ボクの天城先輩(4)


手紙をくれた天城に対し、影山は・・?


登場人物

天城大地と影山輝。3年生と1年生の先輩後輩の関係。


次の試合の日。
朝からバスに揺られて、遠くの学校と練習試合を行った。
夕方まで立て続けに3試合。
みんなが「疲れた〜」と根を上げる。
ボクは試合にはほとんど出場しなかったから、あまり疲れはなかった。
それよりも、天城先輩の手紙のことが気になって仕方なかった。
試合が終わり、ボクはロッカールームで一足早く、ユニフォームからジャージに着替える。
特に誰とも話すことなく、出口にそそくさと急ぐ。
出口に向かう途中、大きな体がボクの視界を塞いだ。
天城先輩だった。



いつのまに、先輩はジャージに着替えたのだろうか?
しかもボクを待ち伏せするように、出口に先回りしているなんて・・。
「影山、一緒にバスに乗るド」
「あ、でも・・」
「いいから乗るんだド」
先輩は周りのことは何も気にせず、堂々とボクの肩を掴んだ。
相変わらず強引だ。
逞しい腕。
久しぶりの感覚だった。
そうか・・。
ボクは最初はこの強引さに振り回されていたが、いつの間にか楽しく感じるようになったんだっけ。
ちょっと自分勝手な先輩が、好きになって・・。
ボクの頬は自然と緩み、顔の緊張もなくなった。
先輩に誘導されるままにバスの一番後ろ、つまり先輩の特等席に向かった。


先輩はドシリと一番後ろの席の中央に座った。
ボクは先輩の隣に座ろうか、悩んで立ち尽くす。
すると先輩は、肩を組んで話しかけてきた。


「影山」
「はい」
「なにをしているんだド? 隣に座るんだド」
「は、はぁ・・」
いつもよりも少しスネたような声。
ボクは先輩の隣に、すまなそうにチョコンと座った。
「手紙は読んだんだド?」
「もちろんです・・でもどうして携帯メールじゃなくて手紙だったんですか?」
「・・・」
「いやその・・なんでもないです・・」
「・・・俺の気持ち、ちゃんと伝えたかったんだド」
先輩の気持ちって・・?
まさか先輩のボクのことを男として好きだ・・とか・・。
ボクは変なことを想像して、少し照れて頬をかいた。
「そんなことはいいド。それよりも、分かってるんだド?」
「え、なにが・・?」
「まさか手紙を見なかったんだド?」
「そんなことはないです・・・」


──なんか先輩、怒ってます・・?
いつもより気迫があるような・・・。
なんかやりづらい感じがするけど、大丈夫かなぁ・・。
ボクが周りの目を気にしていると、先輩はボクの気持ちを察してくれたらしい。
肩を組むのをやめて、腕をだらんと下におろした。
でもボクは自然に、いつもの行動をしていた。
そっと先輩の腕につかまっていた。
「影山・・恥ずかしくないんだド?」
「この格好が好きなんです・・」
「分かったド」
先輩の返事を聞いて、ボクはホッと息をついた。


バスはいつの間にか発進していた。
10分も経たないうちに、車内から「ぐぅ〜」とイビキのような声が聞こえる。
みんな疲れているのだ。
ボクは一番後ろの席で、天城先輩の腕を掴みながら、寝たフリをしていた。
ふと先輩を見上げる。
先輩はあのあと、一言も喋らなかった。
目を瞑ってウトウトとしているように見える。
先輩はボクと違って、ずっと試合に出ていたんだから、疲れているんだろう。
──「来週のバスで続きをするド」
手紙にはそう書いてあったが、さすがの先輩も眠さには勝てないみたいだ。
このまま何事もなく、終点につくのかもしれない。
それはそれでホッとするかも・・。
でも、せっかくだから久しぶりの先輩の腕の感触に甘えることにした。


先輩の二の腕。
ジャージの上からでも、丸太のような太さがうかがい知れる。
どうやったら、こんな逞しい腕になるんだろう。
(天城先輩、大好きです・・)
そんなことを考えていたら、ボクは思わずギュッと力を入れて握ってしまった。
(しまった・・!)
天城先輩を起こしてしまったかもしれない。
(ごめんなさい)
心で呟きながら、ボクはゆっくりと先輩の腕を放そうとした。
そのときだった。
天城先輩はボクの肩に腕を回してきた。
そのままボクの上半身を、まるごと太い胸板の中に包み込んだ。
まるでボクを胸の中で抱くように・・。
そうだ、あのときの体勢と同じだ。


先輩はボクを胸の中に抱いてくれた。
ボクを抱き枕のようにして・・。
ボクの顔は先輩のおっぱいに、ムリヤリに押し付けられる。
──相変わらず、なんて分厚い胸板・・!
先輩のおっぱいは、弾力があって柔らかくて・・この間よりもさらに大きくなったような感じがする。
忘れていた先輩のおっぱいの感触に、ボクの心臓の鼓動は高鳴った。
気持ちいい・・柔らかい・・・。
ドクンドクンという、先輩の心臓の音。
ゆっくりと鳴っている。
安心して、心が和らいだ。


ボクは天城先輩のジャージに顔を擦りつけながら、先輩の豊満なお腹に抱きついた。
すると先輩はボクの耳元で、体に似合わないナイショ話を始めた。
「影山・・」
「え・・?」
「最近、おまえらしくないど」
小さな声だったが、怒ったような感じの声だった。
ボクはなんて答えてよいのか迷ってしまった。
きっとボクが狩屋の件のあと、先輩を避けていたことが気に入らなかったんだろう。
でも、ボクはボクなりに考えての行動だった。
みんなの視線が気になったし・・先輩に迷惑をかけるのも嫌だったし・・勇気もなくて・・・。
だから、なんて答えて良いのか分からなかった。
「影山、他人の目なんか気にすることないド」
「・・・・」
「もし狩屋が変なことを言ってきたら、俺が殴って黙らせるド」
「そ、そんなムチャな・・」
「俺は影山と一緒にいたいんだド」
「せ、先輩・・」
── 一緒にいたいって・・
天城先輩の言葉の意味を、どう解釈したらよいのか。
サッカーの練習相手として一緒にいたいという意味なのか・・。
抱き合って一緒にいたいという意味なのか・・。
先輩は男同士の恋愛なんて興味がなさそうだから、やっぱり練習相手という意味かな・・?
色々考えたが、どう答えたらよいのか分からず、ボクはまた黙ってしまった。


「影山は・・俺のことをどう思っているんだド?」
(え〜、そんなストレートな・・!)
ボクは答えに悩んだ。
ボクは先輩を愛してます・・・なんて言えるわけがない。
うーん、でも考えてみたら、普通に「好きです」って答えればいいだけなのかも・・。
ボクが返事をしようとしたら、先輩が先に話しかけてきた。
「俺はお前のこと好きだド」
ええっ!?
いま、ボクのことを「好き」って・・!?
・・・・。
素直にうれしかった。
恋愛うんぬんは別として、先輩がボクのことを"好き"と言ってくれた。
心が自然に温まった。
──お前のこと好きだド。
頭の中に何度も響き渡る、先輩の言葉。
ボクの心臓の鼓動がドクンと速くなる。
──ボクも先輩のことが好きです・・・。
そう言おうと思ったけど、怖くて言うのをやめた。
ボクの「好き」の意味は、先輩とは全然違うんです・・。
だから簡単に答えられないんです・・。


ボクがしばらく先輩の胸の中で甘えていると、また話しかけられた。
「続きをするド」
──ドキッ・・。
来た。
本当に来た!
手紙の内容のことを思い出し、ボクは緊張して喉がからからになった。
そんなボクの不安も知らず、先輩はボクの右手を強引に掴み、それを移動させた。
ボクの心臓は、けたたましい音を立てる。
だって、これから起きることは・・ボクがずっと部屋で妄想していた先輩の・・アソコの・・。
それを触るってことで・・。
あれこれ考えているうちに、ボクの手を握った先輩の手は空中をさまよい、そしてある部分に運ばれる。
──グニュ。
ボクは自分の手が、先輩の太ももと太ももの間に押し付けられたことが分かった。
弾力のある感触・・・。
数週間前のバスの中の記憶がよみがえった。


ボクはドギトキする鼓動を感じながら、緊張で体を震わせた。
──ボクの手のひらの中に、先輩のアソコがある・・!
そう考えただけで、額に汗を滲ませつつも、ボクのアソコは自然と勃ちあがっていた。
先輩は握っていたボクの手を、そっと放した。
ボクに、「ココを触れ」ということなのだろうか。
──どうしよう・・。
手紙で「続きをする」とあったが、いざそうなってみると体が硬直してしまう。
ボクは自分の部屋で、先輩のアソコを触れることを、ずっと楽しみにしていたのに・・。
ボクはなんて弱くて、勇気がないんだろう。
しばらく手を動かさず、どうしようか迷った。
「影山・・恥ずかしいんだド・・?」
先輩が小声で尋ねてきた。
──そうです、ボクは恥ずかしいんです・・。
だからボクは、わざとゴクリと唾を飲み込んだ。
たぶん先輩にも聞こえるくらい大きな音だっただろう。


先輩はゆっくりと目を開いて、ボクの顔を見つめた。
ボクはポッと赤くなり、思わず視線をずらした。
「影山、本当は嫌なんだド・・?」
「そ、そんなことはないです」
「だったら続きをして欲しいんだド」
「先輩、本当にいいんですか・・?」
「当たり前だド。この間の続きなんだド」
「でも・・」
「今日はこの間みたいな声は、絶対に出さないから大丈夫だド」
一瞬何のことか分からなかったが、すぐに気が付いた。
そういえば、前回、先輩はほんのちょっと喘ぎ声を出したんだっけ・・。
それを聞いてボクはなんなとくうれしいような、微笑ましいような・・緊張が解けた感じがした。
優しい先輩の言葉に、ボクは勇気を振り絞ることにした。




次回、最終回です。

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