ゲンちゃん小説(完)


表現能力の限界に達したので、今回で終了とします(←ォィ)。


登場人物

ゲンとかおりです。


俺はさまよい続けた。
暗くて長くて、終わりがないトンネルの中を。
どこまで歩いたら、出口が見えるんだ?
そもそも、ここはどこなんだ・・?
もう歩くのは疲れた。
胸が苦しい。
楽にさせてくれ。
<ゲンちゃん>
声が聞こえた。
<ゲンちゃん、こっち・・>
視線を向けると、そこにポツンと人間の姿。


その声の主は、17歳のかおりだった。
「かおり・・」
俺は暗闇の中をゆっくりと、かおりに近づく。
だんだん大きくなるかおりの姿。
「ごめん、もう疲れたよ・・」
<ゲンちゃん、そんな顔しないで>
「だって、俺・・」
俺が気持ちを伝えようとしたとき、かおりが両膝を地面に落とした。
そして、俺をそっと抱きしめてくれた。
<ゲンちゃん・・>
「とってもあったけぇ。
 俺、ずっとこのままでいたい・・。
 かおり、好きだ。大人のお前が好きなんだ。もうどこにも行かないでくれ」
<かおりも、ゲンちゃんとこのままでいたい・・>
「ありがとう・・俺・・・うっ・・」
<ゲンちゃんも、泣くことがあるんだ>
「俺だって・・・泣きたいときもあらぁ・・」
<ゲンちゃんが、初めて私のことを頼りにしてくれた。だから、うれしい・・>
「ううっ・・」
俺はしばらくかおりの胸に、顔を埋めた。


<ゲンちゃん、ありがとう>
その言葉に、俺は顔を見上げた。
そして、驚いた。
なぜなら、かおりが俺を見て、涙を流していたから。
「かおり、一体どうしたんだ・・?」
<ゲンちゃん・・>
「どうして、お前まで泣いてるんだ?」
<ゲンちゃんが約束を守ってくれたのがうれしいの。でも、ゲンちゃんを抱くのはこれが最後・・>
「約束って・・なんのことだ?」
<そっか・・もう消えかかっているんだ・・>
「消えかかるって・・?」
<未来も、私も・・>
俺は「約束」とか「未来」という言葉の意味を必死に考える。
「ううっ、頭がいてぇ・・」
思い出そうとすると、頭が割れそうに痛い。
肝心なことを思い出せない。
<ゲンちゃんのこと、大好き>
「か、かおり・・?」
かおりの暖かい胸。
俺の体を包みこんでくれる、たったひとつの・・。
「消えかかってるって、どういう意味なんだ・・?」
<・・・>
「かおり・・? あれ?」
温もりを残したまま、かおりは消えていた。
「どこにいったんだ! かおり、待ってくれ!」



「かおりーーっ!!」
俺は叫んでいた。
真っ先に目に映ったものは、白い天井。
先ほどまで歩いていたトンネルはどこに行ったのだろう。
頭がボヤッとしていて、なにがなんだかわからない。
「ううっ・・ゲンちゃん・・」
その涙声は・・・かおり?
俺がチラッと横を向くと、かおりがイスに座って泣いている。
「あれ・・俺は・・・」
「ゲンちゃん!」
かおりが、俺の胸にギュッと抱きついてきた。
「いててて、かおり、痛ぇっ!」
「ごめんね、ゲンちゃん・・」
「俺・・生きてるのか・・?」
「当たり前でしょ。ゲンちゃんが死ぬわけないもん」
「でも、俺はたしか・・えっと・・トラックに跳ねられて・・」
「ゲンちゃんが、かおりのことを守ってくれたの。ありがとう」
「俺が守った・・?」
「ゲンちゃんが、ずっとかおりのことを励ましてくれたの。
  ゲンちゃんが、かおりのことをおんぶして『かおり、しっかりしろ』って。
  だから、かおりもこの通りに元気だよ」


目線を下に向けると、体中にぐるぐると包帯が巻かれていた。
まるで、こりゃミイラじゃねーか。
「痛ててててっ」
少し体を動かしただけで、手足が痛い。
しかし、痛いということは、ケガはしたけど致命傷は負わなかったってことか?
それに、話せるってことは、頭も大丈夫ってことだ。
「ゲンちゃんは、全治3ヶ月だって。寝てないとダメだよ」
ぼんやりとした頭で、俺は考えた。
「俺、どうやって助かったのかな・・」
「ゲンちゃん、覚えてないの?」
「あぁ。全然覚えてねぇ」
すると、かおりは俺の瞳を見つめて、微笑んだ。
「病院の人がいってたよ。
  ゲンちゃんは、かおりと一緒にトラックの隙間にもぐったって。
  救急車のお医者さん、びっくりしていたらしいよ。
  トラックの正面から、下にもぐるなんて人、絶対にいないって。
  だって、よほどの覚悟がなくちゃ、怖くてそんなことはできないらしいもん」
俺はその言葉を聞いて、少し頬が緩んだ。


「でも、俺はどうして交通事故なんかに・・」
すると、かおりが怒ったような顔で、返事をしてきた。
「ゲンちゃんが、クリスマスパーティに来れないって、ウソをついたのが悪いんだから」
「え、俺がそんなこと言ったか?」
「うん」
「ウソつけ。俺がパーティに行かないわけないだろ。ずっと前から約束してたんだぞ」
「でも、ゲンちゃんが『行けない』って言ったもん」
「・・・」
俺はしばらく考えた。
たしかに『パーティには行けない』と言った記憶がある。
しかし、どうしてそんなことを言ったのか、
 理由は、これっぽっちも思い浮かばなかった。


なんだ、この気持ち・・。
とても大切なことが抜けているような気がする。


俺はチラッと窓に目を向ける。
そこには、俺がいつも着ている制服が、ハンガーにかけられていた。
少し泥で汚れているのは、事故のときのままだってことだな・・。
「ねぇ、ゲンちゃん?」
「どうしたんだ?」
「ゲンちゃんのために、お守り作ったの。もう交通事故に遭わないようにって」
「お守り? かおりが作ったのか?」
「うん。ホラ、これ可愛いでしょ」
かおりが俺に見せたものは、可愛いクマのアクセサリー。
俺はその小さなクマの顔を見たとき、
 なぜだか分からないが、言いようのない切ない気持ちに襲われた。
「これ、ゲンちゃんの制服のポケットに付けておくからね」
「おいおい・・」
かおりは俺の言葉も聞かずに、ポケットにクマのアクセサリーを結んでいる。
クマなんて、俺には似合わないと思ったが、せっかくかおりが作ってくれたんだ。
だから、そのままにしておくことにした。


俺はしばらく、ポケットにあるクマのアクセサリーを見つめていた。
ふと気がつくと、俺の頬になにかがこぼれていた。
(なんだ・・俺、泣いてるのか・・どうして・・?)
自然と涙が流れていた。
急にホッとして・・・なにかから解放された感じがして・・・。
でも、悲しいんだ。
なんなんだ、この気持ち・・。
「あれ、ゲンちゃん、泣いてるの?」
かおりがいつのまにか、俺の顔を覗き込んでいた。
「う、うるせーっ! 俺は男だ。泣くわけねぇ!」
俺は、そのまま布団を思いっきりかぶった。
俺がクマのアクセサリーを見て泣いてるなんて、絶対にかおりに知られたくなかったから。


最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。
今回は久しぶりにシリアスものを書いてみました。主人公のゲンは小学1年生の7歳。こんな年の子が、あれこれ考えられるはずがないので、読んでいて違和感があったかもしれません。ただアニメの「どっきりドクター」ではゲンはこれくらいは考えられるような設定になっていたので、そのへんのギャップも含めて、かなりチャレンジングに書いてみました(笑)。また、タイムパラドックスに関しては、えらく強引になってしまいました。いろいろと考えたんですが、意味不明だったらごめんなさい。それから、一瞬のことを書くのがとても難しくて、ゲンが考えたことをどうやってスピードをつけて書けばよいのだろう?と悩みました。結局うまく表現できませんでした。言いたいことを表現するのは本当に難しいですねぇ。え、もっと陵辱しろですか?w

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