ユーミ×健太小説(5)


純愛系なので、書いててだんだん恥ずかしくなってきた。


登場人物

ユーミ&健太。健太の恋心を、ユーミは全く気付かないようだが・・?

氷の王。美しいものを好むナルシストな性格。





一方、健太はユーミの行動に対し、呆然と立ち尽くしていた。
ユーミが自分のことを"大切な人ではない"と言った瞬間から、
 健太の心は悲しさに覆われ、どんどん息が苦しくなっていた。
(ウソだ・・ユーミちゃんが、僕のことをそんな風に思うはずがない・・・)
健太は、心の中で何度もユーミの言葉を否定しようとする。
そして、息を詰まらせながらユーミに話しかける。
「ユーミちゃん・・・」
「あ、健太くん。花の女王は無事に取り戻せたわ」
「それって、僕が代わりに氷の王に捕まってもいいってこと?」
「別にそういうわけじゃないけど・・」
「もしかしたら、僕は氷の王に殺されちゃうかもしれないんだよ」
「え、どうして?」
「どうしてって・・・」
あっけらかんとしたユーミの表情に、健太は表情を曇らせる。
「氷の王の性格はよく分からないけど、健太くんのことを美しいって言ってるから、殺したりしないわよ」
「でも、なにかされたらどうするんだよ」
「なにもされるわけないじゃないの!」
「どうしてそんなこと言えるの!」
「いちいちうるさいわね。健太くんは花の国を救った英雄なれたんだから、それでいいじゃない!」
「僕は、英雄なんかになりたくないよ! 僕はただユーミちゃんの・・」
「私の、何よ?」
その問いかけに対して、目を伏せて黙ってしまう健太。


健太は、喉の奥まで出かかった言葉をグッと飲み込んだ。
そして、悲しい顔をしながらボソッと呟く。
「そんなのあまりに無責任じゃないか・・・ユーミちゃんなんて嫌いだ・・・」
「無責任ってどういう意味よ?」
「だって、僕はどうなっちゃうの?」
「大丈夫よ。花の女王を救い出したから、いまは魔法が使えるわ」
「魔法でどうやって助けてくれるの?」
「健太くんよりも、美しいものを魔法で出せばいいのよ。簡単じゃないの」
ユーミのあまりに単純な回答に、健太はムキになる。
「もしも、氷の王が僕よりも美しいものを認めなかったら?」
「そんなことバカなことが、あるわけ無いじゃない」
「どうして?」
「健太くんよりも美しいものなんて、この世に腐るほどあるわよ!」
「なんでそんなこと言えるんだよ!」
「だって、そうとしか言いようがないじゃない!」
ユーミがああ言えば、健太がこう言うという状態。
いつのまにか、お互い一歩も引かない状況だ。


ユーミと健太の口争いに、陰湿な声が割って入る。
『おやおや、ケンカですか』
「別にケンカしてないわよ。ちょっと提案があるんだけど」
『なにか?』
「いまから健太くんよりも美しいもの出すから、それと健太くんを交換してもらえない?」
『ほう・・』
氷の王はユーミの発言に、興味がありそうだ。
「よーし・・!」
ユーミは腰につけているポーチから、そっと魔法のスティックを取り出した。
魔法のスティックは、花の女王を救出したためなのか、輝きを取り戻している。
「パステルポップル ポッピンパ!」
ユーミが使う魔法の呪文。
スティックで空中に描いたものを、たった一度だけ実体化させることができる。
ある意味、なんでもアリな究極の魔法だ。
ただし、一定時間しか実体化できないのが難点なのだが。
ユーミはクルリと回転しながら、魔法のステッキで美しい宝石の絵を空中に描いていく。
描いた絵は、やがて本物のダイヤモンドとなり、実体化した。


ユーミは光輝くダイヤモンドを手に乗せ、氷の王にゆっくりと見せた。
「はい。こっちの方が健太くんより美しいでしょ? これと健太くんを交換して」
氷の王は、しばらくダイヤモンドを興味深げに見つめていた。
しかし、不敵な笑みを浮かべる。
『フハハハ、これはおかしい』
「なにがおかしいのよ!」
氷の王は、ゆっくりとユーミの前まで進んでくる。
そして、ユーミの手のひらにあるダイヤモンドを、米粒のように掴み取った。
なにやら手にとって、ジロジロと観察しているようだ。
『これが美しい? 冗談にもほどがあります』
「どうして? 健太くんよりも、全然綺麗じゃないの」
不敵な笑みを浮かべる氷の王に対し、ユーミは不安気な顔をする。
『それはあなたの価値観でしょう? そんなものを私に押し付けないでください』
「で、でも、普通はダイヤモンドの方が綺麗に決まってるわ!」
『魔法で作り出したものは数分で消えてしまう。儚い命だと聞いていますが?』
その言葉にビクッとするユーミ。
「そ、そんなことないわよ」
氷の王が意外と鋭いので、ユーミは目線をスッとそらした。
『ひとつだけはっきりしました。あなたにとって、この少年は魔法で作ったモノと等価ということですね』
「等価とか、そんな問題じゃないわよ!」
氷の王のいう意味を理解できないユーミは、だんだんと苛立ち始める。
「もういい加減にしてよ!こっちまで頭がおかしくなってきちゃうわ!」
ユーミは目を吊り上げて、怒りを顕にする。


『これ以上話をしても無意味です。もう人間の世界に帰りなさい』
氷の王は大きなマントをサッと広げ、ユーミの後ろの岩肌を指差した。
微かな暖かみに、ユーミは振り向く。
すると、壁には人間がちょうど入れるくらいの穴が開いていた。
そこから、眩しいばかりの光が溢れている。
「一体、何の光・・・?」
ユーミは壁の穴に近づいて、注意深く中を覗いてみる。
すると、そこにはユーミたちが住むフワラータウンの景色があった。
花で彩られた街並みと、美しい海岸線。
すっかり雪が止み、真夏の太陽が戻っている。
それは、フラワータウンの異常気象が元に戻ったことを意味していた。
「よかった・・・何もかも元に戻ったんだ・・・」
光の中にはユーミのお父さんやお母さん、そして憧れの恭平(健太の兄)の姿がみえる。
(やだ・・。みんな楽しそう・・・)
ユーミの頭の中に、家族と一緒にいるときの安らぎがフッとよぎる。


『さようなら、オテンバ娘さん』
「えっ・・?」
『この少年は、私が大切にします』
そういうと、氷の王は手のひらを天に向かってかざす。
すると、穴の中心に向かって強烈な風が渦を巻き始めた。
「キャアア!」
立っていることも間々ならない強風に、ユーミは悲鳴をあげる。
そのまま体が数センチ浮いたかと思うと、足から穴に吸い込まれていく。
「ユ、ユーミちゃん!」
その光景を見て、真っ青になる健太。
健太は、大慌てでユーミのところへ駆け寄っていく。
そして、懸命にユーミの手を握ろうとする。
「ユーミちゃん、僕の手を掴んで!」
「け、健太くん!」
しかし、ユーミの体はあっという間に壁の穴に吸い込まれていた。
ユーミにも健太にも、なにが起こったのか分からない一瞬の出来事だった。


(そんな・・・ユーミちゃん・・・どこに行っちゃったの・・・)
1人、ポツンと取り残された健太。
壁の穴はいつのまにか消えていた。
そして、静粛だけが周りを支配している。
健太は素っ裸のまま呆然としていたが、陰湿な声に呼び戻された。
『健太くん。やっと2人きりになれましたね』
「こ、氷の王さん・・・」
『あんなオテンバ娘のことは忘れなさい。これからは私と一緒です』
不気味な笑いを浮かべる氷の王。
ゆっくりと健太の所へ歩を進めていく。
「や、やめてよ・・・」
『さぁ、可愛い健太・・』
「僕の名前を気安く呼ばないでっ!」
『よいではないか。これからずっと一緒なのだから』
「近寄らないで!」
健太は太った体を揺らし、洞窟の出口に向かって全速力で逃げ出した。
しかし、部屋の入り口だった場所は、すでに氷に閉ざされている。
「そんな・・・出口が氷で覆われている・・」
完全に行き場を失った健太。
背後から近づく氷の王の足音に、体が震える。


『いまさら逃げてどうするんです?あなたは、花の女王と交換になったんですよ』
「ぼ、僕をどうするつもりなの?」
『まずは、その柔らかそうな体を触らせてください』
「ち、近づかないで!この変態野郎!」
『ハーハハハハッ』
素っ裸のまま、短い手足を必死に動かして逃げ回る。
しかし、狭い洞窟の中をいくら走ったところで、逃げ道などありはしない。
いつのまにか、洞窟の一番奥に追い詰められてしまう。
「はぁ・・はぁ・・・お願いだから来ないで・・・」
健太は恐怖のあまり、顔を引き攣らせながら後退していく。
『もう逃げ場はありませんよ』
「いやだ・・・」
薄気味な笑いを浮かべながら、ゆっくりと健太に近づいてくる氷の王。
健太はキョロキョロと左右をみて、逃げようとする。
そのとき、氷の王がサッと腕をあげた。


「あっ!」
健太が叫んだ瞬間。
視界が突然青白くなった。
(か、体が動かない・・・)
凍てつく寒さが体中を覆う。
寄りかかっていた岩盤もろとも、健太の体は分厚い氷のカーテンに閉じ込められてしまった。
ミシミシと音を立てる氷。
(つ、冷たい・・・それに全身が痛い・・・)
健太は唇を真っ青にして、全身を震わせていた。
必死に体を動かそうとするが、氷の中では身動きがとれない。
(まさか・・・このまま僕は死んじゃうんじゃ・・・。
 いやだよ・・・まだ、ユーミちゃんに何も言ってないのに・・・。何も伝えていないのに・・・)


次回ムリヤリ陵辱です。←ォィ

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