マスクドブル ベンケイプロレス伝説(3)


マッドVSブルの試合開始。果たして?


登場人物

ベンケイ。マスクドブルと名乗りプロレスに乱入。

マッド。賭けプロレスのチャンピオン。180cmを超える大男で体重150kg。


──カーン。
乾いた金属音が場内に響き渡る。
「いい試合しようぜ。謎のマスクマンさんよ」
「お、おう!」
巨体のマッドが、リングの中央で手を差し伸べる。
ベンケイもそれに応えるように、左手を差し出してその場で固く握手をした。
マッドはフェアプレイを心がけているようだ。
(顔に似合わず、意外と礼儀の正しいヤツじゃわい)
ベンケイが大きな対戦相手であるマッドを見上げると、優しそう顔をした彼の表情があった。
正直、賭けプロレスが初めてのベンケイは、かなり緊張していた。
ベンケイは、マッドの紳士的な態度に、内心ホッと気を緩めてしまった。


両者はリングの中央で握手をすると、後ろを向いて自陣のコーナーへ戻った。
(ワイルドファングの一員になるためにも、ここで男になっちゃるわい!
  キョウヤさん、男ベンケイの晴れ舞台を見届けてください!)
ベンケイは、背中を向けたまま、左右の手でコーナーのロープをつかみ、1回、2回と屈伸運動をする。
そして、心の中で「ぶるるる!」と気合を入れて、マッドのコーナーを振り向いたとき・・。
「なんじゃと!?」
ベンケイの視界を覆ったのは、宙を舞うマッドの巨体だった。
マッドはベンケイの背後から勢いよく空中で一回転をし、そのまま全体重をかけてかかと落としを仕掛けていた。
格闘技でいうところの、空中での胴回し回転蹴り。
卑怯千万、完全な奇襲攻撃だ。
「しまっ・・!」
ベンケイは瞬時に両腕をおでこの上に交差させて、ガードの体勢をとる。
しかし、体重が150kg以上はあるマッドのかかと落としは、ベンケイの両腕をあっさりとぶち抜ける。
──ガツンッ。
マッドのかかとが、ベンケイの額にある猛牛マークをまともに直撃したのだ。


「うげっ!」
脳天が砕けるんじゃないかというほどの衝撃に、ベンケイの体はゴムマリのように簡単に吹き飛ばされた。
コーナーポストに跳ね飛ばされて、背骨が折れるような勢いで激突した。
そのまま前のめりで四つんばいになり、リングに力なく倒れこむ。
「おいおい、始まったばかりだぞ。マスクドブルさんよ!」
「卑怯じゃ・・わい・・」
残忍な笑みを浮かべたマッドは、ベンケイの頭をマスクごと片手で鷲づかみにして、
  そのままズルズルとリングの中央を引きずり出した。
まるでイモムシがカマキリにでも捕獲されたかのように、ベンケイはケツを突き出した格好で晒される。
すでに屈辱的な体勢だ。
<ブザマな格好だぞ。なにしてんだ、マスクドブル!>
<そのままなぶっちまえ!>
観客も相当に興奮しているのか、狂ったような歓声をあげる。


「ヘヘッ、早く立て! 威勢だけはいいマスクドブルさんよ」
観客からの興奮が伝わったのか、マッドの鼻息も荒くなりはじめた。
穢れをしらない少年をいたぶる面白さ・・それをマッドは知っていた。
若すぎる肉体、それを破壊する快感。
マッドはベンケイの覆面を鷲づかみにして、そのまま強引にリングの中央に立たせる。
「てめーみたいなガキをいたぶるのを、ずっと楽しみにしてたんだよ!」
「ハァハァ・・なんじゃと・・ガキって・・」
マッドは薄気味悪い笑みを浮かべると、
  立っているのもやっとなベンケイの腹部へ、下から突き上げるようなパンチを喰らわした。
「おえっ・・あぐ・・!」
豊満な腹に食い込むようなパンチに、ベンケイの目は血走り、声にならないうめき声を出す。
マッドはためらいもなく、今度はベンケイのヘソの下の一番柔らかそうな腹の部分に、さらに膝蹴りを決める。
「ぐっ・・え・・がっ・・」
深々と腹に決まるマッドの膝。
マッドはベンケイの柔らかい筋肉の内側にある、内臓の感触を確かめながら、さらにもう一段膝を押し込める。
「内臓をえぐる音・・若い肉体、たまんねぇな!」
「ぐぅええ・・」
ベンケイはマスクの中で苦痛に顔をゆがめ、口から透明な液体を垂らした。


<これくらいで吐いてんじゃねぇぞ!>
<反撃しろ、マスクドブル! 賭けにならねーぞ!>
賭けプロレスの恐ろしさだろうか?
試合が始まれば、金を払った観客は普段では味わえない暴力行為に完全に酔いしれていた。
「どうした、500戦無敗のブルさんよ。
  そんなに内臓が痛いのか?  久しぶりに"ぶっ壊したく"なってきたぜ!」
マッドは狂気に満ちたような表情でベンケイを見下ろすと、
  今度は身を低くして中腰になり、頭をちょうどベンケイの腹の下、斜め45度に置く。
そのまま突進するように、頭突きでベンケイの膨らんだ腹を二度、三度と突き上げた。
「おええっ、うぶっ・・!」
マッドの頭がベンケイの腹にめり込み、ベンケイの巨体は何度も数センチ宙に浮いた。
必死に胃液が飛び出すのを耐えたベンケイだが、
  意識とは関係なく透明な液体がリングに吐き出され、もはやブルのマスクの下は屈辱の胃液でまみれていた。
腹筋連続3000回を誇るベンケイの強靭なボディをもってしても、マッドの猛攻を凌ぐことは不可能だったのだ。


「くたばってんじゃねーよ、このクソガキが!」
マッドは雄たけびをあげると、ベンケイの背後に回る。
両手をベンケイの背後から腰に回して、しっかりとホールドし、そのまま真後ろに向かって放り投げた。
軽々と放り投げられたベンケイの体は、綺麗な放物線を描いて自陣のコーナーポスト近くのリングに後頭部から落下。
狂気ともいえる投げっぱなしジャーマンが決まり、観客からはヒャーッという悲鳴、いや大歓声があがる。
「ひっ・・あっ・・」
ベンケイの体は、ジャーマンをホールドで決められたような体勢で、コの字型に折れ曲がっていた。
すでに意識がすっ飛んだのだろうか、ビクビクと体を震わせて、足は空中でV字開脚だ。
「ヘヘッ、しっかり受身取らねーと死ぬぜ。いや、もうぶっ壊れちまったか?」
マッドはベンケイにゆっくりと近づくと、開けっぴろげにされた股間に手を伸ばし、
  いやらしい手つきでベンケイのおちんちんと思われる部分を、ジーパンに上からギュッと握り締めた。


「う・・」
「ん? どこにあんだ?」
マッドはベンケイの股間の奥に手を突っ込んで、目当てのモノを探した。
──グリグリ。
しばらく股間をあさっていたマッドは、
  ようやく目当てのモノを発見したのか、その部分をじっくりと握ったり揉んだりして、形を確かめる。
「なるほどなるほど。コイツの正体がだいたい分かったぜ。
  しかし随分と小さいチンチンだな。毛生えてんのかぁ?」
ベンケイのイチモツの感触を堪能したマッドは、ベンケイの横腹を蹴り上げる。
ゴロンゴロンと横に数回転した後、仰向けで大の字に倒れたベンケイは、ハァハァと荒い呼吸を繰り返した。
意識が朦朧として、天井がドロドロになったような景色。
「ハァハァ、ごほっ、げはっ!」
ベンケイは思い出したように咳き込んで、痛めた内臓をかばうように体を丸めてうずくまった。
マッドはすでに敗色濃厚なベンケイを指差し、そして観客に向けて大声を張り上げた。
「おい客ども! よく聞け!
  マスクドブルの正体・・・それはまだションベン臭い小学生だ!
  その証拠にコイツのわき毛はツルンツルンだ。それにチンチンが異様に小さいからまだ精通すらしてねぇぜ!
  小学生の分際で、賭けプロレスに乱入するなど言語道断。罰としてキツーイおしおきをするぜ。
  コイツの粗チンを晒すか、失神させるか、ぶっ殺すか、どこまでがお客さんのご希望なんだい?」
マスクドブルが小学生であるという事実にザワザワと動揺した観客だが、すぐにそれは若い肉体への興味へと変わった。
<ぶっ殺せ!>
<晒せ、晒せ!>
「よしよし、ならばご希望に沿ってマッド流の処刑コースで決定だ!」
マッドは腕をボキボキと鳴らしながら、ベンケイを蔑むように見下ろした。
深刻なダメージを追ってしまったベンケイの運命は、もはや風前の灯に等しかった。


次回予告
ベンケイ 「こんな卑怯のヤツに、負けるわけにはいかん・・」

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