ドラマ「極悪女王」 エピソード1 感想(ネタバレあり)

 

いよいよNetFlixで「極悪女王」の放送が開始されました。4年ほど前から「極悪女王」の制作の話は聞いていましたが、コロナ渦で中断したり、色々とケガの情報もあり、先に進まず、ようやく2024の秋に公開されました。待つこと何年だったでしょう。長かったです。

公開までの時間が長かった分、期待も大きい本ドラマの感想を書いていこうと思います。

 

エピソード1

 

1話みた感想としては、再現度の素晴らしさ、これに尽きます。

 

NetFlixの制作予算が潤沢のためだと思われますが、手抜きを感じるところはありません。

舞台となる熊谷のダンプの実家、全女のあった目黒周辺の街並み、そして会社内のリング、新人部屋など、とにかく凝りに凝っています。昭和にトリップした感覚です。

 

やはり外資は違う

 

やはり外資のストリーミング系会社はお金がありますね。

一年位前に「VIVAN」という大がかりなロケを敢行した日本のドラマがありましたが、「VIVAN」が海外ではたいして評価されないのが分かります。ディズニー+の「将軍」も、賞を総なめにしましたが、お金をかければ時代劇も日本のテレビ局レベルとは違い、とても美しくなることが分かりました。それだけ海外資本の制作会社の出資額の多さと、クオリティの高さが分かります。

 

再現性が恐ろしく高い

 

このような昭和の「空間の再現」はもちろん素晴らしいですが、さらにディティールもよく出来ています。

例えば、主人公の松本香のハッピひとつとっても、再現をきちんとしています。

以下は松本が高校生のときの写真ですが、きちんとゆりやんが再現していました。

 

 

他にも、リングの再現度、オーディションシーンなども細かいところまでよく出来ています。当時、女子プロレスのファンだった方も納得の再現度ではないでしょうか。

 

 

配役の凄さ

 

さらに女優陣もかなり似ています。特に主人公のダンプを演じるゆりやんレトリィバァ、クレーン・ユウ役のえびちゃん、ジャッキー佐藤役の鴨志田媛夢は似ていますね。ゆりやんレトリィバァは以前から公開されていたので安定の再現度でした。個人的にクレーン・ユウとジャッキー佐藤は想像以上に役にハマッていました。特にクレーンはダントツで、背がもう少し高く、足が細ければ完璧です。

男優陣では松永社長役の村上淳、松永俊国役の斎藤工が再現度が高いです。いや、このドラマは全員再現度は高いのですが。

それ以外の女優も全員いい配役です。恐るべきは松本の小学生時代の太った子供までかなり似ています(少々太りすぎ感はあるが)。

あ、そうそうモンスター・リッパーだけはギャグのようになっていて、似てなかったです(^^;

 

 

心配されたのは、長与千種役の唐田えりかと、ライオネス飛鳥役の剛力彩芽です。

1話をみた感想としては、やはり線が細いです。でも雰囲気は似ています。

もう2話目以降も視聴したので、先に書いておくと、1話ではもう一つかなと思いましたが、プロレスシーンで圧倒されるので無用な心配でした。

 

もう少し細かいところで感想を書いていきます。

 

 

オープニング

 

オープニングはダンプが1985/12/5に発表したLP「極悪」の曲です。パッと聞いた感じだと、ダンプが歌っていること自体が分からないかもしれません。実は私はまともにこの曲を聞いたことがなかったのですが、ある意味、鑑賞に堪えない破壊的な楽曲なので一周回って「極悪女王」のテーマに合っていると思います(言い方が悪くて申し訳ないです・・)。時代を先取りしすぎていて、当時から40年後の「極悪女王」のために作られた曲だったとしか思えません。

↓以下の曲です。

『1985/12/5 LPレコード「極悪」がリリースされる その①』1985/12/3の雑誌「セブンティーン」にLPレコードの記事がありましたので引用します。  --------------------------------…リンクameblo.jp

 

 

ストーリーも良い

 

松本家の様子もきちんと描かれています。特に父親がクローズアップされているのは、マンガの「ダンプ・ザ・ヒール」とは違い、リアル感があります。浮気をした相手の子供に「香」という名前をつけたというのは、「ザ・ヒール」にエピソードがありました。酒乱でDVの父親とのやりとりが「極悪女王」のストーリーのひとつだと思うので、1話でしっかり描いたのはかなり良かったです。本当にムカつくオヤジになっています。

 

ジャッキー佐藤とマキ上田のビューティペア時代が再現されているのも素晴らしいです。そしてジャッキーの親衛隊である松本のはっぴ姿。まず最初のプロレスシーンで度肝を抜かされます。

オーディションシーンでは、主要メンバー全員が集まります。松本、長与、飛鳥、大森、クレーンの昭和55年組です。大森と長与は推薦での合格でしたので、オーディションは受けていません。しかし、オーディションでまとめて全員をうまく紹介しているので、良い改変だったと思います。大森が四股を踏んだり、長与が空手の型を披露したり、クレーンは情報屋みたいになっていたり、それぞれの個性を引ぎだしている点もよかったです。松本はここで憧れのジャッキー佐藤と初めて対面しており、焼きそばを売っているオジサンが松永社長だと知ります。おそらく事実と違いますが、ビューティペア時代からの流れとして良い演出です。

 

プロテストに向けて過酷なトレーニングシーンが連続します。またプロテストのシーンも面白いですね。有望株の飛鳥と大森に比べて、グタグタな松本と長与。そりゃプロテストに2回は落ちるよな、と思わせるいいシーンです。本庄は受かりそうな動きをしていましたが、松本に比べればマシという程度なのでしょうか。

私は実際のプロテストはどのようなものなのか分からなかったのですが、おそらくこのドラマのような感じなんでしょうね。長与千種が監修していたのでおそらく間違いないと思います。そういう裏側のシーンが再現されるのもこのドラマの素晴らしいところです。

 

昭和のコンプラ無視の激しいトレーニングは、昔を知らない人がみると狂気に感じるかもしれませんが、学校でも普通に体罰を喰らっていた時代ですからね。今の日本がホワイトすぎるかもしれません。この物語を見ていると昭和の時代はブラックではあるが、世間のあちこちに「夢」が転がっていた時代であることもドラマを見て感じます。いまでは貧乏人は大成功はなかなか出来ないですし、スポーツも子供の頃からお金をかけないと成功も難しい時代ですからね。

 

まばたきも許されないほど面白い、あっという間の1時間です。

私はエピソード1は100点だと思います。松本がこれからどうなるのか、目が離せない展開です。

 

気になる点

 

今一つだった点もあげておきます。

激しいトレーニングはきちんと再現していますが、もう一つの肝心な新人時代の要素である「イジメ」については全く触れられません。これはなぜでしょうか。マンガの「ダンプ・ザ・ヒール」では「亀の甲羅を背負わされて地面を這いつくばる松本香」という強烈なシーンがありました。松本が延々とイジメに泣きながら耐え続けるシーンが見どころの一つと思っていたのですが、コンプラのせいでナシになってしまったのか、再現してしまうとイジメ役が非難されることを避けたのか。

私としては、ダンプや長与の新人時代はイジメとの戦いだと思っていました。昭和的で女の縦社会の寒気のするような壮絶なイジメをスッポリと失くしてしまったのか、残念でなりません。同じNetFlixドラマの「サンクチュアリ」では散々イジメが描写されていたのに・・・。見たかったなぁ、イジメられるシーンが。見たい人はマンガを読むしかありませんね。

 

改変されたと思われるシーンについて

 

この物語は全体的にフィクションが多いです。むしろ物語をコンパクトに凝縮する点では改変したことはプラスの方向に作用していると思います。

ですので、事実ベースのドラマではなく、フィクションだと思って割り切ってみたほうが良いなと思いました。

 

改変の部分は、自分でも野暮なことを書いていると思うので、流し見程度でお願いします。

なまじ、ダンプ松本のことを調べているので、どうしても「ここは違うんじゃ・・」というツッコミが入ってしまいます。おそらく全女に詳しい方たちはみなさん思っていると思うので、各話で気づいたところは書いていこうと思います。

 

オーディションの場面の相違

長与と大森が推薦での入門のためオーディションは受けていません。

また、ダンプがオーディションに合格したのは、ご本人曰く「とにかく明るく元気にハキハキと。目立つ行動をしたから」と話されています。遅刻してきたのは確かに目立ちますが、そのような目立ち方ではなく、挨拶を大きい声でしたり、技もわざとオーバーアクションしたりという「目立つ」場面は改変されています。なのでこの描き方ではなぜダンプがオーディションに合格したのか分からないと思います。

 

長与と松本の場面

次々に去っていく同期。松本、長与、本庄が残りますが実際はプロテストには同期は10人くらい合格しています。

長与と松本は友達のような描写になっていますが、実際は長与は15歳、ダンプは19歳のため4年差があり、「自分は中学生、松本は大人の女性に見えた」と長与の本に書かれているので、ドラマのような同級生のような仲良しだったかは微妙です。

 

その他

・浮気相手を訪ねる場面がありますが、この時は妹も一緒に行っています。妹に玄関のピンポンを押させて様子を見させたと自伝に書かれています。

・パン屋さんには一度も出社していないと自伝に書かれています。就職前日に全女に合格したことを家族に相談し、内定を取り消してもらっています。よってパン屋さんを途中ですっぽかしてオーディションに行ってはいません(パン屋さんとオーディションの時系列が違う)

・パン屋で父親の愛人と話す場面がありますが、さすがに愛人から感化されてオーディションに行ってはいないようです。

・長与がリングの下で生活していたという事実は読んだことはありません。

・父親は松本がプロレスをすることに「いいよ」とOKしたそうです。また時系列も違っています。実際はオーディションに合格したあとに、パン屋さんの就職をとりやめるときに一日中ずっと説得したようです。父親は話しても説得できなかったので、その日の夜に長い手紙を父親に書き、それを父親が夜中に呼んで、翌朝に納得してもらったそうです。

 

参考

55年組のオーディション風景、プロテスト後の紹介

『1980年 オーディション風景 家族の反対を押し切ってプロレスラーになる!!』(2022/10/14 FullHD動画追加)TimTamchannelさんのYoutubeより全女1980年度(昭和55年度) オーディション風景  (AI…リンクameblo.jp