まだプロローグな感じですが・・・。
登場人物
秋道チョウジ。仲間想いでおっとりした性格。中忍合格を目指している。
奈良シカマル。IQ200の天才でチョウジとは昔から大の仲良し。
山中いの。アスマ班の紅一点。綱手からの任務に激怒するが・・?
綱手。木の葉の里の5代目火影。女性ながら超怪力の持ち主。
──火影の部屋。
木の葉の里の奥にある塔のような建物に、その部屋はある。
いまは綱手という怪力の女性が、5代目の火影に就任している。
チョウジといのは、火影の部屋にトントンとノックする。
『入れ!』という男勝りのぶっきらぼうな返事。
チョウジといのは、2人で火影の部屋にいそいそと入った。
周りを見渡すと、相変わらず書物が乱雑に積み上げられており、雑務に追われている様子が伺える。
いつになったら、この書物の大群は片付くのだろうか?
綱手は机の上に両腕をつき、ドシリと構えていた。
「よし、きたか」
綱手は威勢のいい声で、チョウジたちに向き直る。
さらに少し真面目くさった感じの声で話しを続けた。
「今日はお前たちに任務を与えようと思う」
突然の綱手の命令に、いのは思わず一歩前に踏み出した。
「任務ですか?」
「そうだ。タソガレ村に行ってほしい。ここから3日ほどの道のりだ」
「タソガレ村・・?」
「そこで、ある家の引越しを手伝って欲しい」
「はぁ?」
任務の内容を聞いて、チョウジといのは思わずズッコケて足を滑らせそうになった。
いのが憤然とした様子で切り返す。
「ちょっと火影様! どうして引越しの手伝いなんかしなくちゃいけないんですか!?」
「任務だからだ」
「私たちは忍なんですよ? 引越しなんか・・」
いのの様子に、綱手も頭を抱える。
そして、ドンドンと机を叩きながら返事をした。
「私だって、こんな任務を与えたくはなかったのだ。
しかし、依頼先がお金を振り込んでくるし、力持ちの少年を1人でいいから、派遣して欲しいというのだ」
「引越しなんて、引越し屋に頼めばいいじゃないですか!」
「こういう任務もある」
「力持ちだったら、チョウジだけ行けばいいでしょ! 私は関係ないですよね?」
「念のためにツーマンセルで行ってもらう」
綱手の言葉に、いのは膨れっ面をする。
「絶対に嫌です」
「黙れ! これはきちんとしたEランク任務なのだ。まさか従わないわけではあるまいな?」
「それは・・」
綱手が怒るととんでもなく凶暴になることは、いのもチョウジも分かっている。
これ以上、綱手には歯向かわないほうがいいようだ。
いのはプンプンと怒りをあらわにしていた。
チョウジは、声を荒げるいのをチラッと横目で見る。
フッと息をついて、チョウジはいのの袖をクイクイッと引っ張りながら、耳元で囁いた。
「僕たちは任務をこなさなくちゃいけないからね。いのも従うしかないよ」
「アンタ、なんで急に優等生になってるのよ!」
「だって、火影様を怒らせたら、タダじゃ済まないでしょ」
「うーん・・」
「さっき、火影様の命令には逆らえないって言ったのは、いのだよ?」
「それはそうだけど・・」
まだ納得がいかないのか、いのは顔を伏せたまま、しかめっ面をしている。
普段は、いのが冷静なまとめ役なのだが、今日はそういうわけにはいかないようだ。
チョウジはどうしていいのか分からず、胸にあるポテチを取り出そして食べようとしたが、それをしまった。
頭をかきながら、綱手に話しかけた。
「あのー、任務の内容を・・」
チョウジがボソッと呟いた瞬間、綱手は勢いよく返してきた。
「よし、秋道チョウジは素直だな。
では、この書面を持って、タソガレ村へ行け。現地につけばあとは案内してくれるそうだ」
「そ、それだけ?」
「それだけだ。なにか文句があるのか?」
「ありません・・・」
チョウジは書面を受け取り、それをゴソゴソと内側のポケットにしまう。
そして、いのと夕刻に木の葉の里を出発する約束をして、旅の準備のために家に戻った。
旅といっても、3日やそこらの短い行程だ。
どうせ、引越しの手伝いをすれば、すぐに木の葉の里に戻ってこられる。
Eランク任務は、所詮Eランク任務なのだ。
だから、親友のシカマルに挨拶に行く必要もないなと、チョウジは思った。
シカマルはシカマルで、中忍の仕事が忙しいのだから。
シカマルを邪魔するのは悪いと思ったから。
・・・。
夕刻になり、チョウジは木の葉の里の門へと足を運んだ。
チョウジの背中には、いつも通りに大きなリュックサック。
中には相当な量のポテチを詰め込んでいるためか、3日の旅のわりには装備が重々しい。
チョウジはゆっくりと門へと歩を進めていく。
木の葉の街は、夕刻なのになぜか人通りは少なく、特に知り合いとすれ違うこともなかった。
少し寂しい気持ちになったチョウジは、ふと途中で足が止まった。
いのとの約束までは、まだ時間がある。
そう思ったとき、自然と足がシカマルの家に向かっていた。
なぜかシカマルに会いたいと思った。
理由は分からないが、シカマルに会わなければならないと思った。
会ったところで、なにを話すわけでもない。
それに今回はEランク任務で、すぐに帰られる。
だから寂しいわけではない。
でも、なにかが心に引っ掛ったのだ。
チョウジはシカマルの家の前まで足を進めた。
シカマルの家は町の中心から外れたところにあり、木の葉の門からは比較的近い。
チョウジはシカマルの家に着くと、その見慣れた風景を、ボケッと見上げた。
シカマルの家は、チョウジの家よりは近代的な造りで、円筒形のような細長い形で2階建てになっている。
2階がシカマルの部屋だが、電気はついていないようだ。
玄関をドンドンと叩いてみる。
「ねー、シカマル〜。いないの?」
もう一度、ドアを叩いてみる。
「シカマルってば!」
しかし、中からは何も返事がない。
すべての電灯が消えていることから、家族でどこかに出かけているようだ。
(シカマル・・会いたかったのに・・)
気持ちが落ち込んだチョウジは、フッとため息をつく。
きっとシカマルのことだ、「面倒くせー」といいながらも、中忍の任務で忙しいのだろう。
シカマルががんばっているのだから、自分も任務をがんばらなくてはとチョウジは思いなおした。
いまシカマルに会わなくても、いつでもシカマルには会えるのだから。
・・・。
チョウジはそのまま木の葉の門まで、背中を丸めながら歩いていった。
そして、門で持ち合わせたいのに会い、タソガレ村へと出発した。
挿絵をきんたろーさんに描いていただきました。ありがとうございます。