ブリッツモン×純平小説(6)


ブリッツモンが人間界に来た理由とは?


登場人物

柴山純平です。

ブリッツモンです。

神原拓也です。デジタルワールドではリーダー的存在で、アグニモンに進化する。


純平とブリッツモンはベッドで並んで寝ていた。
純平の顔から、先ほどまでの笑顔は消えていた。
「デジタルワールドが危機に瀕しているってどういうことなの!?」
純平はバサッと布団から起き上がる。
『まだ生きていたんだ・・・ルーチェモンの欠片が・・』
「"かけら"って・・?」
『その欠片はデジモンに進化して、我々に戦いをしかけてきた。凄まじい力をもって。
  いまデジタルワールドは大混乱になっているんだ。アグニモンやヴォルフモンたちも傷を負ってしまった』
「そ、そんな・・・」
純平の顔はどんどんと曇っていく。
まさかそんなことがデジタルワールドで起こっていたなんて。
『俺は、もう一度純平の力を借りに、ここまで来たんだ』
「そうだったのか・・・」
純平は突然の話に混乱したが、デジタルワールドが再び危機に陥っていることは理解した。


「でもどうして俺だけを呼びに来たの?拓也や輝二、泉ちゃんは?」
もしデジタルワールドに行くのであれば、拓也たちの力も必要なはずだ。
スサノウモンを復活させるためにも。
『アグニモンたちに、人間の子供を連れてくることを反対されたのだ」
「反対って・・どうして?」
ブリッツモンは、その質問に答えるのに時間を要した。
『・・・今度デジタルワールドに行ったら、2度と人間界に戻ってこられないかもしれないからだ』
「えっ・・・」
"2度と戻ってこられないかもしれない"
その言葉の意味を考えたとき、純平の表情が自然にこわばった。
しかし、純平はそんな不安な表情を隠すかのように、元気な声を出す。
「で、でもさ・・・。
  ブリッッモンは人間界にいまこうして来ているじゃないかっ」
ブリッツモンは純平の問いかけに対し、少し悲しい表情をしながら答えた。
『オファニモンが命と引き換えに、人間界へのライトロードを開いてくれたのだ。
  次にオファニモンがいつ復活するのが、検討もつかない・・』
「命と引き返って・・・」
あのオファニモンが、命と引き換えにしてまで人間界への道を開いたなんて。


『純平、できれば力になって欲しい』
「ブリッツモン・・・」
そういうと、ブリッツモンは純平の腕をしっかりと握った。
『以前のように携帯電話のYesNoで、判断できない問題だと思ったんだ・・。
  俺は純平にこの気持ちを直接伝えたくて、人間界にやってきたんだ』
ブリッツモンの言葉は、純平に対する思いやりが感じられた。
それと同時に、デジタルワールドを守るという強い意志も感じられた。
「でも、俺がいても役に立たないよ・・」
『そんなことはない!俺は純平と一緒ならば、アイツと勇気を持って戦えると思っているんだ』
「・・・・・」
『もしデジタルワールドに平和が戻ったら、お前を人間界に戻す方法を考えるつもりだ。
  だから、考えてくれ。明日まで渋谷の地下のターミナルにトレイルモンきている』
「明日・・・?」
『時間がなくてすまないが、明日にはもうトレイルモンが通れるライトロードも閉まってしまうのだ』
「・・・・・」
『これ以上純平に迷惑をかけられないのは分かっている。だから純平の答えがNoであれば、
  俺は1人で地下のターミナルへ戻るつもりだ』
純平は、突然の提案に下を向いて、表情をさらに曇らせた。


もう2度と人間界に戻ってこれなくなる・・・。
それは、大切な両親や友達と会えなくなることを意味していた。
デジタルワールドから戻って、ようやく打ち解けることができた友達。
もしかしたら改善するかもしれない、両親との関係。
それらを全て失うことになるかもしれない。
純平は拳にギュッと握り締めて、目を閉じる。
苦悩する純平の表情を見たブリッツモンは、ハッと気がついた。
(まさか・・アグニモンたちはそれで反対したのか・・・。
  人間界のすべてを失うことがどういう意味なのか・・・。
  こんな選択を、純平に迫ること自体が間違いだったんだ・・)
ブリッツモンは、純平の苦しい表情をみているだけで胸が痛んだ。


「ブリッツモン・・・俺、デジタルワールドに行くよ」
先ほどまで苦悩していたのがウソのように、純平はブリッツモンを見てニッコりと笑う。
『純平!?』
「俺、行くよ・・・明日一緒に渋谷のターミナルへ行こう」
ブリッツモンは返事を聞いてうれしい反面、言い知れぬ自責の念が込み上げて来た。
『純平、もう2度と人間界に戻れないかもしれないんだぞ。きちんと考えてから結論を出すんだ』
そんなブリッツモンに純平は笑顔で答える。
「俺、ずっと前から決めていたんだ。どんなことがあってもブリッツモンの力になるって。
  だから、俺行くよ・・デジタルワールドに。
  それにデジタルワールドは俺の第2の故郷だもん・・絶対に破壊させない」
『本当に・・・本当にいいのか、純平?』
「うん」
『純平、お前は・・・』
ブリッツモンはギュッと純平の体を抱きしめる。
「い、痛いよ・・・ブリッツモンっ」
どうやらブリッツモンのトゲトゲの装甲が純平の裸に当たっているらしい。
『俺は純平の将来を、変えてしまうかもしれない・・』
「俺を変えてくれたのはブリッツモンなんだよ。たぶん、これからもずっとそうなんだ・・。
  だからそんなこと言わないでよ・・」
『純平・・!』


ブリッツモンは震えながら、純平の体を抱きしめる。
もしブリッツモンに涙腺というものがあったら、今頃は涙で顔がぐしゃぐしゃになっていただろう。
そして思った。
──お前はなんて素直な子なんだろう。
──純平を俺のパートナーに選んで本当によかった・・。
──でも、本当に純平にとって正しい選択なのだろうか・・・。
ブリッツモンの気持ちは、いまこの場で複雑になっていた。


「そうだ、このことを拓也にも知らせておくよ」
純平はそういうと、ベッドから出て、机の上にある携帯電話を取りにいった。
「えーっと・・・」
携帯電話を取ろうとした横に、日記帳。
(そうか・・これ・・)
純平は日記帳を手に取ると、それをブリッツモンに差し出した。
「これ、俺がデジタルワールドから人間の世界に戻ってからの日記なんだ。
  ブリッツモンに読んで欲しくて・・・」
突然本を手渡されたブリッツモンは、少々困惑気味だったが、
 パラパラとその本の内容に目を通していく。
『こ、これは・・・』
純平が毎日、ブリッツモンのために書いていた日記。
デジタルワールドで別れてから、今日までのことがびっしりと書かれている。
『純平・・俺のために・・・』
日記を持つブリッツモンの手は、かすかに震えていた。


「あ、拓也? まだ起きてた?」
どうやら拓也の携帯電話につながったらしい。
<純平!お前のところ何回電話したと思ってんだよ!>
あまりの大声に純平は耳を塞ぐ。
拓也が怒声が、ブリッツモンに電話越しに聞こえるほどだ。
苦笑いする純平とブリッツモン。
<お前、携帯の電源切っていただろ!?>
「うん。ごめん。いろいろあってさ・・・」
<そのいろいろって、渋谷で起こったブリッツモンの事件じゃないのか!?>
純平は拓也の言葉を聞いてビックリする。
たしか、ブリッツモンの事件は、広告会社のアトラクションということで片付けられたはずだ。
「えっ?拓也どうして知ってるの?」
<インターネット見てみろよ!すごいことになってるぜ!>
「どういう意味?」
<22ちゃんねるにブリッツモンの画像や事件のことがアップされているんだよ!>
「ええっ!?」
まさか、昼間の渋谷の事件が世間を賑わせているなんて。
「まさかと思うけど・・・俺のことなんてネットに書かれてないよね・・?」
<お前のことは書かれてないけど、"宇宙人を見た"とか大変だぜ!>
「う、ブリッツモンが宇宙人って・・・はははっ」
<笑い事じゃねーぞ!>
「ご、ごめん・・・」
拓也が真剣に話しているのに、さすがに笑ってはいられないようだ。


<それでブリッツモンは、いまどこにいるんだよ?>
拓也は話を元に戻す。
「う、うん・・それも含めて拓也に話したいことがあるんだ」
デジタルワールドの危機の話は、電話で話せるほど簡単なことではない。
拓也に明日直接会って話したほうが早いと、純平は思った。
「明日の朝、悪いけどウチにきてくれない?」
<分かったよ。じゃ明日の朝行くから、純平ちゃんと起きてろよ>
「分かったって。拓也こそ寝坊するなよ」
<俺は早寝早起きがモットーだから大丈夫なの>
「拓也がぁ!?」
<なんだよっ!まぁいいや。とりあえず明日な!>
そういうと、拓也は一方的に電話を切っていた。
(全く、拓也のやつ、変わらねーな・・)
そのあと純平はふと思った。
拓也が、ブリッツモンの話を聞いたらどう思うだろう?
もしかしたら、拓也も一緒にデジタルワールドに行くと言い出すかもしれない。
純平は、拓也がデジタルワールドに行くことは反対するつもりだが、アイツがいれば心強いなとも思った。


純平はベッドの上に座っているブリッツモンに見る。
ブリッツモンは先ほど手渡した日記を丁寧に読んでいた。
「ブリッツモン、その日記・・・どうかな?」
純平は期待半分、不安半分でブリッツモンに尋ねてみる。
『本当にいいのか・・純平』
「えっ? どういう意味?」
予期せぬ返事がブリッツモンから返ってきたので、純平は少し不安になる。
『デジタルワールドから戻って、友達もたくさん出来て幸せな生活を送っているというのに・・・。
  俺は純平からすべての幸せを、取り上げようとしているのではないか・・・』
「そ、そんなことないよっ!」
『しかし・・・』
「俺は人間界のどんな幸せよりも、ブリッツモンと一緒にいるほうが幸せなんだよ!
  たとえ、それがどんなに苦難な道のりだとしても。だから心配しないで!」
そういうと、純平は分厚い胸板をポンと叩く。
『本当に・・そう思っているのか?』
「うん。明日は拓也が来るから・・ブリッツモンも会いたいでしょ。もう寝ようよ」
淡々と話す純平に、ブリッツモンは何か不安を感じる。
『・・・そうだな』
純平は裸のまま再びブリッツモンに抱きついてきた。
『どうしたんだ?純平?』
「お願い、このまましっかりと抱きしめて。絶対に離さないで」
『あぁ・・・』
純平はブリッツモンの体にギュッとしがみつく。


(パパ、ママ・・・もう会えなくなるかも・・・)
純平の目から自然と涙が零れ落ちた。
(どうして涙がでるんだろう・・・俺はブリッツモンといるだけで幸せなはずなのに・・)
純平には分からなかった。
涙を拭っても拭っても、流れて落ちる。
(俺のことを見向きもしないパパやママなんて・・ブリッツモンが、俺のことを一番分かってくれるんだっ)
純平は何度も心の中で、そう言ってきかせる。
しかし、なぜかどうしようもなく悲しくなって寂しくなって、そして切なくなって・・。



純平はしばらくブリッツモンの胸の中で震えていた。
(純平・・・?)
ブリッツモンは純平の体を触って驚いた。
純平が、涙を流して震えている・・?
ブリッツモンにはその理由が分からなかったが、純平を強く優しく抱きしめてあげる。
純平はブリッツモンにしっかりと抱かれると、なにか安らぎのようなものを感じた。
(・・・ブリッツモン・・・ありがとう・・・)
涙で枕を濡らしながら、純平はいつのまにか眠りについていた。


今回の小説は、純平とブリッツモンの関係を描くまじめな小説です←ォィ(エロエロなのに・・)

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