1985/5/17 雑誌「週刊ポスト」に、当時ビートだけしがダンプや女子プロレスに関するインタビューをしているので引用しています。
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「アッハッハ、ダンプ松本vsG.馬場の肉弾戦なんて最高だぜ」
マッハ文朱やビューティペアの時代に続いて、いま女子プロレスは第三次黄金期だとか。だが、われらがビ ートたけしには、いまひとつ飽き足らない。 そこで卓抜なアイデアを提案。
女子プロレスがここんとこまたブームだってけど。 なんなんだろうね、あいつらも。
とくにあのダンプ松本ってのひょうきん族で会ったことあるけど、楽屋じゃ「どうもよろしくおねがいします」 なんて、まるで借りてきた猫みたいにおとなしく小さくなってるんだけど、これがいったん化粧すると「ウワァーッ」って 急に豹変しやがってさ。お まえはジキルか狼男(女?) かっての。
そんでなにかっていうと、鶴太郎とかお笑い芸人を追っかけまわしては、クサリでバチバチなぐったり、棒を振りまわしたり、 セットをこわしたり、いくらディレクターからやっていいっていわれたからって、やりすぎだっての。
結局、あいつらの存在はなに かっていうと、スポーツ選手ではぜんぜんなくて、単なる芸能人の一種なんだよな。 宝塚とかアイドル歌手にあこがれるのと 同じ感覚で、ビューティペアだとかにあこがれて、スターになりたくて入ってきたやつらばっかりだろ。ところが入ったはいいけど体型とか顔つきがあまりにもひどかったんで、スターになるより悪役のほうにまわるしかなかったという同じ芸能人の中でも実に悲惨なケースのはずなのに、そのワルにも人気が出ちゃうんだから、わからねェ世界だっての。
しかし、プロだプロだっていっても、日本の女子のプロスポーツほど情けないものはないね。 一番情けないのがボウリングの女子プロだよな。いくらブーム復活だっていっても、年収が百万円少しの女子プロがほとんどというんじゃ、どうしようもないよ。 そんな給料なら、どっかパートでも働きに行ったほうがまだましだっての。 もっとひでェのがテニスだよ。テニスは世界を相手にしなきゃどうしようもないしさで、 相手にしたところで、賞金ランキングも所詮は何十位なんだから、にっちもさっちもいかないっていうの。
ゴルフはゴルフでブスかババアかデプばっかりだし。外国の選手にはかわいい美人ゴルファーがいっぱいいるの に、日本じゃなんでこんなにブスなオバサンばっかりなのかね。いくら肉体労働だからって、たくましく太りゃいいってもんじゃないんだよ。 こないだも、 どこかの製紙会社が女子プロの タマゴを集めて、一人一千万円かけて日本の美人女子ゴルファーを育成するなんていってたけど、まずこの日本じゃ無理だろうね。真剣にやるんだったら、 やっぱ岡本綾子みたいにロスとあっちに住んでだね、本格的にやらなきゃ世界のプロにはな れないってんだよ。
本当のプロの選手になろうってのなら、もっとジャンジャンでかいところに行って勝負しなきゃダメだっての。大きなひのき舞台に出て、そこでなにができたかが問題だっての。ホント、江夏さんを見習えっていうの 。あのくらいの根性があって、大リーグにもどんどん挑戦する選手が出てこなきゃ本物のプロ じゃないよな。そりゃ、マンザイだったら、日本国内だけでいいばっててもいいけど、 スポーツ 選手の場合は世界に出ないと、 相手にされないんだっての。
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女子プロレスだってさ、おまえらプロのショーマンならプロらしくもっとショーアッブを考えろっていうんだよ。 ダンプ松本も、この際、男も相手にしてだね、アントニオ猪木の頭をチェーンでハリ倒すとか、 上田馬之助を竹刀でめった打ちにするとか、やってみなさいっての。
「おーっと、ダンプ松本、ジャイアント馬場に竹刀でキン突き! あっ馬場急所を突かれてついにダウン」とか、 「おーっと、こんどは馬場が反撃。ダンプ松本にコーマンナッツ割り!!! ダンプ松本、苦しそうです」なんてね。もう凄まじ いの。
いまの客は目が肥えちゃってるからさ、そのくらいやんなき 満足してくれないってんだよ。だってプロ野球だっていまじゃ客のほうがうるさくて選手が ビビッってるんだぜ。 昔だったら、選手がちょっとエラーして も、「あらー、あの長島さんがエラーだなんて、きょうはどうしたのかしら」。三振しても、ただ「チキショー」ってのが客の正直な反応だったのに、いまは、「バカヤロー、ワキを諦めろ、 ワキを」「内角を狙うんだよ、 内角を」 って、素人のほうがず うずうしく技術指導しちゃって るんだからさ。
ということはだね、それだけいまのプロってのがあまりにもプロらしくなくなってるってことなんだよ。 プロの見せ場がな いっていうか、すげぇなと客をうならせるプロらしさがないんだよな。
そのせいか、いまやプロ野球 の観客動員数も減ってるってい うじゃねぇか。情けねぇことだ せ、まったく。
だから、せめてブームにノってる女子プロレスくらいはだね、水着がやぶれて、オッパイがビロッて出ちゃうシーンとか、パンツがケツにくいこんじ ゃうとか、女子プロらしい見せ場をジャンジャン見せろっての。
クラッシュギャルズ対長州力 なんて試合も長与千種が長州力の子供をやどしちゃったりしてさ。「あたしは絶対有無からね」っていう千種に対して、長州は「バカヤロー、ガキなんていらねェ。オレたちはセックスだけの関係なんだから、 そんなガキは早く堕ろせ!」って、リングの上でなぐりあうわ け。「やれるもんなら、やってみな。しまいにゃこのリング上で生んでやるからな」って、長 州をおどかしてやんの。長州もあわてて手の力をゆるめたりしてさ。最後にはプロレスじゃな くて、出産ショーなんて、なんっちゃったりして。
男のプロレスだって、引き抜きだとか脱退だとか、いろいろな陰謀とか政治的なかけひきがあるんだからさ、女子プロだっ て、じつは、ライオネス飛鳥とダンプ松本が、田原俊彦をめぐっての恋仇同士だったなんてのがあってもいいんじゃねェ か。ついにダンプがトシちゃんに足げにされて、そのうらみを リングではらすとかね。
「トシ争奪! 飛鳥対ダンプ」 なんていっちゃ って、リングの上で女の血みどろの戦いをくりひろげるの。勝ったほうは箱根のコテージでコーマン一発が授与されるというね。ちゃんと戦うためのうらの口実があるんだから、こりゃ絶対もりあがるっていうの。
「激突、レスビアンコンビ!!!」 ってのもいいよね。なんだか船橋のストリップみたいだけど、「クラッシュギャルズのレスビアンがついに発覚。バラしたのはやはりレスビアンコンビのハグレ軍団。きょう、このリング で、どっちが本物のレズかをあ きらかに!!!」
攻め技は四十八手の裏表、九十六手の性技のテクニックで、 ドクター荒井よろしく、性感マッサージのせめぎあい。耳、唇、 オッパイ、ワキ腹、コーマン、太モモと攻めあって、ついにダンプ松本が正真正銘のレズだったという本性がさらけ出されると いうね。わけわからねぇ試合なの。
まだあるよ、同じ女同士ならやっぱ嫁姑対決ってのがいいよ な。悪役はもちろん姑軍団。なにかっていうと、メシがまずい、 料理が遅い、掃除がヘタと嫁軍団をイビリまくるの。そんで、しゃもじで嫁をビッタン張り倒したりしてさ。嫁さんは嫁さんチームで、亭主をヒモでしばったりして、「息子を殺すゾ」 って母親をおどかすの。観客とキャーキャー、ビィビィのガキの客から、急にオバさんの客がふえたりして。もう完全に代理戦争だっての。もっとウケたかったら、「ロリコンプロレス」だろうね、やっぱ。どうせ中年のアホな男たちが女子プロレスファンには多いんだからさ、スケベなファンにはこのさいロリコンでせまりまくってやるのよ。十二歳ぐらいのプロレスラーを養成してリングに上がったら全員素っ裸で対戦。キャッキャくすぐりあって、ア ソコもあらわにリングの上でころげまわるの。その姿のかわいさったら、もうたまらない。で、 唯一の反則はヘア。毛がはえてきたら即反則、即退場っての。 審判も試合前にリング上でチェックするんだけど、中には刺ってるコもいて、いつももめてんの。青い剃りあとが見つかっ て、クレームがついたり、うぶ毛だっていいはったり。 はじめはえた真新しいたった一本の ヘアで、反則になったり。実に カワユイってのよ。
ま、これはホントにやったら ヤバイけどね。
どっちにしても、いまの女子プロレスには演出が足りないよ な。ファンをよろこばすにはもっと裏の工作をして、面白くショーアップしなきゃいけないっての。わかったか、ダンプ松本よ。ジャンジャン。
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この記事、当時のたけしの悪ノリ、毒舌ぶりのゴシップネタ、ジョークということを理解してうえで、読んでみたんですが・・。
たけしって頭がいいと思うし、いい映画も撮るし、芸術的な才能も認めるし、自分は割と好きな芸人なんですが、この記事はアホすぎます。
正直、たけしは過大評価されているな、というのを少々感じました。
また、当時のプロレスはこの程度の理解だったということも、分かります。力道山からの大衆文化ですから、この程度なのは仕方ないにしても、後の文化人となるたけしの見解がこの程度ですからね。
ダンプがひょうきん族の楽屋で小さくなっていたけど、本番になるとジキルとハイドのように豹変すると書かれています。このブログではダンプになる前の松本香時代を追っているので不自然には思わないですが、いきなり会った人はビックリしたんでしょうね。たけしもダンプが本当に普段から暴力を振るう女性だと思っていたんですかね。(^^;