
Evito-X-PuroさんのYoutubeより
鹿島町立体育館 ダンプ松本vsクレーン・ユウ
22:00くらいから
(↓AIでフルハイビジョンに変換した動画です。試合のみ抜粋)
今回は極悪同盟の最初の節目といえる「ダンプ松本vsクレーン・ユウ」戦を見ていきたいと思います。
ダンプとクレーンは、ここまでほぼ同じような道のりを歩いています。54年に2人ともオーディションに合格するも、その年のプロテストには不合格。
55年に再度オーディションを受けて、プロテストは3回目とも不合格。そこに2班体制で選手増員があり、ダンベル100回持ち上げたら合格(?)という"おこぼれ"で2人はプロになります。
体の大きかった松本とユウは、1981年にはブラック軍団に入り、一緒にヒールへ。84年のデビル軍団解散後は、ダンプが設立した「極悪同盟」にユウも加わり、2人で全選手を相手に、凶器攻撃で立ち向かいました。
そして1984年後半からは徐々にダンプが怪物派へと変身をとげ、テレビ出演等で知名度は全国区へ。クレーンはペアのやられ役のような役回りとなり、少しずつ出番が減っている最中で、この大事件が起きます。
松本とユウの対戦成績は、私が知る限り、この時点では松本の0勝2敗1分で、ユウがリードしています。(地方大会ではもっと対戦があったと思いますが、記録がないので分かりません)
志生野アナ「鹿島町立体育館、さぁ選手が紹介されます」
志生野アナ「今日は果たしてこの一戦、どういった心境で迎えたか」
志生野アナ「リング上、数多くのテープが飛んでおります」
志生野アナ「これだけのテープが飛ぶのは珍しいですね」
ダンプは4月に「笑っていいとも」、「夕やけニャンニャン」と立て続けに出演し、全国的な知名度を得たところです。相手がベビーフェイスでなければ、紙テープは飛ぶようです。
志生野アナ「そしてクレーン・ユウに対してもテープが乱れ飛んでおります」
志生野アナ「異例のことであります。極悪同盟が真っ二つになって対決いたします」
志生野アナ「ダンプ松本、クレーン・ユウの一戦」
ダンプ、クレーンともに、悪役として人気があることが分かります。
志生野アナ「2人の表情を見る限り相当に冷静ですね」
宮本「試合前に2人に話を聞いてきたんですけど」
宮本「お互いに技は分かり切っているから、とにかくいつものパターンといいますか」
宮本「いつものスタイルを崩すつもりはないと」
宮本「反則攻撃ももちろんやるという意味合いのことを言ってました」
試合はのっけから動きます。ポイントはダンプのセコンドについてブルです。
志生野アナ「いま『ご意見無用』と頭に書いたブル中野選手が」
志生野アナ「クレーン・ユウの足をちょっと引っ張りましたでしょ、これはどういう動きなんでしょうか?」
宮本「松本がドンですからね」
ダンプ側のセコンドにつき、クレーンの足を引っ張るブル。
試合前にダンプから「俺のセコンドにつけ」と言われて、「今日はダンプさんのセコンドなんだ・・」とブルは思ったと述懐しています。
ブルがクレーンの足を引っ張ったタイミングに合わせて、いきなり場外戦へ。
志生野アナ「ああーっと早くも場外戦であります」
志生野アナ「決して技と技という試合にはなりそうもありません」
志生野アナ「ダンプ松本は本部席であります」
志生野アナ「クレーン・ユウはどうか、負けていないか?」
志生野アナ「(ダンプが)マイクのコードを首に巻いた!!」
ダンプ「コォンノヤロウッ!!!」
先制攻撃が重要!!! ということで、ダンプがいきなり攻撃!!
ダンプが場外で気合を入れてクレーンにマイク攻撃。マイクからは「ボコッボコッ」という鈍い音がして、クレーンの顔面をぶつかります。頭部に突き刺さるような音がしていますので、結構な具合で殴ってます。(^^; この試合でダンプはクレーンを徹底的に痛めつけて仲間割れとすることが目的ですから、ガンガンやってきます。
志生野アナ「コノヤロウというマイクを使ったダンプ松本!」
志生野アナ「マイクが生きております」
志生野アナ「この生きたマイクで、顔面をしたたかに強打!!」
志生野アナ「まだやっております、容赦ありません!!」
志生野アナ「No.2の妹分のクレーン・ユウに対しまして、ダンプ松本!」
志生野アナ「徹底的な攻撃であります」
予想外のダンプの手加減無用の反則攻撃に怒り心頭のクレーン。
志生野アナ「ああーっと、放送席を襲っても仕方ない!!」
志生野アナ「放送席に八つ当たりのクレーン・ユウ」
志生野アナ「これは困ります」
クレーン「なんで中野がそっちついてるんだ!!」
志生野アナ「クレーン・ユウがですね、自分が孤立しているのを今はっきり知ったんですね」
クレーンが怒っているのは、ダンプがいきなりマイクで殴ったからではないようです。
ブルのほか、全員がダンプのセコンドについたからでしょう。
実はちょうど2年前の雑誌「リングスター」で、クレーンは「もし松本と対戦することになったら?」という質問に対して、こんな話をしています。
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ユウ「いつもタツクを組んている仲間なので、松本と挑戦してもどんな試合になるか・・。お互いに長所も欠点も知っているし・・」
ユウ「前に池下さんとマミ熊野さんがすこい試合をしましたね。私がもしアウ(松本のニックネーム)と試合をするとしたら、あんな試合をしたいな。同士討ちでもデヒル軍団の名に恥じない試合をします」
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おそらくクレーンは、ダンプとは「対等」にヒールらしい試合、これはつまり昔あった池下vsマミ熊野のような対決をしたかったのでは・・と推察されます。それがブルや阿部四郎がダンプについたことで、「裏切られた」という気持ちだったのかもしれません。
ついにフォーク攻撃を開始。
志生野アナ「思ってもみない試合展開になりました」
志生野アナ「ブル中野選手が、完全にダンプ松本についております」
志生野アナ「思わずクレーン・ユウが悲鳴をあげております」
志生野アナ「最近はフォークという凶器が異様に使われるんですけど」
志生野アナ「あれ、グサッと手に刺さったまま試合を進めたこともありますし」
志生野アナ「本当に怖いんですよ」
(阿部四郎の高速カウント)
志生野アナ「殺気が感じられるリング上、極悪対決だ」
志生野アナ「いまのカウントの入れ方も、阿部四郎は速いぞ」
ゲスト「じゃ、阿部四郎とダンプもつるんでるんですか?」
志生野アナ「阿部四郎は権力には弱いということは、はっきり分かります」
どうやらこの試合は、阿部四郎もダンプからの指示を受けているようです。裏事情を知っていれば、阿部四郎がダンプ側につくことは察しがつきます。
しかし、ダンプから「ユウとは別れる」と話しが出たときは、阿部四郎は少し考えたのではないでしょうか。なにしろ、ユウだってヒールとして苦労して、ここまで一緒にやってきたことを阿部四郎は理解しているはずですからね。
(額から血がしたたるクレーン。すでに凄惨です)
志生野アナ「出血しております、クレーン・ユウ」
志生野アナ「徹底攻撃であります。極悪の徹底攻撃であります。ついに血をみました」
志生野アナ「極悪対決だけに凄まじいものがあります」
志生野アナ「しかしダンプ松本、いい度胸だ」
志生野アナ「自分のNo.2、最大の子分、クレーン・ユウに対してご覧のように凶器攻撃」
志生野アナ「これはもうちょっと考えられませんねぇ」
志生野アナ「これ以上の出血はかわいそうだ」
あまりに凄惨な攻撃に、阿部四郎がダンプに対して反則カウントをとります。しかし、ダンプにビンタされて倒れてしまいます。少々仲間割れ気味です。
志生野アナ「阿部四郎がいま、顔面をのぞきこんだ」
志生野アナ「カウントをとっている」
志生野アナ「ああーっと、阿部四郎に張り手一発」
志生野アナ「まさにダンプ松本の世界であります。驚きました」
この阿部四郎の行動は決めていたことなのか、「やりすぎだ」と感じて、ユウが不憫で思わず情が移ったのか!?
志生野アナ「そして御意見無用と書きましたブル中野出てまいりました」
志生野アナ「これまた徹底的にやっております」
ここでダンプは、ブルにもユウを攻撃するように指示を出しています。ブルがダンプに忠誠を誓えるか、踏み絵をしているようにも見えてしまいますね。
(苛烈なダンプの攻撃。おそらくダンプはいつもに増しての反則攻撃でしょう)
クレーンもチェーンで反撃を試みますが、いかんせん出血がひどくて足元がふらついています。
徹底したダンプの凶器攻撃に、ゲストも「ユウ、がんばれ!!」と思わず叫んでいます。
志生野アナ「もうクレーン・ユウはフラフラだ」
志生野アナ「出血多量でフラフラであります」
ゲスト「ドクターストップってのはないんですか?」
志生野アナ「これはもうレスリングの限界を超えました」
あまりの凄惨さに、ゲストも試合は中断できないのか、と話しています。
そして、場外でブルに唾を吐きつけるユウ。カッとなって、ブルに唾気を吐きかけるのは仕方ないでしょう。ダンプに従っているブルとしては、後輩として甘んじて受けるしかなかったかもしれません。
志生野アナ「今度は場外でやっております、クレーン・ユウとブル中野!!」
志生野アナ「No.2とNo.3が戦っております」
志生野アナ「これはもう核分裂だ、細胞分裂だ!!」
ここからユウが反撃!!
志生野さんの実況も熱がこもっています。「核分裂」、「細胞分裂」って・・!?(^^;
パイプ椅子の魔術師・クレーンだけあって、場外でパイプ椅子を持たせると、生き生きとしてきます。ブルに対してパイプ椅子で怒りの報復。2発ほどブルを殴りつけます。
志生野アナ「あーっと今度は後ろからブル中野がいっている」
しかし、ブルも黙っていません。ユウからパイプ椅子で殴られた後、逆襲してクレーンに同じパイプ椅子攻撃をしています。後輩といえど、ブルもこの頃には根性が座っています。ダンプから、「やられたらやり返す」、これを徹底的に教わっていたのでしょう。
ダンプがクレーンにラリアート。相当な出血状態でフラフラですが、クレーンはカウントツーで返しています。クレーンとしても、こんな仕打ちをされて、「タダで負けてなるものか」という根性が見られます。
お客様「クレーン!! クレーン!! クレーン!! クレーン!! クレーン!! 」
志生野アナ「クレーンあるいはユウという声援が飛んでおります」
志生野アナ「場内は総立ちであります!!」
見るに見かねたお客様、クラッシュミーハーファンから、「クレーン」コールが起きます。ダンプが悪魔のような攻撃をしていたので、このコールが起こったのは理解できます。
志生野アナ「また放送席にくるか、また放送席につれてきました」
志生野アナ「いやいやいやいやいや、すごい、凄い、凄い!!」
志生野アナ「もうこれ以上は無理か、まだやっている」
志生野アナ「まだやっている、まだやっている」
ここで場外乱闘がエスカレート。阿部四郎が止めにかかりますが、ダンプとブルの攻撃はまだまだ続きます。このままクレーンをぶっ殺す勢いです(^^;
リングは血の海、場外でも血の海。もうこれは収拾がつきません。
いよいよ阿部四郎がコングの要請をします。
志生野アナ「最後は鉄柱でトドメを刺すか!!」
志生野アナ「誠に凄惨です、誠に凄惨です!!」
志生野アナ「阿部四郎がゴングの要請だ!!」
志生野アナ「放送席は血で真っ赤!!!」
志生野アナ「これが極悪同盟の試合です!!」
場外でクレーンが叫ぶ。リング内に戻ったダンプはクレーンについに言い渡します。
クレーン「なにやってんだ!!」
ダンプ「今日でお前とはお別れだ!!」
このセリフは動画ではカットされていますが。
(本当は違うセリフを考えていたらしいですが、あまりに興奮していて、「絶交だ」とか「お別れだ」とか、恋人みたいな変な言い方になってしまったと話されています)
志生野アナ「おおっと、いまNo.1がNo.2に対して絶縁宣言であります」
志生野アナ「これは驚きました」
志生野アナ「そうすると、ダンプ松本はブル中野と組むというわけですか?」
宮本「そうなると興奮した状態ですからね・・」
志生野アナ「興奮状態ですから、いまのははっきりしませんがね」
志生野アナ「絶縁宣言です、絶縁宣言です!!」
お客様「カエレ!! カエレ!! カエレ!! カエレ!! カエレ!! カエレ!! 」
志生野アナ「いやぁ、ダンプ松本、クレーン・ユウ、そしてブル中野」
志生野アナ「いまの絶縁宣言が本当だとすれば」
志生野アナ「極悪同盟はトリオからコンビになるわけであります」
志生野アナ「どういったことになるのか、茫然としている鹿島町立体育館」
志生野アナ「思ってもみない展開になりました」
この試合でクレーンは一旦引退(レフェリー転向)となります。
長年付き添ったクレーンと絶縁宣言をし、控室に戻るダンプの心境はどうだったのでしょうか。
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この放送は当時に私も見ていましたが、「なにが起こっているの!?」という感想しかありませんでした。
どうしてクレーンが突然レフェリーに転向してしまったのか、なぜダンプが突然クレーンを追い出したのか、まったく分かりませんでした。当時の雑誌にも煮え切らない理由ばかりです。
(「クレーンは結婚するからやめた」、「クレーンはダンプのラフファイトについていけなくなった」というものがありますが、それならば普通に引退表明すればいいわけですし)
どれも、私が到底納得できる理由はありませんでした。
テレビで見ている限り、ダンプの相棒はクレーン以外には考えられなかったし、ブルはまだ駆け出しでダンプの相方というには頼りないし、一体何の理由でクレーンとケンカが始まったのか、ストーリーがなかったため、唐突でした。おそらく当時テレビで見ていたほとんどの視聴者は、この試合の背景が分からなかったと思われます。
それが近年の「ぶるちゃんねる」でようやく納得ができる回答がありました。このページを見ているほとんどの方はご覧になっていると思いますが、念のため記載しておきます。
まずダンプ側の話。
ザ・ヒールより----------------
1985年4月に最高のパートナーで同期だったクレーン・ユウがレフェリーに転向する。極悪同盟の最高のパートナーではあったが、自分から「離別」を要求した。ヒールは絶対にファンと写真を撮ったり、サインをしてはいけない。その部分を彼女は徹底できていなかった。人がいいのか、人気が爆発してうれしかったのか、ファンの要望に応じてサインしちゃうんだ。ファンから殺意すら抱かれるヒールに徹していた自分は、そういう部分がとても不満だった。
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そしてダンプ登場時の「ぶるちゃんねる」。
ダンプ「(ユウさんが)友達に手を振りたいって言ってたでしょ」
ダンプ「2,3回、『ユウさん、お願いだからやめて』って」
ダンプ「そうじゃないとバスに乗ったら優しいって思われちゃうから」
ダンプ「自分がいないとちょっと手を振ったりとか握手したりとかしてるのね」
ダンプ「影でそういうことをやられると『ユウは優しいんだ』『じゃあダンプも優しいんだ』」
ダンプ「一緒になって道連れになっちゃうから、これじゃ2人して倒れちゃうだろうなって」
ダンプ「ユウさんを切るしかないかな、って感じかな」
これが裏事情となります。
次はクレーン側を見てみましょう。
吉田豪の"最狂"全女伝説より----------------
聞き手「クレーンさんはどうして引退する流れになったんですか?」
ユウ「なんでだろ。私たちが一番上の頃、人が多かったでしょ。ていのいい肩たたき?」
聞き手「ああ、会社側からのそういう空気が」
ユウ「うん、いままでずっとメインでやってきたのが、いきなり前半戦とかになって。別に前半戦でもいいんだけど、せめて前半の最後、休憩後ぐらいにしてくれないかな、みたいな。それまではセミかメインだったのに、やったことがない新人とカード組まれたり。もういいやって思ったらやりたくなくなっちゃうんですよ」
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そしてクレーン登場時の「ぶるちゃんねる」。この回は相当に色々と話しています。
クレーン「私はYesマンみたいな感じだから、はっきりした情報は入ってこないのよ」
クレーン「言われたらやればいいかな、ぐらいしかないのよ、私」
ブル「ダンプさんが決めていたじゃないですか。ファンの人と話しちゃダメだよとか」
ブル「そういうのも嫌でしたよね?」
クレーン「うん。だって喋りたいじゃん」
クレーン「会社からも喋っちゃダメ、笑っちゃダメ、サインしちゃダメ」
クレーン「そんなことしたらファンなんて増えなくない?」
ブル「極悪同盟としてはファンは一切いらないの体で始めちゃってますよね、そこは・・?」
クレーン「そこが私のダメなところなんじゃない?」
クレーン「私にとっては1人のファンでも大事じゃん」
クレーン「応援してくれてるのが私は嬉しいと思ったから、その子たちが必死になって遠くのほうから『ユウさーん』みたいな」
ブル「極悪同盟になる前からずっと追いかけてきている人たちですよね」
クレーン「いきなり『ガァーッ』って出来ないじゃない」
クレーン「そういう人を大事にしたかったっていう。ただそれだけ」
(中略)
ブル「ダンプさんが『お前とはお別れだ』って言って、そこでいきなり?」
クレーン「あれはね、あそこからベビーフェイスになるはずだったの」
クレーン「でも代表が『クレーン・ユウは引退します』って勝手に言っちゃったの」
クレーン「あとで私はベビーフェイスに行きたいなって話はしたよ」
ブル「会社ではそこまでの話があったのに、『私のベビーフェイスはどうなったんですか』の話もなく、レフェリーでOKな感じになったんですか?」
クレーン「面倒くさいから、いいやになった」
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この話を聞くと、クレーンは突然極悪同盟からの脱退を余儀なくされたわけではなく、会社側とは「ヒールからベビーフェイスに転身する」という話はしていたようです。
ただ、その日がいつかは決定しておらず、この鹿島の試合でいきなりやられた、という感じですかね(真相は分かりませんが)。この試合、クレーンはダンプからの攻撃にかなり戸惑っていた様子なので、事前の連絡(ブック的なもの)はなかったように思えます。
では、もう一度話を整理してみます。
ダンプは「ヒールとしての成功」を重視し、クレーンは「自分を応援してくれるファン」を重視していたのだと思います。
もう少し別の言い方をすると、ダンプは極悪同盟のトップとしての視点で物事を考えているのに対し、クレーンは一選手の視点で物事を考えています。
長年苦楽を共にしてきたダンプとクレーンは、ダンプのヒールとしての覚醒とともに、目指すところが少しずつズレていき、同じ方向を向くことはありませんでした。この試合を最後にダンプはクレーンを切り離しました。
ダンプにとって苦渋の決断だったと思います。クレーンは4年間も一緒にヒールで一緒に過ごしたので、目と目で合図すれば、次に何をするかを分かっているほど、試合の組み立ては分かっていたはずです。頼りになる選手を捨て、入門仕立てのブルと2人だけで極悪同盟を続けていくのは、一見無謀にも思えます。
それでもなお、クレーンを切り離したのは、ダンプ自身がこの1年でヒールとして急成長したこと、ブルと2人でも極悪同盟を存続できる自信があったのと、母親のためにも史上最凶No.1ヒールを目指すという信念にブレがなかったということでしょう。しかし、それでもダンプにとっても大きな賭け、大きな岐路だったでしょう。
ここから、極悪同盟・ダンプ松本の第二章ともいえる戦いが始まります。
(ギャルズシティ 1985/2/1号より) 私の好きなダンプとクレーンの写真。クレーンはダンプを支えて、ここまでよく頑張ったと思います。
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上記の考察は、ダンプ寄りの話になって、クレーンが未熟者みたいな結論になってしまいます。クレーン側を少しフォローしたいです。
私にとって喜ばしいのは、還暦を過ぎてダンプとクレーンがタッグを組んで試合をしていることです。
鹿島の試合は、ともするとダンプとクレーンの仲を完全に裂いて、修復不能にしてしまってもおかしくない内容です。
ブルのインタビューに「ダンプさんとクレーンさんはあまり仲が良くなかったので、私を引き入れようとした。理由としては同期だからやっぱり絶対に自分が一番じゃなきゃ嫌で、それはクラッシュさんも一緒だと思う」と話されています。
しかし、これは少し事情が違ったようです。
ダンプはNo.1になりたかったと思いますが、クレーンにはそこまでの野望はなかったと思います。クレーンのインタビューを色々とみれば、彼女は面倒事は嫌いで、あまり物事を深く考えないという性格に見えます。だからヒールでも手を振ったり、サインをしてしまったりする軽さがありますが、それゆえ、ダンプのことを恨んだりということもなく、綺麗サッパリとレフェリーに転向して淡々と仕事をしていた、というのは彼女の長所です。
だからこそ、ダンプとクレーンはいまでも一緒に仕事ができているとも思います。これはクレーンの性格の良さだと思います。ユウはいまでもダンプをNo.1として立てていると思います。
クレーンの性格では頂点には立てませんが、優秀なNo.2にはピッタリです。ブル中野の獄門党時代にも、ダイナマイト軍団のNo.2でブルを支えていました。
2023年になり、ブルがもうレスリングを出来なくなってしまった今、極悪同盟として還暦ダンプ松本を支えられるのは、ZAPとともに、優秀なNo.2であるクレーンです。ダンプがレスリングを続ける間は、クレーンはきっと極悪同盟としてリングで助けてくれるでしょう。これは素晴らしいことです。
クラッシュはいまだに長与と飛鳥がどちらも譲らないので、ダンプとクレーンのようにうまく仕事ができないようです。どちらかがクレーンのような性格だったら、クラッシュもいま再結成して極悪同盟とともに還暦で対決できていたかもしれません。
(クレーンのフォローになっているのか心配です、伝わってくれるとよいのですが)