ブリッツモン×純平小説(10)


ん?なんか展開が微妙な・・。


登場人物

柴山純平です。

ブリッツモンです。

神原拓也です。


電車は中目黒を通り越し、渋谷駅に近づいていた。
駅に近づくに従い、2人のだんだんと言葉数が少なくなってくる。
このまま別れてしまう悲しさが、2人の心をどんよりと覆っていたのだ。
話せば話すほど、別れるのが辛くなるのでは・・と思い始めていた。



「ん・・・?」
拓也が車内を見てみると、先ほどまでいた他の乗客が1人もいない。
まるで回送電車のようにガランとしている。
焦った拓也は、周りをキョロキョロと見渡してみる。
両隣の車両にはいつのまにか、多くの警察官が陣取っていた。
まるで2人を閉じ込めるかのように・・・。
(おい、純平!)
拓也は隣でうつむいていた純平にそっと声をかけた。
(ど、どうかしたの?)
(なんかまずい雰囲気だぞ・・・)
(えっ・・?)
純平はそっと車内の様子をみる。
そこに映ったものは、ギラつくような警察官の視線。
(な、なんなのこれ・・・?)
それは先ほど自分の家から外を見たときと、同じような恐怖の光景。
只ならぬ気配に、純平の心拍数は一気に上がっていく。


拓也と純平は、何が起きたのか把握ができずに困惑していた。
先ほどのような、近所の住人が押しかけるのとは訳が違う。
相手は本物の警察官、すなわち国家権力なのだから。
そのとき、1人のサングラスをかけた男が、2人の前に近づいてきた。
男は30代くらいで痩せているが、長身でピシッと黒のスーツを決めている。
なにか、とても威圧感がある。
明らかに、他の警察官を仕切っている人間のようだ。
「柴山純平君だね?」
男の声は低く、陰湿に感じた。
拓也と純平は、一緒に立ち上がって恐る恐る男の方に向き直る。
「あの・・・僕に何かご用でしょうか・・?」
いまにも泣きそうな、純平のか細い声。
危険を感じた拓也は、通せんぼをするように純平の前にサッと立ちふさがる。
こういうときの拓也の判断は実に素早い。
そして大きな声で叫んだ。


「あの、俺たちに何か用ですか?」
拓也の声は大きく、遠くまで響くように透き通っていた。
(た、拓也・・・?)
(いいから、俺に任せとけ!)
チラッと後ろを振り向いて、ウインクして合図をする拓也。
純平は震えながら、後ろから拓也の肩をギュッと掴む。
拓也は強がって見せたが、実際には緊張して膝が震えていた。
なにしろ相手は大勢の警察官。
しかし、拓也は"純平を絶対に守らなくては"という気持ちで一杯だった。
サングラスの男は2,3歩前にでる。
そして片手で警察手帳をみせると、なにやら話を始めた。
「私は警視庁の黒木というものだが、柴山純平君に聞きたいことがあってね。
  申し訳ないが、私に同行願いたいのだが」
「なんで俺たちが警察に行かないといけないんですか?」
拓也は、男と純平の間に割って入って話す。
「私は君ではなくて、柴山純平君に話があるんだが?」
男の声は、まるでコンピュータが話しているように冷徹に感じる。


「俺たち、これからどうしても行かなくちゃいけない用事があるんです。明日じゃダメなんですか?」
毅然とした態度で話す拓也。
全く物怖じしない拓也の姿に、純平は後ろから頼もしさを感じていた。
「今すぐ、同行して欲しいと言っているんだかね・・。
  それともデジタルワールドになにか関係があるのかね?」
その言葉を聞いた瞬間、拓也と純平は口から心臓が飛び出すほど驚いた。
「デ、デジタルワールド、どうして!?」
純平は、思わず相槌を打つように呟いてしまった。
サングラスの男は、動揺した純平の一挙手一投足を見逃さない。
「ほう、やはり君はデジタルワールドのことを知っているんだね」
「い、いや・・・その・・・」
純平は今の発言をなんとか取り消そうと、しどろもどろになりながら、横を向いて男から目線を逸らした。
まずい状況になったと判断した拓也はすぐに切り返す。
「なんですか?デジタルワールドって?俺たちには関係ないですよ」
その言葉を聞いたサングラスの男は、薄っすらと笑う。
「もしかして、君もなにか知っているのかい?デジタルワールドのことを?」
「訳の分からないことを言わないでください!」
「まぁいい。では君達2人とも警察に来てもらおうか」
そういうと、男は口元に不気味な笑みを浮かべる。


拓也は怒りに満ちた表情で、警察を阻止しようと奮戦する。
「警察に行くって・・・そんなこと勝手に決めないでください!」
拓也の態度は小学生とは思えない凛々しいものであった。
しかし、相手の男はそんな拓也を全く眼中にしていない。
後ろで震えている純平に話しかける。
「実はね、もう分かっているんだよ。柴山君、昨日君は渋谷にいただろう?」
「えっ・・・?」
「いまの衛星からの映像は、実に鮮明に映るものでね。
  昨日渋谷に現れた怪物が消えた瞬間、それがどこに移動したのか映っていたのだよ」
「映っていた・・・?」
まるで誘導するような男の質問に、純平の心臓の鼓動はどんどん速くなっていく。
「そう。君の携帯電話の中に吸い込まれたのをね」
「まさか・・」
「君はどうしてそのようなことかできるのかね?」
「・・・・」
「普通の人間にはできない能力・・・。
  君は本当に人間なのかね? 君もあのバケモノと同じ、デジタルワールドから来た住人なのではないのか?」
「そ、そんなわけ・・・」
「柴山君。では疑惑を晴らすためにも、君をじっくりと調べさせてもらいたいのだがね。
  ご両親にも了解は得ているんだよ」
「了解って・・?」
自分が警察に拘留されることを、両親が了承したことに純平は少なからずショックを受けた。


男の尋問に、純平は徐々に追い詰められていく。
「柴山君、昨日渋谷に現れたバケモノを我々に引き渡してくれないか?
  君は携帯電話からバケモノを出したり自由にできるのだろう? 危険な生物を小学生が飼ってはいけないよ。
  もっとも君は、小学生の格好に化けているのかもしれないが」
「そんな・・・危険なものなんて、一方的に決め付けないでください!それに俺は人間です!」
純平は男の不当な扱いに対して、思わず大きな声をあげた。
「どうして危険じゃないと分かるのかね?」
「そ、それは・・・」
男は、ウジウジとした純平の態度に苛立ち始める。
「さあ、さっさと携帯電話を渡すんだ! 抵抗するのではあれば容赦はせんぞ。このバケモノ小僧がっ!」
男は手を振って、後ろに陣取った警察官たちに合図をした。
警察官が車内にゾロッと入ってくる。
純平は、昨日ブリッツモンが渋谷で囲まれた、あの最悪の状況を思い出した。
警察に囲まれて、一方的になぶられる光景。
得体の知れないものを見る時の、人々の冷たい視線。
まるで、人間ではない異形のモノを見るかのように・・。
今度は自分にその番が回ってくるなんて・・・。


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