ようやく話の筋にもっていけるかな?
登場人物
大牙剣(たいがけん)。右手の獅子のアザから獣神ライガーを呼び出すことができる。
団五郎。愛称ダンゴでケンの親友。
──ケンがダンゴを暖めてあげた日の夜。
「まったく、母ちゃんは人づかいが荒いよな」
ダンゴはブツブツと独り言を言いながら、夜道をで歩いていた。
急ぎで郵便物を一通届けて欲しいと、母親に頼まれたのだ。
ダンコの家は、釧路の中心から少し離れたところにあり、夜になると人通りもほとんどない。
車2台がやっとすれ違える程度の田舎道。
周りの建物は電気が消えていて、怖いくらいに静まり返っている。
静寂の中に響くものは、アスファルトを踏むダンゴの足音だけだった。
もう少しで街の中心に出る場所まで差し掛かったとき。
──コツコツ。
(・・ん?)
もう1つアスファルトを踏む足音があることに気がついた。
(誰だろう・・こんな時間に・・)
ダンゴが目を凝らして前方をみると、何者かがこちらに近づいてくるようだ。
(まさか、ドラゴナイトなんてことないよな・・ハハハ・・)
そう思いながらも、不気味な足音にダンゴは顔を引きつらせる。
夜道にだんだんと浮かび上がる影に、
ダンゴの両足はわずかに震えていた。
「君、こんな時間にどうしたんだね?」
初老の男性の声だった。
それが人間の声であることに、ダンゴはホッと安堵した。
笑顔を交えながら、ダンゴが話しかける。
「あれ、よく見たらウチに配達にくる郵便局のおじさん?」
夜道から浮かびあがるその顔に、ダンゴは見覚えがあった。
「郵便のおじさんでしょ?」
「君はたしか、魚屋さんの息子の五郎君じゃないか」
「はい。俺、ダンゴ・・いや団五郎です」
「こんな時間にどこにいくのかね?」
「母ちゃんに、この速達を出してくれって頼まれて・・。えーっと・・」
ダンゴは半ズボンのポケットにねじ込んだ速達のハガキを、取り出した。
ズボンの中でしわくちゃになった手紙を、ダンゴは差し出した。
「この手紙を速達で出したいんです。ちょうどよかった。おじさんに渡せばいい?」
「ああ、ちょっと見せてごらん」
「はい!」
ダンゴは、辺りに響くほど元気のよい声で、返事をする。
そして、初老の郵便局員に手紙を渡そうとした。
すると突然、郵便局員はダンゴの手首をギュッと掴んだのだ。
「痛っ! おじさん、なにするの!?」
「フフフッ・・・」
「ちょっと・・い、痛えよ!」
初老の男の手は、小学生のダンゴの腕よりも、痩せ細っていた。
しかし手首を握る力は、その細腕からは考えられないほどの力だったのだ。
「おじさん、痛いよ! 離して!」
「フフフッ、離すものか。団五郎」
「な、なにを言ってるの!」
「なぜなら、お前はここで死ぬんだから」
郵便局員の言葉に、訳が分からずに気が動転するダンゴ。
「おじさんの言ってる意味が分からないよ!」
「大牙剣を殺す前に、まず一番の親友である、お前を殺してやる」
「ええっ?」
「大牙剣の泣き叫ぶ顔が目に浮かぶわ。ドラゴ帝国の恨みをとくと味わえ」
「ド、ドラゴ帝国だって!?」
いつのまにか郵便局員の制服が破れ、中から爬虫類のような皮膚が露出している。
さらに男の顔の皮膚が溶け出し、ポタポタと塩酸のようなものが垂れ落ちる。
ダンゴはその不気味な様相を目にした瞬間、背筋にぞっと寒気が走った。
「うわああ、コイツ、本物のドラゴナイトの生き残りだ!」
ダンゴは凍りついた表情のまま、全身をガクガクと震えさせた。
「は、離せ!!」
ダンゴは手首を離そうと、無我夢中で郵便局員の腕をバンバンと叩きつけた。
しかし、男の力は想像以上に強い。
いくら殴りつけても、ダンゴを捕まえる手首の力は衰えることはなかった。
「さぁ、団五郎。たっぷりと苦しんでもらおうか」
「うわあっ」
郵便局員の顔は、さらに火傷をしたように皮膚が垂れおちている。
この世のものとは思えない不気味さ。
「た、助けてっ!」
「おとなしくしろ」
必死にもがくダンゴの腹に、男は強烈なパンチを浴びせた。
「うげっ!」
お腹を抱えて崩れ落ちるダンゴに、さらに数発のボディブローを叩き込む。
「ハァ・・ハァ・・げはっ・・」
ダンゴは吐き気とめまいと戦いながら、なんとか意識をつなぎとめていた。
「クククッ。もっと苦しめ」
お腹を抱えてうずくまるダンゴを、満足気な顔で見下ろす男。
今度は両手で、ゆっくりとダンゴの首を握りつぶす。
正面からダンゴを首締めにして、持ち上げ始めたのだ。
「うげっ、がはっ、苦しい!」
「ハーハハッ。もっとわめいてみろ」
「ゲハッ、助けてっ!」
「この世界では、誰も助けに来ないさ」
男はダンゴの太い首を、徐々に締め付けていく。
「ぐっ・・うっ・・」
息が詰まり、意識が遠のいていく。
「あと何秒、耐えられるかな?」
「こんなところで死にたくない・・!」
ダンゴはこの場を切り抜けようと、ジタバタと手足を動かす。
そして、地面を手探りする。
すると、なにか鉄の棒のようなものが、落ちているのに気がついた。
ダンゴは無我夢中で、その鉄の棒を手のひらに手繰り寄せる。
「わあっ!」という悲鳴に近い声をあげて、初老の男の胸に、思いっきり突き刺した。
「ウギャアアアーッ!!」
男は胸から血しぶきをあげる。
首を締め付けていた手がダラッと下がり、ダンゴはようやく解放された。
「はぁ・・はぁ・・」
ダンゴは、お尻から勢いよく地面に落ちる。
咳き込みながら正面に視線を向けると、そこには血だらけになって倒れている男の姿。
さらに自分の両手を広げて見ると、それは真っ赤に染まっていた。
「うわわぁぁぁ!!!」
ダンゴは腰を抜かし、その場で絶叫した。
・
・
「おい、ダンゴ! ダンゴ、しっかりしろ!」
「わああっ!」
「まったくしょうがねぇなぁ・・」
──ビシッ。
頬に響く一発の気付け薬。
「いてぇぇっ、あれ?」
ダンゴは、ヒリヒリとする頬に手を当てながらフッと我に返る。
すると、そこには「やれやれ」という表情をしたケンの姿。
「ケン・・怖いよっ・・助けてくれ」
思わず、声がうわずった。
「ダンゴ、何を泣いてるんだよ?」
「そこにドラゴナイトが・・」
「またドラゴナイトに襲われる夢を見たのか?」
「えっ・・夢・・?」
ダンゴが周りを見渡すと、そこはいつもの自分の部屋。
まだ薄暗く、ひんやりとして物音1つしない。
急いで両手を広げて見ると、そこには血もなにもついていない。
「全部が・・夢・・どうなってるんだ・・」
ダンゴは全身が脱力するように、その場でケンにもたれかかった。
「ダンゴ、重たいって・・」
ハァハァと息を切らせて、全身に汗を掻いているダンゴ。
ケンは自分の体重の倍はあるダンゴを、どっこいしょとふとんに寝かす。
そして、自分もダンゴと同じふとんの中に入った。
ひっくひっくと泣きじゃくるダンゴを、昨日と同じようにふとんの中で抱きしめてあげる。
ダンゴの体が、極度の緊張状態で震えているのに、ケンは驚いた。
ケンの記憶の中でも、ダンゴがこんなに震えているのは見たことがない。
「ダンゴ、本当に怖い夢だったんだな?」
「うん・・」
「突然悲鳴をあげるから、俺も飛び起きちまった。寿命が縮みそうになったぜ」
「だって・・怖かったんだ・・・ケン、離さないでくれよ」
「だから、夢だって。心配するな」
「怖かったんだ・・本当に殺されるかと思ったよ・・」
「大丈夫だ。俺がついてるだろ」
「でも、でも・・・」
「したかねぇな。ちょっと荒療治だけど、ジッとしてろ」
そういうと、ケンはダンゴを仰向けにする。
ダンゴの大きなお腹にまたがった。
「ダンゴ、そのまま目を瞑ってろ」
両手をダンゴの後頭部に回して、しっかりと首と顔を固定する。
重力に任せて、そのまま唇を重ねた。
(んんっ!?)
突然乾いた唇に、湿った感触が走る。
柔らかくて、暖かくて・・。
一体何事かと、ダンゴは驚いて瞼を開ける。
すると、ケンが自分のお腹に乗っかり、
気持ちよさそうに目を閉じて、上から自分の唇に口を重ねているではないか。
ケンの大胆すぎる行動に、ダンゴは大きな目をさらに見開いた。
──ドキッ。
男にキスされて、なぜか心臓がバクバクする。
しかも、それが親友のケンだから、なおさら不思議な感覚だ。
先ほどまでの緊張状態とは全く違う、心臓の鼓動のしかた。
一体、この状態をどう理解し、どう反応したらいいのか・・?
しかし次の瞬間、ダンゴの目はトロンと溶けそうになる。
(はんむ・・)
唇がゆっくりと動いたかと思うと、
ケンの舌が、ダンゴの舌にからみ付いてきたのだ。
強引にエロにつないでるw