1985/11月号の雑誌「デラックスプロレス」に仲前芽久美の紹介がありましたので引用してみます。
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ジャガーさんの試合を見たら"受験"が吹っ飛んだ!
-最初の質問は、オーディションを受ける時に出した履歴書の写真がちょっと変わってたという話なんだけど・・
仲前 あれはお母さんのアイデアだったんですけど、水着の上にダンプさんが着てるような皮ジャンを着て撮った写真なんですけど、今、思い出しても照れくさいですね(笑)。
-だけど、オーディションには落ちちゃったんだよね。
仲前 そうだったんですけど、オーディションの次の日に会社から電話があって面接したいって言われて、行ったら補欠だったんですけど合格にしてもらいました。
-今年もオーディションに合格しなかったら、もう1回勉強して大学に入ろうと思ってたんだって?
仲前 高校3年生の時に1回受けてダメだったんで、1年間練習生になっていろいろトレーニングをやって、もし今度のオーディションでダメだったら見込みがなかったんだなって、自分であきらめて、もう1度勉強し直して大学でも受けてみようかなって思ってました。
-高校時代、勉強は出来た方だった?
仲前 自分では、数学とか理科(物理、化学)が好きで得意だったんですけど、社会(特に歴史)が嫌いでいつも社会で平均点を下げていました(笑)。
-高校時代で一番、良かった成績は?
仲前 学年で第10位っていうのが一番、良かったですね。
-学級委員をやったこともあるんだって?
仲前 はい。高2の後半と、高3の時は1年間ずっとやりました。
-それが、どうしてプロレスをやりたくなっちゃったの?
仲前 高校に入ってからずっと大学進学を目指して勉強してたんですけど、高2の終わり頃、ちょっと行き詰まって、その時にテレビでジャガー(横田)さんの試合を見たら、それまで"受験、受験"って言われて悩んでたのが何だかスーッとしちゃって、それからおかしくなっちゃいました(笑)。
-憧れてるレスラーはいる?
仲前 学生だった時は、ただプロレスをやれればいいっていう願いが強かったから、特別にはいませんでしたけど、今はやっぱりダンプ(松本)さんですね。自分がプロレスを見始めた時は、まだデビル軍団の中の松本香であんまり印象に残ってなかったんですけど、今は風格もあるし、カッコイイし、自分もダンプさんみたいになれたらいいなって、いつも思ってます。
-今着てるガウンはダンプからもらったんだって?
仲前 そうです。胸の所にあった松本っていう刺繍をとってもらって仲前って新しく入れてもらいました。
-女子プロに入る前と入った後でダンプのイメージは変わった?
仲前 入る前はただ怖いっていうイメージしかなかったんですけど、実際は面白いし、優しくて、全然最初のイメージとは逆でビックリしました。
-初めて巡業に参加したのは他の同期の人たちより早かったよね?
仲前 オーディションに合格してからすぐに山陽、九州の旅があったんですけど、ちょうど自分の地元(岡山県倉敷市)の近くを通るし、やるんだったら出来るだけ早く生活にも慣れた方がいいって自分で判断して1月25日の広島県立体育館の試合から旅につきました。最初はずっと売店で2月18日の大阪府立体育会館で初めてセコンドに付きました。
-デビュー戦(5月16日、大宮スケートセンター)は覚えてる?
仲前 あの時は、急にデビュー戦だって言われて試合前から"えっ、えっ"ていう感じで、あせったのを覚えてます。お客さんが一杯入ってたのはわかりましたけど、別にそれであがったりはしませんでした。
-寮生活は楽しい?
仲前 楽しいですよ。小学校の頃はよく通信簿に先生からもっと積極的になりなさいって書かれましたけど今は、結構みんなともワイワイ騒いだりします。昔に比べると少しは明るくなりました(笑)。
-仲がいいのは誰?
仲前 17歳以上の人です(笑)。自分はもうすぐ20歳になるし、15歳の人と話してると、やっぱり年齢の差を感じますね(笑)。自分ももう若くないのかなって(笑)。
-趣味とか、休みの日には何をしてるの?
仲前 高校の時から中島みゆきの歌を聴くのが好きでした。休みは大体寝てます。原宿とかにショッピングに行くのはほんのたまにですね。シヨッピングに行くと、お金がすぐに飛んでっちゃうから、ほとんど行きません。
-辞めたいなんて思ったことはあるの?
仲前 会社に入ってすぐに旅に行ってそれがきつくて、こんなんでやって行けるのかなって悩んだりしたのはよくありました。あと、前に悩んでる時に立野(記代)さんに「どんな会社に行ったって初めは誰でも辛いんだよ。うちの会社はそれがちょっと厳しいけど、うちでダメだったら次に他の所に行ってもきっと勤まんなくなるから、幸いだろうけど、う少し辛抱しなさい」って言われた時はうれしかったです。
-最後に、練習生とプロの違いをどういう風にメグちゃんは感じていますか?
仲前 まず第一は厳しさが全然違うっていうことで、それから、プロになると自分たちはプロで練習生じゃないんだから、きちんとした態度をとって、人から見られる立場にあるっていうことを自覚して行動しなくちゃいけないって思います。
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仲前芽久美(のちのドリル仲前)の貴重なインタビューです。
なんとプロレスに入ろうと思ったきっかけはジャガー横田のプロレスに感動して、とのことです。
しかし、憧れたジャガー横田ではなく、すぐに極悪同盟に入り、ダンプに引き取られて可愛がられます。それは松本香時代のガウンをわざわざ刺繍を変えてまで仲前に譲ったところからも分かります。
ダンプも高校を卒業してからの遅い入門でしたが、仲前も境遇が似ていて、秀才タイプだったがわけあって女子プロレスの道を選んだので、そのあたりダンプも共感するところがあったのではないかと思います。
別の本では「仲前の過去があまりに可哀そうで・・」という話をダンプがしていたのですが、その話を書かれている本を見たことがないので実際はどうだったのか分かりません。