない。対照的なふたりが、正義感プラス、フレンドシップで 敵をなぎ倒していく。困難を乗り越えていく。こういうのって、少女たちの最大のドラマなんですね。
ある意味では、女同士のドラマチックな友情というのは、素敵な彼氏をつくること以上に少 女たちの夢かもしれません。女子プロレスというのは、そういう少女ファンたちの夢を満たす 場でもあるんです。女っぽいコがやられると、男っぽいコが助けて、男っぽいコがやられると、 女っぽいコが助けて。
だから、女子プロレスのペアというのは、ボーイッシュで力でねじ伏せるタイプと、女っぽ いマスクでややテクニシャンタイプが組むというのが、基本的な路線でした。
ビューティ・ペア以降、ほんとうに、ペアを組まないと盛りあがらないというのが、伝統に なりました。 ビューティ・ペアのジャッキー佐藤さんとマキ上田さんというのは、みていて、 ペアの典型的な気がしましたね。ジャッキーさんがボーイッシュで豪快で、マキさんが一見お となしそうだけど、とてもシャープで。

ただ、飛鳥とわたしの場合、自分たちではまるで意識していなかったですね。いいライバル だと思っていたけれど、男と女って意識はまる でなかった。
周囲は、それなりに、クラッシュ・ギャルズ のことを、たがいの役割を決めてみていたようなんですけれどね。
飛鳥とわたしでは、プロレスの型は多少ちが います、たしかに。大きな差ではないけれど、 しいていえば、飛鳥が豪快、わたしがこまかい ワザ、ということになるかな。

だから、飛鳥のほうが男役になるのかなって 感じだけれど、でも、そんなことを自分たちで 意識したら、妙な感じだし、笑っちゃいますよ。
わたしたちとしては、それぞれが自分のプロレスをしながら、呼吸を合わせていくということしか考えていなかったですね。
それに対して、結果として、ファンの人たちがロマンチックな少女漫画や宝塚的な発想でみてくれるとしたら、それも、選手冥利といったところですね。
女のコたちにとっては、くり返すようだけど、そうしたフレンドシップや女同士のカッコい いドラマというのは、彼氏とつき合うのとはまたちがった、それ以上といってもいい夢という のがあるのだと思いますから。
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長与はあまり宝塚という目線でプロレスはしていなかったようですね。ファン人達次第ではそう見えたかもしれないけど、そう見えたら見えたで、それは光栄なことだと書いています。否定はしていないようです。