圧倒的な悟空の強さの前にピラフは・・?
登場人物
孫悟空。元気で明るく、あまり物事を深くは考えない性格。
ピラフ一味。天才科学者のピラフ、犬型のシュウ、女性のマイの3人。
ピラフマシンピラフが開発を行い、ピラフ一味が乗り込む戦闘用ロボット。
ピラフは悟空の弱点であるシッポを握る作戦に出る。
しかし、肝心なシッポはズボンの中にしまわれていた。
思わぬ事態にピラフとシュウとマイは、
ヒソヒソと作戦会議を続けて、ようやく1つの妙案を思いついた。
悟空は待ちくたびれたのか、ふて腐れたような顔で話す。
「おい、早くしろよな!」
「ハハハ、待たせたな。タンマ切ったぞ」
「よーし、来い!」
3体のマシンは再び円を描くように悟空を囲み、フォーメーションを組んだ。
「行くぞ、小僧!」
正面にピラフの青いマシン。
左にマイのピンクのマシン、右後ろにはシュウの緑のマシンだ。
悟空はどんな攻撃にも対応できるように、目をキョロキョロと左右に配って身構える。
「あっ!!」
正面のピラフのマシンが、悟空の後方を指差した。
単純な悟空は釣られて、ピラフの狙い通りに思わず後ろを向いてしまった。
「いまだ」
マイは待ってましたとばかりに両腕を動かして、悟空を挟み込む。
マイのマシンの腕は、物をはさむんで潰すようなアーム形状になっているのだ。
ピラフの指す方向に気をとられていた悟空は、あっさりとマイの腕に捕まってしまった。
「わわっ、しまった!」
悟空の上半身はアームにしっかりと固定されてしまい、とても身動きすることができない。
彼の力を持ってしても、簡単には動かすことができない強力さだ。
「なんだ、こんにゃろ、放せ!」
悟空が必死に足をジタバタとしていると、後ろからシュウの緑色のマシンが近づく。
シュウのマシンから、細い触手のようなホースがニュルっと伸びて、先端から火炎が放出された。
「あちゃちゃちゃちゃっ!! あちゃ〜!!」
超絶な火炎放射攻撃!
下半身に火がついたような熱さに、悟空は思わず絶叫した。
ホースの先端から放射された真っ赤な炎が、悟空のお尻を焼いていたのだ。
「あちゃゃゃ、あっちゃ〜〜〜〜!!」
予想だにしない火炎攻撃に、悟空は顔面を紅潮させて叫び続け、
下半身をバタバタと動かした。下半身は"熱い"を通り越して"痛い"のだ。
「あぎゃああ〜〜!」
息も絶え絶えの悟空に対し、シュウはさらに火炎放射を続ける。
そして放射が終わると、大量の煙と焦げたような匂いが辺りに充満していた。
ピラフは満足な笑みを浮かべながら、ぐったりした悟空に近づいた。
「ワーハハハッ、服が焼けて、お尻が丸出しだぞ!」
悟空の下半身の服は、靴を除いて跡形もなく燃えてしまった。
いわゆるフルチンの状態だ。
ツルツルとしてハリのある太ももが、まぶしいほど光っている。
「よし、シッポを握るぞ」
ようやく悟空の弱点を握ることができる。
そう考えたピラフは、勝利を確信した。
「ん・・?」
しかし、そこには何もなかった。
あるはずのシッポが、お尻に生えていなかったのだ。
「そんなバカな・・・」
勝利を確信したピラフの頭は中は、真っ白になっていた。
「ピラフ様、早くシッポを!」
ぼう然とするピラフに、マイが焦ったような声をあげた。
「シッポ・・シッポが・・」
ピラフがうろたえている隙に、すてに悟空の反撃は始まっていた。
「ピラフ様、腕が! コイツ、ものすごい力です」
火炎攻撃で気絶したと思われた悟空が、アームを外そうと上半身にパワーをみなぎらせていたのだ。
「ピラフ様、早くシッポを握ってください。このままでは・・」
マイは悟空をもう一度アームで締め付けようと、必死にマシンのレバーを掴む。
しかし悟空のパワーは衰えるどころか、レバーがどんどん押し戻されていく。
「ピラフ様、早くっ!」
近くで見ていたシュウも、思わず声をあげる。
「どうしたんですか、ピラフ様!」
「シッポが・・シッポがない・・」
「ええっ!?」
予想だにしない出来事に、シュウとマイは表情が固まった。
「んがぁーーーっ!」
悟空の気合はさらに増し、アームを徐々に広げていく。
「シッポがないなんて・・ピラフ様もう一度確認してください」
「本当にないのだ、どこにもシッポがないのだ!」
ピラフ一味の中では、最も冷静なマイがシュウに指示を出す。
「シュウも後ろに回って確認しなさい」
「お、おう!」
シュウは額に汗を浮かべながら、ピラフの横に並んでお尻を観察する。
──やはりシッポがない!
どこからどう見ても、シッポと思われるものは存在しない。
「ピラフ様のおっしゃるように、シッポがないぞ」
「なんですって!」
悟空の唯一の弱点がなくなり、あきらめに近いムードが漂うピラフ一味。
もはや、ピラフの敗北は避けられないものと思われた。
次回予告 ピラフ「唯一の弱点のシッポがないとは・・これまでか・・」