マスクマンのベンケイに萌えたのでプロレス小説を書いてみました。ものすごい暴力的なので、苦手な方は読まないでください。危険です。
話的にはアニメの70話の前、キョウヤがチームワイルドファングのメンバーになり、インドに到着したあたりを想定しています。
登場人物
ベンケイ。真っ直ぐな性格で怪力の持ち主。
盾神キョウヤ。デブ専でクールな面と喧嘩っ早い面を合わせ持つ。
右からダムレ、ナイル。チームワイルドファングのメンバー。
「キョウヤさ〜ん!」
ベンケイがキョウヤと再会したのは、
キョウヤがチームワイルドファングのリーダーとして、インドに到着したときだった。
──盾神キョウヤ。
ベンケイの憧れの人であり、彼が世界でもっとも敬愛し、慕っている人物だ。
誰にも従わず己の信念を通し、そしてベイブレードのテクニックは超一流。
世界大会では日本チームの代表を辞退して、
鋼銀河と戦うために、わざわざアフリカのサバーナ国にまで飛んで代表の椅子を勝ち取った。
狼のような野性と、飽くなき執念、熱い心とクールな性格の2面を持つ。
でも、ベンケイがもっとも惚れているのは、
いつも自分には優しくしてくれる、普段は絶対に見せないキョウヤの隠れた心だった。
ベンケイの夢はただ1つ。
キョウヤと共に歩み、キョウヤと同じチームで戦い、
キョウヤと共に世界一の舞台に立つこと、それが本望なのだ。
インドの街の一角で、再会したキョウヤとベンケイ。
「ベンケイ、よくここが分かったな」
「はい、キョウヤさんのためなら、たとえ地の果てまでも追って行きますじゃい!」
どうやってベンケイがキョウヤを探したのか?
実は、ベンケイは自身がもっとも苦手とするインターネットを駆使したのだ。
いや、実際には駆使したわけではない。
インターネットカフェで、店員を捕まえて操作を強要させ、チームワイルドファングを見つけ出した。
そのチームにキョウヤがいることを確認し、今日にもインドに来ることを知ったのだ。
かなり強引な方法だったが、キョウヤに会うためならばもはや手段は選んでいられない。
キョウヤはベンケイにチラッと目をやり、話しかける。
「それでベンケイ、何の用だ?」
「それでって・・。キョウヤさん、チームワイルドファングのリーダーになったんですね」
「ああ」
「おめでとうございます!」
「俺の応援にでも来たのか?」
その質問にベンケイは真面目な顔で返事をする。
「ワシもチームワイルドファングのメンバーに入れてください。
見たところ、そこのインディアンみたいなヤツと、パンチパーマの2人しか仲間がいないじゃないですか。
わしをどうか4人目のサブメンバーに入れてください!!」
「ほう、そうきたか」
実はベンケイは下調べをしていたのだ。
チームワイルドファングは、キョウヤ、ナイル、ダムレの3人しかいないことを。
つまり4人目の椅子はまだ空席。
ベンケイは、キョウヤがもしかすると自分のためにメンバーを空けているのではないかと期待していたのだ。
しかし、キョウヤからの返事は素っ気無いものだった。
「ダメだな」
「どうしてですか? ワシはそこのパンチパーマよりも強いです!
絶対にチームワイルドファングの役に立ちますじゃい!!」
「いまここで、ダムレと勝負をして4人目の座を勝ち取りたいって顔をしているな(しかもパンチパーマじゃねーよ)」
「そ、そういう意味じゃありません・・」
ベンケイは額に汗を浮かばせながら、恐る恐るキョウヤにたずねた。
「どうしてダメなんですか!?」
「お前はまだ本当の修羅場をくぐってねぇ」
「修羅場・・? わしだって、キョウヤさんについていくと決めた日から鍛錬しとります。
毎日、腕立て伏せ3000回、腹筋5000回、背筋2000回もやって・・・」
「うるせぇ!」
「ひぃ!」
雄弁に語るベンケイに対し、キョウヤの怒声が響き渡る。
キョウヤは冷ややかな目でベンケイを見つめ、そして語りだした。
「腕立て伏せ3000回だ? たしかにてめーの体は小学生とは思えないほど逞しい。
だがな、それは修羅場をくぐっているわけじゃねぇ。単なるトレーニングだ。自己満足なんだよ」
「自己満足じゃと・・?」
「そうだ。その鍛えた体を使ってお前は修羅場をくぐり抜けてきたのか?
俺がベイブレードで勝ち続ける理由は、修羅場をくぐってきたからなんだ。
俺は狼の谷で"死ぬか生きるか"の戦いをしてきた。そして死に直面するたびに俺は強くなった」
「・・・」
「チームワイルドファングには、筋トレマニアはいらねーんだよ!」
「うっ・・!」
ベンケイは、キョウヤの発言に対して言葉に詰まった。
なぜならキョウヤの言っていることは、すべて核心を突いたものだったからだ。
ベンケイは沈痛な面持ちで、キョウヤにたずねた。
「修羅場といっても、一体なにをどうすればいいんじゃい・・」
するとキョウヤは左右にキョロキョロと目をやり、あるひとつの方向を指差した。
「おいベンケイ、あれを見な」
「はぁ?」
キョウヤが指さした方角には、一軒の怪しい店。
荒れた街の中にひっそりとたたずんでいるが、所々がネオンで飾られた妙な店だ。
「あれはプロレスバーだ。
日本では非合法な店だが、インドではあーいうアンダーグラウンドの店もあるらしいな」
「アンダーグラウンド?」
「要するに賭けプロレスだ。
あの中では生きるか死ぬかのプロレス、いや戦いが毎日行われている。
そして、人間が苦しむ様子を見て狂乱する、ハイエナみたいな客の巣窟になっているのさ。
ベンケイ、お前に勇気があるなら、あの店に乱入して一旗あげてみせろ!
そして男になって帰ってきたら、ワイルドファングの4人目のメンバーにしてやってもいいぜ」
「本当ですか!? ぶるるるるっ、絶対に男になって帰ってきて見せます!」
そういうと、ベンケイは急いで店に向かおうとする。
「おい、ちょっと待て!」
走り出そうとしたベンケイは、キョウヤの声に呼び止められた。
「キョウヤさん、なんですか?」
「お前は小学生なんだ。普通に店に入れるわけねーだろ。
このマスクとシャツ、それからジーパンで変装してから行け!
お前の体格でマスクをしていれば、少なくとも小学生にはみられねーよ。たぶんな」
キョウヤは、カバンの中からゴソゴソとマスクとシャツを取り出して、無造作にポイっと渡す。
一体どうしてキョウヤがマスクを持っているのか、
突っ込みたくなったが、マスクの額の部分に猛牛の刺繍がされているのを見て、ベンケイは思わず大声をだした。
「キョウヤさん、まさかわしのために・・!」
「バーカ。たまたま空港の店に売っていたんだよ。お前にピッタリのブルマークのマスクがな」
「くうーっ、うれしいです!」
ベンケイは感極まって、その場で武者震いをしながらマスクをかぶる。
いつも着ているブルゾンを脱ぎ捨てて、黄色のラインが入ったシャツに袖を通した。
←それっぽい画像を入れてみました(以下略)。
小学生とは思えない、筋骨隆々としたベンケイの体。
キョウヤは思わず見入ってしまった。
(コイツ、めちゃめちゃいい体してやがるぜ・・!)
「キョウヤさん、では行ってきます! 必ず男になって帰ってきて見せます!」
キョウヤは満足そうにうなづくと、さらに注文をだした。
「ベンケイ、今からお前は"マスクドブル"と名乗れ!」
「マスクドブル? なんですか・・それ?」
「お前はダークブルの使い手、だからマスクドブルだ!」
「おおーっ、格好いい名前じゃい!」
「そして、リングにあがるときにマイクで客にアピールしろ!
賭けプロレスは、お前に賭けてくれる客がいなければ、勝負が成立しねぇ。
だからお前がいかに強いか、どんなすごいかを客にアピールするんだ。
それに、そうすることでお前は絶対に負けられなくなる。自分で自分を徹底的に追い詰めろ。
店に入ったときから、相手との勝負はすでに始まっているんだ。相手がいくら大きくても決して怖気ずくなよ」
「分かりました」
「よし、行け!」
「おう!」
ベンケイは「ぶるるるるっ」と掛け声をあげながら、プロレスバーに向かって走っていった。
そんな素直なベンケイを見て、キョウヤは思わず笑みがこぼれた。
(ベンケイ、お前はかわいすぎるぜ・・。しかしマスクがピッタリだったな。
俺が寝ないで一生懸命作ったマスクだ。大切にしろよ。がんばって作った甲斐があったな・・)
キョウヤの愛がこもったマスクをかぶり、ついにマスクドブルは発進したのだ。
次回予告
ベンケイ 「プロレスぐらい朝飯前じゃ! 絶対にキョウヤさんに認めてもらうわい!」