金太君小説(12)


陵辱する!と言っているので、先の展開が簡単に読めますね・・。


登場人物

我らが金太君です。

金太の親友の拳一です。

権藤大三郎です。

拳一と共に、権藤大三郎の率いる青空第2小学校に道場破りに来た金太。金太らしからぬ大胆な行動に果たして?


「俺は春風小学校の白金太郎だ!権藤大三郎と勝負がしたい!!」
鼓膜が破れるかと思うほど、大きな声。
練習していた部員たちも、金太の大声に度肝を抜かれたのか、ボーゼンとしている。
(あっちゃ〜。金太のヤツ、真正面から行ったなぁ・・)
拳一の知る限り、どこかの時代劇で見たかのような律儀な道場破りそのままだ。
しかし、相手に与えた衝撃は予想以上に大きいらしい。
腕を腰に当てて、仁王立ちの金太。
柔道部員たちはみな、鬼のような形相の金太と目を合わせることを避け、困惑の表情を浮かべていた。
(白金太郎って・・あの準優勝のヤツだよな・・)
(たしか権藤キャプテンの寝技を、そのまま持ち上げたヤツだぜ・・)
コソコソと話が聞こえる。
どうやら青空第2小でも、金太の名前は通っているらしい。
道場破りの場合、初めの勢いが大切なのだ。
実は昨日、まず気合で相手に飲まれないようにすることを、2人で打ち合わせしていたのだ。
それがまんまと成功した形となった。


「白金太郎、何しにきた!」
そこに1人だけ、金太に食って掛かるヤツがいた。
金太は声のした方向をキッと睨む。
その少年の顔に見覚えがあった。
金太よりはちょっと小さいがデブ。
「お前はたしか・・大河原・・」
「へへっ。よく覚えていたな・・"キンタくん"」
「て、てめーっ!」
そのアクセントと喋り方を聞いて、金太は大河原のことをはっきり思い出した。
――結花が権藤に捕まったときに、俺を誘いに来たヤツ。
――工事中のビルで、権藤と一緒に結花にひどいことをした許せないヤツ。
おそらく権藤の次に実力があるのだろう。
金太はあのときのことを思い出すと、怒りに満ちてきた。
「キンタくん、事と次第によってはタダじゃ返せねー・・うわっ」
大河原が話を終える前に、金太は大河原の襟元を掴んでいた。
「気安く俺の名前を呼ぶんじゃねーっ!」
そのまま、背負い投げしたかと思うと、大河原の体は宙を飛んで壁に叩きつけられた。
ドタッ!ガシャン!
ものすごい衝撃の音がした。
壁に打ち付けられた大河原は、ドスンと床に倒れこむ。
「金太のやつ、すげーぞっ・・行ける!」
ドアからそっと見ていた拳一も、金太の桁外れの強さにホッとしていた。
なんとか立ち上がった大河原。
「うぅぅ・・お前ら、なにしてる・・そいつをやっちまえ!」


しかし、大河原の号令にもかかわらず、部員たちは金太から発する気合におじけづいて、そのまま動かなかった。
いや、動けなかった。
「くそっ、なにしてやがる!」
「・・・・・」
部員は動かない。
「やらねーヤツは、後で権藤さんに言いつけるぞ!」
その大河原のセリフで、おじけづいて柔道部員たちの様子が一変した。
「わぁぁぁっ」
悲鳴のような声をあげながら、一斉に金太に襲い掛かった。
集団心理なのか。
よほど権藤が恐ろしいのか。
1人が動けば、あとは芋づる式のように金太に飛びかかる。
「おめーらなんかに用はないんだっ」
金太は飛び込んできた1人の部員の襟を素早い動きで掴んだ。
そして、駆け込んでくる2,3人に向かって力任せに投げ飛ばした。
「うわぁっ!」
声を上げる間もなく、数人の部員がバタバタと倒れていく。
格が違った。
こんな部員を何人集めたところで、いまの金太の相手ではなかった。
あっという間に全員が壁や畳に投げ飛ばされる。
「こいつ・・・半端じゃなく強ぇ・・」
その場にいる全員が、金太に恐れをなした。
柔道部屋がシーンとなる。


パチパチパチ・・・・。
静寂の中、どこからか拍手している音がする。
(な、なんだ!?)
金太は嫌な予感がして、キョロキョロと辺りを見渡した。
とっさに入り口のほうをみると、拳一がいない。
「け、拳一っ!どこだ!」
すると、拳一を脇に抱えた大きな男が入り口から入ってきた。
「くそっ放せよっ!このデカブツ野郎!」
「へへっ、うるさいサルだぜ」
入り口から入ってきたのは、忘れもしない権藤大三郎。
(ご、権藤・・大三郎・・)
金太はゴクリと生唾を飲み込んだ。


「やぁキンタくん。久しぶりだな」
「権藤・・・」
「まさか、お前から来るとはな。ちょっと意外だったぜ」
落ち着き払った、いつもの低い声。
(コイツ・・・なんでこんなに落ち着いてやがる・・・)
金太はこの事態に全く動じていない権藤に驚いた。
首筋に緊張の汗が滴り落ちる。
「それにしても随分と派手にやってくれたな・・。道場破りなんて、お前が考えたのか?」
「そ、それは・・・」
そう聞かれると、金太は黙ってしまった。
「どうやら違うみたいだな。コイツの提案なのか?」
そういうと、権藤は脇に抱えた拳一のわき腹をギュッと抑え込んだ。
「いっ痛てーーー、放せ!」
「権藤、やめろ!」
拳一の体など、権藤の比べれば象と蟻の大きさの違いがあるように見える。
腕の中でつぶされてしまいそうだ。
「拳一は関係ないだろ!」
「関係あるね。もしこいつが道場破りを提案したのなら」
「違う、拳一じゃない。俺が考えたんだ!」
「へぇ・・・」
権藤は不審な目つきで金太をみている。
まるで金太の心を読むかのように。


「だとしたら、随分とアセっているじゃないか、キンタくん」
「な、なんだと!」
「わざわざ道場破りの真似事をしなくても、5月の大会で俺と試合すればいいものを」
「そ、それは・・」
「何をそんなにアセっているんだよ?」
「うっ・・」
「そんなに俺に逢いたかったのかい?」
「な、なにを・・・」
答えに詰まってしまう金太。
権藤は、金太の体を嘗め回すように、いやらしい目つきでジロジロと見つめている。
その視線に金太はポッと赤くなる。
金太は権藤の視線に耐え切れず、思わず自分の視線を斜め下を落とした。
「お前、相変わらず分かりやすいな」
「だっ、黙れ!」
「へへっ、まぁいいさ」
そういうと、横でガヤガヤとうるさい拳一の腹に一発パンチをした。
「うぅ・・」
元気だった拳一が、急にうなだれて喋らなくなった。
「拳一を放せ!また人質にするつもりかよ!」
「人質?」
「結花の時もそうだったじゃないか!正々堂々と勝負しろ!」
「正々堂々?こりゃお笑いだぜ」
権藤はいきなり声を出して笑い始めた。
「な、何がおかしい!」
「道場破りみたいな不意打ちを食らわせておいて、正々堂々とはな」
「それは・・・」
たしかに権藤の言うことのほうが正しい。
道場破りなんて行為自体、正当な試合とはかけ離れている。
不器用な金太は、こういう状況では機転が利かない。
相手に真っ当なことを言われると、切り返すことができずに黙ってしまう。
知らず知らずのうちに、形勢は権藤に有利な流れになっていく。


拳一はうなだれながら、この状況をまずいと感じていた。
拳一が一緒に来た理由は、金太を励ますため、というのもあったが、
権藤が金太を言葉責めをした場合、自分が金太をフォローしようと考えていたのだ。
言葉で言い合いになると、金太は分が悪い。
確実に権藤のペースになってしまう。
そして、いままさに、それが起きてしまった。
(ま、まずい・・なんとかしなくちゃ)
完全に最初の勢いを殺されてしまったことに焦る拳一。
しかし、権藤から信じられない提案がなされた。
「いいぜ、ここで俺と試合しようじゃねーか」
「ほっ、本当だろうな? 権藤?」
「俺と決着つけたいんだろ?」
「あぁ」
「俺も、実はキンタくんとは決着をつけたくて、正直待ちくたびれちゃってさ」
「どういう意味だよ・・」
「さぁね・・ホラ、このガキを返すぜ!」
権藤は腕に抱えていた拳一を、空き缶でも投げるかのようにポイッと金太の方へ投げた。
「拳一っ!!」
金太は投げられた拳一を、間一髪のところで抱きか抱えた。
拳一は痛めつけられたせいか、少し声が小さかった。
「拳一、大丈夫か?」
「あぁ・・」
ケガはしていないようだ。


そんな2人を見下ろすかのように、権藤が話した。
「試合するなら、拳一とかいったな・・お前に審判をやってもらおうか」
「拳一が?」
正直、金太は驚いた。
拳一を人質に取るどころか、逆に審判にするという。
どう考えても金太に有利な条件だ。
「何考えてんだ!」
「そいつは柔道は素人だろうが、寝技に入ってから30秒くらいは数えられるんだろう?」
「それはそうだが・・本当にいいんだろうな?拳一が審判ってことは俺が有利かもしれないぜ」
「なるほどな・・じゃあ、ルールをもう1つ追加だ。審判は公平な立場でジャッジをする。それと当然審判の言うことには従う」
「当たり前だ。構わないぜ」
権藤の言うことに、特に卑怯なことはない。
何を考えているかは分からないが、意外と正々堂々と戦おうしているようだ。
「それと最後の提案だが・・俺が勝ったら・・・・キンタ・・なんでも言うことを聞いてもらうぜ」
「・・・あぁ」
金太は事の成り行きに、少々戸惑いながらも、いつもより低い声で、権藤の最後の提案を承諾した。
(絶対に負けられないぞ・・)


とりあえず、次回陵辱?

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