3月のライオン(第1巻〜第2巻) (2009/03/03)


ヤングアニマルで連載中の「3月のライオン」より、二海堂晴信のレビューです。

←久しぶりに現れた存在感抜群のキャラ、二海堂。


私たちの知らない世界

このレビューを読まれている方の中で、"プロ棋士"の世界を詳しく知っている人ってどれくらいいるのでしょうか? 思うに将棋を知っているとしても、棋士の世界まで詳しく知っている人は100人に1人いるかいないか程度なんじゃないでしょうか。かくいう私も「3月のライオン」に出会うまでは、将棋は指したことがある程度で棋士界のことなど興味もなく、このマンガを読まなければ一生知らない世界だったでしょう(『月下の棋士』など将棋を題材としたマンガはけっこうありますけど・・ま、いいか)。

プロ棋士の世界は、弱肉強食で厳しい世界(A級棋士はたったの10名)。華やかというよりは閉鎖的であり、我々日常とは少しかけ離れた独特の世界観に溢れているわけです。そんな不思議な世界に、1人の憎めないナイスなデブキャラが登場しました。それが今回紹介する「二海堂晴信」です!

作者は、『ハチミツとクローバー』の羽海野チカさん。「3月のライオン」は羽海野チカさん独特の人間模様が中心であり、決して将棋や棋士の世界を赤裸々に描こうとはしていません。まぁ、言ってみれば「ヒカルの碁」が囲碁を知らなくても楽しめたように、「3月のライオン」も将棋を知らなくてもそれ自体が人間ドラマであり、十分に楽しめるように作ってあるわけです(まだ2巻しかでていませんが・・。実は3巻目以降から本格的な将棋のウンチクが始まったらどうしよう・・)。しかし、デブの二海堂が登場している時点で、内容はどうあれデブショタ専には、かなりオススメのマンガです!(なんだかんだ言っても、所詮はキャラ萌えです←ォィ)


キャラ紹介

とりあえず主要キャラ紹介。


桐山 零(きりやま れい)

本作の主人公で17歳。中学生でプロ棋士になった天才で現在五段(C1)で二海堂よりもクラスが1つ上。幼い頃に両親を交通事故で亡くし、父親の友人(幸田家)に内弟子として引き取られたという経緯がある。プロ将棋を志す幸田家の父親が零に愛情を注いだ結果、家庭はバラバラとなる。そのため零は幸田家の娘・香子には憎まれている。小さい頃からのトラウマが多すぎて、零の表情はいつも沈んでいるために、本編は進行は基本的にすこぶる暗い。



二海堂 晴信(にかいどう はるのぶ)

零の「親友」かつ「終生のライバル」(自称)で現在四段(C2)。大金持ちの子息で、花岡という執事がいる。性格は零とは正反対にとても明るいのだが・・。幼く見えるがれっきとしたプロ棋士。



川本 あかり(かわもと あかり)

零と同じ町に住む3姉妹の長女で、零を気にかけている。母を亡くし、妹たちの面倒を見ながら働いている。ガリガリな(痩せている)ものを放っておけない性質で、拾ってきてはフクフクにする(太らせる)。よって二海堂の体型が彼女のストライクゾーンだったりするのが面白い



川本 モモ(かわもと もも)

あかりの妹で無邪気、少々わがまま。大好きなアニメのキャラクター・ボドロ(モデルは「となりのトトロ」のトトロ)に似ている二海堂を「ボドロ」と呼び、かなり懐いている。


ボンボンで破天荒、でも努力家?

筆者が「3月のライオン」を読んだ第一印象は、「なんて主人公が暗いんだ!」(笑)。なんというか、主人公から負のオーラみたいなものが滲みでているわけです。それというのも、主人公の桐山零は、家族を幼少の頃に交通事故で失っています。さらに内弟子として迎えられた幸田家でも、零が原因で家族が分裂状態。いくらマンガだからって、ちょっとやりすぎだろと思うほど、零は17歳では考えられないような重い十字架を背負って生きているのです。だから零が呟くたびに場面は暗くなり、過去を思い出すたびに読者の心が締め付けられる、そんな「やりすぎ」た人間関係が「3月のライオン」の主軸となります。

そんな暗〜いストーリーを明るく照らすのが、零の"自称"ライバルである、我らが二海堂晴信です。正直、二海堂がいなかったらこのマンガはどうしようもないほど暗くなっていたのは間違いありません(断言しましょう)。
"自称"と書いたのは、主人公の零が二海堂のことを"ライバル"とも"親友"とも思っていないから(意外とひどい主人公なのだ)。二海堂が一方的に話を進める押しかけライバル的なところは否めないのだが、2人は子供の頃から対局を重ねており、お互いを知る存在ではあるのです。


二海堂は子供のときからずっと零に負けっぱなしで(明確には描かれていないがまず間違いない)、そのときから零を超えなければならないライバルであり無二の親友として認めているのです(しかし、勝者は敗者のことなど考えない悲しい現実(笑))。

ちなみに、二海堂が初めて登場した時の会話内容↓

二海堂 「ついに公の場で対局をする日が来たな・・・」
二海堂 「オレは貴様を終生のライバルと決め、今日まで日進月歩で努力を重ねてきた・・」
二海堂 「月の灯かりで研究をし、蛍の光で本を読み、自分を大器晩成型の人間であると励まながらだ」
二海堂 「だがしかし、やはりオレも天才であり・・」
零 「じゃ、お休みなさーい」(エレベーターを閉めようとする)
二海堂 「って、オイ貴様、ヒトの話を聞けええ!!!」
零 「それはこっちのセリフだっつーの!」
二海堂 「水くさいぞ桐山ァァ、親友だろ!」
零 「親友!? 聞いたコトないよそんな話。どっから出たんですか!?」
二海堂 「普通そういうモンだろ!? ライバルとか努力とかそーいう色んなアレ・・を乗り越えて」
二海堂 「最後にはお互いバチーンとハイタッチで『親友誕生☆』みたいな」
二海堂 「読めよ!! 流れを!!」(←必死な二海堂に筆者爆笑)



初登場でいきなり二海堂のテンションは最高潮。主人公の暗い展開から一転して、「あれ? 3月のライオンってこんなんだったの!?」と読者に思わせる"良シーン"なのです(ちなみに、このシーンにたどり着くまで、零が感情的になるところは皆無です)。二海堂に釣られて、零のテンションが随分と高くなっているのもおもしろいのです(単に二海堂が超マイペース(しかも自己陶酔型)なだけなんですけどね・・)。

二海堂は大金持ちの1人息子(たぶん)で、後述するがかなり病弱な体。それが原因で他人と同じように活発な運動ができない。そのために学校も休みがちで、友達ができなかったのでしょう(そう考えると、意外と寂しいぞ)。そのためか『親友』とか『ライバル』とかそういう言葉に憧れている節があり、零にそれを強引に押し付けていくのです(零は大迷惑?)。さらに、二海堂はボンボンで自己陶酔型な人間なので、普通に考えるとかなり嫌なやつっぽいのだが、このマンガでは不思議と彼はめちゃくちゃに輝いているのです。人の迷惑顧みず、全然空気を読めないキャラクターであるが、二海堂は零を親友と信じ、常にポジティブで必死だから微笑ましいのです。それゆえに、暗い主人公の零のペースを狂わせてしまい、普段見せない零の表情を引き出す。それが二海堂に与えられた彼にしかできない役割だと思います(書いている俺も、二海堂並みのポジティブシンキングに思えてきました)。

二海堂はある意味、滑稽なキャラクターであるので、登場するだけで場面は一気にギャグムードになり、「3月のライオン」はその回だけ少し違ったマンガになる。それだけのパワーと底知れぬ魅力に溢れたキャラクターです! しかし、零はいまだに二海堂を『親友』と認めずに、逆に『親友』と言われると腹が立つ様子。なんとなくだが、零は友達だとか、愛情だとか、そういうものに"照れ"があって認めたくない様子も伺えるのだが・・。


ボドロ☆

二海堂とつながりがあるのは、主人公の零だけではありません。零を家族のように暖かく包む「川本姉妹」とも偶然につながりを持ってしまうのです。姉妹との出会い方も、思わずニヤッとしてしまうほどよく出来ています。

二海堂は対局がない日に「特効薬の開発だ(要するに「自分の苦手戦法を研究する」という意味)」といって、アポなしで強引に零に家に上がりこんでしまう。零は嫌々ながら二海堂に付き合い、晩飯を食べるために外出をする。そこに現れたのは道に迷った三女のモモ。モモは泣きながら、二海堂の姿を見て「ボドローッッ!!」と叫んで豊満なお腹に抱くつくのです(俗にいう、駅弁抱っこってヤツですか)。

ボドロというのは「となりのトトロ」のトトロのことで、「3月のライオン」の世界ではこう呼ばれているらしい。二海堂のムッチリとした姿が、モモにはボドロを連想させたらしく、その後も二海堂のことを「ボドロ」と呼んで親しくなります。


モモ 「ボドローッ!」
二海堂 「ボドロってあれであろう?」
二海堂 「子供から大人まで大人気のアニメ映画に出た」
二海堂 「森に住む"知的生命体"の事であろう」
二海堂 「まぁ『知的』という部分では浅からぬつながりを感じるな」
二海堂 「よし、小さき者よ。名をきこう・・名を何という?」(←子供には紳士)
零 (ポカーン)

豊満な容姿から、モモに「ボドロ」と呼ばれているのに、そこを強引に前向きな解釈をする二海堂が大好きです。


さらに「3月のライオン」のヒロイン、あかりさんは大の「フクフク好き」(なんとデブ専です!)。普通、こういうマンガのヒロインというのはナヨっとした主人公が好きだったりするのだが(もちろん零のことは気にかけているが)、あかりさんはデブ大好き。猫・鳥・人間を問わずガリガリな(痩せている)ものを放っておけず、拾ってきてはフクフクにしてしまうのです(あかりさんはデブ専50段はありますね・・もっとも50段でも何の自慢にもなりませんが)。

迷子になったモモを追って、二海堂とバッタリと出会うあかりさん。その場で真っ赤になって二海堂を見つめるのです。

あかり 「あああ・・桐山君・・ホントに何ていうか・・」
あかり 「玉のようにつややかな・・・・・・・・・・素晴らしいおともだちね・・」

零 (た、玉のような・・!?)
零 (友達の形容詞でそんなセリフ聞いたことね〜!)


まさか物語のヒロインからも好意を持たれてしまうとは・・。デブ専には予想もしない展開ですね、これ(笑)。

さらに二海堂のMHK(NHKのこと)での熱のこもった将棋解説(将棋の解説というより、零に対する友情解説)は、棋士たちの間でも話題となる。「お前いい友達もってるじゃねーか」、「友情って素晴らしいよな」と他の棋士からはうらやましがられるのだが、これも零にとっては甚だ迷惑な話のようだ。

「3月のライオン」の登場人物は、主人公の零を除いて「みんな二海堂のことが大好き」なのです。とても不思議な人間模様なのですが、とにかく二海堂はいつも一生懸命で無駄にアツイ奴だけど、なにか情熱というか想いが伝わるのです。早く零にも伝わって欲しいけど、なんとなくこのままの関係が長く続きそうな感じですね・・(もちろん、俺も二海堂が大好きです!)。


モデル:村山聖

「3月のライオン」の登場キャラクターはほとんどが架空の人物だが、二海堂だけは実在するモデルが存在しています。29歳の若さで逝去された村山聖むらやまさとしという棋士がその人です(先崎学のコラムでは「似ている棋士がいる」とあるが、「似てる」んじゃなくて、「ほぼそのまんまの設定」なんじゃないかと思いますが・・)。

村山聖に関してはインターネット、wiki等で調べればすぐに分かるのですが、子供のころにネフローゼという腎臓の難病にかかり、死ぬまで病と闘いながら名人を目指しました。口癖は「早く名人になって将棋をやめたい」。彼の生き様は凄まじいものがあり、「聖〜天才・羽生が恐れた男」というマンガや、「聖の青春」という小説を読めば、彼の人生に圧倒されること間違いなしです。興味がある人は「3月のライオン」とセットで是非読んで欲しいです(ただし、あまりに壮絶な内容ですので、夜な夜な読んで涙が止まらなくなっても、筆者は責任を持てませんが←ォィ)。

村山聖の見た目はぽっちゃりと太っており、可愛い(性格もお茶目な人だったらしい)のですが、よくよく考えるとこれは「太っている」のではなく「薬の副作用によるむくみ(ムーンフェイス)」なのだから、萌えにつなげるととても不謹慎な感じがします(それでもリアルタイムで生前の彼の姿を見てみたかったですね。将棋に全く興味がなかったから、仕方ないといえば仕方ないのですが・・・。当時のNHK杯をリアルタイムで見ていた人がうらやましいぞ)。


村山聖が二海堂のモデルということは・・・そうです、二海堂も腎臓を患っているのです!(不治の病を持つデブキャラは初めてかも・・。病気持ち、自分的には不謹慎ながらとても萌えます)。


本編では、二海堂の体の弱さが随所に見られます。例えば子供の頃に炎天下の中で零と対局し、二海堂がフラフラになりがらも将棋を指し続ける場面(幼少の頃の二海堂がマジに可愛くて、ツボ直撃なんですけどね・・)、解説のあとに伏してしまう場面、ギガメック(マクドナルド)を食べずにヘルシーな食事しか取らない場面などなど(ただ、第2話で思いっきりピザとコーラを飲んでいる場面があるんですが・・・もしかしたら最初はただ太っているだけの設定を、急遽病気持ちの設定に変えたのか!? だったら何の伏線なんだろうか?)。

そもそも、二海堂はお金持ちのボンボンで、普通ならば生活に何も不自由はしないはずです。それでも二海堂は「プロ棋士」というとても狭くて厳しい門を叩いています。腎臓の病気により、友達と遊ぶことも走ることも出来ない二海堂が、唯一見つけた自分の居場所が将棋だったということか・・。自分が死ぬ前になにかを残したいと考えている結果とも推測されます。

勘ぐりすぎかもしれませんが、その証拠に二海堂のセリフに気になるものがいくつかあります。

二海堂 「互いに高め合う貴重なライバルを失う事は、多大な損失なんだ」
二海堂 「憧れなんだよ。自分の名前の入った技を後世に残すのが!
二海堂 「小さな一歩を積み重ねた上に未来というものがあるのだから
二海堂 「もっと自分の将棋を──自分を大切にしてくれっっ

え、やっぱり勘ぐりすぎですか・・?(笑)


もし、二海堂が村山聖と同じ運命を辿るのであれば、彼の余命は残り少ないことなります。某巨大ちゃんねるなどでも、「二海堂が死ぬのは避けられない」とか「対局中に盤にうつ伏して死ぬ(←筆者苦笑)」とか、いろいろな意見があるようで、全く持って目を離せないキャラクターになりそうです。

しかし、筆者が村山聖のマンガを読んだあと感じたのは、二海堂は村山聖とは別の人生を歩むのではないかということです。なぜなら、村山聖の物語はすでに存在しているのだから。二海堂は村山聖が再び生を受けて蘇り(多少乱暴な性格ではあるが)、我々の前に戻ってきたキャラクターなのだと思いたいです。だから、もし村山聖が病気と闘いながらも生きていたら・・という物語を是非描いて欲しいと願います(といいつつも、二海堂を邪険に扱う主人公が少しムカツくので、二海堂には悪いけど死んでもらって←ォィ、その後に両膝を落として愕然とする主人公の姿も見てみたいと心に思っている、少し意地の悪い自分がいるのも確かです・・(まぁ、そのときは俺も両膝を落として愕然としていると思いますが・・))。

※村山聖は「怪童丸」というニックネームで呼ばれており、二海堂は「怪童丸2世」→「怪童2」→「2怪童」→「2海堂」→「二海堂」になったと大胆推測します!(たぶん、金持ちというだけで「・・堂」とか「・・寺」とかいう苗字がついたパターンだと思いますがね・・)


そんなこんなで二海堂晴信のレビューはいかがでしたでしょうか? かなりマイナーな成人漫画誌に連載されていますが、単行本が非常にゆっくりとしたペースで発売されるので、気長に購入して読んで欲しいです。果たして、二海堂の幸せはどこにあるのか、零との関係はどうなるのか、そして二海堂の生死は? 二海堂が存在する限り、最後まで見守りたいマンガです。


第3巻(2009/09/16追記)

第3巻でいきなり二海堂がショタ化しますた!(はじめは二海堂か分からなかったくらい)

さて、本巻では二海堂に兄弟子がいることが判明。島田八段という人で、二海堂は「兄者」と慕っている様子。将棋界では原則として必ず1人の師匠の元に入門しなくてはならないのですが、先に入門した方を兄弟子、後から入門した方を弟弟子というそうです。つまり島田が兄弟子、二海堂が弟弟子。二海堂の病気のことを知っているのは、兄弟子の島田と師匠の2人だけのようです。

しかし、この2人は「兄者!」と言えば「坊っ」と返す仲むずまじい間柄のようです(もっとも、こんなカワイイ弟弟子だったら「坊」と呼びたくなるのも分からなくはないですが、あざといです!)。島田が二海堂のおでこに手を当てて熱を計るシーンがあるのですが、これは村山聖の話とオーバーラップさせている感じもあります。


第3巻で二海堂は「桐島のアタマをかち割って欲しい」と言います。桐島が後藤というプロ棋士(義姉をたぶらかすヤクザみたいなの)との戦いで己を見失ったとき、二海堂は兄弟子に桐島の立ち直せるよう仕向けるのでした(さすがは「自称・終生のライバル」ですね・・(笑))。

この巻でようやく二海堂の過去は判明。二海堂はやはり少年時代の大半を病院で過ごしており、横目で同年代の子が外を走り回っているのを見て自分だけは盤面に没頭を続けたらしいです。将棋に集中した二海堂は強くなりましたが、勝ち続けることで逆に相手が努力をしない卑怯者に思えて、自我のカタマリに成り果てたというのです。そこに現れたのが桐島だったというわけです。桐島は圧倒的な強さで二海堂の自我をかち割り、二海堂は「自分よりも強いヤツ、自分よりも努力したヤツがいる」と認識し、「自分は独りぼっちじゃない」と悟るのでした。もっとも桐島はもう忘れていることだと思いますけどね(笑)


小さいころから桐島を追い続けた二海堂。お互いに持ちつ持たれつな関係なのかなと思います。



第5巻(2011/01/12追記)

第4巻で零は二海堂の兄弟子である島田の研究会に所属することになりました。島田は零に何かを感じたのか、零をそばに置いて可愛がられます(もちろん、我らが二海堂のほうがさらに可愛がられているのは間違いありません)。

島田と宗谷名人(最終的に零の最強の敵になると思われる人物)が獅子王戦で対局したときも、島田は二海堂よりも零をそばに置いていましたし、これから島田、二海堂、零は研究会仲間の枠を超えて、徐々に距離を縮めるのではないかと思われます(相変わらず零は二海堂のことをあまり眼中には置いていないようですが・・)。

第5巻では二海堂のコスプレ姿がお披露目。これがカワイイのなんのって。島田の地元・天童で行われた人間将棋の一コマです。

二海堂はようやく零と同じC1に昇級しましたが、零との対戦はなし。新人戦の決勝しか対戦できないため、零に決勝まで勝ち残れとハッパをかける二海堂ですが、二海堂が決勝まで残れるのかが疑問です(笑)


何はともあれ、研究会を通して二海堂と零は少しずつ距離を縮めている模様。そのうち、零が友達(ライバル)とし二海堂を認識する日が来るかも・・(やはり来ないように思えてきました)。


第6巻(2011/07/24追記)

ついに二海堂が表紙になりますた! 抜群のニヤ顔、元気一杯でかわいい!! 筆者の日記で「二海堂を表紙にしろ、最重要キャラだろ」と書いたのが羽海野先生に届いたに違いない(←ォィ)。
第2巻の特別付録表紙(ベルセルクの三浦健太郎先生が描かれた二海堂のもの)と合わせて、筆者は頬が緩みっぱなしです(二海堂は大人気キャラなんだから単独表紙が遅すぎるくらい)。デブショタ専大勝利です!


二海堂は、前巻から新人戦の決勝を"伝説発生ポイント"と掲げており、零と対戦する気満々。一方の零は学校でいじめに遭うひなたを助けるため、勝って賞金をゲットしようと違う意味でやる気を出します。「ついに・・ついにやる気を出してくれたのか。ウェルカム心友ワールド」と目を輝かす二海堂でしたが、頭の中の温度差は相変わらずでした(笑)。さすがは悪魔の主人公です。

←「金、金、金」の零。脳内が違いすぎる(笑)


そして2人とも準決勝まで到達、お互いあと一勝で伝説発生となるわけですが、ここで二海堂が敗北。零は「バカヤロウ・・・あんな事さんざん言ってたクセに・・」と珍しく二海堂のことを思い出します。零が二海堂のことを考えるなんて・・!と思いましたが、その後の展開に驚きました。

二海堂は準決勝で4年間も新人王に居座っている強敵、山崎順慶と対戦します。しかしこの山崎順慶、どうやら二海堂の持病のことを感づいたらしく、二海堂を持久戦に引きずり込みます。持ち時間をすべて使った1局目が千日手となり、最初から打ち直し。持ち時間がなくなった2局目は1分将棋による体力勝負。もはや肉体と精神の限界を超えた二海堂は、「魂を絞り出すような138手」の後に盤にうつ伏して死にました・・。すみません、死んではいませんがかなり衝撃的な展開です。


二海堂は随分と前から「新人戦の決勝で・・」と零に話をしていました。二海堂にとって零は小学生時代からのライバル(と勝手に思っているだけだが)であり、ライバルがいてこそ自分も成長できると考えていました。小学生時代、病床で友達もなく1人で将棋に向き合っていた二海堂には、例えそれが独りよがりの思い込みだと分かっていても、零が必要な存在であり、零と一緒に成長することを強く望んでいました。

二海堂 「桐山には病気のことを言わないでください」
二海堂 「あいつは自分じゃ気づいていないけどやさしい人間です、そして不安定だ」
二海堂 「知ったらきっと手がにぶります。そしたら僕はもうこれ以上、強くなれない・・

二海堂は、零に自分のことを「病気持ちの弱者」と思われて手を抜かれたくなかったのでしょう。
一方の零も、薄々は二海堂の様子がおかしいことを気づいていました。

零 「いつもそばを離れない花岡さん」
零 「美しく彩られた色のうすい弁当」
零 「いつもバッグの中に見えていたたくさんの薬」
零 「ずっと訊けなかった」
零 「二海堂が訊かれるのを嫌がっていた事ぐらい子供の頃から分かっていた」

零は家族を幼少の頃に交通事故で失っています。さらに内弟子として迎えられた幸田家でも、零が原因で家族が分裂状態であり、二海堂と同じくらい苦しい過去を経験しています。零は零で自分のことで手一杯だったわけです。

島田から二海堂の壮絶な少年時代を訊いた零。小学4年生のときに内弟子として入門したきたこと(このシーンは可愛いので必見です)、二海堂の難病は一生付き合っていかなければならないものだということ、厳しい食事制限、悪化させぬようにひたすら息を殺すように過ごした日々・・。零は二海堂の将棋に命をかける心を初めて知りました。島田の「彼が唯一、ヒーローとなって暴れまわることができるのは、たった81マスの盤上のみなのだ」というセリフが印象に残ります。


零が(二海堂のために)棋譜に涙をこぼした。

零の決勝の相手は、二海堂をあざ笑うかのように葬った山崎順慶。零は対戦しながら疑問を持ちます。

零 「棋譜を見て感じた」
零 「あんた、十分指せたじゃないか。なぜ千日手に持ちこんだ?」
零 「自分の読みの弱さを克服せずに他人に背負わせることを『正しい』というのなら」
零 「僕の答えはただ1つ・・『ふざけるな』」
零 「・・見せてやるよ、俺がミスするかどうか」
零 「その泥ごと吹っ飛ばしてやる」
二海堂 「カッコつけんな桐山っっ!!!」


ガンダムのように零の脳内に入ってくる二海堂の声。お互いニュータイプに覚醒か!?(笑)
この部分だけピックアップすると、やりすぎな感じがしますが、流れ的には大変に泣ける場面で、零はいままで「二海堂が零のために」送り続けた言葉を思い出すのです。「本当に勝ちたいなら粘れっ」、「もっと自分の将棋を、自分を大切にしてくれっ」。

零 「自分以外の人の優しさとか、強さとか」
零 「全然・・いつも気付けなくて・・情けなくて・・」

最終回でもいいような熱い展開(笑)

「二海堂の病気のことを零が知るシーン」は、筆者の物語当初から最大の関心事でした。そして意外に早くその場面が訪れたことに少々驚きました。今回のシーンは良かったのですが、欲を言うともうちょっとページを割いて深く突っ込んでもよかったのでは?と思います。ひなたのいじめ問題も絡んでいるので、二海堂とひなたで欲張りすぎな感じがします。まぁ、その2つを同時に入れた羽海野さんのうまさは感嘆しますが・・。

次号から二海堂の扱いがどのようになるのか気になります。今巻で零は精神的にかなりの成長を見せました。零を成長させるための二海堂、二海堂を成長させるための零。この関係が微妙に狂い出してしまうのではないかと危惧します。また難病のことを知った零が二海堂にどう向き合うのかも気になりますね(あの零が涙しましたし)。このまま二海堂がフェードアウトしたら悲しいなぁ。筆者の予想に反して、さらなる良シーンが登場することを期待します。


使用している画像、台詞等は「3月のライオン」(ヤングアニマル)より引用しています。著作権は白泉社、羽海野チカに帰属します。

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