巴武蔵


ムサシの魅力について、かなりがんばって妄想膨らまして考えました。



はじめに

ムサシはアニメデブキャラでは、最もメジャーでファンも多いだろう。あまりにメジャーすぎて、ムサシのレビューは正直気が引けて、あまり書く気はなかった。しかし、「是非ムサシを書いて」とリクエストをいただいき、これを書かないとあっては、侠(おとこ)がすたるってもんです(単にネタが尽きてきたってのもあるんですけどね・・)。そこで少しだけ自分なりにムサシ像をまとめてみようと思う。他の人にはその人のムサシ像があると思うので、それはそれ、ナニはナニってことで・・(^^;

ちなみに今回のレビューはTV版のゲッターロボのムサシにします。漫画やらOVAやらたくさんムサシはいるので、全部まとめるのは不可能です。


俺とムサシ

俺は幼少のときにどうやらゲッターロボをみていたらしい(実際は再放送かもしれないですが・・)。しかし、なんと当時のことは全然覚えていない。本当に見ていたどうかも定かではないのだ。それで、たしかLDが発売になったときにムサシ目当てで思い切って購入した(←当時からこんなんんだっただね、俺)。はっきりいって見たのは遅いほうだ。つまり、グランゾートのガスなどよりも後にみたのだ。自称デブショタ萌え15段などと書いておきながら、恥ずかしい限りだ(別に15段だろうが20段だろうが、何の自慢にもなりませんけどね・・)。

第1話でムサシを見たときの衝撃は、それはもう・・・(気絶しそうになりました)。こんなすばらしいキャラクターがロボットアニメ創世記(?)のころに存在していたのかと、後悔の念に駆られたってもんです!


柔道部
ムサシは柔道部では主将。浅間学園の柔道部は50年の伝統を誇っており、部員もかなりいるようだ(浅間学園って昭和以前に設立された伝統高校なんですね・・)。ムサシは主将としてはかなり人望があるように見受けられる。時には厳しく、そしてやさしく部員に接しているしようだし、なにより人一倍人情に厚い。またムサシは実力4段と言われるほど圧倒的に強い(ちゃんと黒帯をしている。ちなみに他の部員は白帯)。ムサシは大雪山で鍛え上げた肉体と精神力は相当なものだろうし(その割りに爬虫類には弱かったが・・)、部員が束でかかってもムサシにはかなわないのだ。弱い主将の下に人は集まらないだろし、ムサシが主将になってからは柔道部はおそらく大盛況とであったろうと思われる(いや、その、いろんな意味で)。

ムサシは1年生のときから、先輩にも一目置かれる存在であったのは間違いない(ムサシの新入生時代ってどうだったんでしょうね・・可愛かったんだろうなぁ。「1年A組 巴武蔵です!」なんて自己紹介していたのだろうか・・想像するだけでかなり萌えですね・・・・)。おそらく、1年のときから、ムサシは先輩から毎日モテモテだっただろう(先輩からあんなことやこんなことを・・・ムサシの性格からいって、先輩には絶対に服従していただろうから、先輩のなすがままだったんでしょうね・・・)。

3年になって主将になってからは、今度は後輩からモテモテである。実際にけっこうヤサな部員(1年生か?)が多いし、これはまさにムサシ狙いなんじゃないかと・・。ジョーホーに至っては、学校をサボってまでムサシに全身全霊を尽くす始末。こんな柔道部の主将がいる部だったら、俺も入りたいなぁ・・(バッチリしごいてもらって、ムサシに毎日密着します。ムサシには柔道をがんばっていると勘違いして、目をかけてもらえそうだし・・・・←結局また妄想オチかよ!)。


戦闘服

ムサシの戦闘服、これは誰もが思う実に不思議な格好である。ふんどしに剣道の胴着、工事用の黄色いヘルメット、日本刀、オレンジのマント、長靴、ゴーグル・・・。一体どういうセンスなのか小一時間ほど問い詰めたい格好だ(しかも最初から最後までこの格好だし・・誰かパイロットスーツを提供してやれよ!)。

考えてみれば、ムサシは柔道の達人である。なのに、どうして柔道着で恐竜帝国に立ち向かわなかったのだろうか?(柔道着で恐竜に戦うのもかなり間抜けですけどね・・あ、でもベンケイは野球のユニフォーム?)
第1話で、リョウがムサシを迎えに来たときは、ムサシは柔道部で柔道の練習中の真っ最中だった。そのあと、リョウが浅間学園の寮にハヤトを迎えに行った場面では、すでにリョウのサイドカーにムサシは"あの姿"でちゃっかりと座っていた(一体あの格好をする時間がどこにあったのでしょうか?)。

おそらく、「恐竜」と戦うと聞いてムサシはいま自分にできる最大限の武装をしなくては!と思ったのだろう。寮に帰って、急いでムサシなりに武装をしたと考えられる。即席ではあるが、ムサシとしてはかなりがんばって、出来る限りの防具をしようと奮闘した結果があの姿なのである。

柔道着よりは、硬い剣道の胴衣のほうがいい。たまたま部屋にあった胴衣を着用。さらに母親から寮に入るときに預かった形見の日本刀を持ち出し、さらに濡れた地面でも動きやすいように長靴(別にスニーカーでもいい気がしますけどね・・)を履いたのだろう。また、頭も危険と考えたのか、工事用のヘルメットをかぶるようにしたようだ。あり合わせの格好としてはとりあえず頑丈だ。

さて、この格好をしてみてムサシは気づいた。鏡をみると、後ろがフンドシ一丁の素っ裸だったのだ。これはまずいと思ったムサシは、テーブルクロスを破き、その場でマントにして後ろを隠したのである。
(我ながらなかなか決まった)とムサシは思い(妄想癖があるので)、サイドカーで待っていると、リョウがハヤトを勧誘できずに戻ってくる。


そこでこんな会話。

リョウ 「隼人のバカヤロウ!!」
といって玄関をでるリョウ。そしてムサシをみる。
リョウ 「ハッ!」
ムサシ 「おい、リョウ。あんなヤツ、相手にするな」

気になるのがリョウの「ハッ!」というセリフである。ムサシをみて「ハッ!」と言っているのである。これはどう解釈したらよいのだろうか?

1.ムサシの格好をみて思わず感嘆の「ハッ!」だった
2.俺も武装しなくては!と焦った「ハッ!」だった
3.「ハッ!」ではなく、「ハァ?」の意味だった
さて、どれだろう・・。やっぱり3なのかなぁ。性格の悪いリョウだし・・。

基地についてみると、もちろんベア号用の戦闘服は用意されていたのだ。
リョウはなぜかゲッター専用の戦闘服をきちんと着ていた。ヘルメットもゲッター用のものである。もちろん、ムサシの戦闘服もヘルメットもあったと思うのだが、きっとムサシの体格に合うものは早乙女博士のものしかなかったのだろう。よって、「ムサシ君、君はとりあえずそのままの格好で」という研究員の提案(研究員にデブ専が混じっています。ムサシの格好をみたときに何人もときめきました)によって、そのままベア号に載せられたものだと考えられる。 (しかし、ある意味、ムサシの格好を見たときの研究員たちは、心の中で爆笑だったでしょうね・・・しかし、これから死ぬかもしれない青年に対して笑うのは失礼なので、全員で必死に笑いを我慢していたと思われます)。

注目は、ムサシがゲットマシンに乗ろうか迷っているときに、2人がかりでムサシを強引に連行し、ベア号に押し込んだ研究員の人たち。あの格好のムサシにベタベタ触りたいのはよくわかるが、露骨すぎます(腕をもっていましたが、反対の手はふんどしかキンタマを握っていたと予想)。


ゲッター3

ムサシといえば、ゲッター3である。しかし、なぜムサシはゲッター3でなければならないのだろうか? 第1話でゲッターに搭乗したときから、なぜかムサシは強制的にゲッター3だった。ミチルが危機に陥っていた緊急時である。誰がどの機体に搭乗するかなど決められているわけがない。しかし、リョウはゲッター1へ、ハヤトはゲッター2へ、ごく自然の流れで乗り込んでいた。ムサシがゲッター3に搭乗してしまったのは偶然としか思えない。

ところがである。後からムサシが「ゲッターロボを持ち回りにしたい(自分もゲッター1に乗りたいから)」というと、なんと早乙女博士がこんなセリフを言うのだ。

早乙女博士 「ゲッター1、2、3。それぞれお前たちの体格、性格、能力とマッチするように設計してある。取り替えたらロボの性能は半減だ!!」

早乙女博士 「お前をフルに活かすのはゲッター3しかない!!」

こりゃおかしくないか?設計段階で、リョウ、ハヤト、ムサシが搭乗することなど想定はしていなかったはずである。それにゲッターを操縦するのはパワーではなく、技術である。別にムサシがゲッター1でも2でも構わん気がするのだ(まぁそれはそれでちょっと似合わないところがミソなんですけど・・)。 もしかすると、ゲッターのプロトタイプで死んだパイロット3人は、ほとんどリョウ、ハヤト、ムサシと同じ体型だったというオチなのだろうか?(そんなアホな・・・) ムサシの決め技、大雪山おろしはゲッター1のほうが格好よく決まりそうな気もするが(あ、やっぱり大雪山おろしはゲッター3じゃないとダメですか。すみません)。


恐ろしい少年

ゲッターロボに恐ろしいデブ専少年が第7話から登場する。そう、ジョーホーである。どうみても、柔道をやる体とは思えないジョーホー。柔道部員の中では、完全に一人だけ浮いている。身長は低いし、ヒョロヒョロ。普通なら文科系間違いなしだ。さて、どうしてこんな少年が柔道部に入っているのだろうか。

ちょっと考えればすぐに分かるのだが・・(^^;。ジョーホーが、ムサシが好きで好きでたまらなくて入部してしまったのである(スタッフも、かなりあざとくて、露骨ですね・・)。あまりにジョーホーは物語にすんなりと溶け込んできたので、意外と気づきにくいが、ジョーホーは初登場時からムサシに次々と強烈なアタックをかける(よく見ると、中盤では格好までムサシの真似しているんですね・・あざとすぎます・・)。


ジョーホー 「ムサシ先輩と男同士の話がありますので」(←男同士!!)
ジョーホー 「リョウさん、ハヤトさんに比べて、我が愛するムサシ先輩がもう1つ冴えない原因はなにか?」(←なにげに告白?)
ジョーホー 「ボクは3日間学校を休んで考えました」(←学校休むほどの熱意!)
ジョーホー 「先輩のことはなんでもボク知ってます」(←強烈!!ぉぃぉぃ)
ジョーホー 「先輩に喜んでいただいてボクうれしいです」
これが愛の告白以外、なんなのだろうか?笑

初回登場時からいきなりこれだけの告白をした少年も珍しい。それにしても鈍感なムサシ。全くジョーホーの空気を全く読めない。

その後もジョーホーはムサシに対してアプローチをかけていくが、ムサシはミチル以外は眼中には入らない。ムサシを男にすることによって、少しでもムサシとの時を過ごしたいジョーホーは、大枯文次に媚を売ってまで、ムサシのために献身する。


その物語中盤から大枯文次。太っているところはムサシと同様(ある意味、キャラがかぶりまくり。こいつもミチルことが好きだし。それにしても太い二の腕にオーバーオールと、これもあざといデブ専スタッフがいたもんです)。しかし、可愛さからいえば、ムサシのほうがダントツである。ムサシに対する愛がなかなか成就しないジョーホーは、文次をみて「とりあえず、こいつでもいいや」←(ぉぃ)と弟子入りを志願する。

実は、この弟子入りはジョーホーにとって一石二鳥だったのだ。文次はそれほどルックス的には好みではなかったのだが、ドラム缶風呂に入ったり、露出度はめちゃくちゃ高い。一緒に住むことで、自然に添い寝したり、抱きついたり、やりたい放題だったのだ。仮想ムサシとして考えれば、ある程度の欲求は満たされるのである。さらに文次を利用して、ムサシに対しても再アタックをかけることが可能だったのだ。

そして、ある程度ムサシとの愛が実ったのは、第24話ではジョーホーが文次から盗み出した小型の鳥型飛行機で、ムサシはミチルを助け出した後の場面。2人で涙を流して抱き合って喜び合う場面は、「よかったね、ジョーホー」と声をかけたくなる。 なんとジョーホーのしたたかな戦略であろうか。


ミチルとの関係

ミチルとムサシ。物語の序盤〜中盤は、ムサシがミチルのために奮闘するエピソードが多い。ほとんどがコミカルに描かれ、ムサシを序盤の主人公的な存在にするくらい、内容的にもおもしろいものが多い。

ミチルは浅間学園のアイドル的な存在である(ムサシが「浅間学園のモナリザ」と言っていたが、今となってはモナリザって微妙な表現ですよね・・)。実際にはリョウ、ハヤト、ムサシの3人のうち、誰がミチルとゴールインするかという競争的な部分もあったようで、1人だけミチルとデートするという抜け駆け的な行動を禁止することは、3人の中では、暗黙の了解としてあったようだ。といっても、行動ではリョウ、ハヤトはあまりミチルにアタックはかけていないのだが・・。

たとえば第18話で、右京に化けたザンキに対して、リョウは「ミチルさんにはお似合い」といい、ハヤトは「あの人は洗練されていてスキがない」とまるでミチルを諦めるような言動をしているが、ムサシだけは頭に血が昇っていた。つまり、ムサシだけは本当に真剣にミチルのことを考えていたのである(それだけしか考えていないという話もあるが・・)。

しかし、不幸にも、ミチルにとってムサシなどは眼中にはない。
ミチルは面食いなので、カッコイイ男にしか目をくれない。容姿ばかりみて、中身を見ない浅はかな女なのである。ハヤトも外見はカッコイイので、いろいろと近づこうとしていたようだが、無視されて逆ギレしていた(なんだかんだで、その後のハヤトもしたたかだったんですけどね・・)。
さらに、自分以上の綺麗な女性に嫉妬する。ムサシが、恐竜帝国の女スパイに化けた女にモテモテだったときは、ミチルは普段はムサシに声もかけないくせに、途端に焼餅を焼いていた。はっきりいって性格は最悪だ。(こんな女にムサシが左右されていたと思うと腹が立ってくる)


ムサシの場合、柔道をしているときは男らしいのだが、柔道部の外に一歩でも出た途端、3枚目のおっちょこちょいのデブになってしまう。ミチルがいつも見るムサシは、そんなおっちょこちょいのムサシだった。だから、ムサシがゲッターチームに入る前は、ムサシは、研究所に誘われることも話しかけられることも、ほとんどなかったと思われる。

しかし、そんなムサシも、ゲッターチームに入ることによって、ミチルと会話できるようになった。徐々にミチルとの会話も増え、ムサシにとっては恐竜帝国と戦うことよりも、ミチルと近づくことができることの方が大切だったように思える。しかし、後にそれはムサシにとって心の葛藤となって現れる。

どうして自分がゲッターチームで戦うのか、ムサシは疑問を持ち、悩む回がある。
第47話であるが、ミチルが結婚するとムサシが勘違いして、こんなことを考えている。

ムサシ 「考えてみれば、俺は地球の平和のことなんかどうでもよかったのかもしれない」
ムサシ 「ミチルさんと一緒にいる。それだけが楽しかったんだ」

ムサシは戦う理由をリョウに問う。「本当に地球の平和のために戦っているのか?」と。ミチルという希望がなくなったムサシは、リョウに自分が納得できるような戦う理由を問いただすのだ(この一連の場面、実は俺はけっこう好きなのだ)。
しかし、その後、ミチルの悪魔の言葉がすべてのウヤムヤを消し去ってしまう。


ミチル 「ムサシ君、しっかりね!」(悪魔の笑顔)

たったこの一言で、あっという間にミチルに転んでしまうムサシ。見ていて愛らしすぎる場面である。しかし、「ムサシがゲッターで戦う理由が、地球のためか、ミチルのためか」は、最終回のうやむや同様に、もうちょっとはっきりさせてもよかったんじゃないのかなぁと思う(ムサシの意外な一面が見れる話が作れそうなんですけどね・・・)。


パイロットとしての資質

ムサシのパイロットとしての資質を考察してみたいと思う。
ムサシは、第1話から早々にゲッターチームのトラブルメーカーとなる。ムサシは自転車にも乗れないメカオンチ(実際、メカと自転車はあんまり関係ないと思うんですけどね・・・)。マシンの操縦に迷いっぱなしである。でも、これ普通に考えたらそうなると思う。だっていきなり「あなた、ゲッターロボに搭乗して恐竜と戦いなさい」といって、やれるかね?

それに対して、リョウ、ハヤトは事前に訓練を受けたこともないのに、いきなりマシンを操れた(←こいつらがおかしい気もする。ハヤトは人間じゃないから百歩譲るとしても)。

ムサシは自転車には乗れなかったが、運動神経が決して悪いわけではない。柔道の大会では優勝できるほどの実力者である。柔道って見た目以上にハードで全身の感覚が研ぎ澄まされるスポーツだと思うんですけどねぇ・・。だから、ムサシ=運動神経がにぶい=資質がないというのはありえない。
だったらどうしてムサシがトラブルメーカーになっていたのか。ムサシの弱点だったのは、運動神経ではなく、単にメカのことや、面倒な操作がわからなかったというだけだと思う(悪い言い方をすると、頭がよくなかったのだ)。これだけのことで、リョウやハヤトと並ぶと、かなり運動神経がにぶく、鈍足に見えてしまうのは、3枚目ゆえのご都合主義というところだろうか(その分、愛らしさを感じますけどね・・)。

他にもパイロットの適正という意味で不適合な面がある。まず、爬虫類恐怖症である。ハヤトの強引な矯正によって克服はしたが、第2話でゲッターの足だけ逃げ出すヘタレっぷりは強烈だった。そもそも、大雪山にこもって特訓をしたぐらいだから、野性味のある男だと思うのだが、カエルぐらいでそんなに怖がらなくてもねぇ・・笑(私もゴキブリがでると逃げまくるので人のことは言えないのですが・・)

また、パイロットとしての意識の低さも見受けられた。単にミチルを助けるため、ミチルに近づきたいため、ムサシはゲッターのパイロットになった。だから、ミチル絡みのことになると、ムサシはすぐに頭に血が昇り、見境のつかない行動に走ってしまう。中盤以降はゲッターのパイロットとしての自覚も出始めていたが(柔道の大会よりもゲッターを選んでいたし・・)、やはりミチル中心なのは否めない(これはこれで結果オーライだったのかもしれませんけどね・・)。
ゲッターの操縦は、中盤以降は無難にこなすようになっていたが、最後まであまり上手にはならなかった。持ち前のガッツとパワーでなんとか恐竜帝国に奮戦していたムサシも、最後は自分の操縦技術の甘さによって、命を落とす結果になった。



しかし、このようにムサシのパイロットとしての適正のなさを書くのは簡単だが、俺はムサシには、ムサシにしかできないことがたくさんあったと思う。大雪山おろしという特殊技、そして、技術をカバーするために必死に努力する姿、そしてガッツとパワー、すぐに涙する人間味溢れる心、そしてなによりも明るいムードメーカー的な性格は、それらの適正のなさを引いてなお、有り余るものだったのだ。それがあったからこそ、ゲッターチームはケンカしながらも、お互いに成長し、そしてうまくまとまっていた。ゲッターチームにムサシがいなかったら、さぞ、お葬式のような暗いチームだったに違いない。


ムサシの両親

ムサシの両親に関しては資料をみたことがないのだが、どうも母子家庭のように思える。父はムサシが小さいときに他界。母親1人に育てられたと思われる。ムサシはなにかつけて「おかぁちゃ〜ん」と叫んでいるので、ある意味マザコンっぽいし(笑)、実際にムサシの母親も登場しているし・・。実際のところどうなんだろうか? それにしても、あんなに人情味溢れる熱血漢に育て上げた母親は実に立派である。


ムサシの死(最終回)

まずはっきり言おう。アニメ版のムサシの死、これは正直いって漫画と比べると本当に情けない死に方だ。しかし、涙がでてくるのもまた然りだ

俺が納得できないのは、ムサシが死ぬことではなく、そこに至る過程と表現方法である。勘違いして欲しくないのは、死ぬのが構わないと言っているのではない。人間の死は、他の何よりも圧倒的であり、残される側(この場合、視聴者を指す)に多大なショックを与えるが、見せ方によっては一生忘れなれない感動を与えることもできる。

スタッフの死に対する考え方が、ムサシに関してはあまりに安直に思えるのだ。ムサシの死はわずかラストの5分程度にあっという間に起きる。伏線ともいえるものがほとんどみあたらない。視聴者はまるでひき逃げ事故にでも遭ったかのように、ムサシの死を目の当たりにする。考える暇など与えてくれない(トイレに行っていたら、すでに死んでいたという人もいるのではないだろうか・・)。

もちろん、ムサシの死をあまりに感動的にしてしまうと、主人公のリョウの立場はなくなってしまうかもしれない。しかし、1年以上続いたアニメやそのキャラクターは、毎日の生活習慣に溶け込んでいる。その愛すべきキャラクターが死ぬというのはタダごとではないのだ。もう少し肉付けができたはずだ。

果たして、ムサシはなにか我々にメッセージを残して死んだだろうか?我々に生きる力を与えてくる、希望を与えてくれる死に方をしたのだろうか? 
俺にとって、こんなに無残で悲しい死に方をしたキャラクターは他にはいない。ムサシは、あまりに強大になった恐竜帝国を滅ぼすためだけに都合よく死んだ。スタッフは、恐竜帝国の滅亡をムサシというたった1人のキャラクターに押し付けてしまった。ムサシの気持ち、思い、将来、なにもかもが無視されたのだ。もうあの映像は見たくない。


ムサシの死に関しては、文句はいくらでも出るのだが、今度はムサシの死ぬ場面を少し掘り下げてみたい。 実は、非常に理解しにくい部分がある。それはムサシが初めから特攻をしようとしていたかである。これから書くことは賛否両論あるだろうが・・。
まず、特攻のシーンの前。ムサシのミスからゲッターロボを失ってしまい、ムサシは号泣してしまう。リョウとハヤトにもケガを負わせてしまい、自責の念が積もっていく。責任感の強いムサシは、自分のミスを挽回することによって、世界が壊滅してしまうという危機的状況を、打破したいと考えていただろう。それが自らの破滅をもってしても。
そして、ムサシに「名誉挽回してください」と言わんばかりに、お膳立てされた場面がやってくる。ミチルがコマンドマシンに乗り込む場面だ(しかし、コマンドマシンで爆弾が詰めるのならば、ゲッターでわざわざ合体などせずに、最初から操縦のうまいハヤトにやらせればいいと思うんですけどね・・)。
ムサシは、コマンドマシンで発進しようとするミチルを一発(?)で眠らせ、そこに愛用のマントをかける。そして、次の行動。ムサシはミチルに向かって涙を流す

ムサシ 「ごめんよ、ミチルさん。おいら、ミチルさんが大好きです」

そして、ムサシはいままで着ていた愛着のある戦闘服をまるで自分が死んだあとの形見のようにすべて投げ捨てて置いていく。

ムサシ 「こんなの荷物になるだけだ!!」

本当に単に邪魔なだけだったのかもしれないが、ミチルにもう会えないかもしれないという気持ちから出た涙とその行動。ムサシはこのときに死を覚悟していたと取れる。
そして、その後の強烈なセリフ。

ムサシ 「だってオイラ、まだやらなきゃならないことがいっぱいありますからね・・。」
ムサシ 「・・・・そうだ、まずミチルさんに謝らないと・・ごめんよ」

コマンドマシンの中で、ムサシは死を覚悟していたと思う。しかし、ムサシにとっても死は圧倒的な恐怖だったはずだ。その恐怖を振り払うようなこの悲しいセリフ。もしかしたら死なないかもしれない・・。そのわずかな望みを垣間見れるセリフだ。

そして、その後ムサシは、エンジントラブルになって制御できなくなったコマンドマシンの中で、覚悟を決める。初めから覚悟していた特攻の決意だ。しかし、この場面の描写はあまりに貧弱だ。視聴者にとって、なにがなんだかわからずに死んでいくムサシ。

ムサシ 「あ、エンジントラブルだ!!」
ムサシ 「ミサイルが発射しない!!」
ムサシ 「コンチキショー!!」

このヤケクソ気味なセリフはなんだろうか?(怒)

ムサシのことを愛するならば、この場面はもっと別の表現方法がいくらでもあったはずである。それをこのような形で終結させてしまったことは、正直シナリオライターの力不足か、本当にムサシというキャラクターを軽視していたとしか考えられない。
もしこれに対し、「死というのはあれくらいあっけないものなんですよ」という回答をするならば、俺はそのスタッフを殴りたいと思う。


最後に
ゲッターロボは、ムサシのためだけでも十分に魅力のあるアニメである。いや、むしろ主人公のリョウよりもムサシはある意味、目立っていたし、リョウとは正反対の性格をもつこの熱血漢は、影の主人公的な存在だ。もしまだみていない人がいたら、是非見て欲しいと思う。(あまりにその毛のない人に、ムサシ、ムサシと愛情を表現し、変な目で見られ、友達を失うことになっても責任は負えませんが・・)


使用している画像、台詞等は「ゲッターロボ DVD Vol1,2,4 東映ビデオ」より引用させていただきました。著作権は株式会社 東映に帰属します。

戻る