悶々とオナニーをする菅野だったが…。
登場人物
菅野(すげの)。ハルユキの担任。
有田春雪。クラスでイジメられている。
ハァハァ…。
俺は射精したあとも、その余韻に浸っていた。
天井をぼんやりと見つめる。
始業式の頃を思いだす。
……。
俺が有田に初めて出会ったのは、始業式のあとすぐに行われたホームルームだった。
俺は教員になって3年目、1年生を担当したのは初めてだった。
みんな小学生のようなあどけない顔をしていた。
俺は生徒たちがお互いを知るように、1人ずつ自己紹介をさせた。
その中に、背が小さくてまん丸くて、可愛らしい生徒がいた。
<有田春雪です…よろしくお願いします…>
太った体からは信じられないくらい、小さな声だった。
喉がからからに渇いているのだろう、緊張している空気がヒシヒシと伝わってくる。
おそらく自分の太った体にコンプレックスがあるのだろうと、俺は直感した。
俺は有田の小さな声や、ビクついた態度に良い印象を持たなかった。
しかし時が経つにつれて、なぜか有田のことを優しい目で見るようになった。
なぜかというと、有田は嫌いであろう体育の授業をがんばっていたし、
一生懸命に授業を聞いて勉強していたし、放課後は1人でマジメに掃除をしていた。
ごく普通のことなのだが、太っている体を揺らしてがんばっている彼を応援したくなったのだ。
また、元々デブ専だった俺は、有田の体型を愛らしく感じていたのだろう。
だんだんと有田に好意を抱くようになり、そして恋愛の対象になった。
有田、愛してるぞ!
今すぐにでも告白したい。
しかし、教師がそんなことをできるはずもなく…俺は悶々とするしかない。
……。
明日も学内メールを出して、放課後に有田を保健室に呼び出そう。
キズの治療をするという理由があれば、俺は有田の体を触ることが出来る。
でも、そんなことをしたら、有田は俺のことをさらに軽蔑するかもしれない。
…有田の気持ちはどうなんだろうか?
知りたい、彼の気持ちを。
あぁ、俺はどうすれば…。
……。
不純だ…。
教師として、俺は失格だ。
生徒のお手本となるべき者が、禁断の恋で悩むとは…。
だが、俺は真剣なのだ。
有田春雪と恋人とはいかなくとも、仲良くなりたいのだ。
……。
……。
いくら考えてもムダだ。
だんだん眠くなってきた。
射精した疲れが出たのだろう。
布団に大の字になってウトウトと眠りについていた。
……。
……。
「センセ…?」
誰かが呼んでいる声がする。
俺は眠たいんだ、もうちょっと寝かせてくれ…。
「センセ…裸のままじゃ風邪ひきますよ」
聞き覚えるのある声だった。
声が小さくて、気弱で、オドオドした感じの男の子の声。
まさか…!
俺はドキッとして、ゆっくりとまぶたを開いた。
すると、覗き込むように1人の男の子の顔。
それは俺が愛してやまない、有田春雪のまん丸な顔だった。
──有田がどうしてここにいる!?
俺は混乱した。
まず状況から考えなくてならない。
ここは俺のアパート、俺の部屋だ。それは間違いない。
そして俺はオナニーをしたあとに、そのまま眠ってしまったらしい。
部屋の電気はついたままだが、窓の景色は夜だった。
まだ夜の9時くらいか?
そういえば、俺は裸のままだ。
まずい、もし覗き込んでいた有田が本物ならば、裸を見られていることになる。
そんなことよりも、どうして有田がここにいるのか…?
いや、有田は幻覚かもしれない。
……。
ダメだ、考えても全く分からない。
あれこれ考えを巡らせても、時間の無駄のようだ。
ようやく落ち着いてきた俺は、ムクッと上半身だけ起き上がった。
俺は上半身だけ起こして、両手で股間を隠しながらゆっくりと首だけを振り向いた。
そこには、間違いなく有田春雪が座っていた。
信じられないことだが、幻覚ではないらしい。
制服の姿のままだ。
まん丸くて、ぬいぐるみのように可愛くて、食べてしまいたいような体型。
本当に有田なのか…?
しかも、勝手に俺の家に上がりこんだのか?
有田のような臆病な生徒が、先生の家に勝手に入ってくるのか?
やはりこれは夢だ。
俺は股間を隠していた両手をあげて、顔をパンパンと叩いた。
顔を叩いて正気に戻る。
それでも有田は、俺の目の前に正座をしていた。
チョコンと、申し訳なさそうに、視線を横にずらしながら。
どうして有田がここにいるのか?
尋ねるしかない。
俺は心臓の鼓動を抑えながら息を吐き、そしてゆっくりと口を開いた。
「有田…なのか?」
「はい…」
短い返事だったが、その弱々しい声は、間違いなく有田のものだった。
「すまないが先生には、お前がどうしてここにいるのかわからん」
「先生、ごめんなさい」
「どうして謝るんだ」
「だって、勝手に先生の家に入ってしまって…」
「どうやって入ったんだ?」
「何度もインターホンを鳴らしたんですが、
返事がないのでドアノブを廻してみたら…。そうしたらドアが開いてしまったので…」
なるほど、俺はいつも玄関の鍵はかけていない。
無用心だが、1人暮らしの男の部屋にわざわざ入ってくる物好きもいないだろう。
しかし、まだ疑問はあった。
俺の家の住所は公表されているが、有田が知っているとは思えない。
まさか俺のことが好きになって会いに来た…そんなサプライズがあるはずもない。
どうしてここにいるのか?
まさか、保健室で強引にエッチしてしまったことを、怒って抗議しにきたのか?
そうだとしたら、俺はどうしたら…。
俺の不安そうな顔を、有田は察したのだろうか。
珍しく、有田から話しかけてきた。
「実はどうしても先生に話したいことがあって…学内ネットで先生の家を調べました」
一体、有田はどういうつもりなのだろうか?
なにか嫌な予感がしてきた。
俺は冷静を装って、有田に尋ねた。
「わざわざ俺の家にまで来るということは、急な用事なのか?」
「別に急な用事というわけでもないんですが…」
有田の行動が、いまひとつよく分からない。
とにかくこのまま裸で座っていても、ラチが明かない。
「じゃ先生は着替えるから、ちょっと待っていろ」
俺は洋服を着るために、立ち上がろうとした。
「そのまま裸の格好がいいんです!」
有田の大きな声に、俺はビックリして凍りついた。
立ち上がろうとしたが、それをやめて、その場であぐらをかいて座った。
ゆっくりと有田の方向に向きなおした。
ここまで来たら、有田に正面から向き合おう。
俺の覚悟は決まった。
俺は裸のまま、自分のチンチンを惜しげもなく晒して、有田と正面から向き合った。
あぐらをかいて座る俺。もちろん裸だ。
そして、目の前でちょこんと正座している有田。
有田は俺のイチモツに一瞬視線を向けた。
デカい大人のチンチンだと思っただろう。
有田はすぐに恥ずかしくなったのか、視線をずらした。
俺はなるべく優しく、丁寧に話しかけた。
まずは有田をリラックスさせてなければ、話も進まないだろう。
「有田、突然大きな声を出して、どうしたんだ?
先生はなんでも話を聞くぞ。だからきちんと順を追って説明してくれ」
そう話した後、俺の出来る限りの笑みを浮かべて見せた。
すると有田は横目でチラッと目を配りながら、少しずつ話しかけてきた。
「あの…その…」
「どうした?」
「先生も裸なんですね…これでボクと同じですね」
「ど、どういう意味だ?」
「だって、保健室でボクは先生に裸を見られましたから、これでおあいこです」
「そうだな…ははは…」
やはり保健室で強姦まがいのことをしたのが、まずかったのか…!
きっと有田は怒っているんだ。
俺は嫌な汗をかきながら、それでも優しい笑顔を作った。
「そ、それで何の用だ?」
「……」
「どうした?」
「先生、ボク、その…先生のことが忘れられなくて…」
「え?」
「今日、保健室で先生にキズを舐めてもらって…」
「……」
「あんなこと初めてだったから…」
──やはり舐めたのは、やりすぎだったか…!
当然だよな、俺の欲望に満ちた行動は責められても仕方がない…。
だんだん手に汗が滲んできた。
有田、すまん。あのとき正直に謝ればよかった。
俺の焦燥も知らず、有田は震えるような声で語りかけてきた。
「ボク、両親にも体を触られたことがほとんどなくて、
なんていうか、ボクの綺麗とは言えない体を舐めてもらえるなんて、初めてだったから…」
──どういう意味だ?
俺は有田の発言が、いまひとつピンとこなかった。
だから、そのあとの言葉を黙って待つしかない。
「ボク、家に帰ったあとも心臓がずっとドキドキして止まらなかったんです。
何も手につかなくって…。ボクのことを心配してくれた先生の行為がうれしかったんです。
ボクの体のキズを本気で心配して、汚い体を舐めてまで治してくれる先生のことが
もう忘れられなくて、うれしくて、先生のことを考えただけでドキドキしちゃって…。
どうしても先生に会いたくてなって、ここにきちゃいました」
有田の言葉を聞いたとき、俺はそれが本心で言っているのか、信じられなかった。
それだけ、有田が口にした内容は、俺にとって衝撃的なものだったからだ。
次回をお楽しみに。