ブリッツモン×純平小説(1)


純平がデジタルワールドから帰還した後の話を妄想してみました。


登場人物

柴山純平。デジタルワールドから戻り、普通の生活をしている。

ブリッツモン。純平の力で蘇った伝説の十闘士の1人。


時が流れるのはあっという間だ。
あれからもう3ヶ月。
俺はいま人間の世界にいて、以前通り「柴山純平」という名前で生活している。
ここは、デジタルな世界ではない。
生きる物すべてに、熱い血が通ったアナログな世界だ。
しかしデジタルワールドは、すべてが0と1で表記された無味乾燥な世界ではなかった。
暖かい心をもったデジモンたちがたくさんいた。
俺にとってはデジタルワールドは第2の故郷かもしれない。


俺はデジタルワールドから戻った日から、それまでと変わらない日常を送っていた。
いや、正確にいうと少し何かが変わっていた。
最近学校に行くことが、楽しくなったような気がする。
なぜなら友達の心が、少し分かるようになったから。


──以前の俺は・・・。
友達をモノや手品で惹こうと一生懸命だった。
お金でレアなカードを買って見せびらかしたり、手品でみんなの気をひいてみたり。
もちろん、みんなは俺のことを注目してくれた。
でも、それはその場限りの儚い友達。
ネタがなくなってしまえば、友達は俺から去ってしまう。
しかし、気がついた。
そんなものがなくても、友達はできるんだということを。
いま考えてみれば、こんな当たり前のことが、どうして以前はできなかったのだろう?
俺が友達を信じて、俺自身の気持ちをもっと話せばよかっただけなのに。


それを教えてくれたのは、デジタルワールドで出来た5人の友達。
拓也、輝一、輝二、泉ちゃん、友樹・・・。
そしてブリッツモン。
俺は、ブリッツモンに進化することで勇気をもって行動できるようになった。
だから・・・俺は変わることが出来た。
ブリッツモンが、俺の心の扉を開けてくれたんだ。運命を共にする仲間として。





純平は毎晩寝る前に、日記を書いていた。
パジャマ姿のまま、机に向かって10分ほど時間を割く。
<ブリッツモンへ>と書かれた日記帳のタイトル。
純平は意外と几帳面な性格なのか、その日の出来事が1ページにギッシリと書かれていた。
ブリッツモンだけが、以前の自分のすべてを知っている。
体も心もずっと1つだったのだから。
だから、ブリッツモンと別れた日から、自分の生活がどう変わったかを知ってほしかった。
いつか再会することがあったら、まずこの日記を読んでもらおう。
純平はそう思っているのだ。


純平は思う。
デジタルワールドの出来事は本当にすべて終わったのだろうかと。
デジタルワールドは、いまもどこかに存在するはずだ。
いつかブリッツモンに会えるかもしれない。
だから日記を書き続ける。
──今度会えるのはいつだろう?
──会ったらなんて話そうか?
純平は寝る前にベッドに入りながら、そんなことを考える。
(ブリッツモ〜ンっ)
純平はベッドの上で大きな体をゴロゴロとさせ、枕をギュッと握り締める。
(ブリッツモンと2人でこの中で話せたらなぁ)
純平の想いはあれこれと留まることを知らない。
そんなことを考えらながら、毎晩いつの間にかスヤスヤと眠りについていた。


次の日曜日。
純平は久しぶりに、友達と渋谷に遊びに行く予定だった。
いつものオレンジのシャツと青いツナギを着る。
「さて、いくか!」
純平は部屋を飛び出そうとしたが、ふと忘れ物に気がついた。
「あ、いけね・・・」
純平は机の上に大事そうに置いている携帯電話を手にとった。
以前は青いデジバイスだった携帯電話。
現在は最新の機種に買い換えてしまい、この携帯は通話できない。
しかし、純平はいつも、この携帯を肌身離さず持ち歩いていた。
ブリッツモンがそばにいるような気がしたから。


「じゅんぺー、おせーぞ!」
「少しダイエットしねーと、走れなくなるぞ!」
先に駅で待っていたクラスの友達が、大声で叫んだ。
純平が気にしていることを、公衆の面前でよくも叫んでくれる。
でも以前はこんな風にからかわれることもなかった。
純平は友達の冗談にムッとしながらも、それがとてもうれしかった。
「ご、ごめん!」
純平は大きく手を振って合流。
今日は4人で渋谷に洋服を買いに行く予定だ。


田園調布の駅から東横線に乗り、そのまま渋谷駅へ。
改札を出ると、純平はふと右奥にあるエレベーターをみた。
(このエレベーターに乗って、地下のターミナルへ行ったんだよな・・・)
いまでは地下2階までしか行けないエレベーター。
中に入って、今では本当にターミナルへ行けないか確認したくなる。
「おい、じゅんぺー、なにしてるんだよ?」
「あ、あぁ・・」
友達の1人がボケッとしている純平の手を引っ張った。


渋谷駅のハチ公前。
相変わらず駅前のスクランブル交差点は大混雑だ。
信号が青になるまで、今日は何を買おうかと談義に花が咲く。
「俺もじゅんぺーみたいなツナギ買おうかな〜」
「じゅんぺーみたいに、デブってねーと似合わないって!」
友達は純平が気にしていることをズバズバと言ってくる。
「お前らっ! いい加減にしろよっ!」
純平は怒った口調ではあるものの、笑いながら友達にゲンコツを喰らわす。
「あははっ」
自然に笑顔が出る純平。
しかし、そのときすでに異変が起きていたことに、純平は気づく由もなかった。


まだまだ序盤です。

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