ガスVSナブー。案外とまともな小説になってる!?
登場人物
ガス。スーパーウインザートで戦う風の魔動戦士。
ナブー。邪動帝国一のインテリと豪語し、愛機ハービザンを操ってガスと対峙する。
スーパーウインザート。風を操る魔動王で雷撃や突風などの自然現象を操って戦う。ガスの格闘で戦うことも。
ハービザン。ナブーが操る風の邪動王で、強力な邪動力を放つ。ビーストモードで飛行形態に変形する。
ハービザンのビーストモード。鳥型のデザインとなり空中を自由に飛ぶことが可能。
スーパーシュトルムカイザー。スーパーウインザートの必殺技で光の矢で相手を打ち抜く。
ナブーの魔動力「クリストエッジ」。細かい稲妻で敵にダメージを与える技。
ガスの健脚をもってすれば、山一つ越えることなど造作もないことだった。
半日ほど歩くと、すぐに隣村が見えてきた。
「なんだ、意外と近いところにあるのですね」
ガスは山の上から、急な斜面をテクテクと下っていく。
風邪に効く薬さえ手に入れば、すぐに大地とラビの明るい笑顔が戻るだろう。
ガスは2人の明るい表情を思い浮かべると、急に足取りが軽くなった。
突然、ガスの前方で爆発が起こった。
村の家々が次々と崩れ、壮絶な轟音がする。
「あ、あれは・・・!」
向かっている村が、突如として現れた邪動族に襲われている。
村から煙があがり、建物が破壊されていく。
「邪動族め・・・そんなことは私がさせません!」
もし村が壊滅してしまったら、大地とラビの笑顔が見られなくなってしまう。
ガスは急いで魔動弓を構える。
そして叫んだ。
「マジカルアロー!」
ガスが弓を引くと、そこに金色の光の矢が現れる。
そして、その矢は天に突き刺さると、風がうずまき雲を呼んだ。
「ドーマ・キラ・ラムーン・・光出でよ、汝、スーパーウインザート!」
ガスが叫ぶと、雲の中に魔法陣が描かれ、そこから半円を描くように光が溢れる。
そして巨大な顔の形をした魔動王が姿を現した。
風の魔動王である、スーパーウインザートだ。
スーパーウインザートから、暖かい光がガスに向かって一直線に伸びる。
「たぁーーーーーっ!」
ガスはその光の中に入り、そのままふわりと浮いた。
体重を感じない浮揚感。
そして、スーパーウインザートに吸い込まれていく。
暖かい光の中で、ガスは魔動戦士の証である緑色の法衣服の姿となる。
スーパーウインザートの小さな魔法陣の台座に立つと、ガスは変形の掛け声をかける。
スーパーウインザートは、人型へと変形した。
「やめろーっ!」
ガスはスーパーウインザートを駆って、村を破壊する邪動王の前に立った。
その邪動王は、以前見たことがあるピンクと青を基調にした鳥型のデザインだ。
(あの邪動王は・・・たしか闇の三邪動王の1つのでは・・・)
自分よりも高度な邪動力を操る、強敵のはずだ。
ガスは以前に戦ったことのある、この機体を見て武者震いする。
「ハハハ。よく来たな。風の魔動戦士よ」
邪動王からドスの効いた荒々しい声がする。
その邪悪に満ちた雰囲気に、ガスは後退しそうになった。
しかし、ガスも武闘家だ。
立ち会いからビクついているようでは、勝利などおぼつかない。
自らを奮い立たせる。
「これ以上、この村を破壊することは、この私が許しません!」
「この村に風邪によく効く薬でも取りにきたのか?」
「ど、どうしてそのことを・・」
自分の行動が読まれていることに驚きを隠せないガス。
「自己紹介がまだだったな。私は邪動帝国一のインテリ、ナブーという」
「ナブー・・・さん?」
「こんな単純な罠にはまってくれて感謝するぞ」
「な、なんですって!」
ガスはその言葉に、少なからず動揺する。
「お前らの街に邪動族の風邪のウイルスを流したのも、この村に薬があるという噂をしたのも、この私だ」
「な・・なんてひどいことをするんです!関係ない人たちまで巻き込んで・・・」
「なぜかお前は、人間や耳長族に効く風邪のウイルスに、全く反応しないからな。
お前1人でここに来ると思ったよ」
「くっ・・・」
「バカは風邪を引かないというからな」
「言って良いことと悪いことがあります!」
「ワハハハッ」
ナブーは高笑いをしながら、悪態をついてガスを挑発する。
「どうして・・・どうしてそんな罠まで仕掛けて人々を苦しめるのですか!」
「お前を可愛がってやるためさ」
「そんなことのために・・・許しません!」
ガスの表情が怒りの表情に変わる。
「1対1でこの私を倒せるかな?」
「倒して見せます!」
「ほう、大きくでたな。お前は他の2体の魔動王よりも、相当弱いと思うが」
ナブーはガスが認めたくない事実を、ズバッと言い放つ。
大地やラビに言われるならともかく、敵に言われるのはガスにとっては侮辱以外の何物でもない。
普段穏やかなガスの目つきが、武闘家のものになる。
「ナブーさんと言いましたね・・・。そのようなことは私を倒してから言ってください!」
ガスにしては珍しく、ナブーの挑発に対して頭に血がのぼっていた。
武闘家としての誇りにキズをつけられたのだ。
「先手必勝!とりゃーーーっ!」
そのまま勢いに任せて、ガスはナブーのハービザンにパンチを浴びせた。
ガシッ!
ハービザンは、ウインザートのパンチをガッチリと腕でガードする。
「クソッ、ならば!」
ガスは連続して得意のキックを繰り出す。
「フン、バカめが!」
ナブーは力任せに攻撃してくるウインザートの攻撃を手で弾きながら寄せ付けなかった。
魔動力だけではなく、格闘能力も優れたハービザン相手にガスは苦戦する。
「これならどうです!」
ガスは全体重をかけて、渾身のパンチをハービザンに叩き込もうとする。
しかし、ハービザンはあっという間に鳥型に変形し、空中に舞い上がった。
「あっ!」
突然目の前から消えたハービザンに、ガスは敵の位置を見失う。
するとハービザンは、上空からウインザートに高速で体当たりをした。
ズシーーン!
そのすごい音が地面に響く。
「ぐはっ!」
地面に叩きつけられ、吹っ飛ばされるウインザート。
「ハハハ、お前には力技しかないのか?」
ヒゲ面のナブーは、コックピットの中でニヤリと笑う。
ガスは持ち前のガッツでなんとか立ち上がる。
「な・・・ならば、私の魔動力を見せてあげます!」
「そうこなくてはな」
ガスが挑発に乗った瞬間、ナブーは勝利の笑みを浮かべた。
ガスは手を合わせて魔動力を詠唱する体制に入る。
「ドーマ・キサ・ラムーン・・・魔動力、ブラストガン!」
ガスが叫ぶと、ウインザートの手から稲妻のような光線が発射される。
しかし、ナブーも同時に詠唱する。
「ジャハ・ラド・クシード・・・邪動力、ブラストガン!」
ガスと全く同じ技を放つナブー。
金色の稲妻と黒い稲妻が空中で炸裂する。
しかし、ナブーの邪動力の方が上回っていた。
黒い稲妻は、ウインザートが放った金色の稲妻をあっという間に飲み込んだ。
そして、倍の大きさになった稲妻がウインザートに直撃した。
「うわぁぁぁ!」
ガスは黒い稲妻に全身を打たれ、そのままガクッと倒れた。
「どうして、どうして同じ技を・・・」
「ハハハ、このハービザンは風の邪動王なのだ。お前と同じ技はすべて使えるぞ」
「あ、あなたも風を自由に操る戦士だというのですか!?」
「そういうことだ」
同じ魔法で力負けするということは、明らかにガスの魔動力が劣っていることを意味する。
ガスは先ほどのナブーの言葉を、そのまま現実として突きつけられる形となった。
そして少ながらず、ガスに精神的なダメージを負わせていた。
「まだ・・・まだ負けてません・・・」
なんとか気力を振り絞って立ち上がる。
「これならどうです!」
ガスの瞳に光の魔法陣が映る。
「ジーク・ガイ・フリーズ 出でよ、スーパーシュトルムカイザー!」
ガスが天に向かって手のひらを掲げると、一条の雷が空をかざす。
そして、雷と竜巻がウインザートの手に落ちたかと思うと、そこには巨大な弓が出現した。
ガスはゆっくりと、力強く弓を握る。
その瞬間、弓の弦は2つに増えてX字に交差し、ウインザートの周りに巨大な竜巻が起きる。
「ほほう、早くもスーパーウインザートの必殺技か・・・相当焦っているな」
ナブーは最強の魔動力を放とうとするウインザートをみて、舌なめずりをした。
ガスは上空のハービザンに向けて、その弓を構える。
「一発必中、スーパーシュトルムカイザー!!」
ガスが魔動力を唱えた瞬間、光の矢がハービザンに命中し、突き刺さった。
「やった!」
ハービザンの中心に突き刺さった光の矢は、ミシミシと音を立てて火花を散らしていた。
ガスはホッとした顔で、勝利を確信する。
しかし、光の矢はハービザンの腹部に突き刺さったまま、爆発する様子はない。
時間が経つに連れて、ガスの首筋に嫌な汗が滴り落ちる。
「フハハハ、アハハハ。これがウインザート最強の魔動力か?」
ハービザンから高笑いが聞こえる。
光の矢は徐々にその輝きを失っていく。
やがて、光の矢は完全に消滅し、黒い稲妻がハービザンの破壊された部分を修復していった。
「まさか・・そんな・・・」
ガスは震えながら、自然に一歩二歩と後退していく。
「貴様の放つ光の矢など、腕に蚊が刺した程度のものだ」
「ううっ・・・」
最強の魔法を打ち破られ、ガスにはもはや次の手がなくなってしまう。
「フフフッ、たわいもないヤツめ・・・」
ナブーが攻撃を仕掛けた。
「食らえ! ジャハ・ラド・クシード・・・邪動力、クリストエッジ!」
急に空が暗くなったかと思うと、暗雲が立ち込める。
そこから黒い稲妻が次々に発生し、無数に分散した。
そして、空中で炸裂した稲妻は美しい弧を描きながら、ものすごいスピードでウインザートに落下していく。
細かい稲妻は、ウインザートに突き刺さっては消えていく。
「ぐはっ・・・うぎゃあっ・・・」
ガスは両腕を頭の上で交差して必死にガードする。
しかし、頭上から降る無数の稲妻は、ガスの体中に当たって弾け飛ぶ。
その痛みは、ガスの意識を削ぎ取っていった。
根性だけでは絶対に埋まらない力の差。
「こんなところで・・・やられてたまるか・・ううっっ・・」
だんだんぼやけていく視界。
「大地くん・・・ラビ・・くん・・・」
いくら耐えても終わることのない攻撃に、ガスはついに力尽きて倒れてしまった。
グッタリとして動かなくなったウインザートを見て、ナブーは余裕の笑みを浮かべた。
「もう勝負がついたか。
このハービザンに立ち向かった勇気だけは褒めてやろう」
ナブーはそういうと、ハービザンをウインザートの上空で停止させる。
ハービザンは鳥型に変形すると、そのまま下降して両足の爪でウインザードの肩をガッチリと掴んだ。
まるで、鷲が獲物を捕まえるように。
ハービザンがフッと浮き上がると、ウインザードの両手両足は、ダランと力なく垂れ下がった。
「ハハハ、ついに風の魔動戦士を我が手中に収めたぞ」
そのまま洞窟へとウインザートを連れ去っていった。
「ガス・・・遅いね・・・」
Vメイは夜になっても戻らないガスを心配していた。
宿屋の外に出て、周りを歩いてみるが、ガスらしい姿はどこにも見当たらなかった。
(おばばさま!)
一瞬、ガスが笑いながら帰ってくる光景が目に浮かぶ。
「何事もなければ良いんだけど・・」
ガスを送り出したときに感じた嫌な予感。
いまはそれが当たらないことを祈るだけだった。
次回いきなり陵辱・・まだ早いか?