ダンゴ小説(8)


2匹のドラゴナイトの攻撃に屈してしまったダンゴは・・?


登場人物

大牙剣(たいがけん)。右手の獅子のアザから獣神ライガーを呼び出すことができる。

団五郎。愛称ダンゴでケンの親友。



シャツ一枚で、地に伏したダンゴ。
肉体も精神もボロボロになり、地面を這うのがやっとの状態だ。
ひっくひっくと、涙を流しながらも、必死に歯を食いしばる。
2匹のドラゴナイトは、そんなダンゴの哀れな姿をみて、ほくそ笑んだ。
「団五郎よ。我々の奴隷になるがいい」
「うっ、ひっく・・」
「お前は我々に屈したのだ。その証拠に、快感に溺れて射精までしたではないか」
「違う・・」
「3回も射精した事実を認めないというのか?」
「お前らが勝手にやったんじゃないか・・」
「違うな。お前自身にイク気がなければ、射精など簡単にするものか」
「ううっ・・」
「お前は自分に負けたのだ。
  無意識のうちに、快感に溺れて、我々に身を任せたのだ」
「・・・」
「我々に従属しろ」
「ち、ちくしょう・・」


なかなか首を縦に振らないダンゴに、ゾンビのようなドラゴナイトが口を開いた。
「そうだ、いいことを思いついたぞ。大牙剣も、同じ目に遭わせてやろう」
ダンゴはその言葉を聞いた瞬間、顔つきが変わる。
泣きそうな顔で、必死に声を荒げる。
「ケンには指一本触らせない・・やらせるもんか・・・」
「骨抜きになった貴様は、もう我々には逆らえない」
「黙れ・・」
「往生際が悪いヤツめ」
「うるさい!」
ダンゴが必死に手を伸ばした先には、警察官が装備していた一丁の拳銃。
警察官の服が破れたときに、落ちたものだろうか。
ダンゴはそれを拾いあげ、震えながら両手で構えた。
ゾンビのような男の心臓めがけて。


「ほう、その拳銃で私を撃つというのか?」
「俺だって・・俺だって・・!」
「ハーハハッ、拳銃など撃ったこともないくせに」
「ううっ・・」
「その体でどうしようというのだ? 子供のおもちゃではないのだぞ」
「うるさい! 俺はケンを守るって言ったら、守るんだぁ!!」
ダンゴが引き金を引いた瞬間。
鼓膜が破れそうな轟音が響き、火薬のような硝煙の匂いが漂った。
「ウギャアアアアアー!」
ゾンビのような男は、心臓から血を吹き出して崩れ落ちる。
「グェーッ、コイツめ!」
後ろから、青いドラゴナイトが慌てて襲い掛かる。
「ひぃ、来るなぁぁ!!」
ダンゴは振り向きざま、拳銃を無我夢中で何発も撃ち放つ。
青いドラゴナイトの胸に風穴をあけた。


拳銃から薬莢が飛び、硝酸の匂いが漂っていた。
ダンゴの周りには、2匹のドラゴナイトが真っ赤な血の海の中で、倒れている。
やがて、その血は左右からダンゴの座っている場所に、波のように押し寄せた。
「あっ・・ああっ・・・俺・・・」
拳銃を持つ腕が震える。
「俺の手が・・体が・・血で染まっていく・・・」
ダンゴは慌ててその場に、拳銃を投げ捨てた。
「グェーーッ、団五郎・・よくも・・」
「コイツ、まだ生きて・・」
青いドラゴナイトは血を噴出しながら、ヨロヨロと立ち上がる。
そして、転びそうになりながら、ダンゴにゆっくりと迫ってくる。
血の匂い、そして腐臭・・。
気分が悪くなる。
「ひゃああ、来るな!」
「団五郎・・・おのれ・・」
ドラゴナイトは真っ赤な手で、ダンゴの首を締め付けた。
「ぎゃあああああ!!!」
視界が真っ赤に染まり、ダンゴは這いださんばかりに大声をあげた。




「おい、ダンゴ! ダンゴ、しっかりしろ!」
「ぎゃああああっ!」
「いい加減に目を覚ませよ!」
「うわぁ、やめてっ!!」
「ダンゴ!」
──ビシッ。
頬に軽く平手打ち。
「いてぇ! あ、あれ?」
ダンゴは、ヒリヒリとする頬に手を当てながらフッと我に返る。
すると、そこには「やれやれ」という表情をしたケンの姿。
「ああ、ケン! 怖い、怖いよーっ!」
ダンゴは、すぐさまケンの胸に抱きつく。
「またかよ・・。もう怖がらないって約束しただろ?」
「怖いよ、ケン・・怖いよ・・」
「さっきまで、久しぶりに気持ちよさそうに寝ていたから、起こさないでいたのに・・。また夢をみたのか?」
「へっ、夢?」
思わず、声がうわずった。
「おいおい、また泣いてるのかよ」
「だって、ドラゴナイトが・・」
「ドラゴナイトなんかどこにもいねーよ。もういい加減にしてくれよ!」
「だって、俺はたしか買い物にいって、それで、あの・・その・・」
「おでんの買い物なら、昨日の夜に行ったじゃねーか」
「買い物に行った・・? 本当に俺が・・?」
「あぁ。学校に遅刻するぞ。早く飯食おうぜ」
「待って・・ケン、俺のこと、抱いてくれよ、守ってくれよ・・」
「いつまで甘えてるんだよ。訳のわかんなねーこと言ってんじゃねぇ!」
ケンは、半泣きのダンゴの手を取り、無理やり隣の居間につれていく。


ダンゴは半ば放心状態で、居間の机の前に座らされる。
「ダンゴ、とりあえず飯食え。そうすれば全部忘れて落ち着くぜ」
「違うんだ、ケン。俺の話を聞いてくれ」
「なにが違うんだよ?」
「おかしいんだ・・分からないけど、なにかがおかしいんだ・・」
「意味わかねーぞ、ダンゴ!」
そのとき、居間にあるテレビから、報道が流された。
<本日、釧路市内で2人の男性の死体が発見されました。
  1人は札幌市に住む会社員。もう1人は釧路県警巡査部長です。
  死因は拳銃による発砲で、双方とも出血多量で即死したと考えられます。
  目撃者の情報によると、昨晩に2人が争っていたという話があり、また少年の悲鳴が聞こえたという・・>
テレビに流れる報道を見て、ダンゴは背筋にぞっと寒気が走り、喉がからからになった。
「ま、まさか・・そんな・・」
「ダンゴ?」
「俺だ・・俺が殺したんだ・・・」
「えっ?」
「俺の手が血に染まって・・」
「何を言ってるんだよ」
「うわぁぁぁーーー!!!」
ダンゴは発狂したような声を出し、一目散に外に飛び出した。
「おい、ダンゴ! パンツのままでどこいくんだ!?」
驚いたケンは、そのままダンゴのあとを追いかけていった。
一体、なにがダンゴの身に起こっているのか、ケンには知る由もなかったのだ。


「わあーーーーっ!」
「おい、ダンゴ! 待てよ!」
半狂乱になったダンゴは、どこに向かうでもなく、錯乱状態で走り続けた。
そのあとを必死に追うケン。
(ダンゴに一体、なにが起こったっていうんだ?)
ダンゴの様子から、只ならぬことが起こっていることは間違いない。
しかし、それが一体なんなのか、ケンには皆目検討がつかない。
「ダンゴ、止まるんだ!」
「いやだぁぁぁ!!」
大声をあげながら近くの土手まで走ったダンゴは、石につまづいた。
もんどりうって、土手から転げ落ちる。
「ダンゴ、危ねぇ!」
ケンはびっくりして、ダンゴを助けに急いだ。


ダンゴは土手から真っ逆さま落ちて、雑草の生える斜面をゴロゴロと転がった。
そして草むらにドシンと横たわって停止した。
「痛てて」と言いながら、ヒリヒリとする足首を押さえる。
どうやら転倒したときにヒネッてしまったらしい。
そこへ、ケンの声がした。
「ダンゴ、大丈夫か?」
ダンゴが顔をあげると、そこには心配そうな顔をしながら近づくケンの姿。
「ケン・・俺のことを心配して来てくれたのか・・」
「あぁ。当たり前だろ」
「俺・・俺っ・・」
ダンゴは、腕でゴシゴシと目をこすって、涙をぬぐう。


「ダンゴ・・」
「ケン?」
ケンは顔を伏せて、ゆっくりと近づいてくる。
「なぁ、ドラゴ帝国の夢を見たって本当か?」
「う、うん・・俺、怖くて怖くて・・おかしくなりそう・・」
「ドラゴ帝国のヤツラって、どんな顔してるんだ?」
「どんなって、バケモノみたいな顔に決まってるだろ」
「ふーん」
「なんだよ、ケン、どうしたっていうんだ」
「そのドラゴナイトってよ・・」
「・・?」
「こんな顔か?」
ケンは伏した顔を、ゆっくりとあげる。
そこには、口からドラキュラのような牙を剥き、目を真っ赤に染めたケンの姿。



「うわああああっ!!」
「ダンゴ、もう終わりにしようぜ」
「ええっ!?」
「これ以上苦しまないように、俺が殺してやる」
「ケン! 何言ってんだ!」
「はらわたを食われ、血まみれになって死ぬんだ」
「訳わかんないこというなよ!」
「どうせなら、俺に殺されろよ。そのほうがうれしいだろ?」
ケンの悪魔のような顔に、ダンゴは腰を抜かしそうになる。
ドスンと大股開きで尻餅をつき、そのままズルズルと後退した。
「あ・・ああっ・・ケン・・やめて・・」
「死ね!」
ケンは、正面からダンゴの肩をガッチリと押さえ込む。
そして、右肩に噛み付き、2本の牙を突き刺した。
「ぎゃあああ! 痛ぇ! ケン、冗談はやめてくれ!」
「冗談? 俺は本気さ。ダンゴのためにやってるんだぜ。死んだほうが楽になるだろ?」
「ぎゃああ! ケン、お願いだからやめて!」
一体、なにがどうなっているのか・・。
もはやダンゴは、正気を保つことさえ困難だった。


次回、最終回です。

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