ユーミ×健太小説(7)


なんか展開が変ですが・・。


登場人物

花園ユーミ。オテンバでボーイッシュな少女。健太とは幼馴染。

三沢健太。氷の王に捕まってしまったが・・。

三沢恭平。健太の兄で抜群のルックスと優しさを持つ好青年。

ユーミの両親。花園フラワーショップを営んでいる。


(わぁ・・暖かいなぁ・・)
お花畑の絨毯の上。
花びらが一面に舞い、蝶が曲線を描いて飛んでいる。
日差しも、うたた寝をするにはちょうどいい。
(もうちょっと寝てよっか・・・)
ユーミは安らぎを感じながら、再び眠りにつこうとする。
<花園ユ〜ミ!>
(う〜ん、誰よ・・うるさいわね・・)
ユーミは目をこすりながら、ぼんやりと見開く。
<花園ユ〜ミ!>
よく見ると、波平のような頭の先生の顔が、睨めっこをしている。



「わぁっ!」
突然視界に現れた老け顔に、ユーミは驚いて立ち上がる。
「あ、あの、おはようございます!」
机に手をついて、背筋をピンと伸ばした姿勢のユーミ。
<あははは。ユーミ!なにボケッとしてんだよ!>
クラスメートから爆笑の声。
「花園ユーミ。なにやっとる。眠気覚ましに校庭10周!」
淡々とした先生の語り口調。
バツが悪そうなユーミは、キョロキョロと周りを見渡す。
いつもどおり、何も変わらない学校の風景。
(あれ、私・・・たしか花の国にいたはずなのに・・)
ユーミは指を顎に当てて、数秒考え込む。
(花の国の出来事って、夢だったのかな・・・)
ふと前方にある健太の席に、視線を向けた。


健太の席は、ユーミの席の斜め前方にある。
(あれ・・・?)
健太の席には、なぜか誰も座っていない。
不審に思うユーミは、首をかしげながら先生に尋ねてみる。
「あの、健太くん・・いや、三沢健太くんは休みですか?」
ユーミの質問に、先生はポカンとした表情で黙ったままだ。
しかし数秒後、予期しない回答が返ってきた。
「花園ユーミ。まだ寝ぼけとるのか? それとも夢に見た新しいボーイフレンドか?」
「えっ? そこの席に座っている三沢健太くんのことです」
ユーミは、誰も座っていない席を指差す。
そんなユーミの言葉に、先生はフゥッとため息をつく。
「花園ユーミ。校庭20周!」
<ぎゃはははは!>
クラス中から再び爆笑の渦が起こる。
予想だにしない笑い声に、ユーミは真っ赤になって反論した。
「先生!健太くんのことを聞いただけで、なんで10周も余計に走らなきゃならないの!?」
「だから何のことを言っとるのだ?」
「何回言わせるの?健太くんのことよ!」
「わかった・・・早く校庭を走って来い!」
(一体、なんなのよ・・・)
ユーミはクラスの爆笑の中、逃げるように校庭に出て行った。




学校が終わるとユーミは家路に急いだ。
(まったく、健太くんのせいでひどい目に遭っちゃったわ・・・)
ユーミは膨れっ面をしながら、いつもより早足で歩いていた。
家までの道のりは、丘をゆっくりと下る坂になっている。
家路に着く途中、ユーミは色々な憶測を廻らせていた。
(たしかフラワータウンが冬になって、それを救うために花の国にいって・・・。
 そこで健太くんと花の女王が交換になったんだわ。
 でも、私はどうやってここに戻ってきたんだろう?
 私が戻っているんだから、健太くんも戻っているのかな・・。
 それとも、健太くんはまだ花の国にいるのかしら・・・。
 うーん、でも教室で寝ていたってことは、花の国に行ったこと自体が夢だったとか・・?)
1人でブツブツと独り言をいいながら、思案するユーミ。



「ただいま!」
「あ、おかえり」
ユーミの家は「花園フラワーショップ」という花屋さんを経営している。
店の前には、四季折々の花が所狭しと陳列されている。
「ねぇ、お母さん?」
「ユーミ。早く部屋に荷物を置いて、お店を手伝いなさい」
ユーミがお店を見渡すと、なにやら今日はお客さんが多い。
お父さんもお母さんも、ユーミの話相手をしているどころではなさそうだ。
ふと横をみると、スラッとして優しそうな男性の姿。
(あ、恭平さん・・)
ユーミは店の外で配達の準備をしている恭平のところへ駆け寄った。


──三沢恭平。
健太くんのお兄さん。
私の憧れの人。
そして、将来の旦那さん・・・の予定。なんだけど・・。
健太くんと違って、ものすごいカッコよくて、ハンサムで、頭もいいし、運動神経もバツグン。
本当に兄弟なのかしら?
健太くんのドジッぷりを考えると、こんな似ていない兄弟も珍しいわ。
私の初めてのデートは、絶対に恭平さんって決めているんだから!


ユーミは上品っぽくスカートの前に手のひらを交差させる。
そして、頬を上げてニッコリと微笑む。
「ねぇ、恭平さん?」
「なんだ、ユーミ。もう帰ったのかい?」
恭平は、届け物の花束を持ちながら、ユーミに返事をする。
「恭平さん、健太くんは風邪ひいたの?」
「ケンタ?」
「うん。健太くん、今日は学校に来ていなかったみたいだけど・・」
「ねぇユーミ? ケンタって誰のことだい?」
「・・・やだ、恭平さんったら。なにからかってるのよ」
「からかうも何も・・」
「弟の健太くんのことよ」
「弟って・・・俺に弟なんていないぞ。はははっ、ユーミは熱でもあるんじゃないのか?」
そういうと、恭平はユーミのおでこに手を当てる。
「もう、恭平さんまで冗談はやめてよ!」
自分を子供のように扱う恭平の態度に、ユーミはプッと膨れる。
しかし、恭平はウソをついている感じでもない。
そのあと、ユーミはお父さんとお母さんに健太のことを尋ねてみる。
<ケンタくんって・・誰のこといってるんだい?>
<ユーミの新しいお友達のこと?>
返ってくる答えはどれも似たようなものだった。
最初は自分のことを、全員でからかっているのかと思っていたが、
 冗談にしては悪ふざけがすぎている。


ユーミはしょんぼりと1人で部屋に戻り、魔法のスティックを手に取る。
(魔法のスティックがあるってことは、花の国は無事ってことよね。
 でも、ケシ丸とかき丸がいない・・。健太くんもいない・・。
 それに、学校の友達も、先生も、お父さんもお母さんも、恭平さんも、
 全員が健太くんのことを知らないなんて、一体、どういうことなの・・・。
 みんなの記憶から健太くんが消えているって・・・)
ユーミの表情は、だんだんと険しくなってくる。
(健太くんは、まだ花の国にいるんじゃ・・・。
 きっと氷の王に捕まったままなんだわ。
 そのことと、この世界に健太くんが存在しないことに、なにか関係があるのかも・・)
だんだんと、事の成り行きがぼんやりと分かってくる。
(まだ健太くんが花の国にいるんだったら、助けに行きたいけど・・・。
 どうやって花の国に戻ればいいのかしら・・。
 ケシ丸とかき丸がいれば、なんとかなるのになぁ・・。
 でも、健太くんのことだから、ひょっこり現れるかもしれないし・・待つとするか・・)
花の国に行く手段がない以上、自分から健太を助けに行くことはできない。
ユーミは状況に戸惑いながらも、健太が戻ってくるのを待つことにした。


話が飛びすぎ?

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