ガス君小説(4)


圧倒的な邪動力を持つナブーに対し、自分に有利な肉弾戦に持ち込んだガスだったが、果たして?


登場人物

ガス。立派な武闘家を目指す少年。

ナブー。邪動帝国一のインテリと豪語するが、格闘の実力はいかに?


数メートルの距離を置いて対峙するナブーとガス。
ハービザンに搭乗していたときと同じ黒い戦闘服のナブー。
その体は、インテリと程遠いほどの筋肉の鎧で覆われている。
一方、緑色の法衣服を着たコスチュームのガス。
額には風の魔動戦士の証である星型の紋章。
先ほどの戦いのダメージはまだ残っているものの、
 気合を入れたガスは、法衣服の上からでも筋肉の盛り上がりを確認することができるほどだ。
ガスはジリジリと間合いを計り、ナブーの懐に飛び込もうとする。
2人の間に緊張の糸がピーンと張り詰める。
「とりゃー!」
先に動いたのはガスだった。
ガスは低い姿勢のまま、子供とは思えないスピードでナブーの懐に飛び込んだかと思うと、
 そのまま拳をナブーのわき腹に叩き込む。
バシッ。
しかし、ナブーはこの拳を片手で軽く受け止めると、そのままもう一方の拳をガスの顔に叩き込んだ。
「うぎゃっ!」
ガスは殴れて数メートル後ろに吹っ飛ばされた。


ガスはナブーの思いも寄らないパンチを喰らい、ペタンと尻餅をついて倒れた。
「フフフ、いきがっていた割りには、たいしたことないな」
「くっ・・・」
殴られた頬をこすりながら、ガスは起き上がろうとする。
そのとき、急激な吐き気がガスを襲った。
「ううっ・・・ぐあっ・・・」
頭がクラクラする。
気持ち悪い。
いや、それだけではない。
正面にいるナブーが、分身したかのように何人にも見える。
「はぁ・・・はぁ・・・」
ポタポタと地面に滴る汗。
ガスは口を開けて、大きく息をするが立ち上がることができない。
「ハハハ、お前の動きがあまりに遅いので、顔面と首に一撃ずつ入れさせてもらったよ」
「な、なんですって・・!」
ガスは動揺を隠せない。


──パンチを片手で止められた。
──顔面を殴られて飛ばされた。
そこまでは覚えている。
まさか、もう一撃入れられていたなんて。
それがウソではないことは、いまの自分の状態で分かる。
この吐き気と気持ち悪さは、明らかに首の頚動脈に一撃入れられた証拠。
ガスにはそれが経験上分かる。
そして、このナブーという男が相当な使い手であることも。
ガスは地面を這いつくばりながら、なんとか立とうとする。
「ナブーさん・・・あなたは格闘技をされているんですか・・」
「お前は、自分を武闘家だと言っていたな。ならば今の一撃で分からんのか?」
「うっ・・・」
ガスはなんとか立ち上がり、再び身構える。
しかしいまの一撃のダメージが大きかったのか、フラフラとして足元がおぼつかない。
「まだ終わりじゃありません・・・」
ガスは首を左右に振って、なんとか自分を奮い立たせる。
ハァっと呼吸を整え、ナブーに再び対峙しようとしたときだった。


「こ、この闘気は・・・」
ガスはナブーから凄まじい闘気が出ているのを、いまさら感じ取った。
(なんて・・・なんて私はうかつだったんでしょう・・・)
ガスは己を過信して、ナブーに戦いを挑んだことを悔いた。
それほどまでに、ナブーとの力の差を感じ取ったのだ。
「どうした、風の魔動戦士さん。先ほどまでの元気がないぞ?」
「ううっ・・」
「次は本気で行かせてもらう。次の一撃でお前は死ぬかもしれんぞ。覚悟はいいか?」
凄まじい気迫を感じたガスは、ナブーの言葉に偽りがないことを知った。


ガスは一歩も動けなかった。
力の差がこれほどあるなんて・・・。
ガスの足はブルブルと震えていた。
こんなに強い相手と戦うのは一体何年ぶりだろう?
「あなたは・・・一体何者なんです・・?」
ガスは声を震わせながら、ナブーに恐る恐る尋ねる。
「私もいちおう武闘家だったのでな。もう数年も前に実践から遠ざかってしまったが・・」
「武闘家ですって・・・?」
「邪動帝国の中では指折りの武闘家だったが、いまは邪動帝国一のインテリだ。
  文武両道こなしてこそ、真の武闘家だとは思わんか? なぁ風の魔動戦士さん?」
「!!」
その言葉を聞いてガスは驚いた。
実はガスの祖父も、ナブーと同じことを言っていたのだ。
真の武闘家になるということは、武を鍛えるだけではないと。
このナブーという男は、1人の武闘家としても、自分よりも遥か高みにいるのではないか。
そう思ったとき、ガスは戦意を失い始めた。


ガスはナブーに魔動力で破れ、そしていま格闘においても格の違いを見せ付けられてしまった。
ナブーの鋼のような筋肉や、呼吸を最初から注意深く観察していれば、
 彼が一流の格闘家であることは、すぐに見抜けたはずだ。
自分はなんて未熟で愚か者だったのか。
「フフ。お前のその目はすでに敗北を悟っているな。
  では死なない程度にじっくりといたぶってやろうか・・・」
「ま、まだ負けてません・・」
ガスの弱々しい返事にナブーはニヤッと笑うと、容赦なく鉄拳を浴びせた。
「うがっ・・・・はぐっ・・・」
ガスは必死に防戦するが、ナブーの力強い攻撃の前に、
 首は左右に仰け反り、腹を何発もパンチで打ち抜かれる。


「この白いプロテクターのようにものは邪魔だな!」
ナブーはそういうと、ガスの両肩にある白いプロテクターを拳で叩きつける。
「ぎゃっ!」
法衣服の一部であった白いプロテクターが粉々に砕れ落ちた。
腕や足にあった部分も破壊されてしまい、ガスは緑色のタイツとマントだけの姿になってしまった。
「ほほう、綺麗さっぱりした格好になったじゃないか、風の魔動戦士さん」
「ううっ・・そんな・・・」
神聖な法衣服を砕かれてしまい、ガスは情けなさを感じて涙がこぼれてきた。
肩を抑えてヨロヨロと立ち上がるガス。
そして口からスッと落ちる血を、手で拭った。
「フハハ。このまま私がトドメを刺してもよいが、
  お前をいたぶりたくて、ウズウズしているやつらがお待ちかねなのでな」
「なんですって・・!?」
そういうと、ナブーはパチンと指を弾く。
すると、どこからともなく3人の泥人形がガスの周りに現れた。


「な、なんです、この人たちは・・・?」
ガスは肩で大きく息をしながら、周りに突然現れた薄気味悪い泥人形を見渡す。
みなズングリムックリとした容姿をしており、身長と体重はガスの倍以上は軽くあるだろう。
「魔動戦士に敗れ去った私の可愛い部下たち・・いや私の傀儡だ。
  今回はお前のような肥えた少年が大好きなように、改造しておいてやったぞ。
  さぁ、魔動戦士をたっぷりいたぶってやれ、タンバロン、ナマンズ、そしてガラパチーノよ」
「はい、ナブー様」
すると、泥人形たちはニタニタと笑い、ガスを目指してノシノシと近づいてきた。
「こんな人たちに・・・やられるものですか・・・」
「フフフ。そううまくいくかな?」
しかし、不気味な目をした泥人形の姿に、ガスは恐怖した。


なんか無駄に長いかな?

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