リクエストもので、ダンゴのプチ小説書いてみました。この話は獣神ライガーの最終回のあとの話になります。キャラクターの基本設定は、原作と同じです。世界観が原作の獣神ライガーの残酷描写に沿っているので、そういうのを好まない方はご遠慮ください。
登場人物
大牙剣(たいがけん)。右手の獅子のアザから獣神ライガーを呼び出すことができる。
団五郎。愛称ダンゴでケンの親友。
暗雲が立ち込める、荒れた大地。
無数の稲妻が落ちる。
その中を、1人の太った少年が息を切らせていた。
「ハァハァ・・・」
少年は何かに追われているのか、這い出さんばかりに逃げている。
時折、岩につまづいて転んでは立ち上がる。
「誰か、助けてっ!」
少年の背後から、ドシリドシリと重たい足取りの生物が迫る。
その姿はまるで恐竜のようだ。
いや、恐竜よりも、もっと姿はおぞましかった。
地球上の生物とは思えない。
背後に迫った怪物は、長い腕を振りかざした。
そのまま少年を背後から切りつける。
「ひぃえ!」
間一髪、少年は爪を交わしたが、ビリッと服が背中から破けていた。
「痛ぇっ!」
恐怖のあまり、足がもつれ、その場で大股開きに倒れる。
ノシリノシリと近づく怪物に、少年は震えながら恐怖した。
<グゥエエエ・・>
「ああっ・・あっ・・」
<死ね、団五郎!>
「わあああ、やめろ!」
怪物は斧のような腕を振り上げる。
そして、少年の頭上から、鋭い爪を真下に振り落とした。
視界が真っ赤に染まる。
「ケン、助けてくれ!!」
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「ぎゃああ!!」
ダンゴは、ふとんから跳ね上がるように、飛び起きていた。
とてつもない大きな奇声を発しながら。
「ぎゃああ!! って、あれ・・・!?」
←それっぽい場面があったので入れてみましたw(以下同)
ダンゴが周りを見渡すと、そこは見慣れた自分の部屋だった。
まだ陽が昇る前なのか、薄暗い。
窓ガラスがカチカチと風に揺れるだけで、静寂に包まれている。
先ほどまでいた恐ろしい怪物も、寂れた荒野も、どこにも存在しなかった。
(ふぅ・・なんだ、すべて夢か・・)
ダンゴは、額にびっしょりと掻いた汗を腕で拭った。
「うるせーなぁ・・ダンゴか?」
すぐ隣から、ぼやき声が聞こえる。
ダンゴがふと横を向くと、そこにはふとんの中で目を擦っているケンの姿。
どうやら先ほどの奇声で、目が覚めてしまったらしい。
「ケン、わりぃ。起きちまったのか?」
「ふぁ〜あ〜。まったく、うるさいのは歯軋りだけにしてくれよな・・」
ケンは、大きなあくびを繰り返しながら、ぼやいている。
ダンゴはすまなそうな表情で、返事をした。
「ごめんな、ケン」
「朝っぱらから寝言が多すぎるぞ」
「だ、だって・・」
「またドラゴナイトに襲われる夢を見たのか?」
ダンゴはケンの質問に、コクリと首を縦に振った。
「ダンゴ、しっかりしろよ。もうドラゴ帝国は滅んだんだぞ」
「そりゃ、分かってるけどさ・・」
ダンゴは指をモジモジとしながら、ケンから目をそらした。
──ドラゴ帝国。
半年ほど前に日本を恐怖に陥れた。
しかし、獣神ライガーの活躍により、邪神ドラゴは封印され、ドラゴ帝国も地上から消え去った。
そのときに邪神と死闘を演じたのが、ダンゴの隣で寝そべっている大牙剣という勇敢な少年だった。
彼は神の末裔であり、獣神ライガーを呼べる唯一の人間だ。
ドラゴ帝国が滅んだとき、ケンの手のひらから獅子のアザが消えて、彼は普通の少年に戻った。
・
・
ケンは、ドラゴ帝国との戦いの中で、唯一の肉親であるお爺さんを亡くした。
身寄りがなくなったケンは、親戚である神代家に引き取られる予定だった。
しかし、ケンは生まれ育った釧路の街を、離れることができなかった。
それに、親友のダンゴと離れ離れになってしまうことも、ケンにとって胸が痛む事実だった。
それはダンゴも同じだった。
親友のケンと離れ離れになることは、ダンゴにとっても悲しいことだった。
ダンゴは、小さいときに父親を亡くし、母親の腕一本で育てられた。
ケンも両親を小さいときに失っている。
だからダンゴには、ケンの故郷を失う悲しさが痛いほどよく分かった。
そこでダンゴの一家は、ケンを自分たちの新しい家族の一員として暖かく迎えることにしたのだ。
幸いにもダンゴの母親は、ケンのことをよく知っており、まるで自分の子供のように可愛がっていた。
それから、ケンとダンゴは同じ部屋で寝食を共にするようになった。
──ダンゴの部屋。
やっとふとんを2枚並べられる程度の、とても狭い部屋。
以前、天空に浮かぶ神の城で、ケンとダンゴは生活を共にしていたことがある。
その部屋は、石造りで2人で暮らすには広くて、無機質なものだった。
神の城とダンゴの部屋はまるで違う。
2つの部屋を、足して半分に割ればちょうどいい大きさになるのになと、ケンは冗談で思ったことがある。
たしかにダンゴの部屋は狭い。
しかし、そこには神の城にはない、家庭の暖かい雰囲気があった。
だから、ケンはダンゴの部屋をとても気に入っていた。
・
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ダンゴは額の汗を拭いながら、ケンに話しかけた。
「俺、ここ数日、ずっとドラゴ帝国に襲われる夢を見るんだ・・」
「ドラゴ帝国は、もう存在しないんだ。いつまでも気にするなよ」
「気にしてないよ。でも、夢に出てきちゃうんだ。俺のことを殺しにやってくるんだ・・」
「ハハハッ。体がでかいのに、ダンゴって肝っ玉がちいせーのな」
「笑い事じゃねぇ!」
「だってよ。所詮、夢だろ?」
「夢だけど・・でも現実に起こっていると錯覚するほど、リアルな夢なんだ・・。俺、怖くて怖くて・・」
「リアルねぇ・・」
「大きな爪で俺の背中を引き裂いて・・」
「なんだよ、ダンゴらしくないぞ!」
ダンゴがいつになく元気が無いので、ケンは声を少しだけ荒げた。
「俺って弱いのかな・・」
「ダンゴ、さっきからどうしたんだ?」
「いつまでもドラゴ帝国が夢に出てくるなんて、俺に意気地がない証拠だろ・・」
「ふぅ。まったく、しょうがねぇなぁ」
そういうと、ケンは自分のふとんを半分だけ持ち上げる。
「ダンゴ。こっちに来いよ」
「えっ?」
「いいから来いって」
「で、でも・・・」
「早く!」
ケンの顔はいつになく真剣に見えた。
ダンゴはブリーフの格好のまま、モジモジとしながら、ケンのふとんの中に移動する。
ケンのふとんは、とても暖かくて、まだ温もりが残っていた。
2人が入ると、体がはみ出してしまう、窮屈なふとん。
ケンはダンゴの頭に布団をかぶせようとしたが、彼の大きな体を、すべて包み込むことはできなかった。
ケンは、ニッと笑みを浮かべると、ゆっくりとダンゴの体に密着する。
ダンゴの肩に手をかけて、顔を向かい合わせにする。
数センチの距離で、ケンとダンゴは顔を見合わせた。
お互いの息遣いを感じるほどの、接近した距離だ。
ケンは、小声でダンゴに話しかけた。
「ダンゴ、もっとくっつかないと、ふとんからはみ出るぞ」
「うん・・。で、でもよ・・」
「なんだよ、照れてんのか?」
「だって俺たち、男同士だし・・」
「気にすんな」
気にするなと言われても、男同士が同じふとんで寝るのは抵抗がある。
しかし、ケンの瞳を間近で見つめていると、だんだんと心が落ち着いてくるのも事実だった。
いきなりケン×ダンゴになってますが。