ガス君小説(1)


ヤケクソでガス君陵辱小説を書いてみました。いちおうグランゾートの世界観沿って書いてます。内容的には第35話の「ふしぎコンビ行きます!」の直後の話だと思ってください。


登場人物

ガス。立派な武闘家を目指す風の魔動戦士。礼儀正しく穏和な性格と裏腹に、怪力と大食いが特技でもある。

ナブー。邪動帝国一のインテリと豪語する35歳の邪動戦士。泥人形の命を吹き込み、己の傀儡くぐつとして操る。

遥大地。魔動戦士のリーダーとして活躍する好奇心旺盛な少年。

Vメイとグリグリ。Vメイはラビルーナの最高位の称号を持つ魔法使い。グリグリはVメイの孫娘で5歳ながらも失敗の多い魔法を使う。ガスとはボケボケコンビ。

タンバロン。ナブーが泥人形から作った巨漢で、一度は魔動戦士によって倒された。

ナブーの部屋。洞窟の奥にあり、多くの書物や泥人形を焼く釜が置かれている。


──ジメジメと湿気に満ちた洞窟の中。
暗い穴の中を進むと、1つの部屋があった。
中はなぜかローソクが灯り、明るく照らしている。
部屋は意外に豪華な飾りつけがされているが、多くの書物が置いてあるのが特徴的だ。
また、焼き物をするのか釜が配置されている。
その部屋の主と思われる男が1人。
中で書物を読んでいた。
「どうして人間ごときの魔動力に勝てないのだ・・・」
黒紅色の服。上半身は軽装で筋肉が盛り上がっている。
男は巨体だが、不釣合いな小さなメガネをかけている。


──彼の名はナブー。
浅黒い肌に、剛毛のヒゲをたっぷりと生やした巨漢だ。
ナブーは35歳になるが、落ち着いた外見から、もっと年を取っているように見える。
しかし、肉体は筋骨隆々としており若々しい。
腕は丸太のように太く、腹筋もガッチリとスジが見えるほど鍛えられている。
それがゆえ人は皆、ナブーの容姿を見て汗臭い粗暴な男と判断することが多い。
だが、ナブーは見た目のコンプレックスをもっているのか。
自らを"邪動帝国一のインテリ"と豪語し、研究に余念がない。
恐らく、なにかに専念することが好きな性格なのだろう。
彼は実際に頭が切れ、器用な男でもあった。
それが証拠に、明晰な頭脳を持つドクターバイブルには将棋で一度も負けたことがなかった。
戦略においても、彼は一流の頭脳を持っているのだ。


ナブーは魔動戦士に敗北し続けていた。
ナブー自身の邪動力が弱いのではない。
むしろ、ナブーの邪動力は邪動族の中でも、5本の指に入る凄まじいものであった。
それが故に、アグラマントにも邪動戦士として選ばれたのだ。
しかし、魔動戦士3人の絆はナブーの力を上回っていた。
一体どうすれば、魔動戦士を倒せるのか・・・。
ナブーは体に似合わず悩んでいた。
このままではアグラマントに、自分の信頼を失いかねない。


いまナブーが手に取っている書物は、"魔動の書"。
アグラマントから授かったこの本を、ナブーは一週間ずっと解読し続けていた。
(この本を解読できるのは、シャマンでもエヌマでもない・・。
  邪動帝国一のインテリである私だけだ・・・)
インテリを自称するがゆえに、この本の解読に躍起になる。
そして、アグラマントの期待に応え、自らの地位を固めるためにも。
この本のどこかに、魔動戦士の弱点となる"何か"が記されているはずなのだ。


数日後・・・。
ナブーは魔動の書のある一行に注目した。
<幾重にもなる空気の流れを制する聖なる者・・・・玉座にたたずみ・・・
  その者、小宇宙の中に命を与えたとき、その資格剥奪され二度とその地位に戻らん・・・>
「こ、これは・・・」
意味ありげな文章にナブーは頭をかしげる。
(玉座・・・聖なる者・・・)
ナブーは目を細めながら、その行を何度も詠唱する。
(玉座にたたずむとは、おそらく「王」のことだろう)
(空気の流れとは・・「風」のことだ)
すると、ナブーの顔に薄っすらと笑みがこぼれた。
(そうか、わかったぞ。"空気の流れを制する聖なる者"とはつまり、「風の魔動王」のことではないのか・・。
 そして、それに座するもの、つまり「風の魔動戦士」のことか)
ナブーはさらに次の文章を解読していく。
(しかし、"小宇宙に命を与える"とは、どういう意味なのだ・・)
ナブーはこの部分を解読するのに、さらに数日を要した。


洞窟の中にあるローソクは、あっという間にその命を燃やしてしまう。
明かりが消えそうになると、ノシノシと奇妙な格好をした生き物が現れ、新しいローソクに再び火を灯す。
「ご苦労だな」
ナブーはチラッと後ろを振り返ると、そこには大きくてごつい体躯を持つ男がいた。
それはナブーが練成した泥人形。
「フハハハ、ようやくこの文章の意味が解けたぞ」
ナブーは束縛から解放されように大きな声で笑う。
「風の魔動戦士を倒す方法が・・・いや、正確には2度と魔動戦士として戦えなくなるぞ」
魔動の書をバシッと閉じる。
「"小宇宙に命を与える"か・・・なぜ魔動戦士が年端も行かぬ小僧であるか、やっと謎が解けたわ」
ナブーは満足気な顔をした。


「私の解読が正しければ、風の魔動戦士だけでなく、他の2人も倒せるかもしれんな・・」
ナブーは口ひげを手で触りながら、なにやら作戦を考えているようだ。
「まずは風の魔動戦士に実験台となってもらうとするか。
  ヤツは3人の魔動戦士の中では一番弱い・・」
すると、ナブーは先ほどの泥人形にに命令を下す。
「タンバロンよ、地下の闘技場に、強力な闇の魔法陣を準備しておけ」
「はい」
「せっかく蘇らせたお前にも、たっぷりと風の魔動戦士をいたぶらせてやるぞ」
「本当でございますか?」
「フハハ、楽しみにしておれ」
命令が下ると、タンバロンは、そそくさとナブーの元を去った。
「まずは、ヤツを捕らえる方法を考えねば・・・」
ナブーは不敵な笑みを浮かべる。
「風の魔動戦士・・・あのズングリとした少年か。
  いままでの分も合わせて、たっぷりと屈辱を与えてやるわ」
そういうと、ナブーは部屋を後にした。


──氷の世界。第2エリア。
地面も森も街も、なにもかも冷たい氷で覆われている世界。
大地たち一行は、ついに第2エリアまでたどり着いたが、この世界を元に戻す方法が分からなかった。
彷徨った挙句にたどり着いた寂れた街。
この街外れにある一軒の宿に、大地たち一行は足止めされていた。
「また、風邪を引かれたのですか?」
ガスはずんぐりとした体で、鼻をすする大地を抱いて歩いている。
「ごめん・・ガス・・ぐすっ・・」
ちょっと情けなさを感じる大地の声。
大地の顔は、熱があるのかほんのりと赤い。
「この前は邪動族の魔法で風邪を引いたと思ったら、今度はまた別の魔法の風邪なのですか?」
「そうみたい・・・ゲホッ」
「このベッドで、しばらく安静にしてください」
ガスは自分よりも大きな大地を、軽々とベッドに運んで寝かせた。


こういうときはガスは本当に頼りになると、大地は感じていた。
「ガス、いつもありがとう・・」
「大地くんこそ、早く良くなってくださいね」
そういうと、ガスは大地に毛布をかけて、部屋を出ようとする。
「ガス、待ってくれ!」
「どうしたんです?」
「もし邪動族が現れたら、すぐに知らせてくれよ。俺も戦うから」
ガスは大地の話を聞いて、ニコッとする。
「その体では大地くんはまともに戦えません。私が戦いますから安心してください」
「それが心配なんだよ・・・」
「えっ?どうしてです?」
「だから・・その・・・」
ガスのおっちょこちょいな所が、大地はとても心配なのだ。
「ともかく今は養生に専念してくださいね」
そういうと、ガスは扉を閉めた。


ガスが食卓に向かうと、そこにいるVメイとグリグリに話しかけた。
「困りましたね・・・ラビくんも大地くんも風邪を引いてしまうなんて」
それに対し、Vメイもグズクズと鼻をすすりながら、ガスに諭すように話す。
「第3エリアは暑かったけど、ここは寒いだろ。
  こう気温の変化が激しいと普通の人間なら体調がおかしくなるさ」
「きっとまた邪動族が放った魔法の風邪です」
「ガス、アンタは体を鍛えているだけあって、何事もないようだね」
「はぁ・・・。いままで病気になったことはありません!」
そういうと、ガスは自慢の厚い胸板をボンと叩く。
「そういえば、アンタは邪動族の魔法の風邪を引かないね。一体どうしてなのかね・・?」
「うーん、そういえばそうですね・・。私は武闘家で鍛えているからだと思います」
そういうと、ガスは腕をまくり、自慢の力こぶをVメイに見せる。
「ガス、すごいグリ!」
「グリグリちゃん、褒めてくれるのですか?」
「はい、グリ」
そういうとグリグリは「ホロレチュチュパレロ!」と唱えて魔法で大きなニンジンを出す。


「さぁ、食べるグリ!」
「うわぁ、大きなニンジンだ。いただきます!」
ガスはお腹が空いていたのか、ガツガツとニンジンにマヨネーズをかけて食べ始めた。
「まったく、ガスだけは薬要らずだねぇ・・」
健康そのもののガスの姿をみて、Vメイもクスッと笑う。
Vメイは、ガスのような優しくて逞しい子が、魔動戦士の1人であったことに感謝していた。
大地とラビはお互い主張が強いために、衝突する。
それを緩衝材のように包んでいるのが、いつも笑顔のガスだった。
子供ながら物事の道理を理解し、言葉遣いも礼儀正しい。
そして武闘家と名乗るのに相応しく、力強い。
しかし、それを鼻にかけたり、威張り散らすことはない。
それどころか、どこか間が抜けているところが、ガスの良いところなのだ。


ガスほど頼りになる子供はいないと、Vメイは思う。
たとえギャングや強盗が現れても、ガスがいれば絶対に守ってくれるという安心感。
圧倒的な強さとパワー。
怖がりの大地やラビは、いつもガスの背中に隠れたりする。
ガスは大地やラビの半分ほどの背丈なのに、その背内はとても広く感じるのだ。


しかし、魔動戦士となると話は別だ。
ガスは途端に、頼りない存在になる。
それはガスの魔動力が、大地やラビよりも圧倒的に不足していることが原因だろう。
ガスの格闘能力の高さが、皮肉なことに魔動力の発現を邪魔しているのだろうとVメイは考えていた。
正直、魔動戦士の戦いにおいては、ガスが足を引っ張ることが多々ある。
しかしそんなガスを、大地やラビは必死に助けてあげる。
決して足手まといだと、ガスをバカにしたりしない。
それはガスが普段から明るくて、おっちょこちょいで、どこか憎めない性格だからなのだろう。
ガスは逞しい少年のはずなのに、"守ってあげたい"と思わせるなにか特別なものを感じさせるのだ。


大地とラビだけではうまくいかない。
だけど、ガスが入るとなぜかうまくまとまる。
大地とガスとラビは、3人でうまくバランスが取れているのだ。
Vメイはそんな清々しい少年であるガスに、愛情さえ感じていた。


「おばばさま。山一つ越えた村に、魔法の風邪に効く薬があるらしいのです」
ガスはニンジンを食べ終えると、Vメイに向かって話した。
「私、これからそれを貰いに行こうと思います」
ガスはそういうと、首にマフラーを巻いて出発する準備をする。
「ガス、お待ち!」
「おばばさま?」
Vメイはそんな友達思いのガスを止める。
「いま私が風邪を治す方法を調べているから、アンタがそこまでしなくてもいいんだよ」
「しかし、こうしている間にも、暗黒大邪神が蘇ってしまうかもしれません。
  私にできることは、なんでもしますから」
「いや、だって危険もたくさんあるよ・・・」
Vメイは正直、不安だった。
ガスを1人で行動させることに。


相手が普通の人間ならば、何の不安もない。
ガスの強さはケタはずれだからだ。
しかし、相手は邪動族だ。
第2エリアともなれば、その攻撃力も並大抵なものではないだろう。
Vメイは、ガスの魔動力では、邪動族と対峙したときに負けるかもしれないと感じていた。
直接それを言えればよいのだが、ガスにも武闘家としてのプライドがある。
だから、ガスが傷つくかもしれない発言は、迂闊にできなかった。
「ガス、少し落ち着いて待つのも大切なことだよ・・・」
Vメイは、なんとかガスを止めようとする。
「心配には及びません。村の人の話によると1日もあれば往復できる程度の距離ですから。夜には戻ってきます」
Vメイの真意も知らずに、笑顔で答えるガス。
そんな優しいガスの表情をみると、とてもガスを止めることはできなかった。
「では行ってきまーす!」
ガスはドアを開けて元気に飛び出していく。
(どうかガスが敵に出会わないよう、守ってやってください・・)
一抹の不安を覚えながらも、Vメイはガスを見送るしかなかった。


まだまだ序盤? ちなみに本によってガスが「武闘家」だったり「武道家」だったり「格闘家」だったりマチマチなので、「武闘家」に統一しました。

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